日本の伝統を守りつつ新しい魚貝類の提供を模索している『ヘンリーブロス』の江嶋力さんから、「八王子に信州サーモンやシナノユキマスを扱っている養魚場がありますよ」と聞いて、さっそく八王子のもっとも西にある恩方まで行ってきた。恩方と言えば「夕焼小焼」の作詞者・中村雨紅の出生地。でもこの山里では夕焼けが見えるのだろうか? 「山のお寺の鐘がなる」というのはいかにも恩方らしいが、冬ともなると4時前には薄暗くなる。
八王子から陣馬街道を西へ、渋滞がひどくて1時間近くかかって上恩方、「夕やけ小やけふれあいの里(この施設がなんなのかぜんぜんわからない。わからないと言えば入るだけで入場料を取られるのだ。バカじゃないの? これ作った野郎。オヤジとしては怒ってるぞ!)」というのを通り過ぎてほどなく小川養魚場に着く。
下を流れるのは北浅川だろうか、冬の流れは澄んでおり、とても美しい渓谷である。そこから鉄の橋を渡ると養魚場となる。大小合わせてたくさんの池が並び、水音だけが聞こえる。池をのぞくとニジマス、ヤマメ、イワナが見える。八王子もここまでくると気温が低いのか歩く地面は凍り付いたままである。
あいにく管理者の小川さんにはお会いできなかったが、そこに一匹だけ残っていた信州サーモンを購入してきた。1キロあたり1700円だという。これは長野県内でしめてから持ってきたもの。まだ心臓が動いているくらいに新しい。
この信州サーモンの味わいは別記するが、非常にうまい魚であることだけは明記したい。ブラウントラウトとニジマスを一世代だけ掛け合わせたF1なのであるが、ニジマスよりも病気に強く、身が美しいもの。淡水養殖の世界も深いものだと実感する。
小川養魚場 東京都八王子市上恩方町4738
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