市場図鑑・市場案内: 2007年6月アーカイブ

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 入り口から見えるのは包装資材の店。そこから右手に行くと水産物棟になる。水産棟には20軒ほどの仲卸が並び、そこを抜けると競り場がある。冷凍マグロが残るだけで、そこにはひとっこ一人いるわけではない。

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 まずは端から仲卸を見て歩く。先週から魚の少ない状態が続いており、どの店も平凡なものばかりが目立つ。ただし埼玉一の水産物市場、さすがに仲卸はみな大きく、質のいいものが並んでいる。
 なかでもマナガツオやそげ(ヒラメの小振りのもの)、マゴチなど多彩な品揃えの『山中水産』、青森産の見事なきんき(キチジ)、宮城県産もうか(ネズミザメ)のホシなどが置かれていた、これも大型で品数の多い『山本水産』などが目に付いた。また八王子では見ない新潟産の「花もずく」というのを見つけて本日最初の買い物をする。この『山本水産』さんは親切である。

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 ざっと仲卸を見た限りでは、細々と寿司ネタなど特種を扱う店が多く、箱物で量を動かす店が少ないというもの。またマグロ屋が多く、そこに並ぶものはかなり質が高い。

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 マグロ屋もそうだが、鮮魚店でも明らかに一般客を意識しての商品が置かれている。川越市場は原則として一般客には売らないという方針だと言うが、9時を回ったところで、近所のオバサンらしき集団、また市場グルメの男性客など少しずつだが目につくようになってきた。

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 川越ということで淡水魚ウナギなどの専門店を探した。これがどこにも見あたらない。唯一『柴源』でウナギを見かける。

 やはり川越では市場の特徴らしきものは見つけられなかった。これなど東京の足立市場と共通のもの。ここには超高級魚を扱う店があるわけでもなく、また激安を売り物にする店も見あたらなかった。

埼玉川越総合地方卸売市場 川越市大袋650
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 埼玉県というのは広大な土地、そして膨大な人口を誇る。当然築地に匹敵する卸売市場があってもいいはずで、期待を込めて調べてみたのである。すると水産に関する限り、卸売市場はさいたま市大宮と川越の2カ所しか見あたらず、どちらも規模からするとたいしたことはないらしい。
 蛇の道は蛇とは言うけれど、市場人には各地の市場に精通する人が多い。そこで「川越の市場を知っている人はいますか?」と八王子各市場で問うと、思った以上にたくさんの情報が舞い込んできた。まずは漬物屋である八王子総合卸売協同組合「十一屋ジャパン」は川越に店を出している。マグロの「カネトモ」は八王子綜合卸売センターを閉店して川越に統合したばかり。
 その話をまとめると、
情報1/規模は小さいけど、競り場がある。「魚屋」はがんばっているよ。
情報2/青果市場と併設している。
情報3/一般人でも入場しやすい。気軽な市場となっている。
情報4/市場内の飲食店はまずい。
情報5/八王子から45分で着く。
 ということになる。

 それで国道16号を北上して多摩川を渡ったのが6時半過ぎのこと。ここまではスイスイ。立川からの道にぶつかり左折。ビックリしたのは曲がった途端に大渋滞であったこと。このほんの数キロを30分近く費やして、右折。ここから青梅線を超えるまでがまたまた渋滞中なのである。
 
 イライラしながら聞くラジオからは社会保険庁とコムスンのことが流れてきている。しかし文化人という人たちは「どうして天下り役人が信じられない給料と退職金をもらえるのか?」、「この怪しい仕組みを誰が作ったのか?」、「国の権限で各法人(この団体はどうやってお金を得ているのだろう? なんのためにあるんだろうね)の給料や退職金を非常に低く抑えることは出来ないのか?」に言及しないのか。今のこの瞬間にも無駄金がたくさん無駄に支払われているに違いない。きっとその根本的な疑問を投げかけるというのに文化人や政治経済の評論家は人生の赤信号を感じるんだろうね。この責任は自民党や旧社会党にある。とにかく過去の社会保険庁長官は人でなしだ。最低の人類だ。カエルツボカビ病にでもなってしまえ! と渋滞にいらつきながら思う。

 福生の米軍基地周辺までくると道路はすいていて、飛行場の上には青空が広がっている。つかの間の快適なドライブで入間まで来て、時刻は7時を回る。「なんとか7時半には市場に着けそうだ」と思ったのが甘い。狭山市に入ると16号線は突然2車線に狭まり、またまた渋滞に陥ってしまったのだ。左右を見ると、ここらあたりは道路拡張の最中であるらしい。

