2008年3月アーカイブ

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 隠岐の旅は楽しかった。それは島で暮らす人との出会いであり、また食材との出合いでもあった。
 残念ながら、そのほとんどが一般的には市販されないものばかりだった。
 かといって買って来られるものにいいものはなかったのかといわれると、それこそ「ありすぎてこまるほど多かった」のであるる。そのなかのひとつが隠岐西ノ島港近くにある亀沢鮮魚店に売られている加工品だった。
 
 当日朝、亀沢鮮魚店には鮮魚はまったくなかった。それで冷凍ケースを見ていて見つけたのがボイルしたサザエとアオリイカの干物。
 アオリイカの干物も旨さにビックリしたのだが、感激度からするとサザエには及ばない。簡単な真空パックの中には数え切れないほどの、サザエの足が丸のまま入っている。たぶん生の貝殻つきなら1キロ以上はありそうだ。これで1パック1365円というのは安すぎる。

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 商品名は単に「ボイルサザエ」、隠岐であがったサザエをゆでただけという身も蓋もないものだが食べてみると、「本当にゆでただけなんだろうか」と疑問符が沸き上がってくる。
 これには寿司職人の渡辺隆之さん(『市場寿司 たか』)も驚き、「どうやってゆでたのかな」と考え込むほどだ。

 味わいは甘味があって、サザエの磯の香りが生きている。柔らかいのでついつい食べ過ぎてしまうのが難点と言えば難点だが、隠岐西ノ島を代表する逸品であることは間違いない。
 隠岐のお土産として大々的に推薦する。

亀沢鮮魚店 島根県隠岐郡西ノ島町大字浦郷177-13
西ノ島町役場
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島根県庁
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島根県水産課
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、サザエへ
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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 今年は慌ただしく、季節を忘れてしまいそうだ。それでも我が家のベランダにも桜の花びらが舞い込んできて、まことに「春の盛りになりにけり」なのだ。
 そんな物憂い休日に、春らしい料理をとりあげたいと、画像データを整理していたら、「小女子のかき揚げ」があった。

「小女子」とは標準和名イカナゴの関東、中部での呼び名。市場の惣菜部でみつけた三河湾産の「釜揚げ」を使い、野菜は海老名の海老さんにいただいたアシタバを使った。
 アシタバは新芽が柔らかく、一口噛んでみると苦みはほどほどに香りが高い。これを刻んで、釜揚げ小女子と混ぜ合わせる。後は高温で短時間揚げるだけだ。

 イカナゴの釜揚げは揚げると香ばしく、しかも旨味が強い。そこにアシタバの香りが相まって、素晴らしいかき揚げが出来上がる。
 気温が高くなったせいか、ビールがうまいのだけど、かき揚げは「やたらにビールを盗む」のだ。
●器/岡山県倉敷市 武内立爾さん。「素晴らしい器をありがとう!」。
●冬眠から目覚めた、海老名の海老さんにも感謝します。「おいしいアシタバをありがとう」。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、イカナゴへ
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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 島後は隠岐諸島でいちばん大きな島。だから島の周囲にはいくつもの集落があって、いちばん北にあるのが久見である。
 風光明媚なところであるとともに定置網で様々な魚があがる。その代表的な魚がホソトビウオである。島ではこれを煮干しや干物にするのだけど、『久見特産』ではもっと食べやすく燻製にして売り出している。

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久見特産の社長、八幡久恵さん。社長自ら燻製作りの陣頭指揮にあたっている

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 これがなかなか乙な味なのだ。燻製の香りはやや控えめ。ホソトビウオのクセのない味わいに、ほどよい甘味があって、これから暖かくなると、ビールのともとして最適なもの。

 一袋200円という激安値段で手作りの地魚加工品が手にはいるというのもうれしい。
 しかもきっと食べ始めると、一袋では足りないはずだ。

ふるさと五箇村便
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島根県庁
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 大阪市鶴橋はボクにとってスワンダフルな場所だ。早朝に地方市場を見てから、昭和30年代を思わせる商店街のトンネルのようなアーケードをくぐり、そしていちばん引き寄せられる韓国食材、キムチなどを売る場所へと来てしまう。そこで目に付くものはマダラ、スケトウダラ、シログチにフウセイ、アカエイ。魚貝類も独特なものがある。
 ボクは韓国食材には疎くて、知識がない。だから鶴橋を歩くたびにわからない食材に出くわし、歯がみする。
 そのためなんとか韓国の食材の知識、料理法などを取り入れたいと、現在無手勝流ではあるが勉強している最中である。
 まずは最初に水産物から。しかも大好きなチャンジャのことをとりあげる。

 チャンジャは材料はスケトウダラの胃と腸だろう。本来はここに鰓を加えるのだという。これを細かく刻んで、塩を加えて少し寝かせ、タレで和える。タレは憶測だが、粉唐辛子、ニンニク、醤油、リンゴかナシのすり下ろしたものに、ゴマ、ゴマ油というものだと思う。思うが我が家に基本的なものを記す韓国料理の本がなく、想像するしかないのが残念だ。

 これをある程度寝かせるのだろう。とするとチャンジャは漬物のたぐいだろうか? その昔、「キムチの一種」と思いこんでいたのだが、間違いだろう。

 鶴橋の市場内で買い込んだチャンジャは絶品である。腸のコリコリとして、噛みしめると旨味が浮き上がってくるところ。そこにまとわりつくタレの甘味と旨味とゴマ油の香り。食卓にあると、ついつい箸が延びてしまうほどに魅力的だ。

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 また、チャンジャはご飯に合う。ボクはあまり酒の肴にしたことがなく、思い返すと、ご飯のおかずであることがほとんどである。たまにエゴマの葉(青じそでも)があると、それと和えて、これまたご飯にのせる。

 さて、大阪に行くことがあったら必ず鶴橋に立ち寄り、出来うる限りたくさんの韓国の食い物を買い込んできたい。そして「韓国料理の基本」を学びたいと思っている。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、スケトウダラへ
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 隠岐水産高校の「さば味付け」缶詰を食卓の中央に置く。子供達は缶から直接食べるなんて初めてなので楽しそうだ。
 缶から箸でつまんで、いきなりご飯にのせて食べる。
 まずは、ボクがうなる。子供も真似をしてうなる。
 あとは中身の取り合いになり、汁も残らない。そしてもうひと缶。
 どうしてこんなに食べても、食べてもうまいんだろう。

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 よくよーく味わって考えてみると、「うまい」の原因は「甘い」にあるようだ。この「甘い」が単純ではない。例えば、市販のサバ缶と隠岐水産高校のものでは「どちらが甘いか」というと、明らかに普段買い求めているものの方が甘い。それなのにより「甘く」感じる、甘さのなかにマサバの旨味が加わり、しかもたぶんマサバの多種多様なアミノ酸がこれまた加味されている。新鮮な材料を使っているのだろうか、苦みや雑味がない分、その甘さは上品なものでもある。
 このご飯にサバ缶をのせて食べる幸せは、久しぶりに感じたもの。

 材料は砂糖と本醸造の醤油だけ。プロはついつい酒とか味醂とか入れるが、缶詰などは出来るだけ単味に近い方がうまい。この日本海のマサバを材料とした、缶詰ならではの無添加の味わい。きっと企業では真似の出来ないものに違いない。

 隠岐水産高校製のものには「水煮缶詰」もある。こちらはずばり、原料のよさから苦みが無く。マサバの旨味も濃厚なものだ。これほどえぐみの少ない水煮缶はめったにみつけられないだろう。

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 我が家では、サバの水煮にタルタルソースを加えて、パンとともに食べている。家族がいちばん好んで食べる水煮はマグロ類を使ったもの。でも自然保護や栄養的にはサバ属マサバの缶詰の方が上だと思っている。

 味わって楽しいというのもあるが、面白いのは缶に学校のマークがあって、裏側に生徒自身がモデルとして登場しているのだ。「このコが作ったのかな」なんて考えるのも、また「隠岐の高校生も今風にオシャレだな」なんて思うのもなかなか楽しいものだ。この写真ラベルのせいで大量買いする人がいそうで恐い。

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 さて、隠岐水産高校の缶詰はあくまで生徒の実習で作り出されるもの。当然数に限りがある。一般人でも飛行場などで手に入れることは可能だが、なかなか手に入れがたいものだという。この絶品缶詰を多くの方に味わってもらいたいが、ボク自体が次回手に入れられるのが何時なのか、神のみぞ知るなのである。
●この缶詰を送ってくれた幼なじみカンイチに感謝。
 
隠岐水産高校
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 西高東低だと思える魚貝類は少なくない。サワラ、マナガツオ、アマダイ、ハモなどすぐに頭に浮かぶし、関東ではとれなくなっただけだが、トラエビ、ヨシエビ、サルエビなどの小エビ類もそうだ。そんななかに「お前もか」と改めて気づいたのがキダイである。
 キダイとは「黄鯛」という意味合いだが、西日本ではおしなべて「連子(れんこ)」で通る。これが西日本ではよく食卓を賑わし、また料理人からも愛されている。それがなぜなんだろうね。関東では影が薄いように思えるし、買い求めると、見た目の美しさの割に、割安なのだ。

 だから春になるとキダイをついつい買い求めてしまう。
 そして作りますものは、主に塩焼き。他には酢締め、唐揚げもうまい。うまいことは、うまいがやっぱり塩焼きに限る。キダイを勝ったらとにかく塩焼きだ。それほどキダイの塩焼きはうますぎるのだ。

