管理人: 2007年4月アーカイブ

 先週はたいへんだった。毎日徹夜に近い状況が続き、雑用も半端じゃなく多かった。それで昨日今日と完全にダウン。
 それでも家族を持つ身、ゴールデンウイークにはどこかに行かなくては。それで明日は戸田に行くことに。家族は防波堤釣りが大好き。でも釣りの仕掛けはまったく作れない。それで釣りの間はまるで小間使いのように働き、ボクはぜんぜん釣りができない。
 ただしせっかく来たのだから、イセエビ漁や戸田の港歩きもしてみたい。また「壱の湯」にもつかってくるつもりだ。
ボクを見かけたら声をおかけ下さい。


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 天草のノリさんから素晴らしい魚をいただきました。それも3種、3匹。なかでもサツオミシマは初めて見るもの。その上、ヨシノゴチ、コショウダイのうまいこと。これら3種の魚たちのことはこれから徐々に図鑑に反映していきます。
 しかしサツオミシマというのは面白かったな。

天草の海の話
http://blogs.yahoo.co.jp/shhjw636/MYBLOG/yblog.html


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 八王子総合卸売協同組合『ヤマサン』で見つけた干しエビの産地がわからない。中身はアカエビ、サルエビなど。これをしっかり乾かして、乾物にしたもの。用途としては出汁や、そのまま酒のつまみにするのだという。
『ヤマサン』のオヤジさん曰く、「九州じゃないの」というのだが、天草などではこの手のエビを「あかやま」とは呼ぶが「がらえび」とは言わないのだという。ボクの記憶では「がらえび」というのは「あまりとれない」もしくは「雑多なエビ」という意味合いを持つ。
 さて、このエビの産地は何処であるか?


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 さて、市場の惣菜部というのは面白いと書いてきた。そこにはボクのようなオヤジにはロマンがある。未知の何かがある。とまあ、カッコつけても仕方がないな?

 これはある日のこと、八王子魚市場の惣菜部を見て回っていると、うまそうなさつま揚げがある。
 とそんなボクを見ていた職員が、
「今年は玉ねぎが流行ってるんです」
 こんなことを言うのだ。
 そうか? こんな練り物の世界にも「流行すたり」があるんだな、と感心もし、ついつい買ってしまうんだから、ボクも所謂「ミーハー」なのかも知れない。そしてよくよく各惣菜を売る仲卸で「玉ねぎ」を探すと、確かに各店舗1個ずつくらいはある。
 そして、そして、この水野水産の「玉ねぎ揚げ」は絶品でもあったのだ。ボクが個人的に練り物に入れて好きなのはなんといってもゴボウである。すなわち「ごぼう天」だ。おでん屋などに入ると何はともあれ、「玉子にゴボ天」というのはもうかれこれ30年間は変わらぬ仕儀となっている。
 そこに玉ねぎというのが新鮮な感じがするし、その持ち味である甘味が練り物と組み合わさっていいのである。

 でも本当に玉ねぎはトレンド(この言葉嫌いである)なんだろうか?

http://www.mizunosuisan.com/
●上のページは、今回の水野水産に該当すると思うのだがはっきりわからない。ホームページを作った人物があまりにも世間を知らないバカ野郎であるために最新のフラッシュなどを取り入れて、我が家の古いPC(マック)では見ることが出来ないのだ。このような愚かなヤカラは困るのだ。たしかに最新のソフトは面白いだろうが、ホームページの使命というものがあるだろう。例えば最低限必要な情報(住所や会社紹介)の部分では「遊ばない」、どのようなPCでも見られるようにすべきだし、だいたい新しいソフトにこだわったり、ホームページで「見た目」ばかり気にして「最低限の情報を見やすく」という配慮がない。ボクのようなオヤジは最近のこのような低年齢的アホさ加減に怒りを感じるぞ。またこの水野水産のページを作ったヤツは反省しろ


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 ウマヅラハギの産卵期は木の芽時から初夏だろう。と言うことは4月末ならそろそろ味が落ちてくる。そんな不安定な時期に大量の活け締めされたウマヅラハギがあって、しかも安く、腹を触るとしっかりして、肝も充実しているように感じられたら、「さて、買うべきか?」。
 迷うくらいなら買って見るべし。と、そんな時に限って、近所の釣り人からマアジがどっさりと届いたりする、人生とはこんなものである。だから夕食の刺身は食べきれないほどのアジ。ウマヅラは翌朝、煮つけにする。
 ウマヅラをはじめとするカワハギ科の魚は、「まずは刺身で」と考えるものだが、本当は煮つけにして飛びきりの素材なのである。煮つけていると濃い旨味が染み出し、しかも身はふっくらと甘い。そこに肝心要の「肝」のコク、旨味がふわりと加わると「例えるすべもなき美味」となる。
 でもでももう雑木林が若緑色に色づいてきている。まさに春たけなわ、夏の予感がするときのウマヅラハギはどうなのだろう。
 仲卸の荷にパッチ(魚などの上にふわりとのせてあるビニール)がなく産地不明。たぶん活けできたものを締めて、買い取られてきたもの。鮮度はまず、これ以上は望めない。カワハギの仲間は締めた首もとを引き、皮を剥くことから下ごしらえが始まる。そこには卵巣も精巣もなく、肝は思いのほかたっぷり。これはまさしくアタリだ。

 これを新玉ねぎとともに煮つけにする。我が家で朝つくる煮つけは肴ではなく、惣菜である。だから酒、みりん、しょうゆにたっぷりの砂糖。鮮度がいいので、煮汁を煮立ててから、ウマヅラの身と肝、新玉ねぎを放り込む。このまま煮ていき、煮汁の味見をして、ご飯にかけて「うまそう」なら出来上がりだ。

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 この「馬面の煮つけ」が素晴らしいものだった。なによりも身がふっくらとして繊維質に柔らかい。それを肝を潰した煮汁にまぶしながら食らう。これが飯との相性が抜群にいい。出来るだけ煮汁を残して最後には「骨湯」にする。この汁の表面に浮かぶ脂の粒を見てもらいたい。ここに味わいの表現は無用だろう。

市場魚貝類図鑑のウマヅラハギ
http://www.zukan-bouz.com/fygu/kawahagi/umazurahagi.html


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 八王子魚市場内『源七』にはこのところ東京湾三番瀬の恵みが日々もたらされている。トリガイ、バカガイ、アサリ、ホンビノス(白はまぐり これはどうも船橋の組合で考えた呼び名)、そしてサルボウ。
 船橋や浦安ではサルボウがとれたらすぐにゆがいて、佃煮にする。もしくは茹で貝にする。でもこれが山梨にくると「小赤(こあか)」と呼ばれて刺身になるのだ。ボクはこの「小赤」が大好きである。だから『源七』で見つけると社長の吉種登さんにお願いして酒の肴分ほどをいただいてくる。(いつもありがとう!)
 これを剥いて、よく表面の汚れをとる。この剥き身が今回のはやけに膨らんでうまそうである。これを開いてザルにとり、真水の中で揺すり洗い。この水気を切ると刺身の出来上がりである。開いた身を塩水で洗うか、真水なのか、あまり変わらないようなので「塩を入れる手間」を省いている。
 これなどまさに江戸前に残った干潟、三番瀬の味であって、自然を守ることが、漁をして、それを味わうことで「できるのだ」という気がする。間違いだろうか?

