市場図鑑・市場案内: 2006年7月アーカイブ

 いったい何時間眠っていたのだろう。目覚めると8時前。さっきトイレに起きて、5時過ぎだなと思っていたら、もう強い日差しが外から射している。姫を起こして市場に向かう。時間帯を考えると駐車場があいていないだろうと思い自転車で甲州街道に出る。

 八王子魚市場には8時半。自転車をとめて場内に入ろうとしていたら顔見知りの魚屋に「飲み過ぎだろう」といきなり言われる。そして場内。
 鈴木さんのところで磯つぶ(エゾバイ)を少し。サンマは値を下げてきている。そして特種にはギンポ。『海老辰』まできたらここにもギンポがある。ギンポの入っている箱にはパッチも業者名もない。当然産地がわからない。

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 八王子魚市場から中央線のガードをくぐり八王子綜合卸売センターに。水産棟では『八王子淡水(ウナギ屋)』が疲れた顔をしている。『南京軒』の前に自転車を止めて、八王子総合卸売協同組合に入る。
『光陽』でコロッケ定食、姫はラーメン。光陽のお母さんに「昨日寝てないんでしょう。でも食欲があるんなら大丈夫だね」と言われる。

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激安市の八王子総合卸売協同組合。ここは比較的人の流れの少ないところ。肉屋が並ぶ通りは身動きできない

 八王子綜合卸売センターにもどり八王子一値段の安い肉屋『平成食品』でダウンしていると、ケータイ。
「あのさ、ケンちゃんのところにいるんだけど、誰かがカサゴをくれてるよ」
 八王子小宮の『スーパーイシカワ』さん。
 20センチ上のユメカサゴがあって、どうも八王子のそば屋『まつ浅』さんからのプレゼントであるようだ。「ありがとう」。

 八王子総合卸売協同組合『河村青果』でシロレイシとスダチ5個。
 八王子綜合卸売センター『平成食品』で豚ショウガ焼き用ロース1パック500円のところ450円にしたもらう。ありがとう。『高野水産』には松輪(神奈川県三浦半島)からのマサバ。脂ののりは今ひとつながら見事なもの。大きくて850グラムもある。キロあたり800円と格安なので一本。八百屋の『ビックリ屋』でシイタケとショウガ。

 さて帰ろうか、というところで炎天下に出て動けなくなる。姫が「飲み物買え」というのでAsahiの「ドデカミンゴールド」500ミリリットルのペットを買う。姫は最近こればっかり飲んでいる。「男は黙って金を飲め、マカ配合さ」とあり、まあちょっと元気が出てきた。

 浅川の土手にのぼると一面にワルナスビの花。コヤツら、この炎天に生き生きしておる。
 憎いヤツじゃな ワルナスビ 引き抜こうとして返り討ち
 いたたたた棘を気にしながら手を伸ばしたのに人差し指に血がにじむ。

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多摩地区に多いのが北米原産のワルナスビ。これ移入は古く命名者は牧野富太郎

 帰り着いて冷たいシャワーを浴びると眠くなる。居間で「永六輔の土曜ワイドラジオ東京」を聞きながら横になっていたら「掃除の邪魔」だと言われ、パソコン部屋にマットを敷き退去。そのままうたた寝、気がつくと3時過ぎ。
 大急ぎでユメカサゴの撮影。画像の整理、寿司図鑑作成。寿司図鑑はやっと400種達成。ぜんぜん嬉しくない。

 夕食はひとりっきり。最近お気に入りのホッピー黒。肴はゴマフグの唐揚げ、磯つぶ煮、締め鯖、ユメカサゴの焼き切り。後半「新政 純米酒」に代えて録画していた「なんでも鑑定団」を見ていると家族が帰ってくる。ここに楽しいひとときは終わってしまったのだ。

