水産会社、加工品図鑑: 2006年8月アーカイブ

 東京湾に残された貴重な浅瀬・干潟である三番瀬では今でも海苔養殖が行われている。21世紀の現在にあって三番瀬から富津市まで、川崎から横須賀までの地域でとれる海苔が、まさに本場の江戸前海苔なのである。今回の「三番瀬 味付ばら乾し」は三番瀬でとれた江戸前生海苔を使って船橋の海苔養殖漁師が作った言うなればふりかけである。
 千葉県船橋市はアサリ、青柳(バカガイ)、カニ刺し網に巻き網船もあり、都市部にあってまだまだ漁業の盛んなところである。都心から1時間足らず、船橋の都市部から東京湾に向かい、海老川べりにあるのが船橋漁港。そのあたりを湊町というのであるが、古い市場があって、また路地のそこここでアサリや青柳を剥き、甘辛く炊きあげる女達の姿が見られる。そこを、おかずのスズキをぶら下げて家路に向かう老人が通り過ぎる。これ、本当に21世紀の光景だろうか? と疑いたくなるほどだ。
 そんな船橋では寒い時期になると養殖海苔の水揚げが始まる。三番瀬で刈り取った江戸前海苔を港でよく洗い、刻んで板海苔に乾す。これがまことにうまい。都心の江戸前、老舗のすし屋で、三番瀬の海苔しか使わないというところもあるくらいなのだ。そんな船橋の生海苔ではあるが板海苔原料にしたときに味には関係ないが、商品としては出せないというのがでてしまう。これを船橋湊町で味付けしてふりかけにしてみたのが「三番瀬 味付ばら乾し」であるという。
 ふりかけといっても、世間には海苔の風味・味わいの欠片もなく、調味料で誤魔化したものが多い。それが「三番瀬 味付ばら乾し」は海苔の香り味はそのままに、ゴマ油など海苔養殖業者が普段おかずとしている「あきない味つけ」がされて美味である。おつまみやお茶漬けにも向いているというが、ボクは何と言っても炊きたてのご飯にのせて食べたい。ワッシワッシとご飯とともにかき込んで、海苔の旨味、ゴマ油の風味、そこに一味唐辛子のピリがきて、「これ以上太ったら船橋漁協のせいだ」と言いたい気分だ。
 これは余談だが、この「三番瀬 味付ばら乾し」は商品名としては面白みがない。どうせなら船橋漁協の宣伝も兼ねて「江戸前船橋漁師町・三番瀬のり漁師のばかうまふりかけ」とでもしたら面白そうだ。
●八王子魚市場内「源七」

