魚貝類を探す旅: 2005年12月アーカイブ

 北千住駅を出ると、前回なぜか目に入らなかった大判焼きらしきものを売る魅力的な店を見つける。屋号は『あちこちや』。この店、なんだか風情というか異彩を放っている。お土産はここで買って帰ろうと決めてマルイ方向に歩く。
  右にマルイがあって、隣が高層ビル。まさかマンションかな? と今時マンションに住む人の気持ちと、高所恐怖症のせいだろうか、思わず小走りになる。どうして高いところに住んでいて悪夢を見ないのか、佃島などのマンション群を見ていると、想像するだけで●シッコちびりそうだ。その上、今日の国会の化け物たちの存在。
 一見、21世紀の街そのものの北千住。違っているのは歩く人の雰囲気。メチャクチャに怖ろしげな女子高生、道の脇の公園で静かに座っている男性、そして後先になりチョチョと草履の音を立てて歩く老人。そして元気いっぱいのおばちゃんが多いのも北千住の特徴か? またやたらに路地が多くて、ちばてつやの石松や、ちばあきおのキャプテンがグローブを持って走ってきそうな雰囲気がある。
 広い通りに出たので左折、路地を見つけてまた左折。この辺りは古い仕舞た屋が多く、なんだか東京だとは思えない。民家ばかりの路地からやっと商店街に出た。そこで見つけたのが『増英かまぼこ店』。店の横でおでんを売っているのが惹かれる。

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残念ながら定休日だった、だんご屋、タイムスリップしたような洋品店

 これを右折。朝ご飯から何も食べていないのでペコペコ。そんなところに不思議な店を発見。『美富士』という店で白地暖簾に赤い字で「中華 洋食」とある。そして「カレーライス」の旗。オヤジはこんなわけのわからん昔ながらの食堂に惹かれてしまうのだ。
 がらりと開けると、いたって普通の食堂。考えてみると食堂らしい食堂は少なくなってしまって、これも貴重なのだ。あまりに多いメニューとやや値段が高めなのでカレーライスを注文する。そして出てきたのが粉っぽい家庭風のカレー。これにソースをかけて懐かしくいただきました。この商店街は先には何もなさそうなので駅前の通りにもどり。大通りを渡って佃煮屋の『鮒秋』で贈答用の佃煮の詰め合わせを購入。『トウフショップ むさしや』で木綿豆腐2丁。電車に乗るのでというとしっかり袋を2重にしてくれた。「ありがとう、おかみさん」。
 4時を過ぎて、オヤジがかねがね行ってみたいと思っていた秘密の居酒屋を目差す。店名は伏せるが川本三郎ファンなら知らぬ人はいないというところ。はやる気持ちを抑えて店の前に立つと暖簾が出ていない。しかも新築したのか店が新しいのだ。悲しい気持ちをいっぱいにして北千住駅にもどるのだ。
 このまま帰るなんてオヤジ魂が赦してくれようか? 串カツの『天七』でレバーと若鶏、酎ハイ1と酒1で潔く地下鉄に下りる。と、忘れ物。『あちこちや』までもどり、自慢焼き5つをお土産に買う。この店、焼きそばやアイスクリームもあるよう。
 しかし北千住には惹かれるところ多し。ここはオヤジのアルカディア、桃源郷ではないだろうか? 現世にはもどりたくない。そんな気持ちを抑えつつ、味気ない我が家に帰ってしまうのだった。


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http://www.zukan-bouz.com/

 いつものように中央線に乗ろうと改札を通ろうとして、立ち止まってしまった。せっかくこれだけ早く終わったのだから「無駄歩き」しないのがおかしいと思い始めたのだ。しかしここまで来てしまったら、どこへ行けばいいのだろう? 考えがまとまらないままに千代田線新御茶ノ水駅の長すぎるエスカレーターを下りる。こんなときには160円のチケットを買うに限るのだ。
 そして決めたのが北千住に行くこと。これは東京都中央卸売市場足立市場に行こうと思っているのだが、その千住という街が気になっていたのだ。しかし4時を回ってしまっている帰宅後も雑事は待っている。ちょっと時間が心配な旅である。新お茶の水駅から町屋駅までは10分ほど。ここから京成線に乗り換える。町屋駅周辺には不気味な高層ビルがあるものの、なんだか魅力的な店が多そうに思える。
 面白いもので京成線に来ると東京都都心、西部とは人種が違ってくる。これが下町人とでも言えそうな人がやたら目に付くのだ。面白いのは街行く娘達のファッションがまったくトレンドに乗れていないこと。これなら地方都市の方がトレンディである。
 町屋駅から千住大橋にはほんの5分ほどで到着した。夕暮れ迫る隅田川というのはどうにもオヤジを悲しくさせてくれる。千住大橋駅で下りる人はいたって少ない。駅を出るとだだっ広い日光街道となる。長い信号待ちをして渡って、人っ子一人いない路地を抜けるとここが北千住の繁華街に通じる旧日光街道である。

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 これが誠に薄暗い道なのだ。すれ違う人の顔すら判然としない。こんなところで幽霊にでもあったら恐いだろうな。そんな闇の中に見つけたのが和菓子屋さん。店名は可愛らしい『折鶴』。こんな店って大好きなんだよね。当然、ここでふぶき1個90円を買って、また闇を光に向かって北上する。

 ほどなくやや広い道を渡ると俄然賑やかになってきた。それでもここは決して21世紀の東京ではない。そこここにある店の多くが未だに昭和のまま。しかも昭和30年から40年代初めのままではないか?
 この通りにはうまそうな豆腐屋がある、手焼きせんべいの店、また薬局のある薬屋、「きもの帯 田中屋呉服店」。そして見つけたのが小さな佃煮屋である。佃煮とくると入らざるおえないではないか。

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 がらりと引き戸を開けて入ると、木枠の陳列台に塩昆布、昆布の佃煮、いかあられ、でんぶなどが並んで100グラム380円から700円くらいで手頃だ。ここ『鮒秋』で佃煮を買い込んで旧甲州街道に出るとすぐ広い通りに出て右手に北千住駅が見えた。
 朝食から、なにも食べていないので手頃な店を探す。これがなかなか見つからない。ラーメン店を見つけたと思ったらチェーン店だったり、立ち食いそばもないし。それで少し路地を入って探していて見つけたのが「関西風串カツ 天七」の文字。長いこと串カツを食べていないな、と思ったのがいけなかった。足が勝手に暖簾をくぐってしまって手が勝手に引き戸を開けてしまったのだ。どうしたんだ手も足も今日は飲んではいけないんだぞ。と思う間もなくカウンターにアルミの皿と四つ折になったふきん。
 しかし、久しぶりの串カツのうまいこと。どうして酎ハイまでうまいんだろう。レバー、アジ、若鶏、豚カツにイカと後は忘れてしまった。ずっぽりとソースに浸した(二度漬けがダメなのは当然)カツと大関の2級酒(いまではなんというのだ)、これがまたうまい。そこに生のキャベツを食って、締めにもう一度レバーカツ。酎ハイ1ぱいにお銚子3本、こんなことは忘れてしまえばいいのだ。

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 しかし北千住はいい街だったな。千代田線大手町で乗り替えている内に酔いはきれいにさめたし、北千住での暖かな思いも冷えてしまったのだ。残念無念。


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