魚貝類を探す旅: 2011年1月アーカイブ

公設市場が見つからなかったわけは、思ったよりも小さかったためだ。
いきなり入らないで一回りする。
一回りと言っても至って4辺は短い。

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国際通りから公設市場に来て、対面に鰹節を売る松本商店がある。
「ちょっと見せてください」
と鰹節の山を見る。
やはり荒節でもなく、当たり前だけど本枯節でもない。
独特のあまり乾燥の度合いの高くないものだ。
「どこで作ってるんですか」
「昔は沖縄でも作ってたんですけど、今は鹿児島ですよ。枕崎。特別に作ってもらってるのよ」
この店の方がとても親切だった。
面白い、例えばモーイなどをいつも持っている乾物を売るオバアがいるのだと連れて行ってもらった。
残念なことに風邪を引いて出てきていなかった。
改めて松本商店の方に感謝いたします。

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松本商店の前に乾物店があって、こちらも面白いのである。
海人草(マクリ)、エラブー(エラブウミヘビの燻煙して乾燥させたもの)、モーイ(カギイバラノリ)、アーサ(乾燥ヒトエグサ)がある。
沖縄産のヒジキがある。
あるのは当たり前だけど、改めて見るとやはり違うのである。
実は今回の旅の心残りであるものが、この乾物店で買い切れなかった食品の多すぎることだ。

コンブ類も多い。
その多くが釧路産ナガコンブ。
一軒の乾物店の店内に入り、在庫など見せてもらう。
少ないながら日高昆布(ミツイシコンブ)、竿前昆布(マコンブ)もある。
でも中心はナガコンブなのであることが、確認できた。
見知らぬ怪しい旅人なのに、在庫の段ボールをあけて見せてくれた乾物店様ありがとうございました。

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ターンムがあるが、総てゆでたもの。
フーチバー(ヨモギ)、ウンチェーバー(エンサイ)、ゴーヤー(ニガウリ)、チデークニー(島ニンジン)、ハンダマ(スイゼンジナ)。
青いパパイヤがあり、熟したのは「フルーツパパイヤ」というのだ。

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売っている味噌だって、沖縄らしくていいのである。
麦糀味噌が多い。
宮古島で作られたものが多い。
白味噌に「イナムルチ」とある。
これは
イナムルチ(イナムドゥチ)、すなわち具だくさんの味噌汁用の白味噌である。
街のあちらこちらでもやし(マーミナー)の根と豆を取っている光景が目に着く。
沖縄でもっとも目にする野菜はフーチバーでもなくチシャでもハンダマでもなく、マーミナーなのだ、と思った。
総菜店がメチャクチャ面白い。
全部買って帰りたい。
スターフルーツなど熱帯の果実類も多いが、今回はそこまでたどり着けそうにない。

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那覇に到着したのが11時前。
なんとなく通りを歩いて歩いて、公設市場周りから太平通りというところまで行き着き、また公設市場前に戻る。
いざ公設市場に入ろうかと、時計を見たら2時近い。
市場に入る前なのに、かなり疲れ果ててしまっているのだ。


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書き忘れたのが、ご飯のこと。
白飯、赤飯、玄米の3種あって、選べる。
「沖縄らしいのは?」
「赤飯だね」
白いご飯が好きなのだけど、素直に赤飯にする。
とにかく「沖縄らしいものを食べる」のが旅の目的なのだから。
料理が来る間に飲んだお茶がなんだか変だ。
なんだろうと聞いたら砂糖入りの紅茶だった。
これは一種の親切心なのだろうね。
なにしろ「砂糖入り」なのだから。
ふと見回すと、意外にカツ(フライ)を食べている人が多いんだななんて、うらやましくなる。

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さて、やってきた定食はもりだくさんであった。
左上から天ぷら、スヌイ(オキナワモズク)のスーネー(酢の物)、ラフテー、赤飯、中身汁(ナカミヌ シームン/ウチナーグチの母音はa、i、uの3つであることが多い)、マグロ(キハダマグロ)の刺身酢みそ和え。

天ぷらはナスやインゲンに魚とエビ。
特徴的なのが厚い衣と、白身魚のあること。
白身魚を天ぷらにするのは、九州の一部と沖縄だけではないだろうか?
衣はもこもことして、つけ汁は薄味。
このもこもこした天ぷらは沖縄風だが、つけ汁は余計に思える。
想像だが、本来沖縄では衣自体に塩味がついており、物足りなかったら、醤油(これも本来のものではない)、もしくはソースをつけていたのではないか?
エビは冷凍ものだろうけど、魚も野菜も地のものだろう。
魚の種類は不明だ。

スヌイを飛び越えて、ラフテーはゆでた豚三枚肉をだし、砂糖、醤油などで煮上げたもの。
ここのものは決して箸で切れるようなものではなく、ほどよく硬い。
なかなかいい味なのである。
甘さもそんなに強くない。
上品な味わいである。