 キダイの塩焼きの旨さは皮目の甘味と独特の風味からくるもの。当然、その下にある真っ白な身の、繊維質でほどよく口の中でほぐれるのもいい。
 食べ始めると、もう一気呵成にむさぼり尽くす。当然箸など余計なものとなり、両の手をフルに使って、それこそ骨格標本のようになるまで、身をせせるのだ。
 最後には、骨湯も楽しむ。我が家の骨湯は別に片口を用意して、そこに熱湯を満たして持てないほど熱くしておく。湯を捨てて、骨を入れて、これまたガラガラに沸き立った湯をそそぐ。

 酒を飲んだときに、この骨湯に浅葱を散らしたのが、まことにいい加減だ。アルコールでささくれ立った胃の腑を癒してくれる。
 この美しいキダイの塩焼きと、咲き始めの桜。これぞまさに「春だなー」叫びたくなる。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、キダイへ
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島根県隠岐の水産物だけを使って寿司図鑑1ページをつくります。
島根県には多彩で、しかもたっぷり豊かな水産物がある、その一端をお見せしたい。

寿司図鑑
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大粒で、身がふっくらして、上品な味わいでいながら、旨味は充分に感じられる

 養殖の世界ではやるもの、それは三倍体である。本来倍数であるはずの生き物の染色体を奇数である3個に人為的にしたもので、特徴は成熟しないということ。成熟しないということは、お肌も体も若いまま、次世代への投資をしないもので、長くおいしい状態で海に存在すると考えてもいいようだ。
 魚類の世界ではニジマスに活用されて、今やなにげなく食べているコンビニお握りの鮭(サケ科という意味。愚かにもコンビニ業界ではこの材料名をしばしば見かける。三倍体で多いのはニジマスから作られたサーモントラウト)の多くが三倍体である。

 これをいろんな水産物にまで応用すべく、日本中で研究が行われている。そして最近出てきたのが広島県の「かき小町」だ。
 ここにある「小町」というのは三倍体で、すべてメスと言うことからくるのだろう。
 貝殻も立派なら値段も1個卸値で300円弱、なかなかお高い。例えば、養殖の殻付きマガキが同じ日に100円を割っていることからしても市場での評価が得られているということになる。
 しかし、近年、マガキをめぐる売る側の工夫というか、試行錯誤は多種多様。「海域」、「天然」、「落ちガキ」に有名養殖場の名をしっかり明記するだけでも、値段は乱高下している。ここに人口的に作り出した三倍体のマガキの価格は高いままでいられるのだろうか?

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この表示からは「三倍体」というのがわからない

 買い求めたのは、たったの二個、まあ味見程度なので充分だろう。貝殻に厚みがあり、剥いた身の方もぷっくりと脹れて強い弾力を感じる。剥き身は見事だが、味の方はいかがなものか? というとこちらもかなりうまいね。

 ここで予め書いて置くが、マガキの三倍体を作り出す必要性はあるのだろうか? 食べる側からしたら疑問符がいっぱい湧いてくる。マガキは寒い時期に食べるからいいのであって、年がら年中食べられるようになると、食文化という意味では破壊行為に等しい。
 暑い夏が去り、残暑も終わり、秋本番の10月になって、街角で「カキフライ始めました」の貼り紙を見る。ボクはこの一瞬が好きで好きでならない。これが「そういえば8月も、9月も、カキフライ食べたよな」となるのは迷惑極まりない。
 もっと三倍体に関する考察を深めていくと、例えば病気に強いのだろうか? 冬の旬に時期にも、ただのマガキよりも味がいいのかも知れない? などいろいろある。
 でもやはり個人的にはマガキは現在あるものでも充分にうまいし、秋から春までの限定的な食材であって欲しい。まただからマガキの価値があるとも思われる。

 この「うまい」という表現をもっと詳しく書き上げると、決して出色の「うまさ」というほどの「うまさ」ではない。例えばサロマ湖や厚岸湖の天然マガキと比べるとどうだろう。並べて食べてみないとわからないが、大きな違いが出るとは思えない。ひょっとしたら、ただの養殖マガキと比べても「誰でも感じるほどの違い」が見いだせるだろうか?
 マガキの三倍体というのも後数年でありふれたものになるのではないだろうか? このときはっきりした結論が出そうだ。

 五十路になって食べ物に対して、味以上に「出来るだけ、自然のものであること」、「何か時間の流れを感じるもの」、端的に言って「季節性」を重んじるようになってきている。とすると、人口的に作り出す水産物を積極的に食べたいものか、というと否だな。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、マガキへ
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 今、世に騒がれるものにCAS(キャス)冷凍というものがある。要するに過冷却にしたものを、一気に凍結させたもので、食品の細胞を破壊することなく冷凍状態にできる。これはなかなか先進的な技術で国内でも導入している企業は少ないのだ。そんな最先端の技術をいち早く取り入れて、水産物加工を行っているのが隠岐海士町の『ふるさと海士』である。

 実際に島のCAS事業部を尋ねて、説明を受けて、いくつかをサンプルとして送って頂く。そしてまずは、冷凍食材でもっとも劣化の少ないというイカを食べてみることにする。
 場所は我が家と八王子総合卸売センター『市場寿司 たか』。

 解凍はいたって簡単。パッケージのまま流水につけて5分ほど。取り出すと、透明感のある美しいフィレで、まな板にのせて切ると、しっかり弾力を感じる。
 これをひも状に刺身にして、食卓に出すに、だれも冷凍品だとは気が付かない。驚くのはその爽やかな甘味と旨味である。隠岐周辺の「白いか(ケンサキイカ)」の味の良さはよくしられるものだが、加うるに、この弾力、硬さはまるでとれたての状態に近いだろう。
 魚貝類を調べるに当たって、たくさんの冷凍のイカを食べてきているが、味もそうだが、これほどの食感というのは他に例をみないものである。海士町の目の前の海で揚がったばかりの「白いか(ケンサキイカ)」をCASにかけるというのが、どれほどの威力を持つものかを実感する。

 次いで、これをプロである『市場寿司 たか』の渡辺隆之さんに食べて、握ってもらって、値段から意見を聞いてみる。
「これは凄いね。もともとイカは冷凍しても悪くならないものだけど、これはプロでも冷凍だとはわからないね。赤いか(関東でのケンサキイカの呼び名)としては甘味がちょっと薄く感じるけど、新鮮な証拠。甘いのが好きなら、解凍してちょっと寝かすといい」
『ふるさと海士 島風便』のショップでこれを買い求めるとフィレ3枚で送料込み4800円。このフィレ3枚は刺身の歩留まりから丸で1キロ前後とすると、築地場内のケンサキイカの値段1キロあたり2500〜3500円前後からするとやや高い。しかし築地場内は卸値だから一般消費者にはかなりお得、しかもイカをさばく手間が不要となると、家庭で手軽に最高級の味を楽しめる。
 たかさんは値段的にも
「寿司ネタとして、この値段はうれしいだろうね。一枚一枚、必要なだけ使えるし。オレなんか、ちょっと高い寿司屋やってたら使っちゃうかもなー」
 いや、現実に既に使われているのではないだろうか? 最近の寿司屋というのはかなりの高級店でも冷凍物を使っているのだという。

 島根県隠岐は日本海に浮かぶ、美しい諸島なのだけど、離島としてのハンデは大きい。そのハンデを補ってあまりあるのがCASであるかも知れない。
 
ふるさと海士
島風便
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島根県庁
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島根県水産課
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「市場魚貝類図鑑の商店街」を「市場魚貝類図鑑の市場」に名称変更
新たに島根県の棟を作成

新リンク
島根県浜田市
いそまる本舗(大磯)
http://www.rakuten.ne.jp/gold/isomaru/
島根県隠岐西ノ島町
伝説のイカ 活魚倶楽部
http://www.oki-katsugyo.com/

鳥取県岩美町
浜勝商店
http://www.hamakatu.co.jp/


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 2月12日、島根県での魚貝類を見る旅の初日、雲行き怪しく「海は大荒れの予想」となっていた。それでも松江魚市場では豊富な魚貝類を見ることが出来たし、また魚市場でたくさんの人たちと出会えたこともあって、充実した一日となった。
 なかでも思いも寄らぬ、収穫が現松江市内の魚屋が素晴らしかったことだ。
 ここで予め書いて置くが、ここには旧島根町などの店も含まれる。

 まずはヤマトシジミさんが常連となっている市内砂子町にある『シンコー』である。ここは外見的にはいたって在り来たりのスーパーでしかない。ところが店の前に並んだ魚貝類に目が点になる。なにしろ総て地物ばっかり。「泥えび(クロザコエビ)」、ツキヒガイにテングニシ、アマダイにムツ。

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シンコーにあったテングニシとツキヒガイ

 店内にもムツ、ホウボウ、アマダイに中海のシジミ。今では中海のシジミは貴重だし、値段もなかなかお高い。
 店の前に魚貝類を並べるのは午前中早い時間のみ。徐々に店内の冷蔵ケースに移される。魚が店先にある時間に行くことをお勧めする。
 海が荒れてきていて魚が少ないというのに、この豊かな品揃えは、旅人としてもうらやましい。

 次なるは恵曇漁港前の小さな魚屋さん。まさか、これが魚屋だというのは誰も気がつかないだろう。でもがらっと引き戸を開けると、ここにも見事という他はない魚が、しかも格安で並んでいる。

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 アカガレイ、「ちこだい(チダイ)」、「てなし(ヤリイカ)」、スルメイカにベニズワイガニ。ヤマトシジミさんは海が荒れているせいで「やっぱり魚が少ない」とがっかりしていたが、これで少ないのと逆に驚く。しかもここの値段は信じられないほどに安い。

 残念ながら、12日、ほとんど港での水揚げを見ることが出来なかった。そして市内に帰り着いて立ち寄ったのが『ラパン』である。

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出雲市大社のブリ。小伊津のイトヨリ、アマダイ。宍道湖のフナにシラウオ。「のどくろ(アカムツ)」に中海のヤマトシジミ。これを見て興奮しない魚好きはいない