市場魚貝類図鑑のサルボウへ
http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/pteriomorphia/funegai/sarubou.html


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 さて、ボクが一人っきりのときのお昼はいい加減至極。手早く作れて、余り物を減らせる、無駄にしないというのが基本的な理念。その簡単料理のなかで最近お気に入りなのが「もずくおじや(雑炊)」である。
 この材料は少なく、昆布とさば節で旨出汁八方を用意、冷凍にして置いた残りご飯を「おじや」にする。
「おじや」というのは関西で言うところの「雑炊(ぞうすい)」のこと。本来は白がゆに野菜や魚肉などをいれて酒や醤油で味付けしたもの。関東での「おじや」の語源はわからないが、「ぞうすい」というのは漢字では「増水」。すなわり、水分の多いご飯ものという意味合い。
 四国生まれのボクが「ぞうすい」ではなく「おじや」と言うのは、父が若い頃、東京上野でメガネ職人の修業をしていたため。その暮らしのかなで「おじや」という言葉をみにつけ、四国に帰ってきても家庭で使っていたのだろう。
 そして「おじや」の材料でもっとも好きなのがモズクである。モズクは沖縄産のオキナワモズクと、モズク、イシモズクなどの総称であるようだ。なかでもよく見かけるのがオキナワモズク。すなわち沖縄で養殖されたもの。これは本来のモズクよりも太く、食感がしっかりしている。だから熱を通してもどろっとしたなかに、プルっとした存在感が飯の中で生きてくるのだ。

 ボクの「おじや」の作り方は昆布カツオ節(もしくはさば節)の出汁をとり、味醂、塩、醤油で「旨出汁八方」を作る。ここに油揚げ、ご飯を入れて、最後にモズクを加える。いたって簡単なものだ。だいたい慌ただしい中で作るものだから手早く出来ることが大切なのだ。
 このあっという間にできる簡単料理が腹減り時にはなんともうまい。大きめお茶碗一杯分くらいのご飯を使うと、小振りの丼八分目くらいの「おじや」になる。お昼はこれで充分となる。

 さて、ここで書くのもおかしいのだが、モズクや各地の海藻を提供してくれるかた大募集である。例えば地方での加工品、はたまた磯などで採取したもの。当方にはモズクの画像がなくて困っているのだ。


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2005年3月30日に始めた「寿司図鑑」が目標の半分の500かんとなりました。
現在、苦戦中なのですが、多くの参加、魚貝類の提供を歓迎します・

市場魚貝類図鑑・寿司図鑑へ
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炎の中のタイラギ

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 最近、「平貝(タイラギ)」の入荷が目立つ。そのせいか値段もお安いのである。だから土曜日の酒の肴は「平貝」ということが多くなっている。
 我が家ではまず貝柱だけにして、網にのせて強い炎で炙る。これを冷水に落として、手早く切る。なぜだか、「平貝」は少し熱を通した方がうまいと思うのだ。

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 でも家人は生を好む。だから二個買ったときには生と二種類作ることにしている。それで生、炙り交互に食べると、「どっちもいいな」なんて曖昧な気分になる。面白いのは家人はこれを焼き海苔でくるんで食べるのである。これではタイラギの持つ、玄妙な苦みと微かな甘味、貝くささが味わえないだろうと思うのだが、「海苔がないと食べた気がしない」のだと譲らない。
 まあ、「食べる」ということは「自由気まま」でいいと思っているので、脇で太郎が「平貝」を海苔巻きにして、マヨネーズをてんこ盛りにして食べていても、見てみない振りを決め込んでいる。
 それにしても我が家全員食通とは無縁だなー。

市場魚貝類図鑑のタイラギへ
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『天草の海の話」をリンクに追加。
本ブログは天草の現役漁師ノリさんが作る。天草の海の魅力が軽妙な文章と美しい画像で見ることが出来る。魚好きには必見です。

天草の海の話
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ヤマトシビレエイのページを作成
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掲載種 1894


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長崎磯の巻き貝

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 睡眠不足でちょっとぼんやりした状態である。画面を見ていても文字がウワフワ浮かんでしっかしした思考が続かない。最悪の状況だな。

 それからするとやや二日酔い気味だった昨日は元気だった。まあ市場にはなにもなく寂しい限りなのだが、そこに長崎からめかぶと磯の巻き貝。これ伊豆なんかでは「磯もの」というのだが、長崎ではなんというのだろう。
 普通、このような塩ゆでや煮るための巻き貝は千葉県などでは「しったか(バテイラ)」だったら一種類で、また伊豆なんかでも「しったか(バテイラ)」、ヘソアキクボガイ、クボガイなどを丁寧に選別して入荷してくる。これが九州ではまぜこぜとなって来ることが多いのである。大分しかり、そして長崎。
 今回の巻き貝が長崎のどこでとれたのか、八王子綜合卸売センター『高野水産』が箱を捨ててしまったのでわからない。それで長崎県漁連「東京直売所」の入江さんに聞いてみる。すると「たぶん五島(列島)か対馬だろう」という。
 これを証明するのがオオコシダカガンガラである。これは「しったか(バテイラ)」と非常に近縁の種であり、ほとんど日本海側、対馬海峡、東シナ海北部にしかいない。またクマノコガイがたくさん入っていて、最近では東南アジアから輸入されてもいるのだ。

 これをとりあえず、種簿ごとにより分ける。一種類だけ、外見はオオコシダカガンガラなのにへそがないのがある。それを除くと、

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ニシキウズガイ科/オオコシダカガンガラ(上のいちばん左)、コシダカガンガラ(上の中)、クマノコガイ(下の中)
サザエ科/ウラウズガイ(上のいちばん右)、スガイ(下のいちばん左)
エゾバイ科/イソニナ(下のいちばん右)

 これを塩ゆでにする。仕事前の慌ただしい昼食に爪楊枝でクルクルしながら磯の風味、ほろ苦さ、甘味を楽しむ。食べ比べてみると、どれもいい味なんだけど、意外やスガイがいちばんうまいのだ。こんないろいろ巻き貝を食べ比べられるのって楽しいものである。これが仕事のない夕べだったらなーー。

長崎県漁連
http://www.jf-net.ne.jp/nsgyoren/
長崎県漁連東京直売所
http://www.jf-net.ne.jp/nsgyoren/topix3/index.html

市場魚貝類図鑑の巻き貝の目次へ
http://www.zukan-bouz.com/zkanmein/kai.html


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 市場にある惣菜塩干の仲卸は毎日見ても「あきまへんな」というくらいに面白い。そこにはまだまだ深い深い底が見えない謎があり、それがいとつひとつ解けていくのが面白いのだ。
 その奥深い惣菜の中でも「若い可愛らしい???ユミちゃん」に教えてもらったのがこれである。名の「中華いか山菜」とはなんぞや。その答えは簡単至極、いかと山菜を中華風の甘酸っぱく味付けしたもの。じゃあ、なぜに「若い可愛らしい???ユミちゃん」の心を捉えるのだろう。その上「もう若くない、ややくたびれた肉屋のオバハン」までが、これにはまっているらしい。
 このパッケージングが凄い。どどーんと300グラム入りとはなんと強気なことだろう。ひょっとしたら業務用にも、そして大家族にも向いているということか? 分厚いビニールを破くともの凄い量の「中華いか山菜」が出てくる。
 これにまずはまってしまったのが我が妻である。「お父さん、“カロリ”に合う」なんて言っている。“カロリ”とは最近よく買う甘ったるい酒のことである。でも驚いたことに、これが開運祝酒にも合う。どうしてだろう甘くぴりっとして、すっぱく、そこにあまり旨いとも言えない食感のなくなったイカ、メンマや山菜(?)がくる。どちらかというと甘ったるいのだけれど、ついつい箸が延びる。
 でも残念なことにご飯には合わない。合わないけど、主菜のとなりに、ちょっとあるとうれしい。これでは我が家全部が『あ印水産』の罠に落ちたようである。

あ印水産
http://www.ajirushi.com/


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 ボクは昔から煮つけと言うのは魚だけで作っていた。まあ加えるとしてもゴボウくらい。それが各地で野菜を一緒に煮ているというのを知り、はたまた今回は戸田滋愛丸の賄いでの玉ねぎ入りの煮つけに大感激する。
 この玉ねぎが我が国に到来したのは明治になってからだ。文明開化の波に乗り、肉食の奨励とともに日本でも作られるようになったもの。特にカレー、シチューなどには欠かせぬ材料である。明治天皇にまで肉食をさせて、西洋料理の導入をした明治政府、玉ねぎの普及も当然早いものであっただろう。面白いのは関西ではハモすきには必ず玉ねぎを入れるのである。大阪では「泉州玉ねぎが出てくると、ハモが旬(も出る)」という言葉があるそうだ。それからすると煮つけに玉ねぎとは至極当然のことである。この西洋料理の材料がいつのまにか煮つけ、魚すきなどと結びついたのだろう。それも意外に明治の早い時期からかも知れない。

