『新版 俳句歳時記 春の部』(角川書店)に白魚はある。とすると白魚の季語は春となる。さて、この白魚がスズキ目ハゼ亜目ハゼ科、これはちと面倒くさい表現だが、ハゼの仲間のシロウオならすんなり春だがサケ目シラウオ科のシラウオならばそうはいかない。この見極めが難しいのだ。
角川の季語事典、中村草田男の「白魚汲み乙女の白き膝の皿」が上げられていてこれは明らかにシロウオ。加倉井秋を「白魚船恥じらえる帆を孕ましぬ」はシラウオであるように感じる。このように長年混同されてきたシロウオ(素魚)とシラウオ(白魚)はしっかり分けるべきである。
現在の市場で見る限り走りのシロウオでも入荷は2月から。旧暦でも1月である。すなわち季語は当然春となる。反してシラウオの入荷は年末から盛んとなっていて、これは春にもあるが「走り」を冠にして季語は冬だろう。
厳寒に、いまでは益々暖房を効かせて熱燗をやると頬が火照るようである。そこに柚の香を聞かせたシラウオ、辛子酢みそを脇に置けば、外の雪を見ながら感極まれる肴となる。春未だ遠しで、冬ごもりに冷たいシラウオがうまい。
白魚に名残の柚をきかせたり(秋野まさし)
市場魚貝類図鑑のシラウオ
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