魚貝類を探す旅: 2008年11月アーカイブ

 東京から金沢へはどのような経路があるんだろう。
 鉄道で行くべきか、バスなのか。
 東京都西部ということで考えると、明らかにバスの方が便利なのがわかる。
 我が隣町、八王子から深夜バスに乗り込むと、翌14日朝6時には金沢に着いてしまう。
 バスは圏央道、関越自動車道、北陸道を通る。
 13日の深夜八王子からバスに乗る。
 疲れがたまりにたまっているので熟睡して、頭がぼんやりしたまま金沢の駅前に到着する。
 この金沢の駅が無味乾燥でデザイン的に品性を欠くもの。
 この頃の建築家の程度の低さに思わず唖然とする。
 降りたのは、金沢駅東口。
 ここから金沢を観光するのに、この造りはないだろう。
「金沢駅を作った野郎は能なし、大バカ野郎のろくでなしだ」
 なんて叫びながら、西口に回ると、もっとくだらないオブジェが迎えてくれる。
 このようなオブジェを造るなんて、もう脳みそゼロだろうね。
 それを造らせる行政もヒドイね、まともに仕事をやっているとは思えない。

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この無味乾燥な品のないオブジェ、明らかに粗大ゴミでしかない。加うるに人に優しくない西口の構造。これをつくった人間の愚かしさと、くだらなさに驚愕する。恥を知るべし!

 さて、ここでヤマトシジミさんと待ち合わせて、金沢中央卸売市場に向かう。
 金沢駅から割り勘でタクシーに乗り、ほんの5分ほどで市場に着く。
 610円を支払い。「金沢のタクシーは安いですね」なんていうと、「この値段はいちばん高いんです」とのことだ。

 午前6時15分の金沢中央卸売市場は活気がみなぎっていた。
 煌々と明るい場内に入ると、そこはまだ青果の棟であった。
 市場は正門から左が青果、右が水産となっている。
 この振り分けは日本全国多くの市場で共通だ。
 その青果仲卸に“加賀野菜”の暖簾。

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 加賀野菜というと金時草、蓮根、加賀太きゅうり、それから源助大根に「つるまめ(フジマメ)」などが思い浮かぶ。
 隣は塩干の店で「ふぐの卵のぬか漬け」、変わった色合いの蒲鉾、イカの墨造りなどが並ぶ。

 水産棟に入ると、すぐに目に飛び込んできたのが「香箱がに(雌ズワイガニ)」の山。

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 当たり前だけど雄がにもたっぷり並ぶ。
 当然、石川、富山、福井、鳥取などの国産。
 そこに紋別(北海道紋別市)のズワイガニの山があるのがこれまた面白い。
 「紋別」=「ロシア産」なのである。

 そしてお目当ての島根県隠岐のエッチュウバイが、これまたそこにもここにもある。
 仲卸で聞くと、隠岐のエッチュウバイは、間違いなく最高級品だという。

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島根県隠岐のエッチュウバイの山。

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宮崎県延岡市北浦の「北浦灘あじ」。河野さんに見せてあげたい

 場内を一回りしてから、荷受け2社である「石川中央魚市」、「ウロコ水産」に挨拶に出向く。
 さて市場での朝ご飯は関連棟「そばうどん」と暖簾がさがる店。
 この店の名前がどこにも書いていない。

金沢中央卸売市場
http://www.kanazawa-market.or.jp/Homepage/
ウロコ水産
http://www.urokosuisan.co.jp/
石川中央魚市
http://www.kanazawa-market.or.jp/Homepage/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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高千穂の空

 午後にミツイ水産に戻り、こんどは伊東吉成社長に高千穂を案内して頂く。
 高千穂は遠く、延岡から1時間半ほど。
 わけいってもわけいっても青い山というか、わけいれない深い山である。
 ここで高千穂を代表する三つの神社をお詣りする。

 我ながら、滅多に神社仏閣に詣らないので、この機会を利用して家内安全健康であることのほかに「来年こそは落ち着いた年でありますように」と祈願する。
 無理かな?

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伊東吉成ミツイ水産社長、江嶋力ヘンリーブロス社長。遠く見えるのは阿蘇山

 延岡に戻ったのが、午後4時過ぎ。
 宮崎空港には7時には行っておきたい。
 なんと特急にちりんに後5分というところで日向市駅から飛び乗り、午後7時前に宮崎空港の着く。

 帰りのジェット機の揺れたこと、また羽田着も遅れて、深夜0時前に帰宅する。

ミツイ水産
http://mitsui-suisan.co.jp/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
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延岡市浦城漁港

 延岡市内(宮崎県)から20分ほどで浦代湾、浦城漁港の到着する。
 港には焚き火にあたっている老人がひとりだけ。
 そのうちに人が集まりはじめて6時半には出船。
 定置網漁と、水揚げを見学する。
 チダイ、せだい(ヘダイ)、サワラ、ハマトビウオ、タチウオ。
 それに様々な魚たち。
 興奮して、さめやらぬ楽しい時間だった。