sannbannsusna068.jpg

sanbannase068.jpg

●問い合わせ/船橋市湊町1の24の6 電話047-431-2041


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

 予め断っておきたいのは、我がブログで「うまい、まずい」を書くときはほとんどが自前で購入しているのだけれど、今回はマルハラフーズさんからいただいたものであると言うこと。いただきものにしっかりした評価ができるだろうか、ちょっと不安だが思ったことを記していく。
 まずマルハラフーズからいただいた「まかない干し」という商品である。これは国産のサバとサンマを使い、しょうゆ、砂糖、米発酵調味料、純米酒、ニンニク、味噌で味つけしたものである。実を言うとこの複雑な味つけで、どんなものが出来上がるのか皆目見当がつかないが、タレとしてみると非常にいい取り合わせである。しかもここには旨味調味料も色素などはまったく使われていない。その点でも子だくさんの我が家では安心できる商品である。
 送られて来たときは冷凍状態である。これに関してはカネマル笹市からも教わったことだけど、干物は冷凍流通しても品質の劣化は皆無なのだ。それを室温で解凍して慎重に焼く。焼き上がったものを食卓で熱いままにご飯のおかずにする。まず、甘味が先に来て醤油や味噌の風味が来る。この味わいが複雑であるのに驚く。その複雑さがバランスがとれているためにくどさには繋がっていない。むしろ食べやすいのだろうか、家人と子供が驚くほどの勢いでむさぼり、2枚があっという間になくなる。その皮までむしゃむしゃ食べて思うに、酒と味噌の発酵してできた旨味が複雑さを呼んでいるのだが、決してサバの旨味を消し去っていない。塩分濃度はそのまま食べるとやや高めだけれど、ご飯に合わせるとちょうどいい。サバの身は箸でほどよくほぐれるのだけれど、これをご飯にのせて咀嚼するといくらでも喉を通りそうだ。
 また、これは酒の肴にも向いている。ただしボクが本日、嗜んだのは二階堂麦焼酎である。ここで製造者の方には申し訳ないが、ほんの少し七味唐辛子をふらせていただいた。我が家の七味は浅草の薬研堀でやや山椒を多めに配合してもらったもの。これがとてもよかったのである。常々思うのだが、干物に山椒や七味唐辛子がとても合うのだ。他には塩サバにはコショウ。干物の販売にこれらの小袋が付いていると面白いだろうなと思うことがある。
 この商品が「漁師まかない干し」であるのは、毎日魚を食べる生活にあって「漁師が食い飽きない味わい」としてまかないに造るものと言う意味だろう。当然、沖合で暮らすサバ巻き網の漁師さんなど、端的に「うまいもの」を作り出さないと日々暮らせないだろうから、このような複雑な味つけの原型が生まれるというのもわかる。
 また姉妹品にサンマを使ったものがある。ここでは細かいことは省くがこれも絶品である。同社の「さんまソフトみりん干し」よりもさっぱりしていて酒の肴にも出来る。ちなみに我が家ではボク以外には「さんまソフトみりん干し」も好評であったことを明記しておく。
 味わいには文句なしなんだが、商品名はこれでいいのだろうか? 「さば漁師まかない干し」はとても説明的でわかりやすいのだが、ある意味特徴がない。例えば銚子は「漁師の交差点」のようなところ。もっと銚子の名を活かしてもいいのではないか、そしてもっと短いネーミング。でも実際に名前を考えるといろいろ難しいんだなと思い知る。「黒潮干し」「漁師干し」「船暮らし漁師干し」「かしき流」、考えれば考えるほどろくな名前が出てこない。結局名前もこれでいいのだろう「さば漁師まかない干し」。

maruharam068.jpg

マルハラフーズ
http://www.maruhara-f.com/index.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

 我が家の食卓に定期的に登場するのが青森市ヤマモト食品の「ねぶた漬け」である。これは数の子の入った松前漬けといったもの。これでどうして「ねぶた」なのかはまったく意味がわからないがネーミングは非常にうまい(商品名の大切さがぜんぜんわかっていないメーカーが多いのに驚きを感じている)。たぶん、青森に行くとこの名のために格好のお土産になるだろうし、また一度買うと、なかなか味がいいので、また買ってしまうかも知れない。名前からしてローカルな食品だろうと思っていたら、市場の惣菜などを扱う仲卸では定番商品のひとつなのである。
 関東のスーパーなどでもけっして珍しいものではない。当然、桃屋の瓶詰めを買うと同じように家人もこれを求めてきて冷蔵庫に入れている。このように地方の加工食品が全国的に受け入れられるのも、商品名のよさにあると思う。これが「数の子入り松前漬け」だったとしても絶対に全国に行き渡ることはなかっただろう。その上、売値300円前後で70グラム2パックが切り離せて、一回で食べきれるサイズなのも一般家庭にとっては使い勝手がいい。このパッケージもスーパーなどが受け入れやすかった理由だと思う。
 さて、この昆布の粘りが大根やキュウリ、スルメをからめて、その味つけはやや甘口の醤油味。味覚的には純然たる松前漬けである。ここに数の子のコリっとした食感とコクが来るが、確かにこの組み合わせは絶妙である。ただしついつい先に数の子のみ食べてしまうきらいはある。またボクの好みからするに酒の肴ではなく、むしろご飯の友である。このパッケージを見ただけでご飯の用意がしたくなる。家族も同様であるのは、これがあるとお釜が空っぽになることからも明らかだ。
 