 滋愛丸での煮つけは魚エビと玉ねぎが相乗効果を生んだのだろう。非常に全体の味わいが深く、そしてより一層ご飯にも合うものになっていた。
 沼津からは底引き網の魚をたっぷり持ち帰っている。これを玉ねぎと煮てみる。
 材料はイズカサゴ2匹とシロカサゴ1匹、シロサバフグ1匹である。今回はやや多めの煮汁で、酒、味醂、砂糖、しょうゆ、水。そこに玉ねぎ大を一個を大振りに櫛切りし入れる。後はただ単に煮つけるだけ。ちなみに煮つけのコツなどはないのである。うまい煮つけを作る最大のコツは頻繁に、日常的に、作ることだけだ。

 玉ねぎの甘さを考えて、今回だけは砂糖を大幅に控えた。それなのに出来上がりの汁を味見するとかなり甘味が強い。そこに魚の濃厚な旨味が加わって、最後に熱湯をそそいで飲む骨湯が楽しみに思える。
 イズカサゴとアカカサゴ、当然遙かに前者の方が美味である。しっかりした身質で、しかもほっくりとした食感。シロカサゴは煮つけると身がやせる。まあともに美味であるには違いないが、イズカサゴの値が高いわけを改めて再認識する。
 そしてシロサバフグだが、こちらはかなり味わいが落ちる。これは時期もあるだろうし、また肝を加えていないせいもある。シロサバフグの肝はたぶん無毒であるだろうが、一様、厚生省の指示通り食べないことにする。
 そしてあらかた平らげて、子供達は煮染められた玉ねぎで飯をかきくらい、最後に熱湯をそそいで骨湯となる。これはまさに至味である。

 煮つけを食い尽くして、千葉県小見川のウナギ漁師萩原さんの言葉を思い出す。
「昔はなんだって煮つけにしたもんだ。オヤジは刺身はぜいたくだって。わかるか、煮つけはそれこそ無駄がないだろ。皮も身も内臓も、食べられるところは全部食べられる」
 確かに魚を利用するに煮つけくらい無駄のでない料理はない。

市場魚貝類図鑑のシロカサゴ
http://www.zukan-bouz.com/kasago/sirokasago/sirokasago.html
市場魚貝類図鑑のイズカサゴ
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市場魚貝類図鑑のシロサバフグ
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弁当箱と大箱

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 市場で「弁当箱」「大箱」というとなんだと思うかな。たぶん魚に興味のない、市場を歩いたことのない人には想像もつかないだろう。
 ここで先日、大都魚類の下田さんとの会話を再現してみよう。
「最近、安いのはロシア産が大量に来ているから。それで大箱があんなに安い。弁当箱だったら千円台ということもあるな」
 ロシアからの輸入が増えていて値崩れしている。そして大箱の方が高級で、弁当箱の方が安い。
 これがウニのことなのである。

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これが大箱、色合いが黄色く北海道産なのでキタムラサキウニかな?

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これが弁当箱。色合いがやや赤っぽいのでエゾバフンウニ

 ウニは世界中から輸入されている。それを北海道などで丁寧に並べられて入荷してくる。その原材料はアメリカ、カナダ、チリ、中国などもあるが、今もっとも大量に輸出してきているのがロシアなのだ。カナダ、アメリカのグリーンというバフンウニの仲間、チリウニ、これは国産のとは種が違っている。そこにロシアの強みは北海道などでとれるエゾバフンウニ、キタムラサキウニが豊富に棲息すると言うことだ。
「売れるものは売る」という資本主義の原則にのっとり、ロシアから大量にくるウニ。これがウニの価格を大幅に下げているのだ。
「でも下がっているのはだいたい60点(品質の度合い)以下のもの。いいものはやはり高くて、大箱で12000円はくだらない」
 と下田さんは語る。

 これでは北海道の漁師さんは困っているだろう。

 でも、これを築地や市場歩きが好きな人には朗報ととらえて欲しい。
 大箱というのは縁のあるまな板上の箱に丁寧に一葉一葉並べられて、それは芸術品のように作り込まれたもの。弁当箱というのは幕の内弁当の経木の箱を小振りにしたもの、これにバラバラにウニが入っている。当然、大箱は見事であるが、値も高い。庶民は弁当箱でも充分。
「大箱だって3000円くらいからあるぞ、5000円もだせば一級品だよ。弁当箱がいくら1500円だって、たまに買うなら大箱がいいだろ」
 八王子綜合卸売センター高野水産の社長は吠えてくれる。まあ最安値かもしれない今だから、ウニを飽食するのも一興だろう。

 例えば1500円(これはもっとも安いもの。平均2000円前後か?)の弁当箱を買う。これが300グラムとして炊きたてのご飯に150グラムのせる。てっぺんにはわさび、そこに好みで醤油を垂らして、フカフカとかき込む。こんなこと北海道を旅しても出来ることではない。それが八王子でも築地でも、市場に行けば可能なのである。

市場魚貝類図鑑のキタムラサキウニ
http://www.zukan-bouz.com/sonota/uni/kitamurasakiuni.html
市場魚貝類図鑑のエゾバフンウニ
http://www.zukan-bouz.com/sonota/uni/ezobafununi.html


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戸田・沼津の旅 ありがとう五/飯塚さんにごちそうしてもらった『たか嶋』の朝ずし
 沼津魚市場には午前3時には到着している。そこから底引き網の選別を見て、陸送もの、伊豆の各地、焼津、田子の浦、定置網、しらす漁などを見る。いつの間にか6時を回り、7時すら過ぎる。その頃、一緒に市場を見て回っていて飯塚栄一さんが「そろそろ朝ご飯行きましょうか?」と声をかけてくれる。
 そして競り場からほんの数十秒で『たか嶋』の前までたどりつく。この店、入ると右手にカウンター、左手にテーブルと天ぷらのカウンターがある。飯塚さんともども右手のカウンターに座る。中には職人さんふたり、カウンターに席をとるほとんどが市場関係者、帽子もそのままという人が多い。
 ときどきこのプロ達から「今日はなにかありました」と声がかかる。この沼津の仲買さん達はまことに優しいのである。
 席に着くと、まずみそ汁がくる。これは平凡なものだが、何しろ昨日の睡眠時間が4時間ほど、一昨日からの一時間弱を足しても疲労は頂点となっている。そこに味噌の香ばしさ、そして塩気が心地よいな。
 いつものように、本日の握りが数種、巻物にこはだ、玉子焼き。真っ先に出してくれたカンパチ、マグロの赤身、アジ、サヨリがなんとも素晴らしい。特にカンパチにはうなる。かなり大振りのものの背の身をつかったものか。これがシコっとして、旨味がのり、たまらなくうまい。
 飯塚さんは「生しらすないの……」とご不満のようであったが、この早朝の『たか嶋』の寿司はうまい。

 飯塚さんいつもありがとう。

飯塚さんの海の世界
http://www.numazu.to/sea/
市場魚貝類図鑑
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双葉寿司・たか嶋
http://www.izu-kaisen.com/umaimono/futabatakasima.htm


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戸田・沼津の旅 ありがとう四/沼津魚市場の山田さんにいただいた、「トコロテン」
 もともと沼津魚市場で底引きを担当していた山田さん、今では冷凍部ではりきって働いている。考えてみるとサラリーマンというのは、こういった異動というのがあるので大変だ。
 駐車場にクルマをとめて、山田さんにおはようと言って毎回底引き網の競り場に向かう。これが恒例となっている。その帰り道に持たせてくれたのが、伊豆近辺でもうまいと評判の川奈物産の「トコロテン」である。
 一般に出回っている「心太(トコロテン)」には二種あり、原藻から作ったものと、いちど寒天とし、それを材料にしたもの。当然原藻から作る方が海藻の風味も旨味も強いわけであるが、なかなかこのうまいトコロテンが手に入らない。そんなとき伊豆の玄関口沼津で頂いたのがこのトコロテン。
 伊豆はトコロテンの材料・原藻であるマクサなど天草の産地である。その伊豆にあっても定評があるものをいただいて期待が膨らむ。そして期待に違わぬ味わいであったのだから「うれしいな」。
 なんといってもプルンとして弾力がある。それを舌でつぶすとふわっと海藻の、もしくは磯の香りが浮き上がる。これ食べ始めるととまりませんな。