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フナのこつけ(フナの細切りにした刺身に、フナの卵をまぶしてある)は宍道湖・中海周辺の郷土料理

 松江城からもほど近い母衣町にある外観はオシャレなスーパーだが水産物の品揃えが素晴らしい。しかも新鮮この上ない。たぶん、都内でみるどのスーパーよりも置いてある魚は数段上だと思って欲しい。

 出来るだけ多くの知り合いに松江の印象、また松江市内で買いたいお土産を聞いてみた。残念ながら一人として豊富な魚貝類を挙げた人はいないのだ。まことにこれは残念でならない。
 市内至る所に見事な品揃えの魚屋があるという。松江で和菓子なんて固定観念を捨てて、加うるに島根の全国有数の豊富な海産物をお土産にするのはいかがだろう。
 春となって、そろそろお勧めなのが旬を向かえるマアジ、「赤みず(キジハタ)」、「真いか(ケンサキイカ)」、イサキにマアナゴ、サザエにシイラ。買って帰りたい魚貝類を挙げたらキリがない。

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 疲れているという自覚はない。思った以上に元気だ、と喜んでいたら、突然首が曲がらなくなってしまった。しかも寝返りをうったり、なにげに振り向いたときにくる痛みが気持ち悪い。近所の薬屋にいる美人のお姉ちゃんに相談すると「血圧が高いとか、疲れがたまっているんじゃないですか」なんて可愛らしい声で言ってくれる。すすめてくれたのがピップ内服液というやつだけど、ぜんぜん効き目無し。

 疲れている可能性があるとしたら、我が家には「豚牡蠣鍋」を作り食べるという手があったのだ。なぜなんだろうね、豚肉とマガキの剥き身が落ち込んでいる体力を回復してくれる。
 材料は当たり前だけど湯通しした豚のロースと、汚れを落としたマガキの剥き身。大阪の叔母にもらった徳島県小鳴門海峡の塩ワカメ。野菜は芹、浅葱、白菜、ブナシメジに豆腐もたっぷり。
 鍋の汁は昆布だしに清酒をたっぷり、そこに塩味を微かにきかせる。
 疲れをとってくれるのは豚やマガキの成分によるのだろうけど、とにかく大量に野菜を食らう。
 陸の豚と海のマガキが、不思議なほどに相性がよく、猛烈にうまいだしとなっている。ついついだしをすくっては飲むので最後のぞうすいは諦める。
 今回は山口県山口市堅小路にある『ヤマコー』の「山口の味つけぽん酢」で食べたのだけど、これもなかなかあなどれぬ味わい。橙(だいだい)の酸っぱさが、余計に疲れを落としてくれている。

 さて、一夜明けて、曲がらぬ首が元通りによくなったかというと、ますます辛くなってきている。まさか首の痛みで病院に行くのも変だしねー。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、マガキへ
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豚肉に関しては肉屋がたくさんある八王子の市場へ
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 3月の隠岐の旅では、美しい景色、また島の歴史などに感動すること多々であった。
 さすがに二上皇の流された、悲劇の島でもあるし、イカ寄浜など伝説や昔話も豊富であるようだ。
 さて、その雄大な景色、歴史、様々な食材に感動した旅で、もっとも驚嘆したことはなにか? というと隠岐西ノ島の“踊る岩ガキ売り”との出会いである。
 ボクは、この“踊る岩ガキ売り”という意表を突く存在に、まるで「ネッシーの存在を確認する」以上の興奮を思えてもいる。

 西ノ島の“踊る岩ガキ売り”は二人組である。片やイワガキ養殖を営んでいる朝日日本海さん、片や西ノ島の広報・振興を担っている、若だんな。一見、ただのオヤジコンビであるが、イワガキを持たせると凄い。
 両手に持ったイワガキを交互に持ち上げながら、わけのわからん歌を歌って、踊って踊りまくる。「もうやめて」といってもなかなか止めないのが難点だが、ついつい一緒に踊ってしまいたくなる魅力がある。
 西ノ島にも芸能や民謡はあるだろうけど、過去にこれほどの至芸はあっただろうか? このコンビの歌と踊りを見るだけで「西ノ島」に渡ってよかったー、と感動できるだろう。

 ちょっとここで断って置くが、この西ノ島の養殖イワガキは絶品である。このうまいイワガキを買って、楽しい踊りと唄がついてくるなんて、この世で最高の贅沢だともいえそうだ。

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 実は、この“踊る岩ガキ売り”の芸をもう一度見たさに、6月にでも再度隠岐に渡ろうかと思い悩む日々が続いている。
 ここで結論めいたことを書くのははばかれるのだが、あえて書く。世界中の人が隠岐でイワガキを買い求め、そしてこのおバカなコンビの歌と踊りを見て頂きたいと思う。そうすると、どうなるかと言うと、きっとバカバカしすぎて世界中から戦争が無くなり、憎しみも悲しみも消え去ってしまうに違いない。
 世界平和が、隠岐西ノ島の“踊る岩ガキ売り”にかかっている。このコンビを見ても、けっしておバカなオヤジ二人組だとは思わないで欲しい。

島根県隠岐西ノ島町
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 さて、丸々1週間の旅を終えて、大きな疲労の波が押し寄せてきている。それでも帰りの新幹線などで旅の途中、また帰り着いてから浮かんできた隠岐への感想をここで綴ることとしたい。
 前回2月の島根本土の旅は大変だった。横殴りの雪と、大波に、海を見に行くのではなく、人に会いに行く、という旅となってしまった。そして3月となり、辿り着いた島根は春を迎えて、穏やかな気候となっており、まさに隠岐への船出日和だったのだ。

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隠岐美人三人。知夫里島にて

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西ノ島で出会った可愛い子馬

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海士町でみた月は寂しかったなー

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これはなんでしょうね?


 隠岐諸島は知夫里(ちぶり 知夫村)、西ノ島(西ノ島町)、中ノ島(海士町)の『島前三島』と『島後(どうご 隠岐の島町)』の島からなっている。その島々総てを、三泊四日で回る。
 そこで見つけたのが多種多様な美味である。磯回りではサザエ、アワビ、マダコ、そして「岩のり」、ワカメ、「神葉草(ホンダワラ)」、「はなたれ(アカモク)」。隠岐周辺の深場では「松葉がに(ズワイガニ)」、「紅かに(ベニズワイガニ)」、「白ばい(エチュウバイ)」、オオエッチュウバイ、「赤ばい(チヂミエゾボラもしくはエゾボラモドキ)」、「赤めばる(ウスメバル)」、メバル、ヤリイカにケンサキイカ。挙げたらキリがない。
 天然物もあればマサバやブリ、イワガキ、ヒオウギガイなどの養殖も盛んである。
 この美味であることは筆舌に尽くしがたい。
 素材もそうだが、隠岐独特の料理法も素晴らしい。例えば「れんこのみそ焼き(キダイ)」、岩のりをあぶる、ワカメの加工品である「板わかめ(めのは)」、「べこ(アメフラシ)料理」。とれたばかりのヤリイカの塩焼きは絶品だった。「鬼えび(イバラモエビ)」は生もよかったが、塩焼きの旨さにビックリ仰天した。そう言えば、島で水産物に従事する人たちも、聞いてみると単純な料理法を好まれているようだった。
 意外に新鮮だったのが「白ばい(エッチュウバイ)」のフライ。スルメイカで作る「焼きいかの麹漬け」なんてまさに酒を盗む佳肴だ。
 水産物が主役ではないが「隠岐そば」には感動した。そば粉十割にサバ、アジなどのやや甘めの汁をかけて岩のり、ネギをちらしただけのもの。これは我が、そば食い人生の中でも出色の出来事になった。
 隠岐で忘れてはならないのが、こじょうゆみそや、麹を使った食品。また海産物を麹などで漬け込んだ加工品もある。それに加うるに、うまい日本酒があるのも素晴らしいことではないか!

 それこそ無数にある隠岐の美味だが、これがなんと多くが観光客、また島民以外の人間には手に入らないように隠されてしまっているのだ。これを「隠岐・食の埋蔵金」、「隠岐・食の隠れ金山」と呼びたい。不思議なことに今回の旅での感動的食の出合いは、すべて一般家庭の作り出したものや、伝統的な料理法にのっとったもの、はたまた伝統的な加工品ばかり。そして対するに、水産物の多彩であるにも関わらず、よそ者が食べられるのは定型化したブリやサバ、せいぜいがズワイガニ、キダイなど既知の魚貝類ばかりとなっている。
 港では素晴らしい雑魚が揚がっている。また養殖の「めじろ(ブリの若魚)」もいいだろうが、天然ものの立派なスズキ、「くろや(メジナ)」が揚がっている。高級な「白いか(ケンサキイカ)」だけではなくスルメイカ、「もんごう(カミナリイカ)」も見られた。これら多種多様な魚は誰が食べているのか? 「これを旅人にも食わしてくれよ」なんて定置網の水揚げを見ながら思ったものだ。
「岩のり」、「板わかめ(めのは)」も地元の方が食べているものが、お土産屋で手に入るものよりも味わいとしては上であろう。

 島々を巡り、この隠し財産を島外、観光客にもなんとか売ろうという取り組みを見た。これがなかなか始まったばかりで、課題が多い。「松葉がに(ズワイガニ)」、イワガキなど徐々に知名度を上げてきている「売れ筋商品」だけではなく隠岐の産物の多様性を全国に知らしめていくには何が必要なのか? どのような方法をとるべきなのか?