 浦代から、延岡市内に引き返して、延岡魚市場を見学する。
 延岡魚市場は鉄骨にトタンを打ち付けた古めかしい造りだけど、外見からして、とても懐かしい。

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 なかではすでに競りが行われていて、そこにあった魚貝類が素晴らしかったのだ。
「満月だから少ないね」
 競り場にいた人たちが嘆いたいたものの、「延岡の人がうらやましく」思うほど。
 市場横のバスのうどん屋(そばもある)『はりまや』で朝ご飯。

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日向市細島漁港

 それから、門川町土々呂漁港、日向市細島漁港を見て回る。

 宮崎北部の魚貝類は「北浦灘あじ」が有名ではあるが、その後が思い浮かばない。
 そんなボクにも宮崎の魅力的な魚貝類が銘記された。

ミツイ水産
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 延岡市から北に行くほど、民家もまばらになる。
 左右に山が迫り、海辺にでると狭い湾が切れ込んできている。
 そこに北浦市振の港があった。
 待ち受けてくれたのが河野昌雄さんである。
 日に焼けた精悍な顔、がっしりした力強い体つきをしている。

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 ちょうど「灘あじ」の出荷準備が行われていて、見学。
 宮崎の漁業のこと、「灘あじ」のことなど1時間以上話をして延岡に引き返す。

 途中、道の駅「北浦」、そして市内のスーパー「むしか」に立ち寄る。
 道の駅「北浦」は時間が遅くて、なにも見るべきものがなく。
 むしろスーパー「むしか」の水産物の品揃え、そして安さにビックリする。

 午後6時前。
 市内のホテルにてしばし休憩。
 午後7時過ぎには市内にある「匠」という懐石料理店に案内して頂く。
 なかなか見事な料理であったが、延岡らしさは微塵もない。
 もっと延岡の食材の勉強をすべきと思う。
 その後、ホテルに帰り着いて、しばしカクテルなどを飲みながら懇談。
 午後11時過ぎには寝てしまう。

 さて翌朝、4時過ぎに起きる。
 本日(11日)は、定置網見学から始まる。

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 朝7時半の飛行機に乗るために、まだ暗い夜道を歩く。
 中央線各駅停車で浜松町、そして羽田第二ターミナルビル。
 迎えてくれたのはヘンリーブロスの代表、江嶋力さん。
 今回はオブザーバーとして延岡市に向かう。
 強いジェット気流で宮崎航空までは2時間弱もかかる。
 今年、何度目の空の旅だろう。
 ボクが乗るジェット機は毎回やけに揺れる。
 たどり着いた宮崎空港で、まず目に飛び込んできたのが県知事のポスターである。
 宮崎はこの顔だらけだった。

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 ジェット機が遅れたので、宮崎空港液までダッシュ。
 したものの、走るまでもなく特急「にちりん」の出発時刻には15分以上間があった。
 そのときケータイがなる。
 相手は島根のマジマジ君。
「あのですね。灘あじって知ってますよね。それを実際に作った人が河野さんというんです。会ってみませんか」
 実を言うと、この時点ではまったく本日の予定を知らない。
「会う時間があるかな、会えたら会うからね」
 ほどなく赤い車両が滑り込んできた。
 南延岡までは1時間少々。
 「にちりん」は真っ赤な車体で、派手派手しいものの車内はかなりポンコツである。
 宮崎市、日向市などを過ぎていきながら、ときどき日向灘が見え隠れする。
 いくつもの魅力的な川を超えて、たどり着いた南延岡。
 迎えてくれたのが『ミツイ水産』の石井潤一郎さん。
 石井さんには10日、11日の二日間お世話になりっぱなしだった。

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石井さんに連れて行っていただいた延岡市街を見下ろす山の展望台から

 さて、南延岡駅からほどなく、たどり着いたのが市内松原町にある「ミツイ水産」。
 ここで江嶋さんは、伊東吉成社長と、商談に入る。
 ボクは一様オブザーバーとして臨席したが、ただじゃまをしていただけのように思う。
 市内の可愛らしいフレンチの店「マルシェ」で昼食をご馳走になり、石井さんの運転で北浦を目差す。
 延岡市は県最北の地。
 なかでも北浦は宮崎県の北のどん詰まりにある。
 途中、浦城という港を見学。
 そこに河野さんからケータイが入る。
「豊城を出て、信号を見たら電話してきてください」
 その信号がなかなか現れない。

ミツイ水産
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 なぜなら次に来た一品でまるで電車道で押し出された力士の如く圧倒されたからだ。
 それが「ベニガニの煮つけ」である。
 考えてみると静岡県沼津市戸田の漁師料理でもエビの煮つけは当たり前。
 甲殻類の煮つけのうまさはわかっているはずなのに、ベニズワイに応用しようとは思い至らなかった。

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 たぶん甘辛い煮汁の中で、ベニズワイの旨味が染み出し、また身に染みこみしながら出来上がったのだろうけど、やや水っぽいベニズワイの弱点を逆手にとってあまりある。
「カニを煮つけるなんて思いもしませんでした」
「そうですか、ベニガニは煮つけると最高ですよ」
 ウエカツ氏が島根生まれであること、釣りの話などがでて、なんとも楽しい宴となった。