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ユメカサゴの刺身は「皮をつけて」が原則である

 姫が「お父さん、宅急便さん来たようだけど」という。見ると沼津の山丁・菊地さんからの荷物。どうも居眠りしているときに来ていたのだ。
 姫達はベランダに椅子を持ち出している。そう言えばさっきから「ドンドン」となっている。これは花火大会の音だったのだ。家人は「なんでも鑑定団」を勝手にやめてテレビ東京の「隅田川花火大会」を見ている。外からも「ドン」であって、内からも「ドン」なのだ。つまらないこっちゃ!
 ひとりパソコン部屋に退散してたまりにたまった画像を整理保存する。


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 しかし猛暑である。その上湿度が高いのだろうか? 居ても立ってもいられない。そんな日々、市場は意外や活気がある。
 特に金曜日は凄かったな。『高野水産』は人人人人。とてもじっくり魚を見ている暇がない。この賑わいはまずプロが、そして少し経って一般人が魚を取り合うようにして持って帰る。

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『高野水産』が持ってくる荷で目立つのが福島からのもの。今、原釜であがっている活けだこ(ミズダコ)、マイワシ、丸がに(ヒラツメガニ)。これがあっという間になくなるんだから凄い。

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「ヤ印」から来た丸がに(ヒラツメガニ)。小さいのでみそ汁用

 そして八王子総合卸売協同組合に回って『やまぎし』に並んだサンマを見たら、やはり虫食いが目立つ。たぶんサンマヒジキムシが大発生しているんだろうけど、値段にも影響しているようで漁業者にも影響が出ていそう。

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 土曜日の八王子魚市場、こちらはサンマがずらりと並ぶ。大きさ事に並んだものを魚屋・スーパーが真剣に選んでいる。

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 また特種にヨシエビとサルエビがあって驚いたことに羽幌産。北海道西部日本海側でサルエビはいいとしてもヨシエビが混ざるのはおかしいのではないか?

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箱は明らかに羽幌からのもの。入れ替えた痕跡もない。またヨシエビが多く、サルエビは少ない。箱にも「ヨシエビ」と書かれている

 八王子綜合卸売センター、『ケン水産』に丸みをおびたいいマアジがあって、これを3本。『丸幸水産』、『やまぎし』などを覗いて帰ってくる。


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 八王子魚市場、入って目に飛び込んできたのが熊本産ハマグリ。これが見た目にハマグリ【北海道南部から九州の内湾干潟などに棲息】には思えず、むしろシナハマグリ【朝鮮半島西部から中国大陸】と思えそうな代物。

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 そこに鈴木さんがやって来て
「これなに」
 これがコタマガイ【北海道南部から九州、朝鮮半島。どちらかというと砂地に棲息。波打ち際などにいる】。石川県産であるという。昨日は八王子総合卸売協同組合「丸幸水産」でも見ているのが、この貝は突然湧くらしいのでこれからの入荷が楽しみ。

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 坂本君とサンマの話。
「今年は脂がないっていうけど、刺身で食べてうまいっすね」
「そうだね。7月のサンマは焼くより刺身じゃなかな」
 考えてみると佐藤春夫の「秋刀魚の歌」は秋の日のこと。北海道から南下して脂がなくなって和歌山県新宮市あたりでとれたもの。これなど脂が抜けたサンマで作られる千葉県の干物、白干しと同じものだろう。サンマを食べるに「脂、脂」と言うのもおかしいのかも知れない。「7月のサンマは刺身がうまい」と考えるといい。

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『源七』にまわると八王子の善さん(八王子の『魚善」)がしきりに淡路島からきた小振りのマアジを見ている。これがキロ/1800円と高い。
「小さくても一本100円はするぞ。一本買ってけ」
 あんちゃんが言う。
「これ小さいけど脂がのってるんだよね」
 善さんの濃い眉毛が思案に暮れて上下している。善さんのところは養殖魚を使わないので、仕入れる魚はいつも魚屋としてはワンランク上のもの。「仕入れたいな」と思っているようだ。
 そんなバカバカしい話をよそにウナギの串打ちが行われている。土用丑の日が近いのだ。

