水産会社、加工品図鑑: 2007年5月アーカイブ

 霞ヶ浦、小見川ときて、そのまま銚子に向かう。ほんの少し前には雷が鳴り、雹がフロントグラスを叩く、数メートル前が見えない、そんな荒天であった。その雷雲が去っても、まだライトをつけたままのクルマを対向車線に見る。佐原、香取、小見川、笹川と天保水滸伝の舞台を走る。左右にはまだ古い建物が残る。

 銚子港にクルマを止めてマルハラフーズの佐原孝幸さんを待つ。待つこともなく小型乗用車がすーっと港に来て、挨拶もそこそこに「ついてきてください」という後に従う。マルハラフーズは港から指呼の距離。思った以上に大きな加工場である。ここで佐原さんと初対面の挨拶をして、漬け魚造りの工程を見せて頂く。

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 衛生帽をかぶり、長靴も履き替え、エアフィルターを通り、ややひんやりした工場内に足を踏み入れる。踏み入れたら、作業中の女性が、白いロール状の器具をボクの背中にあてて、クルクルとくすぐる。どうやらホコリを完全に除去しているようだ。当然、作業場はしごく清潔である。
 作られていたのは「さんまソフトみりん干し」だと思われる。まずは冷凍サンマを氷温状態にまで解凍。この時点のサンマは刺身でも食べられそうである。

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 その頭を落とし、三枚に卸すのは機械がこなしている。そこから汚れを落とし、漬け汁に落としていくという単純な工程なのだが、そこからは手作業となる。

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本漬けのマサバの重しを持ち上げているのが佐原さん。この重さにも意味がある。ちなみに本漬けという工程で、熟成されて味に深みが増すのだ

 あくまでも無添加にこだわっているために加工工程はとても単純だ。テニスコート2面分ほどの工場内をぐるっと回るとお仕舞いとなる。マルハラフーズの加工品の総てに複雑でよく練り上げた味への工夫が盛り込まれている。期待しての見学で、少々拍子抜けする。手持ちぶさたとなって場内を見回してみる。
 静かでがらんとしている加工場の隅、そこにやっと秘密の花園、ボクの琴線にふれるものを見つける。いろんな調味料が置かれている棚である。銚子ならではのヤマサ醤油、関西のヒガシマル醤油、味噌、味醂に砂糖が数種類。そこに佐原さんの息子さんがいて調味料を合わせている。
「たくさん漬け魚を作っていますが、息子さんが主に味を決めているんですか」
「いや、最近少しは考えてみるんですが、今のところ父の発想が総てなんです」
 息子さんはまだ精製されていない砂糖の袋を抱えている。中から出てきたのは黒砂糖の風味を残した砂糖である。
「砂糖だって、3種類混ぜないと思った味がでないんです」
 佐原さんは日々、新しい漬け魚の味付けに試行錯誤しているのである。

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「いろんな世代に受け入れられるものじゃないと」
 佐原さんの目標は高いのである。
「いまどきの家庭だと魚焼きよりもフライパンで調理するほうがやりやすいでしょ。それでサンマのソテーや唐揚げ、カツといったフライパンで焼くだけというのがこんどの新製品です」
 マルハラフーズには味醂や砂糖などで甘辛い調味をしたものがあり、また本漬けなど熟成された干物もある。どれもうまいのだが、ボクが食べた中でもっとも好みにあったのが、「さば魚屋まかない干し」などの魚醤を使ったもの。「あれは美味しかったですね」というと、
「それが最初は注文があったんですが、そのうち立ち消えになってしまいまして。結局製造していないんです。どうやら魚醤のクセが受け入れられなかったようです」
 これは意外であった。魚醤の旨味と風味が絶妙であったのに、どうやら最近の消費者にはこのよさが理解できなかったようである。この結末はいかにも残念でならない。わかりやすい美味しさだけではなく、「味わいに奥行きのある製品」があるのが理想ではないだろうか。

 佐原さんと接していると、調味料の話題になると顔が輝いてくるのがわかる。この方、「根っからの味の職人」なのである。しかも常に新しい工夫と開発を怠らない。だからマルハラフーズの商品にはいつも驚きがあるのだ。次回の製品も楽しみである。

マルハラフーズ
http://www.maruhara-f.com/


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 味噌というのにオヤジは弱い、と思っていたら子供にも人気があるんだな、と感じたのが今回の「開き味噌さんま」。我が家の子供達もうまいねと喜んだ。
 サンマを三枚に卸してやや甘めの味噌に漬け込んでいる。これが焼き上がりが早い上に、食べてさっぱり、しかも食べた後にサンマの脂の甘味が感じられていいのである。
 この味噌漬けは最近ではもっとも家族の好みにあったものである。ただしパッケージはうまそうではない。見た目が散漫なデザイン、北海道の透明な地図部分はいいにしても、周りをもっと落ち着いた色合いにすべきだ。だから八王子でも「安売りの店に並ぶ」という結果を招いているように思える。
 この加工食品会社のパッケージングではあまりあれこれ散漫なものは絶対にやめるべき。とにかくぱっと見て、ぱっと目に飛び込んでくる方が最上のデザインである。これほど味がいいのだから売れるはずである。とするならパッケージングは見直した方がいい。