 ありがとう山田さん。

市場魚貝類図鑑のマクサへ
http://www.zukan-bouz.com/kaisou/kousou/tengusa/makusa.html


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ホウボウの呼び名のページを作成
http://www.zukan-bouz.com/zkanb/hougen/shubetu/houbou.html
メジナ属のページを作成
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 滋愛丸が戸田港のもどりついたら様々な人たちが待ちかまえていた。そこにマグロ漁をしていたという人がいて、タチモドキを見て、
「これはな、三枚におろすじゃろ。そして端から切る。それを酢と砂糖と味噌で食べる。これがうまいだらよ」
 なんだか親切に教えてくれる。ちょうど滋愛丸さんからおかずに小振りのエビとタチモドキをもらったところ。持ち帰ってそのとおりに作ってみる。

 三枚に卸したタチモドキの血合い骨は思ったよりも強い。それで血合いを切り取り、ほそく切る。それに塩をして少し待つのだ。
 待つこと20分ほど。いちど水洗いしてから、酢と味噌、からしと砂糖のからし酢みそで和える。
 見た目は悪いが、これがなんともいける。特に日本酒の肴にはもってこい。
 思ったよりもタチモドキの身はシコっとしており、旨味がある。そこにさっぱりとした酢みそでなんともたまらんいい味わいなのである。
 夕べの気温が高いせいか、窓を全開としている。そよ風が心地よい。そこにさっぱり味のタチモドキの酢みそ和えはなんとも言うに謂われぬ味わいである。酒がすすむなー。

市場魚貝類図鑑のタチモドキへ
http://www.zukan-bouz.com/saba/tatiuo/tatimodoki.html


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 雨模様で肌寒い。そして滑り込んできたのが中央線旧車両。これが隙間だらけで振動激しく寒いのである。神田駅で京浜東北線に乗り換え、新橋駅。新橋から中央市場行きのバスでほんの10分弱で場内に行き着く。到着は7時半。

 場内、『やじ満』で腹ごしらえ。驚いたことにこの時間にも関わらず一般客が寿司屋の前に行列を作っている。また外国からの観光客本日も多い。

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この時間から場内の人気店では行列ができはじめる

 場内に入りすぐに「かね十」でマカジキの切り身を買う。場内広しと言ってもマカジキの専門店はここだけ。

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マカジキの身の色合いは赤く、そして本鮪(クロマグロ)のように変色しない。それでかつてはマグロ以上によく食べられていたのだ

 一ヶ月ぶりの築地は中日開市の火曜日で買い出しの人は少ない。カメラを持って『飯沼水産』を通り過ぎるとやはり店の人が警戒している。この店、開いた荷にはすべてラップがかけられ、撮影するのも立ち止まるだけでもうるさく「シ、シ」という感じ。まあある意味、ガンコでいいのかな。

 好天続きのせいかめぼしいものは少ない。三陸から「本ます(サクラマス)」、カラフトマス、ヒメコダイのなかにホシヒメコダイが混ざっていて産地が知りたいと思ったが、どこにも書いていない。活け魚屋にはヒラメよりもマコガレイが目立つ。

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マコガレイはこれからが旬

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「青マス」はカラフトマスの未成熟個体の呼び名

『大雅』という店に大きなメカジキの輪切り、その前に切り身が二枚で300円というのがある。これはお買い得だな。『まぐろ 中島』には500円パックがずらり。平日でこれというのは場内が様変わりしている証拠。一般客を無視できなくなってきているのだ。

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『中島』の500円パックは魅力的

 愛媛産のヒオウギガイ、面白いのは宮城県産のミネフジツボというのがキロ2500円で売られている。日本海からはバイ、それに生のサクラエビ。

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宮城県産のミネフジツボは初めて見た

『大音』さんのところではホウライヒメジ、オニカサゴを見る。また北海道産のサメガレイと将来値の上がりそうな魚が押さえてある。

 今回改めて思ったのは場内には「扇」、「伊勢」、「樋」とつく店が多いということ。

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伊勢田は2店舗あり、中ほどの店には面白い魚が多い

 小豆島産のイワガキは今回初めて見た。アカガイ、トリガイ、タイラギはやはり春らしく目立つ。

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イワガキの産地はどんどん増えてきている。当然、将来的には値段も下がるだろうし、資源の保持をどうするのか? と言った問題も出てくるだろう

『イリヤマ斎藤』に鹿児島県からアカハタモドキ。小笠原からホオアカクチビ、とタマメイチがあり、一匹ずつ買いもとめる。

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アカハタモドキは珍しい魚ではないが、これは1.8キロもある大物。アカハタともども1キロ以下が普通なのでちょっと驚く

 場内でコンブなどを扱う『近長(きんちょう)』は前々から気になっていた店。見事なリシリコンブを見ているとご主人らしき人が声をかけてくる。なぜかボクのカメラが気になったようだ。ここでガゴメコンブを見せてもらう。キロ当たり7500円だとのこと。試食した「梅ちりめん」があんまりうまいので200グラム500円を買い求める。これご飯にあう。

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近長(きんちょう)のオヤジさんは気さくだ。また若主人らしき人の作った「梅ちりめん」はうまいぞ

 あまり収穫のないまま大都の尻高鰤さんのところに上がる。ここで西日本四国などの担当鉛山さん、ウニの下田さんを紹介してもらい。特に鉛山さんには香川県漁連にヒラのことを問い合わせていただく。
 話し込みすぎて、時刻は11時近い。仕事に遅れてしまって長崎県漁連直売所に立ち寄れなかった。残念だ。

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 帰り道、波除神社で都議会選の演説を見る。なんと築地移転反対に協力するという候補の応援。なんだかこの候補さん、頼りなさげだががんばってほしいものだ。築地の移転は、例えば長い目で見てのことはわからないが、ここ20年くらいは避けるべきだ。築地仲卸が完全に世代交代するまでは様子を見るべきなのである。東京都の移転を急ぐ考えは、市場というものを単に三次元的、空間的にしか考えていない人たちの考えていること。またこの騒然としてゴチャゴチャした空間をたた「ごみため」のようだと思ったバカな野郎もいるが、どんなに市場が新しくなっても同じだというのがわかっていない。
 今のところ、とくにエリートと言われる人たちの頭の構造が単純すぎて、築地の持つ奥の深さを理解するには「進化が遅れている」。これは非常に残念でならない。これでは築地でもっとも大切だと思われる「市場文化」を理解できないだろう。すなわち20年待て、そうすれば市場関係者も変わるだろうし、移転推進者の単純な頭の構造も複雑化するはずだ。
 また唐突かも知れないが世界に冠たる築地市場を世界遺産に登録できないのだろうか? この国が誇るべき憲法九条とともに、「築地の市場文化、20世紀の市場の建物」を永遠に維持し、活用する。これは外国からの観光客が少なくて困っている東京都にも朗報だろう。例えば、今のような無秩序はこまるが、午前10時以降は積極的に観光客(たくさんの外国人を受け入れる)を市場に招き入れる。それを仲卸のご隠居などが市場の古きよさを語り案内する。これまさに一挙両得だと思うな。

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 駿河湾沼津には底引き網とともに「しらす」という名物がある。このカタクチイワシの稚魚は春と秋の2回漁がなされる。これを西日本では茹でてしっかり干して「ちりめんじゃこ」となり、遠州灘から駿河湾、相模湾、はたまた九十九里や鹿島灘ではあまり干さないで「しらす干し」となるのだ。その「しらす干し」はどこでも買えるものだし、珍しくもないが、駿河湾、相模湾で愛されている「生しらす」、すなわち刺身のことはそれほど世間様に知られているとは思えない。この「しらす」を昔から生で食べていたのは、この国広しといえども相模湾、駿河湾、高知県だけではないだろうか。この「生しらす」を食べると食「の自分地図(これはボクの造語です。うまいまずい、どんなときに食べるなどを地図のように表す」がガラリと変わること受け合いである。


 沼津魚市場には日が昇りきったやや遅い時間に「しらす船」が帰ってくる。
 沼津をはじめ静岡県では春になくてはならないのが「生しらす」。これは誇張ではない、実見したのだが静岡の魚屋にいると「今日は生シラスあります」というふだや貼り紙が必ずある。ここには、どうせみんな「生しらす」を買うんだから、聞かれるのが面倒だ、だから張り出しておくぞ、というのが見て取れる。
 沼津魚市場の岸壁前に大きな水門がある。この水門に「しらす船」が見えると、わっと岸壁に仲買さんが走る。そこに魚市場の職員が待ちかまえ、船から「しらす」を受け取るとたちまち岸壁は競り場となるのだ。

