7月13日、台風4号は四国に近づきつつあった。荒天に強い瀬戸内海でも漁船の出船はほとんどなく、せっかくきたものの魚貝類はほとんど見ることができなかった。しかたなく香川県観音寺市の漁協の方と岸壁で立ち話。いろいろ聞いてみるに、この地の名物は響灘で大量にあがるエビを使った料理、練り製品であるというのを知る。
この地にあがるエビの代表的なものは「本じゃこ」もしくは「じゃこ」と呼ばれるトラエビだと思われる。これを練り物に混ぜて「ちくわ状」にしたのが「海老ちくわ」である。
一本一本袋入りになっているのを家族手に手に取りだして、がぶりとやったのである。ボクは当然の如く左手にはビール。ちくわということで、ある程度、味の予想を持っている。「海老」と商品名に書かれているからには、そこにただエビの風味が加わるのだろうと思っていたのである。ところがそこにあったのはまったく予想だにしない味、食感であり、ボクはかなり大きな衝撃を感じたのだ。
「これは、ちくわではない」、「かまぼこでもない」、敢えて言うなればエビと魚のすり身を使ったお菓子、もしくはテリーヌかな? 慌ててネットで商品紹介を見ると、「小えび(えびじゃこ=トラエビ、サルエビ)の頭をとり、殻付きのままミンチにして、しぼり豆腐とすりあげた」とある。とするとふわりとするのは豆腐のためであり、微かにジャリっとするのは小エビの殻であるようだ。
家族の方を見るとなんのためらいもなくうまそうに食っている。太郎に聞いてみると「ボクだいすきだよ」と2本目に手が伸びている。
面食らってしまっているのはボクだけのようだ。残念ながらこのざらっとして、柔らかいちくわ、あまり好みではない。練り物特有の「足(弾力)」がないせいか、口の中でふわりと広がる甘味や旨味が濃厚に思える。さわやかではない。「足」がないちくわというと、主に東日本で作られるおでん種、加熱用のものを思い浮かべるだろう。そのまま熱を通さずに食べる、ちくわには「足」があるからだ。その加熱用のちくわより、「海老ちくわ」の方がもっと「足」は弱い。
翌日、この「海老ちくわ」とジャガイモなどを炊き合わせてみた。ボクはこちらの方が食べやすい。ジャガイモに海老ちくわの風味が煮ふくまる。煮る内に一度膨らみ、また冷やす内にしぼんでしまったちくわが硬くしまっていいのである。
エビの入った練り製品、「海老ちくわ」と「海老天」は観音寺だけではなく香川県のどこのスーパーに立ち寄っても「必ず置かれているもの」だった。また善通寺のうどんやさんには天ぷらなど「うどんにのせるもの」のひとつでもあった。ようするにこの「足」のない独特の練り製品は香川県を代表する惣菜なのである。
福弥蒲鉾 香川県観音寺市
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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