水産会社、加工品図鑑: 2007年2月アーカイブ

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 八王子総合卸売協同組合『丸幸水産』は鮮魚を中心にした仲卸である。クマゴロウがマグロの柵取りをしている後ろに、なんだかボクを惹きつける古くさい缶詰を見つけたのは、もう去年のことなんである。でもこの大振りの缶詰が「サバの水煮缶」であることを知ったのが今年のこと。それで思わず一缶買ってきてしまった。値段は350円だったろうか? しまった領収書をなくしてしまったのだ。
 でもとにかくそんなに高いものじゃない。赤い1ミリくらいの四角囲みの罫線に「川」のロゴがどことなく水産業華やかりし頃の面影を感じる。

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サバはかたまりでどーんと入っている

 この「さば水煮缶」をおつまみに焼酎を飲むのも、魅力的である。ただし夕食ともなればそれだけでは寂しい、この一缶、425グラムでなにか作れないだろうか? 冷蔵庫を探してとろけるチーズとベーコンの切れっ端、新玉ねぎを見つける。ジャガイモは常備しているし、牛乳は? コップ一杯ほど残っている。

 おもむろにフライパンにベーコンの細切れを放り込む。少し油を入れて弱火をつける。その間に新玉ねぎを縦方面に切り、ジャガイモを洗ってホイルに包み5分間チン。

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サバはベーコンや野菜と一度炒めるのだ。これが肝心

 ベーコンがコンガリしてきたら「さば水煮」をほぐしながら放り込み、少し炒めて、新玉ねぎ、ジャガイモを、またまた放り込む。ある程度炒めたところに牛乳をどばっと放り込んで一煮立ち。ここで塩コショウ。味を調えて、耐熱ガラスの皿に入れる。上から生のオリーブオイルを回しかけて、とろけるチーズをかぶせる。
 これをオーブンで10分から15分焼くのだ。

 自慢じゃないけど、我が家での基本的な食事はほとんどすべてボクが作っている。実際に作れなくてもコンセプトを伝えてから家を出る。
 我が家の日常で一度もやったことがないのが作る料理を考えてから買い物をするなんて大バカ野郎な行為。これは絶対にやってはいかんのだよ。間抜けだし、バカだし、季節を冒涜している。そのときどんな料理を作るかは、季節季節に「いいな」と思ったものを買うだろ。するとその材料が瞬時に勝手に決めてくれる。

 グラタンが焼き上がるまでにみそ汁を作り、きんぴらゴボウを作り、ニンジンのスティック、ブロッコリーのサラダを作る。テーブルに常備菜、めかぶ、佃煮、漬物を置いている間にオーブンがチンとなるのだ。

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サバのグラタンの出来上がりだ

 ボクは焼酎のお湯割りに「銚子のさば水煮」の残り、これにレモン、醤油。これで夕食は一丁揚がりである。

 この「川岸屋水産」の「さば水煮」がいい味である。ぜんぜん臭みがなく、しかもサバの旨味とコクが凝縮されている。久しぶりに食べる「さば水煮缶」そのまんまだけど、肴としてもいいものである。
 また確か東北だっただろうか、素麺やうどんの漬け汁に「サバ水煮」や「ツナ缶」をほぐして入れていたのを思い出す。この「水煮」「オイル漬け」のことももっと調べなければならないな。

川岸屋水産 千葉県銚子市東小川2978
http://www.kawagishiya.co.jp/


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 岐阜県、長野県の山間部などに「煮いか」という郷土食がある。郷土食というのは正確ではないかもしれない。なぜならば日本海側の町などから越中鰤のように山越えしてもたらされるもの。その昔はとれたてのスルメイカを浜で茹でて、一晩くらいかけてきたものだろう。裕福な家では鰤を、そうでなければ「煮いか」で正月を迎えたのだともいう。これを適当に切り分け、生姜醤油で食べるのである。

 この茹でたスルメイカ、ヤリイカ、もしくは輸入イカなどは日本海側だけでなく、常磐、東北などでも作られている。当然、生のイカよりも味の劣化が遅く、保存性もいい。それで浜茹でしたのだろうから、イカがとれるところならどこでも作られていたのだろう。また日本海側では「“煮”いか」であるけれど太平洋側では「“茹で”いか」という呼び名にも「煮る」という言葉の地域による意味合いの違いを感じるのだ。

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 今回の「釜ゆでいか」というのは茨城県大洗町、清水商店のもの。酸化防止剤、pH調整材などが入っているものの、味付けは食塩だけ。青森から持ってきたスルメイカを茹でただけというのがいい。身はぷるんと柔らかい。そのまま生姜醤油でもいいし、酢の物、炒め物に使ってもなかなかうまいものであった。

 さて、このイカを茹でるという加工法を持っている地域はどのあたりなんだろう。意外に日本全国で行われている気もするのだけれど、確信が持てない。これも今年の課題である。

清水商店  茨城県東茨城郡大洗町磯浜町6881-72


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 先日金曜日の朝方のことである。築地「大都魚類」藤井恵次さんに最近のサケ類の市場での動向をいろいろ教わっていた。それが予想以上の養殖魚の増加や国産サケの消費低迷という悲しい現状がありでかなり興味津々であったのだ。
 そんなときケータイがなる。ちょうど藤井さんにも用事があり、そのケータイの呼び出し音に話を打ち切った。相手は築地市場の怪人尻高鰤さんであった。
「あの。晴海通りに出るよね………。勝鬨橋を渡って………」
 それはボクに対する秘密の指令であった。
 言われた通りに都バスを降りると、そこに尻高鰤さんが待ちかまえていた。そしてとある殺風景なビルに連れ込まれたのである。まるで「太陽に吠えろ」で山さんが軟禁されたような不気味なビルである。そのビルの通路がまことに狭い。また各所に秘密の部屋があり、その一つでは美女軍団がなにやらセロファンに包んでいる。まさか「ヤク(薬)」?
 そんなビルのいちばん奥にある殺風景な部屋に連れ込まれると、そこにはまことに厳つい男たちが居並んでいた。そして出されたのがキンメダイのお頭の一夜干しだ。なんだ犯罪とは関係ないのか? 少々がっかりしたが目の前の焼いた一夜干しがいい匂いである。でもそこに罠が?