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 さて船から下ろされた袋詰めされた「しらす」を仲買さんが手に受ける。これは大きさを見ているのだ。何と言っても、求めているのは「生しらす」にできるもの。手の上の「しらす」をなんどもなんども見る。このときカタクチイワシにアユが混ざっていないか? マイワシが混ざっていないか? そして大きさ、鮮度。すばやくしかも的確に値踏みをする。そして競りが開始される。

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「おおおいくぞ!」とでも言っているんだろうか、値踏みが一段落するや競り開始だ。そして、終わるとまたぱっと仲買が散る。これが船が着くたびに繰り返される。
 最近、沼津魚市場周辺は人気の観光地となっている。もしも早めに来られるならもっと多くの方達に、この「春らしい光景」を見て欲しいものだ。

 また水門をくぐる「しらす船」を見る。岸壁に仲買が走る。それを見るすべもなく見ていると、その仲買の群がやや魚市場の建物寄りに膨らむ。そこには軽トラックが走り込み。荷台に「しらす」があるのだ。その「しらす」は水切りしただけで袋詰めをしていない。そこに沼津市大岡の「魚惣」さんが走り寄り、一緒に袋詰めを始めている。

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「これはいいのかな」
「いや、生には小さすぎるな。最初に来たのは5000円(キロ当たり)くらいしたけど、これはどうかな」
 カゴの中にこぼれ落ちているのをすくって食べてみる。微かな苦みはあるものの、それ以上に旨味が強く、脂があるとは思えないのにまったりと甘い。ふたりが一生懸命に袋詰めしている脇でとれたばかりの「しらす」に舌鼓を打つ。これはいけないことかも知れないがやめられない。

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「生しらす」にならないものは、そく「しらす干し」にするために加工場行きとなり茹でられる。この茹でたばかりの「釜揚げしらす」などは見ているだけで「どんぶり飯くれ!」と叫びたくなる。ボクなら「釜揚げしらす」だけで軽く白飯3ばいはかき込める。だから太ってしまうんだなー。

 さて富士山は霞んで見えない。海は鏡のように凪いでいる。睡眠不足で頭痛が通奏低音のようにあり、市場はまだ喧噪に包まれているというのに、この暖かい岸壁でぼんやりと眠気をもようしてしまう。駿河地もまさに春たけなわなのである。

魚惣  静岡県沼津市大岡2481-4

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鹿児島県南さつま市のわかしおさんのブログ面白いです。さすがは鹿児島という魚がいっぱい見られます。

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カツオのはらも

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 戸田・沼津の旅でのありがとう。その三/西伊豆のうまいもんは山丁さんに聞け

 戸田の港で幾人かの引退した(してないかもわからない)漁師さんに話を聞いた。そんなとき飛び出したのが、「カツオのはらも」。その昔、よくおかずとして食べたのだという。
 これはカツオ節を作るときに卸し身にする。そのときに内蔵を包み込む薄い部分を切り取ってしまうのだ。その形がちょうど二等辺三角形となる。カツオ節工場では「はらも」を切り取り、塩水で洗う。だからそのまま焼いてもいいのだが、軽く干すとなおうまい。
 これなど西伊豆から沼津、すなわち静岡県東部ならではの食べもの。この「はらも」を探そうとしたら沼津魚の達人、菊貞・山丁 菊地利雄さんが持っていますとのこと。すぐさま冷蔵庫まで走り(58歳なのに素早い)、持ってきてくれた。

 これをいただいて帰り、七味唐辛子をふって炙って食べる。これがなんとも濃厚な旨味があり、脂がのっていてうまい。ブルンブルンと弾力があるので箸を使うよりも野性的に手づかみで食らう。
 これを肴に酒を選ぶとしたらやや甘口の酒をぬる燗というのがいいな。

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 さて、このような沼津西伊豆ならではのうまいもんを探すには、「まず菊地さんに聞いてみろ」というのが最短時間の好手となる。実に沼津に行くたびに菊地さんから新しい食材の知識をいただいている。菊地さんにも、彼のお父様以上に長生きして欲しいな!


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『市場寿司 たか』の渡辺隆之さんは 今週初め、更年期だとか、風邪なのだろうか、とかでダウンしていた。そして精密検査。この50代前半というのも危険な年齢で病院に行くのもこわいものだ。
 その更年期で調子が悪いのかな? というのは間違いではないかと思う。なぜなら、このモーニング・スペシャルの価格を見て頂くと一目瞭然。値段が安すぎるのだ。その上、一人っきりの店だから忙しいことはなはだしい。だいたいこの値段で玉子焼きから穴子、しめものまで自家製なんてこと自体奇跡なのだ。だから疲労多くして儲けがすくない。
 と言いながら、たかさんにいちばん甘えているのが市場仲間とボクなんだから、余計に申し訳ない。
 そんなことを思いながら先週土曜にもモーニング・スペシャル・イクラ抜きをお願いしたのであった。うまい。ちなみに白身であるのが戸田トロール滋愛丸で揚がった大型のアオミシマ。

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市場寿司 たか
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八王子の市場に関しては
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ギンザメ目にアカギンザメのページを作成
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アナゴ科に ミナミアナゴのページを作成
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 戸田沼津の旅の「ありがとう」の二つ目。
 朝ご飯がうまいので、急に元気が出てきた。不思議なことに揺れる船の上を軽やかに動けるようになった。だから網上げとともに選別の手伝いだってできる。船室へ、胴へ、また艫(船の後ろ側)へと船員の佐藤さん達とともに素早く、そして頻繁に行き来する。そして太陽は頭上にある。「もう昼時かな」なんて期待していると佐藤吉信さんが船室に消えるのだ。
 それにのこのこついていって船室をのぞくと、驚いたことにもう鍋が吹いている。そして甘辛い香りがぷーーーーんと来た。
「煮つけですよね」
「そうだ。朝はみそ汁、昼は煮つけということだら」
 不覚にも腹の虫がぎゅううううう、と長い鳴き声を上げる。

 そしてこの間に4回目の網揚げが行われる。佐藤さんはガス台の火をとめて、艫に走る。早く昼ご飯が食べたいのでボクもせっせと働くのだ。

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 そして待ちに待った昼ご飯。

 出てきたのは朝ご飯と同じスタイル。
「毎日、おんなじでも全然あきない。どうしてかって言うととれたてのカサゴだら、それをいきなり鍋に放り込む。これはね陸に上がって同じように作っても、まずいね」
 佐藤正次さんがいきなり赤えび(ツノナガチヒロエビ)の頭にかぶりついている。ちゅうちゅう吸っているのは濃厚なミソである。身はほろほろと甘く、そこに濃厚なミソの味わい。これが白いご飯にもあうから面白い。
「ミソがねうまいだら」

 ツノナガチヒロエビの煮つけがこれほどうまいものだとは思わなかった。どうしても生に近い霜降りなどで食べていたのが、どうやら失敗であったようだ。戸田でも煮つけがいちばんよく作られるという。
 白いご飯に煮汁をかけ回して、最後の一粒まで食い尽くす。
 満足至極でポカポカと暖かい胴の間でぼんやりしていると、残った煮つけに熱湯をそそいで佐藤吉信さんが持ってきてくれる。船足が速くなって5回目の網上げが始まっている。
「まあゆっきり飲んでいていい」
 吉信さんが目尻にシワを寄せて笑うのに甘えて、じっくりカサゴやエビの滋味を堪能した。

滋愛荘 静岡県沼津市戸田270-3 電話0558-94-2643


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 駿河湾での海の幸にいろどりを添えているのが底引き網の魚貝類だろう。伊豆半島の磯、また南西に向かって黒潮を受ける形なので温熱帯の魚が揚がるとはいうものの「駿河湾ならでは」とまではいかない。
 その底引き網漁に乗船してきた。ところは駿河湾でのトロール最大の基地(といっても寂しい観光地ではあるが)である戸田村。
 戸田は伊豆の中心、大仁、修善寺からも、そして沼津からも山道海沿いの道を一時間ほどもクルマを走らせないと行き着けない。そこは夏こそ海水浴客で賑わうが、他の季節はめぼしいものといったら細々と湧く温泉と、駿河湾の深海魚だけなのである。だから町中、「駿河湾の深海魚」、そして中でも主役であるタカアシガニのカンバンが散見する。

