島根県浜田市は水産加工業の盛んなところ。港で水揚げを見た後に空き時間があったので、地元のトーボさん、ヤマトシジミさんに案内されて「浜田食品市場」(島根県浜田市黒川町)という小さな市場をのぞく。この小さな市場で、ほんの短い間歩いただけで面白いものが五万と見つけられた。
この市場の素晴らしいところは、観光化されていないせいもあって、地元の昔から食べられていたものが無造作に並んでいることだ。乾物、調味料、クジラ、練り物、菓子パンにお弁当、惣菜、すし。どれを見てもボクには面白く、興奮をおぼえるものばかりだ。
今回とりあげるのは、中でももっとも地味で、しかも名品だなー、と感心した「いかの酢漬」。
「いかの酢漬」は昔からある、浜田では、あまりにも在り来たりで目立たない加工食品であるようだ。
スルメイカで作ったものと、「真いか(ケンサキイカ)」の2種がある。うれしいのはイカはどちらも地元浜田にあがったものであるという。
安くて、うまそうで惹かれるところ大なのだけど、ひとつだけ問題点があって、ボクが旅の途中であり、この一袋がかなり重い。それをおしてついつい買ってしまった。
佐々木商店に電話を入れて、この「酢漬」のことをお聞きした。すると「酢漬」を作り始めたのが先代のときで40年ほど前。原材料は地元産のスルメイカと「真いか(ケンサキイカ)」。ケンサキイカのものは水揚げ量が少ないので貴重であるとのこと。浜田市内でともに1袋たっぷり入って400円前後。
地元での料理法は酢の物に入れるのが一般的。だから主に夏の食品との認識があるようだ。
松江、浜田などで買った食料品は益田の「JFしまね」佐々木さんにご迷惑ながら宅急便にて送ってもらったものが、ボクが帰宅した日に到着していた。
真っ先にとりだして食べてみたのが、この「いかの酢漬」である。
調味された酢に漬かったままを食べると、かなり酸っぱい。それで、これに「ゆずほの香(白だしぽん酢)」を加える。これは家人などが喜んで食べたが、やはりまだ酸っぱい。
そこで取りだしたのが鹿児島県種子島で使われている独特な大根のけん突き。これは大根をややささくれだったケンに突き出すもの。粗塩をまぶして少し置き、水洗いする。
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種子島のケン突きは非常に優れもの。だんだん作るひとが少なくなっていると言うが大丈夫だろうか?
これを「酢いか」と混ぜてガラスの大鉢に無造作に盛りつけてみた。急場なので薬味、色味の野菜は用意できなかった。見た目は白っぽくて悪いが、味は絶品というか身体が癒されるもの。
「白いか」は、小さくてもケンサキイカなので柔らかく、酢に漬かっていても微かに旨味甘味が感じられる。そこに塩で殺した大根のケンが合わさって、塩味と酸っぱさが絶妙に釣り合っている。
家族は、これにまた「ゆずほの香(松江市 米田醤油店)」をふりかけて食べている。おお、こうするとますます酒との相性がよくなる。
「浜田市にこのような伝統的だけど目立たない食料品が、末永く残るといいなー」とつくづく思う。そして、この「現代の文化財的食料品(これはボクの勝手な造語)」が生き残っていくためには「浜田食品市場」のような地方の小さな市場が「絶対必要」だ。浜田市民で食に感心のある方達よ、この小さな市場を大切にしていただきたい。
また中国からの輸入食品などでの農薬混入が問題になり、国あげての“食育”が叫ばれている。そんなご時世に、このような身近で優れた食品を忘れたら「あきまへん!」。
遠く島根県浜田市からの「いかの酢漬」を肴に熱燗を傾けながら、旅の疲れが徐々に蘇るのを感じている。
●2月16日記す。
佐々木商店 島根県浜田市国分町1981-197
●『佐々木商店』は浜田市でカレイの干物、酢だこ、焼きイカなどを製造している。
島根県庁
http://www.pref.shimane.lg.jp/
島根県水産課
http://www.pref.shimane.lg.jp/industry/suisan/
JFしまね
http://www.jf-shimane.or.jp/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/