nebuta068.jpg

ヤマモト食品 青森県青森市野内浦島56-1


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

 暑い日が続いている。こんなときにはお茶漬けがいちばんなのだけれど、お新などでサラリサラリと茶漬けをかき込んでいるとこんどは栄養面で問題が出てくる。夏バテを助長する。こんなときにぜひお試し願いたいのがマアジの開きのお茶漬けである。
 用意するものは少なく、出来るだけいい鰺の開き、熱湯、三つ葉などとワサビである。ワサビは粉でもチューブでもなんでもいい。
 作り方はまずこがさないようにコンガリと開きを焼く。焼いたら手で身と骨・皮・頭などを分ける。この身をご飯にのせて、方や片口の器などを用意。そこに骨や頭や皮などを入れて熱湯を注ぐ。ここで味をみて塩味が足りなかったら一振り。するとこれがいい出汁の出たつゆとなる。これをご飯に回しかけ、三つ葉を散らしてワサビを薬味にする。
 このお茶漬けは我が家の定番のもの。いつも手頃なものでやっていたら、ある日沼津のカネマル笹市からマアジの開きが送られてきた。原料は国産、壱岐周辺のもの。焼いて食べると脂がのっていて、その脂の甘く上品に口中で溶けて行くに泡雪のごとく。あとに鰺の旨味が残りこれはまさに絶品。これを使ってお茶漬けというのは贅沢すぎるかも知れない、と思いながら禁断の果実を囓るがごとくやってみた。困ったことに、あっという間に2合半、食べたのは我が家の子供達。
「もっと食べたいよ」といっても開きはなく、ボクももっと食べたいものだから、最後の一枚はこっそり数日後に楽しんだ。こんなうまいもの「子供達に食いつくされてなるものか!」。

kanemarusasaiti068.jpg

maajicha.jpg

詳しい作り方はカネマル笹市へ
http://www.kanemarusasaichi.co.jp/index.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

 ボクなんかのように怪しいオヤジは「こんなものに弱い(惹かれる)」というのが、多々ある。これはまだまだ多量の煩悩を捨て去れないで地上に蠢く有機交流電灯なのだから仕方がない。その煩悩の琴線に触れるものを見つけると「安い物なら」ついつい手が出てしまう。そしてそしてこれが食の世界にあっては「こんなものだ」と言うのが今回の焼きいかである。
 これは八王子綜合卸売センター『フレッシュフード福泉』で見つけたもの。その名もずばり「焼きいか若大将」。この名を思いついた『扇谷』の方、間違いなく40代後半以上だと思われる。当然、加山雄三の『若大将シリーズ』1961年からのファンなんだろうね? また、この奇抜な名前、意外に受けを狙っているようで、スルメイカの小さい商品価値のないものをうまく利用している。その両面からうまく攻めている賢い商品である。
 しかも食ってみると、実際に酒がすすむし、これまた子供達も横からかすめ取って行くくらいだから端的にうまいのだ。

 余談だが青森県というのは東北といういかにも奥の細道のまた果てにありながら、どこか熱帯にも勝るとも劣らない異端の熱気というか自己表現力が満ち満ちていると思う。三上寛、そして棟方志功、太宰治、高橋竹山、青森県出身のアーティストは凄い人ばかりだ。青森県人には水産物の世界にもど〜んと青森のパワーを活かして欲しいものだ。

oogiya068.jpg

ヤマイチ扇谷 青森県むつ市大畑町鳥谷場178-2


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

 どうしてこんなものに惹かれるんだろうと仲卸で白地に赤い紅ショウガの蒲鉾を手にとって、自問自答しながらパッケージの裏側をみたら「揚げかまぼこ」とある。でもこれはどうみても揚げているようには見えない。なんだかへんな蒲鉾だ、と思い買って帰ってきた。
 もう一度裏側を見ると「いとよりだい、はもその他」とあり、色合いからしてそのまま食べるものなんだなと思ってワサビと醤油を添えて食卓に出した。その味わいは上品で軽い、そして魚の持つうまみも感じる。買うときに感じたように「揚げ」た重さがないのはどうしてだろう。また紅ショウガの意味合いはなんだろう。確かショウガの持つ成分は練り製品を硬くするもの。でも、じっさいにそんなことは気にならなかった。それより色合いの割に紅ショウガの味というか苦みなどが感じられないで肩すかしを食ったようであった。でも、これはとにかくうまい。
 とにかく好きな味わいであるが、この蒲鉾、ボクが10年前なら買っていただろうか? 否である。どうも食に関して変に潔癖というか本物志向に走ってしまうのが30代から40代で、そんなに煩わしく「食い物」のことを考えなくていいよ、とアドバイスしてくれる人は皆無だった。そしてこの食に対して無駄に鋭角的な時代というのは多くの人が経験していそうである。この食にこだわるという一見無意味な時間を経てボクの場合、食べ物に適度に遊べるようになってきた。たぶん、定年退職をしたり、またある年齢に達すると多くの人が同じように「食の世界で遊べるようになる」。すると、この「ヤマサ蒲鉾」の紅ショウガがくっきり赤い模様となっている蒲鉾なども「たまには買ってみたい」ものとなるはずだ。
 なぜだろう、人間にはこのようなキッチュなものに惹かれる部分があり、それを適度に解放しないといけないのだ。そうしないと朗らかで、また冒険的で、開拓的な人生が送れない。
 閑話休題。
 この紅ショウガの縞模様くっきりの白い蒲鉾は食料品店では主役ではない。でも、どうにもこの手の商品がないと高品格を欠いた日活映画のようだ。「ヤマサ蒲鉾」というメーカーは極上の鱧や穴子を使った蒲鉾も作っている。そんななか、このような一見キッチュな製品も作るとはさすがに関西のメーカーは凄いのだ。
 最後に「ヤマサ蒲鉾」のサイトを見て思ったことなのだが、ボクなど四国でも関東で言うところの「薩摩揚げ」は「天ぷら」と言っていた。それがいつの間にか「天ぷら」というのを「薩摩揚げ」と呼ぶようになってしまっている。いったい今でも四国では「天ぷら」なのだろうか? 前回、大阪に行った限りでは鶴橋でも野田の市場でも「天ぷら」である。和歌山でもそうだった。この「天ぷら」と呼ぶ地域も気に掛かるな。