 戸田港の午前4時。これは底引き網では遅い出船である。乗組員の方達との挨拶もそこそこに慌ただしく乗り組む。戸田の岬を離れて船室に入ると迎えてくれたのが佐藤正次さんと、佐藤吉信さん。ついでに船長の名が佐藤滋記さんであって、皆兄弟なのかというと、あらず、戸田は佐藤さんだらけなのだという。
 船室の佐藤さんたちはまことに親切である。宇久須までの1時間足らずをカツオ漁のこと、底引き網漁のことなどを聞きながら、まったく退屈することなく過ごせた。

 宇久須沖に着いたときには夜が明けていた。佐藤正次さんが「伊豆では日の出が見らねーだら。その分、夕焼けがきれいだらが」といったのが目の前にある。まだ太陽は伊豆半島の向こう側にあるのだ。田子沖の奇岩が面白い。富士山は霞に隠れていて、風はほとんど吹いていない。

 底引き網の船の特徴は左右にある大きなドラム。ここに全長1800メートルの鉛入りのロープが2巻き。艫で第一回目の網入れが始める。まずはブイを投げ込む。船を開店させながら左舷の全長1800メートルのロープを伸ばしていき、こんどは網を投げ入れる。そして右舷のロープを伸ばしていき、ブイの地点に戻る。ブイを引き上げると、ちょうど輪になってその対角線上の端と端に船と網がある。その網をゆっくり子供が歩くくらいの速度で引いていくのだ。網の口にはマンガン(海底をかくもの)があるわけでなく、鉛つきのロープの重りでなぞるように引く。
 投網から引き上げまでは1時間ほど、巻き上げには20分から30分かかるので、一網1時間30分ほどである。網が上がって来てからが船の上はまるで戦場のようになる。引き上げた網を外して、もう一組の網をロープに結びつける。またブイを投げ、網を入れている間に魚貝類の選別を行うのだ。

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巻き上げにはだいたい20分ほどかかる

 その選別が大変である。それこそ海に生きる生物のほとんど総てが船の上にある。魚類、甲殻類、軟体類に棘皮動物、その上スーパーのレジ袋から材木まで入っている。ここからアカザエビ、ボタンエビ、ツノナガチヒロエビ、ジンケンエビ、タカアシガニ、ユメカサゴ、チゴダラ、タチモドキ、イズカサゴなどを選別していく。つるっと滑りそうになって目を落とすと無数のヌタウナギがはっていたりする。

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「ダメだないちばん金になるのは手長(アカザエビ)だけんど、ほとんどいねーな。まあカサゴが多いだけ増しか」
 二人とも黙々と大小、種類事に選別していく。そして選別が終わると大急ぎで船倉の氷の入った大きなバケツに仕舞い込む。

 第2回目の網を投げ入れると佐藤吉信さんが船室に消える。ほどなくいい匂いが漂って来たなと思ったら朝ご飯の出来上がりだった。おかずはとれたばかりのエビとユメカサゴ(かさご)のみそ汁、漬物、ゆで卵である。これが言うに言われぬほどの美味。

 第4回までの網入れで本日はどうやら不漁らしいと船長さんからため息がもれる。だいたい今期は不漁続き、その上、「今日は潮が速くなってきてる」のだという。
 やっぱり多いのはかさご(ユメカサゴ)である。またタチモドキが多いのは意外だ。これは味はいいのであるが、表面の銀色がはげやすく、手に着くと白い絵の具のようにどろどろしている。また底引きの主役とも言えるアカザエビが形も数も揃っていない。その上、やっと揚がったタカアシガニが脱皮からの回復前ということで、船長の佐藤滋記さんの顔は冴えない。

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 午後、1時になってまた佐藤吉信さんが船室に消える。当然昼ご飯を作っているのだ。船室を覗くと、艫をにらみながら、鍋から甘辛い匂いを漂わせている。

 この吉信さんの動きが早い。料理途中に船がやや速度を上げる。するとエイヤ! っと飛び出して、艫にロープ用のベアリングを突き立てる。そして巻き上げ、獲物が甲板に落とされると、すぐに網を代えてブイを投げる。また選別に戻り、そして網入れ、またまた選別。ブイを揚げて、引くための太いロープを結わえると、また選別に戻る。

 選別が終わると、船室に消えて、ほどなく「昼飯できたぞ」と呼ばれる。
 昼はツノナガチヒロエビ(赤えび)とユメカサゴ(かさご)の煮つけ。ツノナガチヒロエビの煮つけってこんなにうまいのか、と感動する。

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いちばんお金になるのがアカザエビとボタンエビ

 結局6回の網入れの獲物は少なく不漁であった。最後の網上げでの選別は戸田を帰りながら行う。右手に見える伊豆の断崖が深い緑と、若葉の明るい緑が入り交じって美しい。

 戸田港には3時過ぎに帰り着く。船上での慌ただしさがウソのように岸壁は静かで閑散としている。

 さて、本日底引き網で揚がったのは
魚類/マアナゴ、ユメカサゴ多数、イズカサゴ、ニギス、アオメエソ、ヨロイイタチウオ、ギス、タチモドキ、チゴダラ
エビ類/ツノナガチヒロエビ、アカザエビ、サガミアカザエビ、ボタンエビ、ヒゲナガエビ、ジンケンエビ、アカモンミノエビ、ミノエビ
カニ類/タカアシガニ
頭足類/チヒロダコ
巻き貝/スルガバイ、ヒメエゾボラモドキ
 また売り物にならないのは
等足類/オオグソクムシ
その他甲殻類/ヤマトトックリウミグモ
エビ類/オキナエビ、ソコエビジャコ、センジュエビ2種、ヒメクダヒゲエビ?、ナミクダヒゲエビ(量が少ないため)、ベニガラエビ(量が少ないため)、シラエビ、シラエビの仲間
異尾類/ソーヨーアナエビ、オオコシオリエビ(量が少ないため)、チュウコシオリエビ、アカモンオキヤドカリ、オキヤドカリ
カニ類/トゲナシビワガニ、ヒラアシクモガニ、オーストンガニ、コツノキンセンモドキ、アシナガマメヘイケ
無顎類/クロヌタウナギ、ヌタウナギ
魚類/ヤマトシビレエイ、ニホンヤモリザメ、ホシザメ、アオミシマ、キホウボウ、ヒゲキホウボウ、ベニテグリ(量が少ないため)、ミドリフサアンコウ、ハナソコダラ、シオイタチウオ、シマイタチウオ、ヤセムツ、サガミソコダラ、ソロイヒゲ、スジダラ、サンゴイワシ、ミナミアナゴ、ギンアナゴ
巻き貝/ヒラセギンエビス、ギンエビス、フクレギンエビス、ニクイロヒタチオビ
二枚貝/オオキララガイ、オオシラスナガイ
頭足類/ヤワラボウズイカ、オオメダコ、メンダコ
後棘皮動物など/ウチダニチリンヒトデ、テズルモズルなど多数

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駿河湾の深海の味覚を味わうなら
滋愛荘 静岡県沼津市戸田270-3 電話0558-94-2643


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 沼津に行くたびに必ず買って帰るのが『やいづ屋』の「あじちくわ」である。そして今回は「あじかまぼこ」にも挑戦。どちらもアジの開きでも、またアジの水揚げでも有名な沼津ならではのもの。
 蒲鉾というとスケトウダラなどの白身魚のすり身で作るもの。まあ嫌みのない味わいではあるが魚を原料としているはずなのに、その旨味が感じられずもの足りない。そこに背の青い旨味のあるマアジが混ざると途端に味に深みが増す。
 今回買ったのは「あじかまぼこ」だが、やはり「あじちくわ」の方がマアジの旨味が生きているように思われる。でも、これは好みの問題だろう。