「大袋新田の交差点を左に曲がるんです」というのは「十一屋ジャパン」の若だんな。「あのなよく聞けよ。右手にロッテの工場があってその先を右だぞ」とは「カネトモ」の琴矢さん。その大袋新田もロッテの工場もぜんぜん見えてこない。道が4車線となり、やっと大きな工場、大袋新田交差点を見つけたときすでに8時となってしまっている。
 左に曲がると左右に人家はまばら、やがて田園地帯となり、左手に森が見える。この緑の中に市場の標識があって左折、ほどなく市場の駐車場になる。

 さてここで川越綜合地方卸売市場に「川越」とはあっても、この大袋新田は「藏の街川越」とはまったく別の場所だというのを書いておきたい。川越市に属しているものの大袋新田は狭山市に近く、たぶん古くは一面の田園地帯であったはず。16号沿線には大規模店舗や工場が並び、入間川に向かうと今でも田畑や森がある。埼玉県の田舎町の典型を見るような、なにもない地域でしかない。

 市場の建物の前、広大な駐車場に陽炎が立っている。クルマを止めたのが8時5分、コンクリートが強い日差しに熱気を跳ね返している。非常に暑い。
 まずは建物を撮影する。しかしこの建物のなんと無機質なことか。どう考えたらこのような気持ちの悪い形や色合いとなるのか? 近年の市場建築での設計のあり方に疑問符をいっぱい投げつけたい。もっと外観にも内部構造にも工夫は出来ないのだろうか? この小規模な地方市場の建物にも豊洲市場の未来図を見てしまう。築地がこんな不気味な建物に変造するのは耐え難いと思うし、また現築地市場建築の美しさを改めて思い知るのだ。

 真夏のような日差しから建物のなかに逃げ込むとひんやりと気持ちがいい。とりあえず飛び込んだのは青果仲卸の区域であるらしい。

埼玉川越総合地方卸売市場 川越市大袋650
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 場内から隅田川方面に歩くと大物と呼ばれるマグロなどの競り場がある。この上に全国から魚貝類を集めて、もしくは荷を受け取って競りを主催する荷受けの事務所がある。そのひとつが大都魚類なのだが、築地でお買い物の後は、その事務所を借りての反省会となる。
 参加者それぞれに何を買ったのか、また買えなかったのかなどとともに自己紹介をしていただく。
 この反省会はいつものごとくざっくばらん、思ったことをしゃべっていただき、不肖私が買い求めた魚の解説をするという形式にさせていただく。ここでもMCさんはかなりコンデンスであるのに、買い物は「タント」するんだというのに驚き、そして料理研究家のMRさんのスペインやポルトガルでの経験談がなかなか面白い。Hさんの関アジの話、ヒモマキバイさんの研究者らしい会話も光るところありであった。
 このとき尻高鰤さん、ボクの魚評を聞き取って、「ぼうずコンニャクさんは何を食べてもうまいっていうからな」と、まさにボクの弱点を突いてくる。そう言う意地悪はやめましょう。なにげに隣のつづきさんも嫌な笑いをしている。冗談じゃない、ぼうずコンニャクの座右の銘は「真実一路」なんである。
 この大都魚類での反省会は買い物した魚貝類を分けたり、また見せ合ったりというのもあって、これからの「築地土曜会」の恒例となりそうだ。

 反省会の終了は11時近く。築地正門近くの「市場厨房」という店に移動して、後は詳しくは書けないのだが、所謂白昼の酒盛りとなる。当然、えらい騒ぎとなる。今回の参加者は「いわゆる。ラジカルに、素直に、真面目に考えるに。普通の、まっとうな平凡な社会人なのかな?」と疑問が浮かぶほどに楽しい時間であった。
 歯に衣きせぬMRさんによると、この店、「うまくない」ということであった。確かに今回店内で食べた中でいちばんうまかったのが、『翔友』で買い求めためじまぐろの中落ちを、MRさんが大胆にもその場で醤油、穂紫蘇、紫蘇の葉などと和えたものだった。これはさすがに料理研究家の技の冴えなのか、めじまぐろがよかったのかかなり酔っぱらっていて「わかりません」。

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これがMRさんが作った「めじまぐろの中落ち、醤油和え」。ビニール袋のなかでムニョムニョしたので決して見栄えは良くない。でも今回いちばんうまかった