 ここで提案なのだけど、「隠岐は隠岐らしく、島根の多彩な産物を網羅して、隠岐の人がうまいと思うものを、隠岐の料理法で、隠岐に来た人に食べてもらう、隠岐以外にも売る」これが今、隠岐にいちばん必要なことだと思う。既製の板前料理などできるだけ早く、片隅に追いやるべきだ。もしくは捨て去ってもいい。
 すると島を訪れて、また再度島に渡る旅人が増えるだろう。隠岐のものを名指しで買う人も増えるはず。当然、島の魚貝類自体の評価も上がるのではないか?
 離島という、ハンデをなんとかプラスに向ける。この島根県の取り組みは前途多難だ。

隠岐諸島
知夫村役場
http://www.chibu.jp/
西ノ島町役場
http://www.town.nishinoshima.shimane.jp/
海士町役場
http://www.town.ama.shimane.jp/
隠岐の島町
http://www.town.okinoshima.shimane.jp/index.php
(順番は旅の行程による)
島根県庁
http://www.pref.shimane.lg.jp/
島根県水産課
http://www.pref.shimane.lg.jp/industry/suisan/
JFしまね
http://www.jf-shimane.or.jp/
隠岐の旅は本土の旅が終了後に始まる


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さて、本日9日の深夜バスで京都へ。
京都中央卸売市場で島根からの荷の話を聞き、市場見学。
七条当たりで朝ご飯。できれば錦市場も見たいとは思うが、あんまり意味があるかどうか?
たぶん錦はパスして、夕方までに松江に移動。
翌日10日は境港に立ち寄り、隠岐に渡ります。
とにかく金曜日14日の朝までは隠岐に。
船か飛行機で境港、米子まで。
そのまま大阪に。
金曜日14日の夜は淀屋橋でヤガラさん、まささんと大酒を呑み。
翌日15日は堺魚市場、そして鶴橋に回って
迷路を迷いに迷い、夕方には帰宅するつもりです。
ボクが生還できるか否かは不明。


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 松江魚市場を後にして、島根半島の港港を巡るはずが、なんと小雪ちらつき、海は高波。どの港も出船を見合わせているのだという。致し方なく、恵曇漁港でスルメイカの水揚げを見て、日御碕を目差す。

 日御碕は島根半島の最西端にある風光明媚な観光地。日御碕神社、出雲日御碕灯台などがあるが、むしろ自然そのものを楽しむのに最適に思える。
 その日御碕を目差しながら、地元で海藻などをとっている大国紀子さんと電話で連絡する。待ち合わせ場所は大社町から日御碕に向かう途中にある民宿『幕島』である。
 出雲市内から、出雲大社を右手に見て、海に出る。クルマから見る日本海は重苦しい雪雲に被われて、黒く沈んで見える。かなり海が下の方に見えるようになり、日御碕神社に向かって坂道を上る途中でヤマトシジミさんがハンドルを急激に左に切る。険しく細い坂道を下ると、民宿『幕島』の前に出た。

 さて、島根の水産物を丹念に見ていく旅の初日、港での水揚げを見るはずが荒れ模様の天候で残念至極なものとなった。そしてその大空振りの日をすくってくれたのが大国紀子さんと、民宿『幕島』の女将さん(名前をお聞きできなかった)である。
 大国さんが当日の荒れ模様を予感して前日に取り置いてくてたのが、島根県ならではの食用海藻「そぞ」だ。標準和名をユナという。ユナに毒があるわけではないが、ゆでて食べるとアセチレンガスのような、独特の風味が鼻をつく。そのため食用とする地域はほとんどない。

 なんと我々は総勢6人となっている。この大人数で押し掛けてさぞや迷惑と思ったが、大国さん、女将さんは快く民宿の食堂らしい部屋に招き入れてくれる。大国紀子さんは電話からも感じられたが、まことに穏やかで笑顔が可愛らしい。また対照的に女将さんは。きりりとした出雲美人である。

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 テーブルと椅子が並ぶ部屋をよくよく見回すと、どうやらここは釣り人(『幕島』は関東で言うところの釣り宿)の休憩所にあたるものだ。壁にはアオリイカ、ブリ、ヒラマサ、クロダイなど大物の写真がたくさん貼られている。

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 待つほどもなく、大国さんが「そぞ」を持ってきてくれる。これはまさしくユナであり、話を聞く限り、この地域では「そぞ」というのは幾種類かの海藻の総称であることがわかる。

 そして女将さんが最初にご馳走してくれたのが、「そぞの胡麻酢かけ」である。ユナは思ったほどクセがなく、むしろシャキシャキした食感が心地よい。
「これはゆですぎたかもしれんね」
 地元で生まれ育った女将さんには、ユナの風味がゆですぎて消えていると言う。

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 ヤマトシジミさんなど、思わず「うまい」と漏らすほどなのだが、地の人には「そぞ」の真味がないと感じるらしい。ここでわかったのはゆでた大国紀子さんは「そぞ」の香りが少ない方が好みであるということ。当たり前のことなのだけど、日御碕の家庭家庭でも「そぞ」のゆで加減が違っているということだ。

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 次に出てきたのが「そぞのお雑煮」だ。海藻でも褐藻類の収穫期は春だけど、紅藻類である「そぞ」は初冬から取ることが出来る。この地域は海辺まで山が迫り耕作地が少なく普段でも野菜が貴重であるはず。しかももっとも野菜の少ない正月に食べる雑煮の具としては手頃な前海の海藻ということになる。そして食感のよさ、独特の風味から「そぞのお雑煮」が生まれたのだろう。
 汁物に入れた「そぞ」もお餅のもったりしたなかに、しゃきっとした食感を生み出し、海藻の香りがたって非常に美味である。
 ユナ特有の香りは、あまりゆですぎない方が感じられるというので、さっと湯通ししたものを出していただく。ここには確かに曰く言い難い香りがあるものの、ボクとしては好ましい“食材としての個性”に思える。この風味が「そぞ」ならでのもので、けっしてイヤなものではない。
 ユナの他に日御碕名産のヒジキ、アラメ料理までご馳走になる。どれも味つけがほどよく、おいしくいただけた。とくにアラメの旨さは出色のものだ。アラメのうまさに感激していたら、女将さんがお土産に持たせてくれる。

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 大国紀子さんと、女将さん、おいしい海藻料理をありがとうございました。
 感謝とともに、こんどはぜひ民宿『幕島』に一泊したいものだと切実に思った。民宿前の海の美しいこと。この夕日の美しいだろう前浜で一日遊んでみたい。

 蛇足になるが、昨今の食の欧米化や家庭で料理を作らない風潮によって、海藻の食文化は年々衰退しているように思える。女性雑誌などでダイエットテーマが幅をきかせている。また健康に関するテレビ番組もまことに多い。そんな健康やダイエットになくてはならないのが、海藻なのだ。海藻にある豊富なミネラル、アミノ酸、ヨード、食物繊維、この総てが現代人には欠乏している。それなのに世の人々は、うまくも何ともないくだらない無味乾燥なサプリメントでこれらを補給している。そんな味気ないものを食らうくらいなら、「うまい海藻料理」を食った方が何倍もいいだろうに。食育に取り組む人たちにも言いたいのだけれど、「海藻を忘れたらいかんぜよー!」。

民宿幕島
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ユナへ

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 早春、市場に溢れているもの、それはハウスものの山菜いろいろ。天然、露地物と比べて香りが薄いなんて言われるが、三多摩地区の寒い冬がやっと終わりそうなのに終わらない。梅の花が「春らしいけど、まだまだ春じゃない」という冷たさのなかにある。万年疲労で、日々息切れ気味の五十路オヤジは、春を待ちきれないで、やっと値下がりし始めた山菜を2種類買い求めた。ギョウジャニンニクと「うるい(オオバギボウシ)」の2パックで7百円ほどの出費。
 オオバギボウシは多摩地区にも見られる山菜で、これだけは天然、栽培ものとそんなに大きな違いはない。どちらかというと、なぜにこれが野菜として日常に取り込まれなかったのか不思議なほどクセがない。対するにギョウジャニンニクは個性豊というか、名前の通り「ニンニク臭」に近い香りがあるが、あきらかにまったく独自のもの。オマケに葉物としての旨味が強い。この2種の取り合わせはまったくの偶然で、深い意味もなく、あえて選んだ根拠は八百屋のお姉さんが安くしてくれたため。だいたいいつも、ぼうずコンニャクの料理作りはこんなことに始まる。
 合わせるのは青柳だ。青柳(バカガイ)は現在の千葉県の市原市の地名。その昔、このあたりが千葉県の青柳の集散地だった。この地名によった名前は江戸の町で使われたもので、産地である千葉県内房では「ばかげ」、「ばか」なんて身も蓋もない呼び方をする。この「ばか」は足(舌)の部分がだらしなく出ているからではなく、むしろ「ばか」みたいにとれる貝であるからというのが真実だろう。その昔には、貝殻を石灰の材料に出来るほどにたくさんとれた。

 青柳のうまさの神髄は甘味をともなった苦みにある。この個性があって初めて、青柳の価値がある。だから当然、春らしい苦みを楽しむ和え物にはもってこいだ。苦みには、苦み、もしくは山菜などの風味が絶対に欠かせない。例えば青柳と白ネギではダメだけど、分葱ならいい。そしてもっといいのが山菜なのだ。
 ギョウジャニンニクの臭み、強い旨味、青臭さ、そこにシャキシャキした「うるい」があって、それら山菜自体がほろ苦い。そしてこの間にあって生きてくるのが青柳に豊かな個性。