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 他にもうまいさつま揚げや静岡ならではの黒はんぺんも人気である。面白いのは沼津魚市場冷凍部の山田さんなど「朝ご飯の前のおやつ」として「カレーボール」という、さつま揚げを毎日食べるのだという。それにつられて魚市場でもさつま揚げをつまんでみると、これも絶品である。

やいづ屋商会 静岡県沼津市下河原町63-1


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船室で料理を作る佐藤吉信さん

 まずは戸田沼津の旅の「ありがとう」のひとつから。
 戸田トロール滋愛丸での底引き網は楽しかったのだ。確かに不漁ではあったが、とにかく底引きというものは水揚げされる魚貝類が多彩極まりないし、また新発見も多かった。
 そしてなによりも良かったのが、乗組員である佐藤吉信さんの作り出す賄いのうまいことだ。
 まずは朝ご飯から、「これなど陸で作ったらちっともうまかないだら」といいながらどんぶり飯に漬物、ゆで卵に、そしてそしてどんぶりいっぱいのみそ汁。中身は赤えび(ツノナガチヒロエビ)、本えび(ヒゲナガエビ)とかさご(ユメカサゴ)、喉黒(チゴダラ)それに白菜にネギ。あと材料といったら水と味噌だけだろう。

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ユメカサゴ、チゴダラ、ツノナガチヒロエビ、ヒゲナガエビ、ジンケンエビなどが見える

 このみそ汁が「許して許して、うますぎて息苦しい」ほどの凄いものだったのだ。
「うまいだら。これは沖に出なくちゃ食べられないけんね」
 同じく乗組員の佐藤正次さんが笑っている。
 これをすすり込み、そこに真っ白な炊きたてご飯を口に放り込む。あああ! 耐えられないうまさだ。不眠でここまで来て疲れていて、頭が薄ぼんやりしていたのが一気に目覚めてくる。頭痛すらも和らいできたのだからビックリ。そう言えばこんなに満足至極な朝飯なんて久しぶりではないか? 佐藤吉信さんは笑いながらみそ汁のお代わりを手渡してくれる。
 お二人が底引き網の持ち場についてからも、お代わりのみそ汁をじっくり楽しませていただく。

 さて、どうして底引き網の魚がうまいかというと佐藤さん曰く「深海の魚は独特の脂があるから」だという。特にかさご(ユメカサゴ)は出汁が出るのだという。
「だけんど、魚だけじゃうまかない。ここにエビがくるから倍うまくいなるだ」
 味噌もよく見ると大手メーカーのどこにでもあるもの。このみそ汁のうまさは総て深海の魚貝類ベースのもの。
「これが楽しみだら、底引きはね」
 佐藤正次さんはカツオ漁に長年従事していたという。それから底引き網漁に転職していちばん感激したのがこのみそ汁の味だと言うからには、漁師さんにも一目おかれる味わいなのだ。

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ご飯にみそ汁、漬物が基本形

戸田の深海魚を味わうなら
滋愛荘 静岡県沼津市戸田270-3 電話0558-94-2643


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 静岡県沼津市戸田は思ったよりも遠かった。前日は帰宅が8時過ぎ。メールを見ていると都築さんからの「そろそろ行く時間ですよ」というメッセージ。これを見たのが11時前のこと。そして旅立ちは11時過ぎ。
 東名裾野を下りて三島に向かうはずが沼津に出てしまってから少々迷った。コンビニでお握りを買い、修善寺から戸田に向かって峠を越える。
 戸田港には午前2時過ぎに到着。港は漁船らしいエンジン音で騒がしい。それから3時半まで仮眠。

 港の前には慈愛丸が停泊している。そこに人影が見えて、ほどなく慈愛丸の船長さんもくる。そこから慌ただしく出港。船室に入りなさいと言われて、その人が佐藤さん、そしてもう一人の乗組員も佐藤さんであり、慈愛丸さんも佐藤性。
 宇九須沖から底引きの網を入れる。計6回いれるが不漁。様々な魚貝類を採取。またうまい朝ご飯、昼ご飯をご馳走になる。遠くに見えるのは裾野を霞ませた富士山。

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 戸田港には午後3時半に帰りつく。港でいろいろ話を聞いて、山をまた東に超える。「途中左に曲がるんだよ」と言われた場所がわからない。そしてわけのわからないトンネルが有料。これだから伊豆はいやだ。

 沼津には午後6時過ぎに到着。クルマに積んだ自転車の空気がなく、菊貞・山丁、菊地利雄さんのところで空気入れを借りて本町を目差す。この朝日湯に一日の汗と潮を落とす。この朝日湯がいい。
 それから夕食と晩酌をとる居酒屋を探すが、いいところがないんだな。途中警官に呼び止められ不審尋問を受けそうになる。
 それから沼津の街を彷徨う。助け船を出してくれたのが飯塚栄一さん。駅前の『銀座ライオン』で夕食をご馳走になる。酔っぱらってクルマに戻り、5時間ほど仮眠。ほろ酔い加減でよく眠れる。

 午前3時過ぎに競り場を目差す。沼津魚市場冷凍魚のところで山田さんに挨拶。そして底引きの競り場に。慈愛丸は不漁だったか、好漁の船もある。底引き、田子の浦の釣りもの、川津の釣りなど今回の魚市場は多彩。久しぶりに『頭屋分店』さんに挨拶。
 菊地さん、佐政水産の青木さんにも挨拶。また何人もの仲買が声をかけてくれる。午前6時に飯塚栄一さんが到着して昨日の底引き網のゴミ(捨てるべき生物)を選別。
 午前8時前に『たか嶋』にて朝ご飯。これはまたまた飯塚さんにご馳走していただく。「ありがとうございました」。競り場にもどるとシラス漁の船が帰り着くところ。また赤沢などの定置もくる。
 沼津には9時過ぎまで。そのまま沼津から東名にのる。

 帰宅は正午過ぎ。午後4時近くまで仮眠。持ち帰った生物を6時過ぎまで撮影。それから整理。
 夕ご飯は7時半から、『やいづ屋』のアジ蒲鉾うまい。また小海老の唐揚げ、ユメタチモドキの煮つけなどを肴として軽くいっぱい。

 11時過ぎにはダウン。

 翌日は6時過ぎに目覚める。大急ぎで一昨日からの画像のバックアップ。終了は8時半。
 そして八王子魚市場には8時半過ぎに到着。八王子綜合卸売センター、八王子総合卸売協同組合と回っていろいろ立ち話。帰宅は10時過ぎ。
 午前から午後にかけて雑誌『健康』の原稿を書く。なかなかうまくいかない。
 お茶漬けでお昼。
 午後から撮影。途中『市場寿司 たか』へ。
 もどってからも撮影。終了は7時過ぎ。慌ただしく夕食を作る。


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明日から沼津です

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ぼうずコンニャクです。明日から沼津に行きます。底引き網に乗船しますので帰宅は水曜日になります。
沼津などで私を見かけたら声をかけてください。
また土日など仕事をしていた関係でメールの返信など滞っています。少々お待ち下さい。


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タラ目を改訂

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 八王子綜合卸売センター『高野水産』に千葉県銚子から大量に入荷してきたのがコモンカスベというエイ。当然、その箱には食堂や居酒屋が近づくだろうと思いきや、袋を持ち、買っていくのはフレンチ、もしくは洋食系の人ばかり。
 まあ、このエイひれのムニエルは天下一品、ムニエル界の王様といったものだから当たり前だが、居酒屋のオッチャン達は「どないしてるねん?」と思った。まあそんなことはともかく意外なほど売れ行きがいいので、素早く4,5匹確保。1匹だけを残して仲卸でヒレだけを切り取り、皮まで剥いで持ち帰る。

 今回はコモンカスベだがエイならほとんど総てがムニエルに使える。とくにうまいのはアカエイなのだか、なかなかめったに入荷しない。まことに残念。木更津のきんのり丸さんによると、毎年かなりの水揚げがあるという。「うまいアカエイのムニエルが食いたい」、東京湾の荷主さんよアカエイを出荷してくれ!