yamasa068.jpg

ヤマサ蒲鉾 兵庫県姫路市夢前町置本327-16
http://www.e-yamasa.com/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

 魚の塩焼きというのは一般家庭でもっとも作れない、作るに困難なものではないかと思う。例えばガス台の真ん中にある魚を焼くスペースだがあれは下に水を入れるためにやや蒸されてしまう。また別に電熱方式のものもあるが、やはりガス代の上に魚焼きの網をのせて作るものよりも劣る。そしてマンションではこれが無理なのである。我が家でも煙が気になって干物を焦げないように注意をはらいながら焼く程度。後は夜になるのを待って炭火でこそこそと魚を焼く。
 当然水産加工品にも「塩焼き」があるのだろうと探したらすぐに見つかった。「東仙」というメーカーのもの。仲卸にきくと高級な干物を作るメーカーであり、味には定評があるというので、じっくり中身を見ないで買ってしまった。仲卸価格から考えると350円から400円くらいするのだろうか。
 そして帰ってじっくり見るとノルウェーニシンのオスの焼き物であった。値段からしてもメスを使えないだろうし、身自体の味わいはオスの方が上。
 裏側に「不要ですが、電子レンジなどで温めると、より一層美味しく召し上がれます」と書かれているのをみて、まず最初にそのまま食べてみる。これは確かにニシンの身の旨味・風味は感じられるものの、硬く締まりすぎている。そこで電子レンジで1分半ほど温める。確かにこれで「一層美味しい」くなった。でもこれが好きかと言われると「ノー」である。
 塩焼きを買ったつもりであったのでより落差を感じたのかも知れないが、とってつけたような味つけがしているのだ。ちなみにノルウェーニシンの「塩にしん」をただ焼いたものは非常にうまい。国産に限るなんて言うのはおかしいのだ。この味わいに家人など「魚が嫌いな人には、この方がいいんじゃない」と言う。でも最近の子供などを見ていると塩焼きは意外に好まれている。それからするとニシンの表面にある醤油や味醂、砂糖の甘味・旨味って本当に必要だろうか? 晩酌の肴に食べていたボクはこのはっきりしないニシン表面の味つけが邪魔でしかたない。
「東仙」のホームページを見ていると(表紙はマックなので見ることが出来ない)サバやニシン、赤魚もあるようなのだが、赤魚などはこの味つけでいいかも知れない。こんどは赤魚を食べてみるかな。また最近なんでも「魚がし」とある商品が多い中、このメーカーは実際に築地に本拠地を持っている。これなら「築地魚がし」の文字も本物だ。

tousennisin.jpg

東京仙印商店
http://www.tosen.co.jp/index.htm


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

 これは我が家では定番的な「こまったときのおかず」なのである。値段は小売りで500円以上するのではないかと思うのでちょっと贅沢なのだが、なにしろ電子レンジに2分、パッケージのまま入れることですぐに食卓に出せる。また、甘味も抑えめにしかもマグロの味わいも残して上手に作り上げられているのだ。
 当然、お総菜的なものではあるが酒の肴にもいい。お父さんは晩酌、子供達はこれでご飯と使い分けて、今時の忙しい家庭にお勧めしたい。