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 うまそうなので手に取ると「アチチチチ」と火傷したのだ。これはボクの自己責任かもしれないが一言「熱いよ」くらい言って欲しかった。
 でもこれがうまい。やめられないほどにうまくて手がベトベトになって困っていたら、すーっとペーパータオルが来た。偉い!
「これなんだっけ(固有名詞が出てこなくなったら老人だ)、ええと、なんだっけな」
 尻高鰤さんが困っていると、やけに濃厚な顔つきの首謀者とおぼしきオヤジが
「伊豆稲取のキンメ」
 そうか、これはうまいはずである。
「これ昨日はいったのかな、漬け魚の原料、キンメがあまりにいいんで頭を干したんだ」
 なんだかこの厳つすぎるオヤジ達がいい人に見えてきた。
 その上、またまたこんどは西京漬けが2切れ来た。
「メロです。これはまだ味噌が入っていない(漬かっていない)かもな。味噌の味はいいでしょ」

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 本当にみその味わいがすこぶるつきにいい。一箸つけると止まらなくなる。味噌の味は気温や魚の状況でいろいろ変えているという。よくこの厳つすぎる男たちを見ていると、どこからか中島みゆきの「ヘッドライト・テールライト」が聞こえてくる。そのひとりひとりが魚に関しては凄腕のプロたちだったのだ。
 うまいうまいとベロリと2切れ食べてしまうと男たちは消えてしまった。忙しいのだろうか? これ2切れだけじゃ嫌だな。お土産も欲しい。
 見知らぬビルの細い通路を抜けて重いビニールのカーテンをあけると、さっき美女たちのいた部屋に出た。そしてその美しい女性たちはよく見るとただのオバサンだった。でも詰め合わせているのはギンダラの西京漬けである。

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「ここはね、全部手作りなのよ」
 なんて色っぽく教えてくれる。
 やっぱりなんとかお土産はもらえないだろうか? また廊下に出るとなにやら箱につめて包装の最中。

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「まあ、お土産ですから食べてみてください」
 やった! これがなくちゃ世の中味気ない。

 この「築地フレッシュ丸都」のことを尻高鰤さんにもういちど聞いてみると、やはり従業員の方はみな魚に関してはプロばかり。味付けのプロも何人かいて、水産加工品作りに関して侃々諤々の話し合い、試行錯誤をしているらしい。その甲斐あってというのは失礼だが「ものすごーうみゃー」のであるこの西京漬けが。そしてこれは都内でなら簡単に手にはいるという。とすると東京名物のひとつとでも言えるかも?

築地フレッシュ丸都
http://www.ginmi-maruto.com/


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 世に珍味佳肴というのは多々あるだろうが、意外にいざ食ってみると「それほどでもないな」と首をひねる物も少なくないのである。そんななか幻の味とは言えないだろうが、尾鷲人の隠れ味とでも言えそうなのが「生からすみ」である。
 からすみということで原料はボラの卵巣。これは本唐墨の原料であることは天下に知れ渡っている。というかイタリアでも南半球でも作られているもので、インターナショナルなものと言ってもいいだろう。これを唐墨を作るように作るのではなく、塩イクラのように仕上げたのが「生からすみ」だと思う。これはイクラでもないキャビアでもない。ましてや唐墨でもないもの。
 小瓶に入っているのは黄金色のツブツブツブである。それがほんの少しある粘液質のものでしっとりしているのだ。口に含むと独特の風味と微かな渋みが口の中に膨らんでくる。そこに脂分を含んだ旨味が点々と舌を刺してくれる。この甘味をともなった脂に渋み旨味がマーラーの交響曲7番を聞いているような不思議な世界に誘ってくれる。そこにくるのは「辛口の日本酒でんな、なんともいえまへん」、ついつい杯を重ねてしまって、しまったしまった飲み過ぎたという状況になる。
 そしてこれを送って頂いたのが尾鷲の岩田昭人さん。説明不要だと思うが「一日一魚」の制作者である。まだ実際にお会いしていないが、かなり左利きだろうというのが明白にとれる。そう言えば月刊「伊勢人」の連載を読んでいても、ほどよい揺らぎを感じる。メイチダイにカタクチイワシ、料理する魚の横手には、まず間違いなくコップ酒がありそうである。
 これは蛇足だが、本日の「一日一魚」にはオオグソクムシが載っていた。言っておきますが「岩田さん、けっしてうまいもんじゃありません。酒の肴にはしないように」、くれぐれもご注意。

はし佐商店 三重県尾鷲市中井町1-19 TEL 0597-22-0304
一日一魚
http://www.pref.mie.jp/OKENMIN/HP/ichigyo/index.htm


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