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 八王子総合卸売協同組合『丸幸水産』に寄るといきなりクマゴロウが
「カツオ半身持ってかない、持っていくよね」
 とタダでさえ恐い顔でにらみつける。
「600円でいいよ」
 仕方ないので持って帰る。消費税はオマケしてくれる。一応「ありがと」。

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 八王子綜合卸売センター『高野水産』、『総市』にはサンマサンマ、そして大量のカツオ。八百屋の『ビックリ屋』で大安売りのミョウガをどさっと買う。
 帰り際に、あっちゃんから呼び止められて「見て見て」というので段ボールをのぞき込むと白黒の可愛らしい子猫たち。優しいあっちゃん、子猫を拾ってきては飼い主を探しているのだ。

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●ここで突然であるが猫が欲しい人は八王子綜合卸売センター『ビックリ屋』の、あっちゃんまで


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 やっぱり水曜日だな、という八王子魚市場。でも夏に旬という魚はいっぱいある。イサキにタカベ、神津島からのヒメダイ、アオダイ。そして福島県相馬市原釜「いちまる水産」からのマイワシの見事であること。1匹230グラム、100グラム250円だから575円となる。結構高いね、とは思うがそれ以上に魅力的。マイワシの旬というのは6月から晩秋まで。

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 これを見ていた鈴木さん、
「梅雨鰯だね」
「そんな言葉あるの」
「しらないけど、テレビでやってた」
 考えてみると梅雨の時期からうまくなるマイワシだからあってもいい言葉。でも「梅雨かつお」「梅雨アオダイ」なんでもアリかな。確か「梅雨めじな」というのはあったはず。
 サンマは昨日よりも大きくて虫食いも少ない。これが1本700円。

 八王子総合卸売協同組合『丸幸水産』クマゴロウが「この貝なんて名前」。見るとコタマガイ。そのまま隠してしまう。これは売約済みということ。また新子があってキロ/18000円。
「記念に写真撮っとけば」というので素直に撮影。

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『清水保商店』にはお盆のお菓子があって、やっぱり干物は少ない。嫌な時期になってきた。
 八王子綜合卸売センター『高野水産』にはスズハモ、ハモ。厚岸から真つぶ(エゾボラ)が来ていて1個だけ買う。
 帰りがけに『市場寿司 たか』で無駄話。帰宅する雑木林に大きく育ったタケニグサ、またヤブカンゾウ。どちらにしても、梅雨は明けぬのだ。
●値段は総て卸値です


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 朝方、6時に起きる。外は曇り空ながら雨は降っていない。姫を起こして市場に向かう。

 八王子魚市場、やはり土曜日で低調。そんななかに1袋のアレがあるではないか!
「坂本君、アレ、幾らかな」
「今日は安いすよ1万8千円ですから」
「そうなんだ。昨日は?」
「3万6千円かな。すぐ売れましたけど」
 そうか今年もそんな季節になったんだな。築地での初物値段はいくらだったろう。4万、5万、もっとかな。「高いんだから触るなよ」、知り合いの魚屋がわしゃ関係ないよ、と通り過ぎる。この時期のアレとは当たり前だが新子(コノシロの稚魚)である。「市場寿司 たか」では3枚つけくらいで仕入れるのだが、1袋2000円を割ってから、やっと「買おうかな」という気持ちになるらしい。この「高嶺の花」誰が買っていくのかな? 1かん幾らになるんだろう?

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『源七』に回ると若だんながでっかいメバチをおろしている。その脇にうまそうな「かきだし(中落ちからスプーンでかきとったもの)」。
「幾らかな」
「幾らだといいの」
 Vの字を出すと横を向く。当たり前だ! 手を開いて(500円という意味)、
「これだといいな」
「仕方ないなもってけ」
 これで今夜はうまい酒が飲める。

 八王子総合卸売協同組合、『光陽』でアジフライ定食、姫は冷やし中華。
『三恵包装』でお菓子と素麺を買い。
『丸幸水産』には天然の本鮪(クロマグロ)、尾長(ハマダイ)もいい。
「クマゴロウおはよう」
 これは姫のお言葉。