maguroasasasa.jpg

〒:421-0203 住所:大井川町藤守2293-17


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

 ある日、市場で「チーかま」というのを見つけた。「チー」はチーズ、「かま」は蒲鉾くらいはわかる。でも初めてじゃないだろうか、この食品。まじまじと見ていると通りがかったのが納め専門の魚屋をやっている青ちゃん。
「な〜に見てるの。なんだチーかまか?」
「これ知ってるの」
「なにを言ってんだよ、チーかまだろ、チーかま。子供の頃からあるでしょ」
 そこへすし屋の若だんながきて、
「懐かしいな。弁当にはコレですよ」
 なんと一箱買っていった。
 パッケージを見ると「チーズ入りかまぼこ」とある。弁当にチーズを穴に詰め込んだ竹輪はあったけどこんなものは初めて見た。でも「ちーかま」という言葉は「ちーちく」とともによく聞くのだ。
 まあとにかく買って帰り、じっくり晩酌に囓ってみた。「う〜ん、微妙な味だな」。うまいのかうまくないのかと聞かれると「うまいのかな」。甘めの蒲鉾にチーズが点々とあり、確かにチーズの香りがあるし、また乳製品の匂いも感じる。これは日本酒よりも酎ハイやビールに合いそうだ。
 マルゼンのサイトを見ると昭和43年に「おらが幸」という不思議な名称で売り出したとある。でも四国では食べていないし、売っていなかったと思うな。

tititku.jpg

丸善
http://www.mrz.co.jp/products/che-kama.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

 市場の仲買に「おすすめの干物」を教えてもらっては買っている。そして最近、産地によって微妙な味の方向性があるのではないか? と思うようになった。そして銚子の干物であるが、やや甘味も旨味も濃いものが多い気がするのだ。それを山を行商している人に聞いたときにも、この銚子などからくる色合いの濃い「みりん干し(業者はいろいろ)」のことが話題となった。これがなかなか売れるのだという。
 そんなに人気なら買ってみようかと手にとって業者を見たら「マルハラフーズ」とある。実を言うとこのメーカーは名前だけは知っている。それだけなのだが製品に対するコメントは避けるべきかな? と考えた末の掲載である。
 さて市場ですすめてもらって買ってきたのが「さんまソフトみりん干し」である(これはたまたまあっただけだろう)。この味つけが濃いのだ。サンマは脂があって、そして旨味が強い。そこに味醂やしょうゆ、黒糖、酒に昆布、黒酢など複雑な味つけが加えている。このような味も色合いも濃いものを別名「さくら干し」とも言うらしいが、個人的にはおいしいと思えない。でもこれは個人的な嗜好かなと子供に食べさせたら、なかなか好評なのだ。また市場で焼いて食べても「好きだな」というのと「味が濃すぎてイヤだ」というのが二分してしまった。
 これだから食品加工の世界は奥が深いのだろう。ボクとしてはこれの「あっさり判」をつくってくれないかな、というのが正直な感想である。ちなみに世に言う「みりん干し」で「みりん」を使わないものも多い。それに比べて、本製品には厳選された調味料が使われているようだ。これなど企業の姿勢として好感がもてる。

maruhara.jpg

マルハラフーズ
http://www.maruhara-f.com/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

okadasuisan001.jpg

 シーフードショーの会場で「焼きししゃも」や干物などがあって、棚にはみりん干しや鰺の丸干し(これは山陰などに多いタイプ)がある。ここで営業部長の三好憲次さんから声をかけていただいていろいろ製品の説明をしてもらう。
 岡田水産は山口県にあってもともと煮干しなどを生産販売する会社であった。それが現在では「ししゃも」では業界で一位の座にあるのだという。
「へー、凄いな」と焼きししゃもなどをおいしくいただいてきた。そして帰ってこの話を八王子綜合卸売センター内『フレッシュフード福泉』ですると
「岡田水産だろ。知らないヤツはいないよ。ほら」
 店内の段ボールをひっくり返すと「岡田水産」が多いのである。
「この前買って帰っただろ。子持ちししゃも、あれもそうだよ」
 灯台もと暗しとはこのこと。普段食べている「子持ちししゃも(カペリン)」は岡田水産のものだったのだ。
 その「子持ちししゃも」を改めて買ってきた。卸値からすると200円から250円くらいの小売り値だろう。これがじっくり味わって食べるとさすがにうまいのだ。「ししゃも」では日本一になる秘密は味なのかな?