 和え衣は西京味噌と、酢と、砂糖の単純なもの。味醂や出しは排除してしまった。これをとにかく特撹拌し少し寝かせて、具材とざくっと一気に和える。
 料理屋などでは、こんな単純な料理を作るのにも懲りすぎの感がある。あれはダメだ。むしろ単純に和え衣を作ろう。すると辛子でぴりっと鼻にくるとき、トンと口中上の方に青柳の甘味を伴った風味が素直に抜けてくる。これがなかなか余韻としては長く、しかも心地よいものだ。酒の肴であるから、飽食するものではないが、ほどよく作ってはもの足りぬものなのだ。

 どうしてなんでしょうね。こんな一品が、冬のささくれだった、疲れ果ててしまった心も体も癒してくれる。だいたい五十路オヤジを癒してくれるのは、今ではこんな些細なものでしかない。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、バカガイへ
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 八王子総合卸売センター『高野水産』に小振りの「きんき(キチジ)」が入荷してきていて、“小きん”としては大振りなので、わっと飲食店主が群がる。それをかいくぐり、手探りで6本。「いたた」と手に棘が刺さって、そこがジクジク痛むのを我慢して、入っていた箱を手にとっても産地が書いていない。仕入れてきた高野社長に聞こうにもてんてこ舞いの忙しさ。
 と言うことで産地不明だが、触っただけで脂を感じる“小きん”をささーっと煮つけにする。
 作り方はいとも簡単なもの。
1 “小きん”の鰓を鰓ぶたから指を差し入れてゆっくり抜く。
2 熱湯をかけて、ザルなどに上げておく。
3 深めのテフロンフライパンにたっぷりの味醂、その3分の1見当の醤油を入れてやや煮詰める。
4 ここに“小きん”をゆっくり入れて、強火、そして中火で煮汁にとろみが出るほどに煮あげる。

 盛りつけたのは、武内立爾作の辰砂の深ばち。
“小きん”の煮つけは、この名品に負けないくらいにうまかった。

 キチジの味わいの特徴は白身に均質に溶け込んでいる、ゼラチン(脂)で、これが甘く、そして旨味成分もたっぷりであること。特に皮目の旨さは例えるべくもない。
 小振りなのだけど、骨離れがよくて、箸でつまめる身はつまんで、最後に骨ごと口に放り込む。
 骨湯にしたいと思っても、これでは残るべき出しの素がない。また煮汁だって、このままご飯にかけ回してしまえば飯がどんどんなくなってしまう。

 最後に、この“小きん”の産地はたぶん、福島、宮城、岩手付近だろう。やや深みでカレイ、きんき(キチジ)、ミズダコなどをとるもので、とれる魚貝類は多種多様。“小きん”だけでなく膨大なうまし小魚が混ざる。
 このうまし小魚も、“小きん”も底引き網のある季節だけのものなので、大小に惑わされることなく、速買うべし。

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 松江魚市場には海産物が溢れかえっていた。特に隠岐からの「松葉がに(ズワイガニ)」、近隣漁港からのアマダイなど国内最高峰のものが、ずらりと並ぶ。まさに壮観としかいいようがない。魚好きには、まことにワクワクする感動的な光景がそこにはある。
 ただ、それをしても松江魚市場をもっとも特徴づけているのは宍道湖、中海の魚貝類だろう。
 シジミ、コイ、ウナギ、「もろげえび(ヨシエビ)」、スズキ、シラウオ、「あまさぎ(ワカサギ)」、これを宍道湖七珍と呼ぶ。今回の松江魚市場では、その七珍のいくつかが見られるだろう、と期待していた。

 当然、スズキはすぐに見つかり、またすぐ場内の中程で、透明パックに入ったシラウオが並んでいるのを発見する。
「こんな大きいのは初めて見た」
 いつい声に出るほど、宍道湖のシラウオは大きく、また産地であるからこそずば抜けた鮮度。この薄暗い場内で透明で表面がキラキラして見える。このまま江戸前握りにしたら東京でどれくらいの値段がつくのだろう。ボクなど庶民にはとても手が届かない代物に見える。
 昔、大阪中央市場に飾ってあって見事であるのが記憶にあるが、宍道湖のシラウオは関東ではあまり馴染みがない。

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 シラウオの隣でバタバタはねているのが30センチを超えていそうな大型のフナだ。体形色合いからするとオオキンブナではないだろうか? ギンブナとオオキンブナの区別はボクには難しく、この画像を見て多くの方達に判断していただきたい。
 競りに参加していた魚屋の本川さんにお聞きすると、
「なかなか高いで、買えないな」

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 いくら位するのだろう? 聞きそびれてしまった。この時期の大フナは「子まぶり(子つけ)」になる。これは刺身をひも状に切り、塩湯でしてバラケさせた卵をまぶしつける。観光パンフレットなどではコイの写真が載っているが、フナの方がうまいように思う。
 宍道湖で「地鮒」と呼ばれていたものにはキンブナとオオキンブナ、ギンブナなどが挙げられる模様。松江では、このようにフナを食べる習慣もまだまだ健在。それなのに地物は少なく、高いために、足りない分を岡山県などから陸送されてくるもので補っているように思える。

 当然、シジミがあって、ふと市場の窓の外を見ると、なんと大橋川の岸辺で船からシジミかきをしている。護岸には葦、ネコヤナギだろうか、まだ裸木である。まだ岸辺の家々は目を覚ましていない。

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曇り空 寒しじみかく 岸辺の葦の孤独さよ 問答坊主

 場内の慌ただしく、喧噪なのと比べて、なんと静かな情景なのだろう。もしもまた松江市で時間ができたら宍道湖、大橋川、中海でのシジミ漁をじっくり見てみたい。

 今回は「あまさぎ(ワカサギ)」もウナギも、「もろげえび(ヨシエビ)」もコイもウナギも見られなかった。
 宍道湖七珍にあるなかでいちばん印象が弱いのはヨシエビだろう。大阪では「きえび」なんて呼ばれるがありふれたものだ。これを七珍のひとつに数えなくてはならないのにはワケがありそうだ。例えば島根県の一番東にある美保関には小型底引きの船がある。ここでその昔豊富に揚がっていたのが、クルマエビなのだ。

 また宍道湖が大きく取り上げられているが、中海の魚貝類が忘れ去られている。例えば松江では宍道湖産よりも中海産のシジミの方が値が高いようだ。
 その上、市場に高く積まれているのが岡山県産のサルボウ。島根県ではこれを「赤がい」と呼ぶのだけど、地元にはなくてはならない食材の一つ。その昔、大産地であり、岡山県などに出荷していた中海のサルボウがとれなくなって久しい。今では逆に、岡山県産サルボウが市場に積まれている。

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岡山県産「赤がい(サルボウ)」

 県の水産試験場でも中海のサルボウをなんとか増やせないかと研究が進んでいるようだ。中海は、一時計画されて、今では凍結されている干拓事情での水質の汚濁や、水域の締切などを改善する方向にある。すでに干拓された農作地にも放置され、排水ポンプの音だけが空しく響く場所が安来側では多々見受ける。そのような現状からも中海をなんとか元の状態にもどすべき。この県水産試験場の取り組みに関しても市民、また全国から、もっと注目を浴びて欲しいものだ。

 松江市周辺の淡水魚、汽水域の魚貝類を食べる習慣は、食文化を高める上でも重要な役割を演じてきた。観光という観点からみても、価値は高いし、需要は高いままで持続しそうだ。この地ならではの食文化を宍道湖、中海だけでまかなえるようになると、理想的だ。
●松江魚市場見学はまだまだ続く。

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 12日の朝5時過ぎにヤマトシジミさんが駅前ホテルに向かえに来てくれた。向かったのが駅にほど近い松江魚市場である。まだ薄暗い山陰松江は思ったほど寒くなく、穏やかに思えた。
 島根の県庁所在地・松江にある市場はいかなるものだろうか? 普通、考えると青果市場と魚市場の合わさった総合卸売市場であるはずで、今時の振り分け、無味乾燥な鉄筋コンクリートの巨大施設を想像していた。ところが到着した場所はまことにこぢんまりしたもので、見た目も古めかしい。この古めかしさが、ボクの好みの市場だと言うのも明記していおきたい。
 また驚いたことに、ここにあるのは競り場のみ。一般的には仲卸店舗用の区画がないのだ。これは都市の市場としていかがなものだろう。
 クルマをとめ、事務所に入ると、トーボさん、神在月さんなどが待っていてくれた。この建物のなかが暖かく、また外を見ると市場らしい活気に満ちている。

 事務所で帽子を貸していただき、場内を見て歩く。やや荷が少ないのは、海から離れている松江では思いも寄らないことだけど、外海が荒れ始めてきているせいであった可能性大だ。
 魚市場には午前6時になってもトラックが横付けされている。この松江魚市場の特徴が松江・出雲地区を中心とする島根県各地の魚貝類集散地であるということ。
 この日、多かったのが十六島漁港(うっぷるい 平田市)、しまね定置もん(松江市/笠浦、野井、多古、加賀、御津 出雲市/塩津、湖陵、多岐)。また小伊津など釣りものも島根ならではのもの。

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この地名読めますか?