 常々思うに、各地で産品を使った料理が作られている。
 その多くが大きく的を外している。
 下手な小細工ばかりしてむしろ素材の持ち味を失わせている。
 料理は工夫するのではなく素材の特性を見極めるべきなのだ、という基本中の基本がわかっていない。
 この『ベニガニ産品開発有志の会』でやっていることは素直にベニガニのうまさ、よさがわかっている。
 そして無駄がなく、的のど真ん中を射ている。

 唯一気になったのが大根のあく抜きが充分でなかったところだが、そんなことはどうでもいい。
 手をべたべたにして、ベニガニをむさぼり食うのだけど、幾ら食っても飽きが来ない。
 ところがこれがまだ序盤戦でしかなかった。
 その後に続いたのがベニガニの素揚げ。

 粗挽きの黒コショウがピリピリして、また違うベニガニのうまさを思い知る。
 このうまさを例えるに、だれが食べても間違いなく「クセになる味」としておこう。

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 さて、その次は中華風だけど、これはやや平凡。
 それなりにうまいことはうまいけど、真打ちの後に二つ目が出てきたような感じがする。
 鍋に火がついた、煮立ってきたらベニガニの甲羅下の身が放り込まれる。
 これがなんとだし代わり。
 そこにベニガニの足と野菜が入って、これもまた凄い味わいなのだ。

 さて、ボクの息の根は、この後の雑炊で止まったと言っていい。
 だしにした甲羅下の身、またゆでガニの残り、味噌を集めて、総て鍋に放り込む。

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 このぞうすいの味だけど、言葉になるわけがない。
 カニの旨味甘味を凝縮したもの、この一椀の中身はいったいなんなんだろう。

 さて、宴も終わり近くに、たぶん、美佐さんと思われる艶やかな女性が現れた。
 このひとときがまたよろしい。
 ウエカツ氏が美佐さんにほめられて、照れているのが絵になる。
 最後に『味処 美佐』はベニガニだけではなく「松葉がに(ズワイガニ)」、季節の魚貝類も楽しめる。
 境港は美味の宝庫だと確信したのだ。

 今回はウエカツ氏に乾杯してしまった。
 このベニガニ料理は「松葉がに」と比べてなんら遜色がないばかりか、味の多彩さでは、数段勝ちをおさめている。

 これではぼうずコンニャクの立つ瀬がない。
 ここいらで島根と鳥取に提案。
 二県とも美味の宝庫である。
 境港で妖怪うまいもん大戦争をやらかそうではないか?
 審判長は目玉のオヤジ、行事は鬼太郎。
 勝った県が境港をもらえる。
 毎年行うので「今年境港は島根県だね」とか「やっと鳥取に境港が帰ってきた」なんて話題になる。
 バカなことを考えるとウエカツ氏よりも上の、ぼうずコンニャクなのだ。

●ウエカツ水産総本舗
http://ueka2007.naturum.ne.jp/
味処 美佐  鳥取県境港市京町6


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「境港に面白い人がいるんです。ぼうずコンニャクさんに会ってもらおうと思いまして」
 やや太りすぎであるヤマトシジミさんに言われて、境港のとある事務所をおとずれた。
 そこにいたのが凶暴なヒマワリのような顔をした男なのだ。
 よく見るとヒマワリのガクに思えたのが顔中を回る髭であって、おつむにはゴワゴワした髪の毛がおっ立っている。
 これが誰あろう、ウエカツ氏なのであった。
 ウエカツ氏は役人にするのがもったいないような、自由で行動的な人物であると見た。
 事務所で水産物を巡る話で適度に闘い、その場を市内にある『味処 美佐』に移す。

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 ここでウエカツ氏と『ベニガニ産品開発有志の会』が作り上げたベニズワイガニ料理を味わうのだ。
 境港ではベニズワイガニと呼ばず「紅がに」と呼ぶ。
 確かにズワイガニを赤くしたという意味合いよりも「紅色の美しいカニ」と言った方がうまそうではないか?

 さて、この境港の路地裏にある『味処 美佐』が、まことに鄙には希な落ち着いた雰囲気の店であった。

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 店に入るとまずはカウンター席がある。
 このカウンターの造りがよろしい。
 なかで料理する板前さんの控えめな対応も優れている。
 そして奥へ。
 約六畳ほどの座敷席、真ん中に鍋が、そして前菜とゆでたカニがある。
 まずは生ビールで乾杯して、ゆでガニを食べる。
 これがまことに旨味の濃い、味わい深いものなのだけど、ウエカツ氏によるとズワイとベニズワイのハイブリット、しかもかなり老成した個体だという。
 ずらりと並んだ足を見ても、個体差のためか色合いが違っている。

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 前菜がまた素晴らしい。
 カニの爪は一度熱湯でふり、すぐに氷水に落としたものだろう。
 これがとても甘い。
 マアジのなます風がうまい。
 ここでウエカツ氏の目がキラリと光ったように思ったのだが、圧倒されていくボクを「まだまだ驚くのは早いぞよ」と言っているようだ。

●ウエカツ水産総本舗
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『味処 美佐』 鳥取県境港市京町6


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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