 後々思ったことなのだが、ひょっとしてお店には迷惑だったかな。はたまたひょっとして我々、かなりうるさかったかも? ご免なさいね「市場厨房」さん。

 店を出たらいつの間にか「沼津ツアー」を開催することになっていた。この企画、ややシニカルなHさんから出たことらしい。そこにMRさんや鮟鱇さん、Sさんなどが乗っかって、どんどん日程まで決めかねない事態になる。とにかく酔っぱらった勢いで沼津の菊地利雄さんにケータイをかけたら、だんだん具体的に進みそうである。これは瓢箪から駒というヤツだろうか? 面白そうなのでやってみよー!
 次回の土曜会は、土曜日曜を利用しての沼津はとバスツアーだ。

 さて、帰り着いていきなりダウンとなった。考えてみると金曜日も深夜までいろいろやっていたのだ。睡眠時間は3時間ほど。それからの築地のグルグル回りで五十路の身には応えた。当然、夜は酒も飲まずにそうそうに寝てしまった。実を言うと、この日、地方から送られてきた魚貝類の撮影があって、腰痛に首筋まで痛み出して断念する。1950年代生まれは、そろそろ息切れ寸前である。
●今回、遅刻した方もあったようだ。次回からボクのケータイ番号を必ずお知らせするように致しますので、これに懲りないでの参加をお待ちします。


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 まだ各駅停車の中央線に乗って築地を目差す。新橋からのバスで築地に到着して驚いた。そこには海外からの観光客がわんさかいたのだ。その目差すところは、場内、そして所謂「築地の味どころ」である。まず腹ごしらえに入った『喜久』でも外人さんがかわるがわる店内をのぞき込む。カウンター内の女将さんが「ラーメンってヌードルだっけね」なんて構える姿がおかしい。腹の虫を納めて店を出ると、2軒先のすでに築地では“観光客の行く店”となった『大和寿司』には行列が出来ている。このとき時刻は6時を回ったところ。当然、本日の仕入れはまだのはずだ。とすると早々と並んでも昨日のネタを食うこととなる。

 場内を一回りして鮟鱇さんと合流、波除神社に。境内にはひっそりと紫陽花が咲いている。いつものように5円のお賽銭(裕福になったら500円にします神様)で手を合わせる。これは明治政府が作り上げた無粋な神社の序列、また神道とも関わりのない、宮沢賢治のえがくような「地の神様」への祈りである。間違っても彼の右傾化の顕著なこの国の愚かな首相と同じしないで欲しい。「このまま築地が末永くここにありますように」。境内で待つ間にも場内へ目差す人多々。鳥居の前にかなり幅広の男性が立っているのを見いだす。
 この巨漢が境内に入ってきて「ぼうずコンニャクさんですか?」と身体に比して小さすぎる声を鮟鱇さんにかけてくる。この方、仲野水産の鳥飼さんである。鳥飼さんは今回の参加者であるとともに、助っ人案内役でもある。ここでいろいろ打合せ。そのうち参加者がぽつりぽつりと集まってくる。時刻は7時半を過ぎて簡単な説明の後、場内に入る。全員揃っていないのであるが築地場内を見て回る限り、時間は貴重である。待っているわけにはいかない。遅刻した方には申し訳ない。(注/次回からボクのケータイ番号を返信メールに明記することにする)
 場内は表側の二筋を省略して3筋目から歩く。総勢10人あまり(これはちょっと多すぎた。反省)で2組に分かれて、仲卸の店にあるものを点々と説明しながら、見ていく。後々、買い物のアドバイスをしたり、また参加者がついてきているか、と振り返りながらの場内歩きがいかに大変であるかは帰宅してから思い知ることとなる。