 八王子綜合卸売センターに回り、そろそろ年貢納めどきかと『高野水産』でたまっていた借金を払う。
「謝金払うと気持ちいいだろ」
 高野の恐いお姉さんがポツリ。
「気持ち悪い。オエだ。伝票一枚くらい計算漏れしてもいいよ」
「バカ言うんじゃないよ。これっくらいの額で」
 後ろにいたお千代姉がケツで思いっきり押してくる。
「まったく邪魔なんだから、冷蔵庫入れないだろ」
 早々に退散。後ろからお姉さんが爽やかさに欠ける声で
「次はすぐ払えよ」

『フレッシュフード福泉』でめかぶを買う。
「うまい干物ないの」
「ダメなんだよ。時期的な問題かな、コレというのがなくてさ」

『総市』には解凍サンマ。解凍サンマを見かけるようになるとそろそろサンマ漁の解禁近しである。

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一箱950円(税込み1000円)。25本入りなので1本あたり40円。スーパーの目玉商品にして2本で100円ということもあり得る

『ビックリ屋』で枝豆、ミョウガ、青じそ、一本ネギ、卵を買う。

『河辺ハム』にまわって。
「なんか安くてうまいもんないかな」
「そうだなうちは全部安くてうめーんだけど。三角バラ持ってく」
「高いな580円(100グラム)だろ」
「なに言ってんだ。デカイ腹して。これぐらい買ってやれよ」
 これはお隣の「プラカロ八王子」(冷凍食品卸)の社長。
「大きなお世話だ。好きで腹がデカイんじゃねえ」
「それじゃ、牛はやめようか、これどう」
「これなに」
「ラムなんだけど、うめーぞ。負けてやるから買えよ」
 負けてくれるなら素直に買うのだ。

 帰宅は8時半。そして悪戦苦闘の一日が始まるのだ。


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青魚の夏

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 青魚の夏だな。マアジ、マサバ、ゴマサバ、カツオにホソトビウオ、ツクシトビウオにサワラ、それぞれ価格も安定してきたし、脂ものってきた。

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 5キロ判のマアジ5000円を前にスーパーの一角で魚屋を営業する人が悩んでいる。
「こりゃいいな、値段もいいな。ウチは毎日大安売りだかんな。3500円だって高いよな〜」
 考えながら、ついつい声に出してしまう人って意外に多いんだなと思うのは
「なんだこりゃ、マサバがいい値だなっと思ったらゴマもそんなでもない(7入り3キロ判?1700円。そんなに安くない)、じゃあ真サバに行きますか」
 青魚の前にいると八王子を始め多摩地区ほとんどの魚とご対面となる。それが一箱ずつ持って帰るのだから山はどんどん寂しくなっていく。

「アジがなければ始まりません、と」
 鼻歌を歌っている人がいる。
「アジよくなってきました」
「いいよー、とってもいいの。ウチは店先で焼いたの売ってるんだけどー、脂があるよ」
 そうだ最近の魚屋で意外に売行きがいいのが「焼き魚」なんだという。しかも「アジ、サバが売れるね」と脇から別の魚屋が顔を出す。

 そこへ相模原の寿司屋の若だんな。
「お、珍しいね。寿司屋が箱買いかい」
「そうなんすよ。つまみにアジのたたきを出してくれって、宴会なんです」
「いまどき珍しいね、宴会なんて」
「法事ばっかじゃね。派手な料理だせないでしょ。たまの宴会うれしいすね」

 このオヤジ達の会話がなかなか世相を反映して面白い。マアジはまさに今が旬、マイワシ、マサバも脂がのってきている。そして気仙沼まで北上したカツオ。どれを選んでもハズレなし。

「浜田のアジ安いよ、2500円。ブランド品だよ浜田のアジは」
 市場職員のかけ声も不要と思えるくらいに売れ行きは上々。これで外に出ると雨、後は梅雨明けを待つのみ。


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