磯田水産株式会社 北海道厚岸郡厚岸町字宮園町44番地


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 我が家の日曜日など、昼ご飯によく作ってしまうのがチャンポンである。これは至って簡単な料理で顆粒状の鶏ガラスープさえあればザザッと一気に出来る。誰でも知っているだろうけど、我が家で勝手気ままに作るチャンポンの作り方を書いてみる。
1 麺の茹で鍋を用意する。麺を茹でる。
2 豚肉を炒める。野菜(玉ねぎ、ニンジン、キャベツ、ピーマン)なども炒めて、そこに水を入れ、鶏ガラスープ、塩で味付け。
3 硬く茹でた麺を加えてひとしきり煮たら出来上がり。
 まあ超簡単な手抜き料理であって、困ったときの緊急食とでも言えそうな代物。でもこれがなかなかうまいのである。
 子供にも評判の我が家のチャンポンだが、味はどこかのチェーン店よりもよっぽどましなのだが、色合いで「チャンポンらしさ」に欠ける。
 そんなとき八王子総合卸売協同組合『清水保商店』で見つけたのがコレ。商品名がどこにも書いていないという不思議なもの。「ちゃんぽん皿うどん」と書いているから、長崎だろうな、たぶん「ちゃんぽんや皿うどんに入っている長崎らしい色つきの蒲鉾」だろうとはわかる。これこそ我が家に欲しかった「長崎の色合い」ではないか。
 ボクが思うに地方の蒲鉾屋、練り製品のメーカーにはどこかその土地らしさが欲しい。この長崎らしい色合いの蒲鉾など東京で買っても「長崎に旅をしたような(ちょっと大げさか?)気になる」。こんなものが何気なくあるのも市場の良さなんだよ、わかるだろうか。
 当然のごとく買って帰り、チャンポンに入れるとまさに長崎チャンポンの色になる。蒲鉾、竹輪の味もちょっと甘めなのがいいのである。
 ところが残念ながらもう一度買いたいと思っても八王子にはもう来ないんだよなー。もう一回入荷して欲しいぞ、チャンポン愛好家としては。

杉永蒲鉾
http://www.suginaga.co.jp/home/


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 市場で「イカの塩辛で今人気があるのはドーレ?」と聞いて、即持ってきたのがコレである。
「塩辛くなくて甘いのがいいらしいんだ。ウチでも毎日食べてるよ」
 こんなことを言ってくる魚屋もいる。
 それが『マルヨ水産』の「浜そだち 八戸名産 ゴールデンいか塩辛」というもの。

 買い求めて早速食べてみると、これは明らかに塩辛じゃない。イカのワタらしきものも入ってそうだし、塩辛くもある。でも肝心要の熟成した複雑な味わいがまったくなく、むしろ微かな渋みしかないところに旨味を遙かに超える甘味が感じられる。
 これは明らかに珍味佳肴ではなく、お総菜の一種でしかない。じゃあ、嫌いかというと、この味わい、なかなか良くできているのだ。塩辛くないから、むしろイカの刺身をワタ入りの甘い和え衣で包んだように感じられる。驚いたことに、酒の肴には玄妙さを欠いているが、ご飯にのせてうまいのである。

 そして改めて裏面を見て、これまた驚くのである。原材料が凄まじく複雑。イカとあるのはスルメイカだろうか? もしくは輸入ものの「松いか」やイレックス? このあたりしっかり明記して欲しいな。そこにハチミツ、酒精、ステビア、甘草とあって、これ総て甘味である。アミノ酸はわかるとして発酵調味料というのはなんだろう? 醤油かな。でも、大豆を原料としたものが入っていると書かれていないところからすると酒類? だとしたら、甘味の後押しのひとつだ。酸化防止剤、色素など、とにかくこの味わいを作り出し、商品とするのに「出来る限りのことをやってしまった」というもの。
 ボクは決して自然食品の信奉者ではないので、こんなことには驚きはしない。むしろ努力してるんだろうな、くらいに感心する。でも、ここまで複雑に混ぜ合わせないと、今時の人々に愛される味はできないのだろうか? 「困った世の中だなー」とも思うのだ。

マルヨ水産
http://www.e-maruyo.com/


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 八王子総合卸売協同組合『丸幸水産』で売られていたもの。見た目は愛媛県宇和島市の「じゃこ天」を薄く真四角くしたようなもの。産地はどこだろうと思って見たら長崎のもの。練り物に「せんべい」というのはけだし面白いではないか。そう言えば、長崎の練り物についてはなにも知らない。好奇心がわき起こり、一パック買って帰る。
 そのまま食べると、やや甘めに味付けされていて、青い背の魚の旨味を感じる。原材料にも「たら(スケトウダラ)」に練り物では珍しいコノシロ、「じゃこ」とある。この「じゃこ」というのはなんだろう。宇和島ではホタルジャコ、ネンブツダイなどいろいろ。長崎市での「じゃこ」がなんであるかも知りたいものだ。
 生で食べてもうまいのだが、軽く油を引かないテフロンフライパンで焼くともっとうまい。またジャガイモや大根と炊いてもうまいな。みそ汁にもよさそう。「じゃこ」、コノシロなんて小魚だろうから身体にも「良い」だろうな。
●「じゃこせんべい」他、長崎の練り物に関してお教えいただける方、大歓迎

木村蒲鉾店 長崎県長崎市京泊3丁目16-19


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