 さて、本日の場内歩きの目玉になるのはこの季節には比較的珍しい「鬼えび(イバラモエビ)」、オオミゾガイ、めじまぐろ(クロマグロの子供)、イサキ、カツオ、イワガキ、ウニであることは下見でわかっていた。
 そのイワガキを最初から探していたのがMコンデンスさん(これはボクのつけた仮名、以後MC)、ありとあらゆる魚貝類の旺盛な興味をぶつけてくる、Mレギュラーさん(これも仮名です。以後MR)。この二人の女性陣が今回の買い物ツアーをどんどん引っ張って行くことになる。また冷静で観察力大、のHさん、穏やかなSさん、明らかに研究者を思わせるWさん、何を欲しているのがつかめないKさんなど、なかなかメンバーは多彩である。(男性の方、総てお名前・個性を覚えられなかった。しかも、ぼうずコンニャクは人類自体の名を覚える能力を欠いているので、女性も含めて自分流の符号にしていしまうクセがあることをお断りしておく)
 さて一筋目から、参加者の方達は築地場内の多彩な魚貝類に目を奪われてしまったようである。たぶん初めて場内にはいると、目に飛び込んでくる魚貝類は凄まじく膨大で、「わけのわからん状況に陥る」のではないか、MRさんなど料理のプロであるだけに初っぱなから「めくるめく」事態となっているのがはっきり見て取れる。エビやクジラの『登美粋』で11000円のぼたんえび(トヤマエビ)などを見て、パック詰めのマグロなどの説明をしていく。この途中で千葉の海人つづきさんが加わる。つづきさんは明らかに助っ人なので、この意外な飛び入り参加はありがたい。

 ここでなぜ土曜日に築地場内を歩くかの説明をする。築地場内に買い出しに来るプロたちの多くが飲食店である。スーパーや大型店舗のバイヤーも仲卸の顧客だが、仕入れのためにいちいち場内を歩くことはない。その飲食店のほとんどが日曜日が定休日なのである。とすると土曜日に仕入れる可能性は少ないというわけだ。だからいちばん商品が多く並んで本来混み合うこの時間帯も人影まばらで歩きやすいし、普段はプロ相手の仲卸もこの日だけは一般客に比較的優しく接してくれる。
 ついでに土曜日以外では不定休の水曜日が狙い目となる。卸売市場は日曜日と、月に2,3回だけ水曜日が休み。どうして水曜日を休みとしたかというと、中日水曜日はもっともお客の少ない日なのだ。
 だから開市の水曜日、土曜日が一般客の築地お買い物日和となる。

 今回の市場巡りでは何カ所かの仲卸を拠点とすることにしてあった。それが『大音』さん、『翔友』さん、『近長』さん。驚いたことに、こんな目玉の店を作らなくても、ダブルMさん達はどんどん積極的に買い込んでいく。意外に冷静そうなHさん、Wさん、Sさんも同様で今回の場内歩きは初めて上京してきた中学生が原宿竹下通りを歩くようにノロノロと進まない。
 この団体がいちばん興奮したのが『翔友』でのマグロ半身買い。ここに大船渡産の本まぐろ(クロマグロ)のめじ(マグロの幼魚を差す言葉)の半身があって、これがなかなかいいのである。これを会のメンバー8人でまとめ買いし、お店の人にお願いして解体してもらう。言うなれば即席の解体ショー。ここで大活躍したのがMRさんである。

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 いつの間にか中落ちをかき取っているではないか。この人、料理研究家だけあってその小気味いいこと、さすがである。この支払はHさんにお任せする。今回この「人数の多いことをいかしてまとめ買いする」「とりあえず、代表者が支払、後で伝票を見て割り算で精算する」というのが場内ではとても便利なのを知ることとなる。
 そして後一筋を残して時刻は9時近くとなっている。ここで剥きタイラギが欲しいというSさんのリクエストに鳥飼さんが行きつけの店に案内してくれる。そこから場内には少ない乾物を扱う『近長』へ。
 ここ『近長』で買い求めるのは当然、名物の桜海老など12品目入った「梅ちりめん」である。これを味見するや、ほとんど全員が「買いたい」と手を上げる。

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 そう言えば、今回の築地買い物案内では「買いたい人手を上げて」というのがいいものを見つけたときの恒例となった。ボクもここでちりめんを買い、鮟鱇さんは名品だというサラミソーセージを、また上等の日高昆布を買った人もいた。『近長』には看板おじいちゃんがいなくて残念であったが、ご主人、美人の奥さんが親切に対応してくれた。『近長』さんお騒がせしました。

 結局場内を出たのが9時半近くとなっていた。今回の反省点はやはり少し人数が多すぎたこと、また予め、欲しいものをもっと詳しく聞いておかなかったことである。「ああすればよかった。こうすればよかった」と後悔の多い土曜会となったが、皆さん楽しんで頂けただろうか? また今回参加出来なかった、または遅刻された方は次回をお待ち下さい。それと多摩地区にお住まいの方はもっと頻繁に八王子市場案内を致します。申し込みは随時、メールにて。


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