中身汁は豚の腸、胃などを湯がき、よく掃除して澄まし汁の具としたもの。
だしはおだやかで、はっきりしない中庸な味わい。
中身には微かに臭みがある。

マグロ(キハダマグロ)に酢みそは、なんとなく見過ごしてしまいそうだが、沖縄本来の形だ。
気温の高さのために魚が腐りやすい、とれる魚があっさりした脂の少ないものが多いので、刺身は醤油ではなく、酢みそで食べていたようだ。
またたった4日間の沖縄滞在であったが、小売り店で見かけたマグロ類はキハダマグロ、ビンナガマグロの2種だけだった。
これにクロカジキが加わる。

最後に赤飯だが、関東などでいう蒸したあずき飯(ささげ飯)ではなく、炊飯したものである。
かなり柔らかい。
沖縄のご飯は赤飯、古代米、玄米、白飯ともに少し柔らかめであるのが特徴らしい。

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そして単品で注文したグルクンを見てみたい。
尾鰭の斑文からクマザサハナムロ(ウクーグルクン)ではない。
ササムロ(ヒラーグルクン)でもない。
形態からイッセンタカサゴでもないので、カブクヮーグルクンであるタカサゴかニセタカサゴのどちらか。
牧志公設市場を見て回った限りではニセタカサゴではなく、タカサゴであるらしい。
塩味が非常に薄く、物足りない。

素材ばかりに意識が集中して、味のことを書かないで終わりそうだが、実はあまりうまいとは、この時点では思えなかった。
汁も天ぷらも、酢の物も、どちらかというと薄味。
ぼんやりした味なのだ。
でも何軒か食堂を食べ歩く内に、このうすぼんやりした味こそが沖縄らしいのだ、と気がついた。
そして最終日になって、この味に慣れっこになってしまうと、このぼんやりが、おいしいと思えるようになってしまたのである。

値段/天ぷら定食1000円、グルクン500円


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先週(1月12日現在)偶然、ラジオで聞いたのが花笠食堂のこと。
ラジオ族なので真夜中から、NHKのラジオ深夜便、ニュース、朝はニッポン放送かTBSラジオを聞いている。
宮古島出身の垣花正というパーソナリティが「庶民的な食堂でおいしいんですよ」と話していたのだ。

というわけで、牧志公設市場周辺をひとまわりして、Tシャツなどを売ってる店先を掃除していたオバチャンに、場所を聞く。
「そこそこ」
指さす方向、来た方を振り向くと、探すまでもなく、そこに大きな看板があった。
市場周辺は国際通りに近いほど観光的。
通り沿いの店は「いかにも」というもので、沖縄人(かな)のたくましさは感じるものの、ボクのように「目的を持って歩く人」には無関係である。
が、その中に燦然と輝いていたのが〝花笠食堂〟の看板。

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「大丈夫か?」とは思ったものの、腹の虫が「待てない」と言っている。
通り沿いのショーケースの中も見ないで(つきじろうする人としては失格だな)、とにかく路地の奥にある店内に入る。

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思ったよりも広く、右手に厨房、椅子席が正面と、右手にあり、奥には小さな座敷がある。
入り口近くに高校生らしい集団がいて、一安心する。
店は6割方席が埋まっている。
今日はこの冬(?)いちばんの冷え込みだそうで、観光客はほとんどいない。
店内は、ほどよくうるさく、ほどよく活気がある。

トンカツやフライ盛り合わせ、カレーにソーキそばもあり、かなり後ろ髪を引っ張られながら、品書きもろくに見ないで(これも、つきじろうする人としては失格だよな)、グルクン唐揚げ定食に、天ぷら、みそ汁を注文する。
注文を聞いてくれたオバチャンは、「なかみしるか、いなむるちー」と聞いてきたので、単に知っていたというだけの理由で、「なかみしる」。
「ぜんざいか、酢の物か」と聞かれたので「え? なぜ、ぜんざいなのか?」と思いながら酢の物にする。
「天ぷらのほうどうするか? いなむるちーでいいか?」というのでわけもわからず、うんうんとうなずきながら不安が浮き上がる。
なぜ、同じ事を何回も聞かれるのか?

ここでやっと気がついたのだけど、沖縄では単品という概念が薄い。
グルクン、天ぷら、みそ汁は歌舞伎でいうところの看板役者のようなもので、その後ろには一族郎党がいることになる。
知っていたのに、やってしまったわけで、オバチャンも気がついたようで「ひとりか?」と聞いてきた。
「ハイハイ」
ふと回りを見ていたら大きな丼が目に入って、あれがみそ汁なのかも知れないと、「あのー、みそ汁やめます」
やっと沖縄に来たという実感がわいてきたように思う。


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沖縄記 02

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モノレールを降りた時点で11時(12日)を回っている。
このモノレール、そして空港から見える限りの街作りは、無機質で熱帯、亜熱帯の持つ有機的なよさがまったく感じられない。
まことにこの国の街作りをやっている人間は無能、ようするに能タリンなのである。
ちなみになぜモノレールにしたのか?
これ本当に工費に見合う効果があるんだろうか?