 まず目に付いたのが「沖いわし(ニギス)」これは底引き網のものだろう。さすがにビックリするほど鮮度がよく、これは刺身でいけるなと朝ご飯抜きなので思ってしまう。そしてマエソ。
 湖陵からのマフグもフグ延縄漁のさかんな島根ならではだ。「れんこ(キダイ)」も延縄で揚がったものかもしれない。後々見ていくと島根沿岸でキダイは重要な魚である。
 マアナゴがあって、ここでは「はも」、ハモは「とうへい」というらしい。「草かれい(タマガンゾウビラメ)」、メダイ。
 個人的な意見かもしれないがメダイは日本海側でとれたものの方が、太平洋側でとれたものよりも味がいい。このメダイを見て、ますます腹が空いてくる。
 入相の箱にイシダイ、「ばとう(マトウダイ)」、アイナメ、メイタガレイ、イズカサゴ、チカメキントキ。この産地ならではのたっぷりギュウギュウ詰め感がたのしい。

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「しまね定置もん」は水産物を扱う人は絶対知っておくべきだ。鮮度保持や、丁寧な出荷に日夜心砕いている。

 島根町(現松江市)の「しまね定置もん」の箱にヒラマサと「丸子(ブリの若魚)」、マダイが並んでおかれている。箱に書かれた殺菌海水というのは魚の鮮度保持や、輸送時の安全に大きな役割を果たしている。「しまね定置もん 殺菌冷海水」という文字には注目して欲しい。
 ワカメが並んでいるのは養殖ものに違いない。
 意外に多いのがババガレイだ。関東では高値をつけるものだが、松江あたりではまだまだ評価が低いのだという。そしてババガレイの箱に書かれているのが「インドガレイ」の文字。見た目の黒っぽいところからきた呼び名だろうけど、「インドカレー」とまぎらわしくないのかねー。

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ババガレイの詳しいことは
http://www.zukan-bouz.com/karei/karei02/babagarei.html

 見事なサワラがあり、マハタ。島根を代表する「のどくろ(アカムツ)」もきれいだ。チダイがあって、タイ3種が揃っている。アカガレイ、「水がれい(ムシガレイ)」。

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日本海の「のどくろ(アカムツ)」は太平洋側のものと別物といっていいほど脂がのっている。また浜田であがる泥質の海底にいるものはもっと凄いらしい。参考『島根のさかな』(島根水産試験場 山陰中央新報社 この本おもしろいぞ!)

 サザエ、クロアワビがある。ミズダコがあって、マダコはいない。

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サザエも島根を代表する水産物なのだ!

 松江市鹿島町小津の鍛冶辰夫さんが加工した(ひょっとしてとったのも同人?)ウニの小木箱があるが、この時期ならムラサキウニに違いない。

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これは島根県の寒い時期の風物詩。ムラサキウニ。

 島根県でとれるウニは他にはアカウニ、バフンウニ、エゾバフンウニなど。ただし重要なのはバフンウニ。これは夏にとって瓶詰めに加工される。
「ばとう(マトウダイ)」が島根にとって重要な魚であることは後々わかってくる。もちろん水揚げが多いとか、産額が多いとかではなく、「ばとう」の刺身、煮つけなど県民に愛されている魚であるらしい。

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「ばとう(マトウダイ)」と「えてがれい(ソウハチガレイ)」。

 並ぶ「ばとう」の隣が「えてがれい(ソウハチガレイ)」である。これは島根県特産の「カレイの干物」の原料のひとつ。オヤジとしては、酒がすすんで困るという魚でもある。また同じく干物にして美味な「水がれい(ムシガレイ)」がたくさん並んでいる。
 ムシガレイ、ソウハチガレイ、マトウダイ、そしてアマダイの箱がたっぷり並んでいる、この光景も松江魚市場を特徴づけるものだろう。
●松江魚市場見学はまだまだ続く。

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島根・鳥取への旅での成果
ウネナシトマヤガイのページを作成
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掲載種 1974


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 徳島県人が島根県浜田市の「赤てん」を食べて、「懐かしいな」と思った。そんなバカなと思われるかもわからないけど、本当なのだ。
 話は逸れに、逸れるが、ボクが育ったのが徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町)という山奥の町。山間部なのでなかなか新鮮な魚は手に入らなかった。また当時は片田舎なので洋食、トンカツなんてものは知らなかったのだ。実はこの手の洋食で唯一知っていたのがコロッケ、そして「かつ」。この「かつ」がトンカツでもなく当然ビーフカツでもない。現在では「フィッシュカツ」と呼ばれている、ようするに魚のすり身にカレーや香辛料で風味をつけフライにしたものなのだ。
 この「かつ」に似たものは他には山口、大分などでの「ギョロッケ」が有名だが、島根県にもあったのだと驚いて、しかも似通った味わいから、しみじみ懐かしさがこみ上げてきた。

 外見はまったく違う。だいたい土台となる練り物が紅色で、それがパン粉を通して赤く見える。
 特徴はその柔らかい土台(練り製品)の部分にある。味つけはしっかりしたもので、唐辛子のピリ辛に、塩と甘味がしっかりついている。特に魚肉というような風味はほとんど感じられない。
 味わいは素朴だけど、今時のマック(マクド)やケンタッキーを好む世代にも受け入れやすいものとなっている。ボクもこのような、わかりやすい、その地ならではの惣菜が大好きである。

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一袋2枚入りというのがとてもいい。日本橋「しまね館」でもできたら、この形で置いて欲しいものだ

 さて、『江木蒲鉾』に「赤てん」の歴史を問い合わせると、「赤てん」は戦後(たぶん1950年代)、魚肉ソーセージが本格的に生産されるようになって、練り製品の売上が落ちたときに、それに対抗すべく浜田市内の蒲鉾屋が試行錯誤の上で作り出したものだとのこと。ソーセージという西洋的なものに「フライ(揚げる)」で対抗したというのも面白い。
 初めは単に「フライ」、もしくは「ぴりから天」と呼ばれていたのだという。そして、元祖「赤てん」というか最初にこれを作り出したメーカーは今では判然としない模様だ。
 現在では浜田市内の数社、また同様のものを市外のメーカーも作っている。ただ、やはり「赤てん」の本場は浜田市であり、また「赤てん」は浜田市の隠れた名物ともいえそうだ。

 ちょっとここで時代考証。
 魚肉ソーセージの研究は大正時代から始まっていたようだ。それが第二次世界大戦などで中断。戦後、クジラやマグロ、スケトウダラなどで研究が再開。徐々に生産量が増えてくる。そして1950年代始めにはマルハなどが本格的な生産を開始した。ボクは1956年生まれなのだが、子供の頃、魚肉ソーセージは缶詰などと比べて、なんだか安っぽいように感じていた。また同時に徳島特有の「かつ」も存在していて、小学校低学年の頃から好物だった。魚肉ソーセージも、浜田市の「赤てん」も、徳島県阿南市の「かつ」も、練り製品の西洋化(洋食化)という流れの中で同じように生まれたものに違いない。

『江木蒲鉾店』によると、大量生産が難しい「赤てん」は県外向けに大々的に売り出すことはできないらしい。とするとやはり浜田市や島根県内で手に入れるしかない。関東では都内日本橋の「しまね館」にも置いてある。
 これを買い求めて、子供のお弁当に入れてやるとか、慌ただしい朝の食卓にあると、とても便利である。
 きっと浜田市で生まれ育った人たちにとって「赤てん」は、懐かしい記憶の中にたびたび登場してくるのではないだろうか。
 浜田市での「赤てん」の思い出や、『江木蒲鉾』以外にもありそうな“うまい赤てん”の情報を求む。

赤てん本舗 江木蒲鉾店
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翌12日の松江市は雪だった

 山陰本線の本数の少ないのにはビックリした。時刻表を見て、鳥取駅を目差したときには、猛ダッシュ。
 やっと鳥取ライナーというのに飛び乗ったときには、息が切れて、切れて、座席に座り込んだときには、どっと疲れが全身に広がった。考えてみると、昨日から今日にかけてのバスではほとんど睡眠がとれなかったし、岩美町では、それこそフル回転で動いた。このときまだ午後4時前なのが信じられないほどに、今日一日が長く感じられる。

 鳥取から、倉吉、大山ときて、米子を超えて、安来駅で5分間停車。やっと島根入りだ。
 島根県は妻の母親が育ったところで、なんどか訪れたことがある。
 漁港という点でも浜田、多岐とじっくり水揚げを見ており、いかに島根の水産物が優れているか、また量的にも多いというのを知っている。
 ところが残念なことに水産県島根ということでは一般的な認知度が非常に低いように思えてならない。来る前にやったアンケート、料理人、魚屋に聞いた限りでも、島根の水産物を挙げられる人が少なかった。
 もちろん、仲買や荷受けでは、量が多いし、また浜田市での「どんちっちアジ」などのブランド化されたものもあり、よく知られている。
 でもその次にくる料理人、飲食店主には「島根」の文字が浮かんでこないのだ。ましてや一般人にとって島根というのは小泉八雲や古都松江、出雲大社、世界遺産岩見というのは出てきたとしても、「おいしい島根」すら浮かばない。浮かんだとしたら和菓子と宍道湖七珍となる。
 宍道湖七珍というのがくせ者で、島根の一部である松江市周辺部だけのもので、そんなに量がとれるわけでもない。逆にこれが出雲松江地区の水産物に対する概念を狭めてしまっている。例えば松江市は恵曇や美保関、大社など豊かな港を近場に控えさせている。そこから揚がる日本海の幸はすさまじいばかりに多く、しかも美味極まりない。実際に、松江市内松江魚市場には、それこそ魚好きなら、涎をたらしそうなうま魚が毎日大量に入荷している。それなのに観光地である松江にくる観光客は日本海の幸を食べたいという認識はあるのだろうか? これは大いに疑問。
 せっかく日本海に長くのびた島根という水産県でありながら、一般人が「水産物が豊か」であると感じないのは、非常に惜しい。ましてや、まだまだ料理人や飲食店主などにも島根を知らぬ人が多いのだ。
 これからは「島根に来たらおいしい魚貝類を食べなきゃ」とか「島根の魚だからうまいはずだ」とか県自体の認知度を上げる必要がありそうだ。
 ライバル意識を持てというわけではないが、富山県氷見で「きときとの魚」を食べるよりも、島根に来て、うまい魚を食べて「だんだん」と観光客に言ってもらうべきだ。

