さかな季語事典: 2006年7月アーカイブ

 北海道八雲『ヤママル勇内山鮮魚店』という荷主で八王子魚市場にバカガイが来ていた。1キロあたり1100円の卸値。1個80グラム見当であるから90円前後の値段。すし屋はこれを剥いて開いて、湯通ししてつかう。なかなか手間のかかる仕事なのだ。

「鈴木さん、これどうかな?」
「剥くといい色してるね。味もいいと思うよ」
 そこへ、八王子市横川のすし屋、「横川町鮨忠」さんがやってきて、
「これよかったよな。この前のは50グラムくれーかな。これだけは殻付きのほうがいいな」
「横川町さん(八王子には鮨忠という店が多く、それぞれ市中心部の「鮨忠」から暖簾分けした店)、1キロくらい持っていきます」
「そうだな。もらっていくよ」

 これを勝手に1個だけいただいてきて剥いてみた。北海道のバカガイは今が産卵期であるはず、ところが中身を見る限り、成熟していないのではないだろうか? 甘味があってうまい。

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市場魚貝類図鑑のバカガイへ
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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 10日に漁の解禁、そして翌日の今日一斉に関東までたどり着いたのが新サンマ。八王子魚市場特種にあったのをおずおずと手にとって値段を聞くと1本600円。重さからするとキロあたり3000円だろうか? 高いには高いが、一頃の1本1300円、キロ8000円だ10000円だというのは遠い昔の話のように思える。

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 これを八王子の魚屋が囲んで
「こりゃ、虫が付いてるね。これがついてるとやせてるんだよね」
「まあどっちにしろ魚屋が買える値段じゃない」

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これは高値で1本600円也

 これを見て八王子綜合卸売センターに回り、『高野水産』にくると
「うちは300円だね」
 これならキロあたり1500円くらい。
「でもね。やっぱり虫食いがあるだろ。いやがる人はいるね」

 八王子総合卸売協同組合、『丸幸水産』では2500円。これはなかなか立派だが、虫食いがある。同『やまぎし』は2300円と1000円が並ぶ。1000円(1本200円弱)は脂がないと思われる。比べるに2300円は虫食いも少なくなかなか脂があるようなのだ。これを1本買って450円。
「そうか200グラムないんだね」

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これが最安値のキロ当たり1000円で1本170円

 大急ぎで『市場寿司 たか』に向かっていたら八王子綜合卸売センター『総一』にあったのがキロ/2200円。パチンコに弱いオジサン曰く。
「やっぱさ、6000円(キロ当たり)だ8000円だしないと新サンマは盛り上がらねーな」
 まったくその通りだ。「何時になったら仕入れられるかな、誰が持っていたって?」なんて話題になるからいいのであって、今年も寂しいサンマ解禁である。
●実際に食べてみたのだが、感想は『寿司図鑑』へ
http://www.zukan-bouz.com/zkanb/susizukan/04/19.html
●値段は総て卸値


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 市場には鱧(スズハモ、ハモ)がたくさん入荷してくるようになった。そしてタコとハモを食べて半夏生も終わり、そろそろ本格的な夏が始まろうとしているのだ。そしてまだ若い玉ねぎの皮が茶色に変わり、干されて甘味がぐんと増してきた。この玉ねぎの産地が泉州、今の和泉地方である。
 半夏生(夏至から11日目。春から続く農作業が一段落つく)にハモを食べるのは和泉地方のある大阪湾岸から淡路島までがハモの産地であったことによる。
 この鱧、活けで輸送に強く京都にまで送られて、なにやら「ぼたん鱧」やら「鱧ずし」になって仰々しくなってしまっているが、大阪人にとってはおかず魚であった。この「泉州玉ねぎと鱧」というのも夏の夕べ、お父さんの酒の肴に、またご飯のともにもなるまったく庶民的な味わい。よくはもちりなんて言うが、それはやはり昆布だしであっさり食べる上品なもの。でも泉州の「はもすき」はハモを骨切りしてすき焼き地で玉ねぎと甘辛く炊く。ハモの旨味が玉ねぎに、玉ねぎの甘味がハモと合わさって、酒の肴よりもご飯に合うといったもの。
 これがなんとも夏の夕べにうまい。食欲が落ちた梅雨明けに、この甘味が食欲をそそり、炎天下で疲れた身体を癒す。ぼたんはもだけがハモ料理やおまへん、ハモの甘辛いすき焼きで今夜はいってみまひょ!

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市場魚貝類図鑑のスズハモへ
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市場魚貝類図鑑のハモへ
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 市場に溢れてきたのが冷凍流通しているウナギの蒲焼きである。
「土曜の丑の日も近いからね。高いんだけど在庫をたっぷり仕入れなきゃ」
 八王子綜合卸売センター『フレッシュフード福泉」の社長が苦笑い。
 今年は中国産が少なくて国内産勝負。
「1パック800円前後が狙い。高いと買わないし、賭だよね」
 卸値がこれなら小売りは1000前後、特売で980円だろう。まあどちらにしても現代の消費傾向からすると決して安くない。まあ贅沢なもの。
「これ、うまいのかな」
「うまいと思うよ。味見して仕入れてるんだから。気になるんだったら食べてみればいいじゃない」
 まあ正論である。論より証拠、一枚買って帰ってみる。
 そしてここでとまどいを感じた。
「どうやって食べればいいの。レンジでチンかな」
 家人が言うのにラベルを見ると食べ方がのっていない。これでレンジで温めて食べたがうまいことはうまいが蒲焼きの醍醐味とも言うべき香ばしさに欠ける。そして後日もう一度。こんどは魚焼き器を熱して強火であぶる。これはさすがに専門店には遠く及ばないながらも、なかなか美味である。
 と言うことで市販のウナギの蒲焼きも捨てがたし、ただし香ばしさには欠けるので一工夫なのだ。
 さて、市販の蒲焼きであるが数年前には1パック700円まで値が下がっていた。これに中国からの輸入ものがあって1パック350円というのまである。いかに卸値とは言え安すぎる。そして今年の価格であるがフレッシュフード福泉によると妥当だろうという。
 中国からの輸入量によって値崩れするよりも国内もの国内加工もので小売価格が1000円前後が最低ラインというのが仲卸の希望的価格なのだ。ちなみに国内産といっても加工が国内で行われただけであり、ウナギの産地はわからない、産地台湾と言うこともあり得る。

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市場魚貝類図鑑のウナギへ
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サンライズフーズ 愛媛県伊予市宮下613


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アカガイの卵巣

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 夏になると卵を抱えるのがアカガイ。この時期、やはりアカガイの味は落ちるのだけれど、なかには卵を抱えていないものもいて、年中なくてはならないものだけに寿司屋なんかは一喜一憂するのだ。
 毎朝、大量のアカガイを剥くのが『源七』のあんちゃん、
「お〜い、卵あったぞ」
 呼ばれていくと、半分に割った身に濃いオレンジ色の卵巣が見える。なかなか大きくて、これはネタとしてだめだな。こんな話をしていると、西八王子の魚屋『魚善』ぜんさんが近寄ってきて、
「卵食べると当たるって本当かな」
 まさかそんなことはないが、やはり口に入れてうまいもんじゃない。この部分は名人あんちゃんに取ってもらって、刺身で食べるのがいい。
「これから真夏にかけてのアカガイは難しいべな」

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アカガイの卵巣は完全にとらないと刺身が汚れてしまう。また味にも悪影響を与える

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市場魚貝類図鑑のアカガイへ
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