思ったよりも寒く、あまり東京と気温差はないように思える。
美栄橋を降りて沖映通りを下るとすぐ、ジュンク堂を見つけ、地下にコープがあるのを発見。
ペット飲料を買いがてら、店内を回る。
魚売り場には、やはり沖縄ならではの魚が並ぶ。
ただ、ここに異なものを発見。
それは後ほど書くとして、熱帯型の白身とは真逆の魚である。
削り節のコーナーが充実している。
もっと充実しているというか、缶詰売り場のほとんどがツナ缶って面白いね。

コープから公設市場に向かっていると、電気ストーブを段ボールから出している女性がいる。
なんとなく見ていると、「寒い、寒い」と足踏みをして、両手で足をすりすり。
「これで寒いんですか」、「あんた寒くない」、「ええ」。
雨がしとしと、まるで晩秋とか菜種梅雨の頃を思わせる。

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ほんの10分足らずで国際通りにぶち当たる。
正面に見えるのが市場の入り口であるようだ。
信号を渡り、アーケードに入ると、途端に不思議な臭いが漂ってくる。
匂いと書くべきだろうか、後ほどこれがムーチーの匂いであることが判明する。
サンニン(月桃)の匂いである。

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街のそこここでムーチーが売られている。
公設市場を通り越して、唐揚げなど総菜を売っている女性に「いい匂いですね」というと、「おいしいよ」。
たぶんスンシーイリチー(シナチクの炒め煮)らしいものを差し出して言う。
「まだ当分那覇にいるので、土曜日に買いますから」というと、なぜかムーチーを2つくれた。
まことにかわいらしい女性で、たぶん半世紀くらい前はすごい美人だったろう、ねー。
ちなみに昨日は旧暦の12月8日で「ムーチーの日」であったらしい。

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市場といっても食品だけではなく、むしろ衣料品の方が多いのだ。
その色合いはまさに沖縄そのもの。
化繊ではあるが紅型(びんがた)の文様、色合いを思わせるものがある。
これぜひ買って帰らねば。
総菜を見ながら、腹の虫が騒ぐ。
旅に備えて、昨日の夕ご飯から抜いてしまっている。
さて沖縄で初飯といきますか。


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沖縄記 01

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1月12日、羽田発。
那覇には午前11時前に着いた。
ゆっくりゆっくり走る「ゆいれーる」で美栄橋駅に。
駅の階段を下りると小雨降る沖映通り。
南に下ると市場がある。

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沖縄那覇を中心にした旅の始まりだ。
3泊4日の短い時間ながら、できるだけ濃厚に沖縄を体感したい、この重苦しい旅が、この一見なんの変哲もない通りから始まる。

この旅はハードだった。
街歩き、港歩きよりも、ホテルに帰り着いてからの情報整理が、またきつい旅であった。
持ち帰った食材はたぶん30キロ近いのではないか?
宅配便2つ。
手荷物は手がちぎれそうだった。

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さて、最初に東京に帰り着いてからの話をするのも変だが、15日の夕方、我が家に入ったときには、限界を超えていた。
それで、なにはともあれ「かちゅー湯」を作る。
農連市場で買った削り節を丼に入れて、宮古島の味噌を加えて熱湯を注ぐ。
ネギが無かったのでショウガのしぼり汁を数滴。
沖縄の味わいというのは、この「かちゅー湯」にあるのではないか?
とりとめのない、鈍角的な味わい。
このゆるい、おおらかで優しい味わいが、沖縄だ。

さて、さて、沖縄で撮影した画像は2120枚。
帰宅後の撮影枚数は、この倍くらいにはなるだろう。
そして我が家にある沖縄本、那覇で買い求めた本で机の上に小山を作る。
戦いは、これからだ!


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沖縄を旅して

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長い間沖縄は、ボクの最大の課題だった。
課題とは、一歩も踏み出せない未知の分野という意味合い。
今回の沖縄行で、ボクの一分野として納まったことになる。
これで47都道府県総てがボクの分野となったことになるが、けだし沖縄の最初の一歩が大変。

沖縄の港で見る約半分の種が同定できない。
属までたどり着けるのがやっと半分かも知れない。
科までならほぼ100パーセントたどり着けるので、じっくり取り組めば、時間はかかるが克服できない難関ではない。
が、帰宅後の今現在、悪化してしまった首の頸椎症のためもあって、茫然自失状態となっている。
「がんばらなくっちゃね」

さて、本日も仕事が入っている。
旅日記が綴れるかどうか、不安だが、「沖縄の旅」の始まりなのだ。

最後に、旅の計画を立てていただいた、チゲチゲちゃん、沖縄県水産公社平田さん、与那城町漁協安次富組合長、参事伊計さんに感謝。
また、セリキャクさんにはよいアドバイス、沖縄の食に関するアドバイスをいただきました。
沖縄の皆さんに感謝、まことにありがとうございました。

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画像は沖縄三大高級魚のひとつ、マクブ(シロクラベラ)


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