 松江駅前のホテルにたどりついたとき、なんと小雪がちらつき始めた。
 岩美町の漁師さんが「明日から大荒れだよ」と言ったのが現実のものとなりそうだ。

 ホテルの部屋で11日のメモを清書する。そのノートを整理し終わらない内に眠くなる。
 時計は11時半を超えたばかりだが、明日は早朝から松江魚市場へ向かう。
 やっと、慌ただしい旅の第1日目が終わる。

島根県庁
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島根県水産課
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JFしまね
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 岡山は食文化が多彩だ。これは大きな河川が流れ、高原があって、瀬戸内海を目の前にして、しかも児島湾という有明海に匹敵する干潟を持っていたためであろう。よくいわれる「池田様のお陰」なんて冗談ではない。たかだか大名なんてつまらんものに食文化なんて作れるわけがない。

 岡山の食文化を育てた魚貝類というと児島湾のサルボウ、アゲマキ、あみ(アキアミ)は筆頭格にあげられるだろう。ここにコイ目、ウナギ、絶滅したハイガイ、ベイカなども加わってくるのだが、ここでは置くとしよう。

 アキアミは「アミ」とつくが、れっきとした十脚目のエビ。話が固くなるが、サクラエビの仲間である。アキアミの「アキ」は当然、季節の「秋」。秋にまとまってとれる「アミ」のごとく小さなエビというのが標準和名に込められている。

 岡山県人は秋になると、なんと各家庭、各人各様にアキアミの塩辛を作る。このこだわりはとても他県人には手出しできるものではなく、旅人として盛りをとうに過ぎたアキアミを駅前のデパートで見つけて、「さてなにを作ろうか」と疲労困憊した脳みそを働かせる。

 そう言えば、岡山中央市場で働くゴージャスなゴウチさん、今秋はアキアミの塩辛を作って分けてくれると言ったが、忘れていませんよね。ボクは岡山の「あみの塩辛」が大好きなんですから。

 閑話休題。
 目の前にあるアキアミ1パックを、最終的にはかき揚げにすべきか、佃煮にすべきか、悩みましたなー。それで後かたづけのことを考えて、というかいちばん簡単な佃煮をつくる。
 小エビの佃煮ほど簡単なものはない。深みのあるテフロンフライパンに味醂、酒、砂糖、醤油を煮立たせる。この場合、小エビはすぐに火が通るので、決して水分は加えない。だいたい当座食べるというものに水分は禁物だ。香辛野菜は、いつもは山椒の佃煮を加えるのだけど、今回は切らしていて、単に生姜とする。
 鍋の中で煮汁が煮立ってきて、やや煮詰まったら、アキアミを放り込む。これからは一気呵成に、火をゆるめることもなく、佃煮を仕上げるだけ。決して火を弱くしてはいけない。最低限中火で、煮汁がアキアミを被うくらいがいい。
 調理時間はほんの15分くらいだろうか? もっと短いかもしれないが、とにかくあっという間に出来上がる。
 出来上がりを待っているのは子供達だ。小エビ類の佃煮の炊きあがったばかりのをご飯にのせて食う、これはたまらない。親としては佃煮ばかりでご飯を平らげられても困るのだが、止められませんね。

 残った佃煮で、飲む酒もよし。1週間の山陰、山口、岡山の旅を終えて、心地よい疲れが押し寄せてくる。
●2月17日記す。

光吉商店
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、アキアミへ
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 鳥取市と言えば『駅前市場』と『太平マーケット』だろう。20年以上前のことだが、このふたつの市場での一時が楽しかった。それこそ溢れんばかりの魚貝類があり、また鳥取市自体が街らしいざわついた、喧噪のなかにあって活気があった。

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 そんな駅前を早朝に通り過ぎたときに、「なかったのだ」駅前市場が。
 駅自体が平面的で無機質なものとなってしまっていて、その昔の庶民的な温もりが欠片ほども見えない。確か、あれは20年ほど前のことだったろうか? 周辺のスピーカーから流れてくる歌に「斉藤由貴だね」という女子高生の話が耳に残っている。
 鳥取空港からジェット機で帰る予定で、残り時間からするとどこに立ち寄るのも中途半端だったのだ。バス停のあるベンチから見た駅前が、ごみごみしてだから活気があった。

 岩美町から川上寿郎さんに送って頂いて、駅前の郵便局の前で下ろしてもらった。その広い道路の向こう側が駅前に当たるはずだけど、そこにあるのは駐車場くらい。とにかく道を渡って市場を探す。鳥取は、この広い道路を渡るとやや寂しく、静かだ。家の前で掃除をしている女性に、聞くと、「そこですよ」と指をさす。でもそこには何もなく、まさかここに市場なんてあるとは思えない。そしてほんの数十秒で「駅前市場」の看板を発見する。
 この建物は、外見からはまったく市場らしい雰囲気をもっていない。もしも市場らしさ、生活の温かさを感じさせるものを求めてくるとしたら最低の代物だ。なぜ、このような設計にしたのか、理解にくるしむ。たぶん中に入る店の人たちは、建物の作りには無関心だったのだろう。
 建物に向かって左側にあるのが食堂だけど、なんだか雰囲気は会社の食堂もしくは今時のチェーン食堂のようだ。このようなへたくそな造りを考えるヤカラは存在自体が理解できない。そして市場内もダメだな。がらんとして薄ら寒い。その昔のゴチャゴチャした、有機的なよさがまったくない。もっと機能的で、しかも暖かみのあるものに出来ないのだろうか?

 まあ建物批判ばかりしていても致し方ないだろう。現代の建築家、設計者が人としての温かみや、使い勝手のよさをどんどん忘れ去って、無機質になってしまっているのは止めようがない。

 その天井が低く、広い市場内にある店舗は明らかに20年前の半数くらいに見える。午後3時過ぎということで、まだまだ夕飯の買い物には間があるためか、人影もまばらである。
 とにかく市場に来たからにはと、鮮魚店を端から見て歩く。うれしいのは、店頭の魚貝類が生きのいいものばかりだし、また値段も安い。魚の表示が、地元の呼び名なのもいいねー。

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「のどくろ(アカムツ)」100グラム380円、網代港の「白はた(ハタハタ)」100グラム130円なんて、関東では卸値以下ではないか? こんなものを見てしまうと、唐突に鳥取市に住まいしたくなる。
 エビも「もさ(クロザコエビ)」100グラム500円、「赤えび(ホッコクアカエビ)」100グラム400円と並んでいる。「どぎ(ノロゲンゲ)」、生のホタルイカがいるのも産地ならではのこと。大きく変わってしまった駅前市場には失望感を感じたが、そこに並ぶ魚貝類はやはり素晴らしい。

 駅前市場を出てこんどは『太平マーケット』まで歩く。鳥取市の道路は駅から放射線状に伸びている。そのほんの駅から数分のところで「太平マーケット」の文字を発見する。

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 しかしそこにあるのは全国展開の居酒屋チェーン店であり、通りから路地に回ってやっと入り口を見つけることができた。この入り口から地下の通路状の『太平マーケット』に下りる。

 下りて直ぐのところに干物が並び、「松葉がに(ズワイガニ)」の水槽がある。これが『浜下商店』という店で、その先に続くはずの市場がない。『太平マーケット』にあるのはこのたった一軒の店だけなのだろうか?

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 一度、地上にもどって、回りを見渡すが、もうどこにも『太平マーケット』の入り口は見あたらないようだ。20年前には細長く魚屋が並んでいた賑やかな地下市場、それが一店舗を除いて消滅してしまっているようである。

 なんだか寂しくなって『たくみ工芸店』まで歩く。せっかくここまで来たのだから鳥取の焼き物を一個だけ買おうと思ったのだ。彼の柳宗悦の周辺にある民芸系の器はあまり好きではない。とくに鳥取、島根のものはどうにも琴線に触れるものが見つからない。今回も『たくみ工芸店』を端から端まで見て回り、やはり好みの器が見つからない。でも市内の市場の凋落を見て、なんだか寂しくなって、その中でももっとも簡素な六角皿を買い求める。鳥取県青谷町山根の石原幸二さん作のもの。この器には、ボクを惹きつける何かがある。

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 さて、深夜バスで鳥取に降り立って、9時間以上経っている。そろそろ明日に備えて、宿にたどり着かねばならない。鳥取駅から極端に本数の少ない山陰本線に乗り込み松江を目差す。

鳥取駅前市場
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 岩美町観光課の川上寿郎さんにお会いできたのは、今回最大の幸運だった。
 テレビなどでも散々取り上げられていた、「ばばちゃん」の生みの親が、なんと川上さんであると言うこと。そして岩美町の振興に心砕いている、またいろいろアイデアを出して、新しいきっかけを探してもいる川上さんの日々に驚かされた。

 さて、今回の島根県を目的地とする旅の最初に、いろいろ考えて、島根に行く前に出来ることの第一は、お隣の鳥取県の水産物を見ておくことだという結論に達する。
 それで我が家にある本や知り合いの仲卸業の人たち、はたまた市場関係者から聞いて出てきたのが、当たり前のようだけど「松葉がに」のことだらけ。「松葉がに」にはとても手が届かないと思案しているとき「それじゃ、『ばばちゃん』のこともあるし、岩美町によったらどうだろう」と言ってくれた人がいた。そのとき丁度、古い雑誌を見ていたら、これまた岩美町の「ばばちゃん」があるではないか。
 やっと立ち寄る場所が決まっても、岩美町へのとっかかりがない。仕方なく安易に町役場に電話すると、対応してくれたのが産業観光課の川上寿郎さんだった。
 そして実際に岩美まで来て、本当に懇切丁寧に、あらゆる面でお世話になってしまった。その最たるものが「ばばちゃん」料理を食べさせていただいたことだ。