okadasuisann0002.jpg
『フレッシュフード福泉』で見つけた「子持ちししゃも」

okadasuisann0003.jpg
『フレッシュフード福泉』で見つけた「秋刀魚味醂」


岡田水産株式会社 山口県長門市油谷伊上1755-1 tel0837-32-1101


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

『カレーライスの誕生』(小菅桂子 講談社選書)を読んでいたらカレーの普及は昭和の初め頃から加速度化する。そして昭和の初期には「次第に各地でそれぞれの特産品を使って、『ご当地カレー』が作られていくことになる」とある。ここに福島のほっき(ウバガイ)、釧路のホタテガイ、マイワシなどを使ったカレーが紹介されている。
 マサバはこの本にはないのであるが、福島で聞いたとき、「ほっき(ウバガイ)のカレーはよく作った」というのとともにカレーには「いろんなもの入れたよ」という話を聞いている。マイワシを使うなら当然マサバを材料としないわけがないのだ。また本格インド料理には魚のカレーというのもあり、本来はカレーは材料を選ばない料理なのだから、今の日本型料理でのカレーは材料があまりに固定化しすぎているともいえる。

 さて、そこで話は飛ぶが9年前の銚子への旅行である。海辺で生き物を探して、とある水産物の観光市場に入った。この観光的な市場の品揃えがまことにあきれるもので、冷凍のタラバから筋子、新巻鮭など銚子と関係ないものが目白押し。むしろ銚子の鮮魚などは隅っこに追いやられている。でもこんなところにオバチャン軍団が殴り込みをかけるがごとくなだれ込み大盛況であったのだからもっと驚いたのだ。そこに堆く積まれていたのがサバカレーである。
 サバカレーは何種類かあって、どれにしようか迷っていると家人が不思議なことを言うのだ。
「父ちゃん、これが本物でしょ」
 どうして本物かというと、「テレビドラマ」でやっていたからだそうだ。それを仕方なく買って帰ったをの覚えているのだが味を忘れてしまっていた。

 そんなときに我が家の近くにポプラという見慣れないコンビニがあり、驚いたことに若狭の天橋立マークのオイルサーディンがある。そしてここにあったのが信田缶詰の「サバカレー」である。これが1個210円なので当然買って帰ってきた。コンビニも侮れないのだ。

 このサバカレー、驚いたことにサバの切り身がゴロゴロと入っている。その切り身がよく煮込まれているのか生臭みがなく、しかも煮くずれていない。そしてカレー自体も適度に辛口でいい味わいなのだ。このサバカレー、残りご飯にのせてそのままチンしてなかなか便利なものである。またホッピーのつまみとして食べるのも悪くないな、なんて缶詰片手に立ち飲みを常習するオヤジは感心しきりなのだ。要するによくできたものであった
 気になってネットでサバカレーのことを検索して初めて知ったのだが、このサバカレーというのは家人の言っていたのが正しくてドラマに触発されて作られたものらしい。そしてドラマの撮影場所となった川岸屋水産でもサバカレーが作られていて、そこもドラマの放映後からの生産らしいのだ。最近銚子で作られている水産加工品に興味を持っているのだが、こんな現代風ないきさつで生まれた水産加工品も珍しいのでは。

 とここで最初の『カレーライスの誕生』にもどるが「サバカレー」は間違いなくドラマ以前にも日本のどこかで作られていたはずである。すなわち福島県「ほっきカレー」、和歌山県では「サザエカレー」なんて言うのもある。またマイワシのカレーがあるならマサバ、ゴマサバのカレーがないわけがない。このカレー材料になった水産物も調べると奥が深いだろう。

sabakare-.jpg

信田缶詰
http://www.fis-net.co.jp/shida/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

月別 アーカイブ

このアーカイブについて

このページには、2006年8月以降に書かれたブログ記事のうち水産会社、加工品図鑑カテゴリに属しているものが含まれています。

前のアーカイブは水産会社、加工品図鑑: 2006年7月です。

次のアーカイブは水産会社、加工品図鑑: 2006年9月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。