 場所は岩美町内の『かまや旅館』である。ここは木造の簡素な建物だが、柱などに歴史を感じる。
 どうやら少々遅すぎたようで、旅館に入ると大急ぎで二階の部屋に通される。
 待っていたのが名物の「ばばちゃん鍋」と様々な料理。「ばばちゃん」の本場である岩美町で、その料理を目の前にすると感慨一入である。

 まずは川上さんが「ばばちゃん鍋」を作ってくれる。「ばばちゃん(タナカゲンゲ)」は大振りの切り身になっていて、湯通しされている。

 これを塩と味醂で味つけされた鍋に入れて待つ。ここで改めて「ばばちゃん」の鍋材料としての実力のほどを思い知る。身はマダラよりも弾力性があり、キアンコウよりも繊維質で口中でほろっとしている。ここに旨味が感じられて、いい味なのだ。残念ながら汁に味醂を使っているために、少々重く感じられるが、川上さんによると、まだまだ試行錯誤をしている最中だという。
 その内、昆布だしで塩と酒だけ、もしくは酒と醤油という、もっとも「ばばちゃん」に合う単純なものに変わっていくのだろう。
 しかし、「ばばちゃん」の味わいはよし。
 他には刺身、焼き物、南蛮漬けなどがあった。どれもこれも美味ではあるが本来期待した野性味は感じられなかった。

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ここでしか食べられない「ばばちゃん(タナカゲンゲ)」の刺身と地元であがった「赤えび(ホッコクアカエビ)」。

 どうやら『かまや旅館』での「ばばちゃん」料理は割烹料理の修業をつんだ人が作るもの、「ばばちゃん」本来の味わいはないと思う。でも「ばばちゃん」を初めて食べてみるという向きにはむしろ最適かもしれない。この日もわざわざ遠くから「ばばちゃん料理」を食べに来ていたグループがあって、観光客のいちばん少ない時期としては異例のことだとのこと。
 確かに「松葉がに」はうまい。しかし1人前で1万、2万とかかるとしたら、なかなかおいそれとは食べにこれないだろう。そこに「ばばちゃん」という手軽な名物があると、庶民としてはとてもありがたい。
 また最後に、岩美町で「ばばちゃん料理」を出す店、宿は多い。この珍しくも美味な魚を岩美町でお試し願いたいものである。詳しいことは町の観光課などに問い合わせを。

鳥取県岩美郡岩美町
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かまや旅館
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『浜勝商店』が、これだけ目立つラベルを作って、会社自体の知名度を上げる努力をしているという先見性は、最近の地方の凋落振りからすると、素晴らしいことかも知れない。とにかく地方都市ではなにがなんでも、あがいて、工夫して、これ以上人口の減少をくい止め、商業、工業ともに活性化させなけらばならない。

 ここで大切なのが、できるだけ早く土木土建による公共投資をなくし、地方の産業構造を変えるということ。土木は自然破壊をすすめ、人間生活の荒廃は生むが、未来に対する希望や展望は見いだせない。

 ボクが思うに漁業の未来は明るい。水産物は需要が拡大し、きっとその内、品不足に陥る。これは中国やインド、ロシアの発展を見ていると明らかだろう。だかたいちばん大変な今を乗り切るために、漁業従事者の方、水産流通に関わる方には本当にがんばって欲しい。やっぱりここで問題になってくるのが流通コストに関わるガソリン税である。いい加減、この流通業、運送業いじめは止めたらどうでしょうね、官僚、政治家のみなさん。自分たちの身分を守るために既得権の多くを持っている建設業界だけをひいきするというのも変だろう。

 また宮崎県の彼の東国原知事が言うように、どうして県によって道路整備や公共投資が進んでいたり、遅れていたりするのか? これは明らかに過去の有力政治家の汚点である。恥を知るべきだ。
 そろそろ国の舵を取る人たちにも無機質なものを地方に投入するのではなく、もっと人間的な暖かみのある政治に移行して欲しいな。

 さて、地方でがんばっている企業や、県の職員の方を見ると、非常に明るい気持ちになる。
 これからも関東の市場で『浜勝商店』の箱を見るとうれしくなるだろうな。
 浜田社長他みなさん、がんばってくださいね。また立ち寄らせていただきます。

鳥取市岩美町浜勝商店
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鳥取県岩美郡岩美町
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 浜田市食品市場は楽しかった。ここにこそ普段着の浜田の姿があって、また売っているもの総てが楽しいものだらけ。
 そんな食品市場ではいくつかの発見をしたのだけど、そのひとつが、「浜田では節分にクジラの炊き込みごはんを作る」というもの。
 場内を歩いていると、クジラの黒皮(表面が黒く、舌に真っ白な脂身がある)がやたらに目につく。

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浜田食品市場の一角で

「浜田でもクジラはよく食べられているようですね」
 なんて一軒の店で黒皮を拍子木に切ったものをパックに入れて売られている。

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くじら飯用に切っているミンククジラの黒皮

 この形だと汁にするのだろうと店の人にお聞きすると、
「炊き込みご飯にするんです」
 これをトーボさんが
「節分に食べるんですね。クジラの炊き込みご飯は」

 黒皮を炊き込むとすると、かなり脂っぽいものとなるだろう。どう想像してもうまいもの、というよりもクジラの臭みしか想像できない。
 それでも伝統的に食べられていたのなら、ぜひとも挑戦しなくてはならないのが、ぼうずコンニャクの本能というものだ。

 帰宅して、作り方を地元のトーボさんに電話で聞く。あれこれ調べてくれて、それを整理すると。
1 クジラの黒皮は湯通しして、余分な脂分や臭みを抜く。
2 これをゴボウ、ニンジンなど普通炊き込みごはんに使う野菜とともに釜に入れて、たく。
 コツは味つけをやや濃いめにするというもの。
 炊き込みご飯ほど簡単な料理はないという普段着の料理なのでさっそく作ってみる。野菜はその日にあったゴボウとシイタケ、それに油揚げを加える。味つけは塩、醤油、酒。

 炊きあがって、蒸らしたお釜のフタをつまんで、エイ! ヤ! と取る。そこにふわりとのぼってくる炊きあがりの香りが素晴らしい。クジラの臭みなんてまったく感じられない。またしゃもじでご飯を返しても、ぜんぜん脂っぽいなんて感じられない。

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作り方は、普通の炊き込みご飯と変わらない

 実を言うと「くじら飯」は普通に、在り来たりに、うまい炊き込みご飯だった。我が家の姫など、熱を通して縮まった黒皮を箸でつまんで、「コンニャクじゃないね」と言ったのだが、「クジラだよ」と言ってもうまそうにあっという間に茶碗をあけてしまった。
 やはりクジラが入っているなと改めて思うのは、うっすらと口の回りにつく脂だが、上品なもので、ぜんぜん気にならない。

 本来は節分料理なので、彩りに天盛りにする野菜を用意したい。そうするとまさにご馳走然とするだろう。
 このような浜田ならではの、しかも季節感のある料理が残っていることに大いに感激する。これだけ食べやすいものなら、ぜひとも家庭で絶やすことなく、節分に食べて欲しいものだと願う。
●その昔、浜田ではクジラをとっていたことがある。それでこんな郷土料理が残っているのだろう。しかし確かなことはわからないままである。この「くじら飯」の情報をお持ちの方、また情報が載った出版物を知っているという方はお教え願いたい。

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 鳥取県岩美町の『浜勝商店』で仰天するものを発見した。それが「じいぼ」である。
 見た目からすると刺胞動物であり、イソギンチャク目であるのはわかるが、当然種名は見当がつかない。
 これを見せてくれたのが『浜勝商店』の奥さん、浜田末子さんなのだけど、
「最近少なくなりましてね。なかなか手に入らないんです」
 生きているのを見せてもらったとき、事務をやっておられた女性が、「ゆでたのがあります」というので、なんとも厚かましく食べさせていただく。

 なんとも表現のしようのないものではあるが、味わいの傾向は食品としてのクラゲがかたまり状となっていて、そこに魚のワタ(肝)が加わっているのだけど、魚の肝よりもクセがない。3,4個食べる分にはうまいと思えるものだけど、やはり塩ゆでのままでは、あまり箸の進まないもの。

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ゆでただけのもの。クセがなく、決して珍味というようなものではない

 これを浜田末子さんが大根とからめて、酢を加えて出してくれる。これは大根と酢の爽やかさと、「じいぼ(じーぼ)」の濃厚な味わいと、コリコリとした食感で絶品となっている。

「これは漁師さんなんかは、魚を煮た汁で、たくんです」
 十九百さん(港を案内していただくなど、今回非常にお世話になった)のやり方が隠岐、鳥取などでの一般的なものであるようだ。
 また家庭では「白はた(ハタハタ)」とともに煮つけにする。
 そこで『浜勝商店』に「白はた(ハタハタ)」を分けて頂き、岩美町観光課の川上寿郎さんが自宅の持ち帰る。

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「白はた」と「じいぼ」の煮つけは岩美町の家庭料理?

 出来上がったのが見事としかいいようのないもの。
 ハタハタの煮つけがうまいのは当たり前だけど、その汁が「じいぼ」に相乗効果をもたらせて、非常に美味な一皿になっている。
 これなら酒の肴だけではなく、ご飯にも合う。このようにして岩美町では一般家庭でも食べられていたのかと思うと驚きが大きい。
●浜勝商店のみなさま、川上寿郎さんに感謝いたします。

鳥取市岩美町浜勝商店
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鳥取県岩美郡岩美町
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仮称だが図鑑に掲載した
シロジーボ
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アカジーボ
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