 エイのヒレはムニエルにする20分くらい前に塩コショウ。フライパンにオリーブオイルをたっぷり入れたら、やや低めの温度で安定させる。そこに粉をつけたエイヒレをひらりと滑り込ませるのだ。火加減は一定で弱火、時間をかけて火を通していく。こうすると表面はコンガリ、中はジューシーに仕上がる。こんがり焼けたら、ヒレを取りだし、フライパンに白ワインを入れる。これで焦げ付いた身などをこそげおとし、ふわーっと煮立ったら、大量にバターを投げ込む。香ばしい香りが立ってきたら皿に入れて、その上にエイヒレをのせて出来上がりだ。こがしたバターに塩コショウする。好みでレモンを絞り込んでもいい。

 我が家では家族のもっとも待ち望む魚料理がこれである。だから食卓に出す。すぐに箸が延びる(我が家は常に箸の家)、カレースプーンでバターをすくうと、すぐに3匹、4匹、5匹分(もう一度厨房に立つ)くらいのムニエルが消える。お父さんは悲しいことにほとんど作るだけの人となってしまうのだ。
 このエイのムニエルの惹かれるところは、エイヒレの軟骨の食感、そして身のクセのない味わい。表面はじっくりこんがり焼いているので、風味も抜群にいい。だからフレンチの基本的な料理となっていて、しかも高級フレンチでもよく使われるものである。それがいたって簡単に一般家庭でも出来るわけだから、もっともっとエイという食材が利用されてもいい、と思うのである。

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 最近、「つぼだい」すなわちクサカリツボダイの半身干物をよく見かけるのだ。どうして半身なのだろう。しかも中骨ありだらけ、と不思議でならなかった。それで買い求めてビックリ。なんと中骨も背の方に伸びる神経棘も真半分に割れている。だからこんがり焼くと骨が香ばしいのだ。当然肋骨はそのままだし、たぶんニシン目のように小骨があるものは意味をなさないと思うが、スズキ目に関する限り画期的な発明?である。これはいかなる機械を使いしものか? 奇妙きてれつ、まか不思議だ。

 これなら肋骨、背ビレ棘などを除きバリバリ香ばしく食べることが出来る。しかもクサカリツボダイの濃厚な脂の甘味が感じらるのは干物としても優秀なんだろう。

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 さて、干物というのは、もっともっと米食とともに現代人に食べて欲しいものだ。でも所謂「骨なし魚」というのは東南アジアの低賃金をもってはじめて出来るものなのだ。これなど無駄な労力エネルギーを使い、また同じアジア人に骨とりまでして頂く、まことに恥ずべきことかも知れない。我々この国の人間ももっと小骨だろうが、大骨だろうがバリバリ食べる。もしくはこのように技術革新を進めていくことが大切なんだ、と思う今日この頃である。

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ショウマル下谷 千葉県銚子市明神町の204の1
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 木曜のことだ。疲れた足取りで八王子魚市場の入り口に向かう。そして見るべきものもなくうなだれていたら、源七のあんちゃんから、「疲れた顔しやがって、これ飲んでけよ」と呼び止められる。よくみると皆、手んでにカップを持っている。飲んでいるのは真っ白な液体。そのかたわらでアサリが湯気を上げているところを見ると貝殻の壊れたのを茹でたのがわかる。そのアサリの量がすごい。だから鍋の白い液体はアサリの茹でた汁なのである。とうぜんこの中にはアサリエキスが充満しているのだ。
 当然飲みましたよ。
 これが飲み始めるとやめられないくらいにうまい。まったく苦みがなく濃厚にアサリの旨味が、微かなアサリ特有の渋甘い味わいとなって口全体を刺激する。本当に2はい、3ばいと湯飲みに満たして、それでもまた大鍋からくみ取ってしまう。
 今週は日々大変であった。ほとんど息つく間もないほどに、時が過ぎて、疲れがたまりにたまってしまっている。そんなときにこのアサリのスープのなんとも体中に浸透することかは、表現のしようがない。

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 そして昨日、またまた源七では、船橋にあがったトリガイを大鍋で茹でる。この茹で上がりがうまいのである。ついつい、あんちゃんと立ち話しながら口に放り込んでしまう。トリガイの旨さは何と言っても上品な甘味、そして適度な弾力。

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 東京湾では船橋も、木更津も富津もトリガイ漁の最盛期。
 その大振りのものは開いて湯がき、小振りのものは佃煮にする。茹でているかたわらにまだ活けのトリガイがどっさりある。一キロ1000円だというので1.5キロ勝手に袋に入れて千円札を吉種登さんに手渡す。

八王子の市場に関しては
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小振りのハタハタ

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ホッカイエビ、ミツクリエビ、スナエビ

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アムールエビジャコ

 3月の終わりに北海道厚岸から小振りのハタハタが到来した。次に来るのは毎年決まっているのだ。そして当然の如く、やっぱり「やってきた」。
 それが厚岸で「砂えび」と呼ばれているアムールエビジャコと、「赤えび」と呼ばれているスナエビ、「青えび」のミツクリエビに「北海しまえび」のホッカイエビである。
 このハタハタもエビたちも道東の汽水が混じり込むような浅場にいるらしい。これが北海度に春近しという合図なのだ。
 このエビたちのことは甘えび学などで後日紹介する。

ミツクリエビ
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スナエビ
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ホッカイエビ
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アムールエビジャコ
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 春も長けてきて、花吹雪が地面を埋め尽くすときとなった。この花びらを踏みしめてあるく夜道がなんだかもの悲しいな。
「トリガイもそろそろいちばんいい時期になって、ある日突然いなくなる」
 とは寿司職人のお言葉。そうなのだ活けトリガイは突然市場から消えて、入荷もぽつんぽつんという状態になる。ちなみに活けトリガイとは貝殻のまま活かして入荷したもの。ただ単にトリガイというと開いて湯引きしてタテに並べたものを言うことが多い。生きたものと出来上がったもの。寿司屋で食べても味の違いは歴然としている。とにかく春にはトリガイを毎日でも食いたいものである。
 うまいトリガイが食べたくなると、なんといっても八王子魚市場源七に限る。源七は船橋の貝問屋が経営している。当然貝に関してはプロ中のプロなのである。

 そのトリガイを仕込んで数十年の源七の若だんな。まずはトリガイの貝殻をひねって中身を掴み出す。それを黒い色素が落ちないように滑りのいいプラスティックの板の上で、これまた滑りのいいゴム手袋で軟体を固定して開いていく。きれいに開いたものを湯通しするのだが、そのところは企業秘密。
「何秒だろうね。ボク、わかんない」
 なんてバカ顔をしてとぼけるのだ。
 この熱湯に通す何秒かがトリガイの味わいを大きく左右する。

 そして源七のトリガイの見た目と味の見事さは、食べないとわからない。

市場魚貝類図鑑のトリガイには
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ドラゴンオサテエビのページを作成
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掲載種 1890種


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 八王子は郊外にある。だから週末は築地などが寂しいのに反して、一般客が入ってきて市場は賑わいを見せるのだ。そんな八王子綜合卸売センター、『高野水産』には荷が溢れている。トラック2台分。到着の8時半とともに荷が下ろされる。本日の目玉は1匹100グラムほどの形のいいサヨリである。
「そら出たぞ、サヨリちゃん、吉永サヨリちゃんてか」
 突然、日野市の飲み屋のオヤジがサヨリの発泡に下手な洒落をいいながら突入するのだ。
 買い物に来ていて中国の方が不思議な顔をしている。若い主婦もそうだ。ボクだって吉永小百合の全盛期(1960年代)はしらないぞ。
 でもとにかくサヨリちゃんを買わなければ、春じゃないような気がする。
 これがキロ当たり1800円という破格の値段。あわてた割には手にしたのはたったの2本。知り合いの寿司屋に「1本どれくらいある」と言われて計りまで往復したのが敗因となった。1匹だいたい100グラム強。大きいと180グラムもある。

 サヨリの産卵期は春なのである。もう既に腹には真子が詰まっている。多くの魚が真子が大きくなると味が落ちるのに対して、サヨリは産卵の直前まで脂がある。だから産卵期にむかって買い手が殺到するのだ。
 サヨリを買い込んだら八百屋に立ち寄り、スダチを買い込む。まだまだ高いけどサヨリちゃんのためである。なんといってもボクは徳島県人なのだから、スダチがなくてはサヨリが食べられない。

 夕食には旬のホタルイカとサヨリをアテとする。そのサヨリの旨さをなんに例えようか。吉永小百合ではない。これは間違いない。映画『卒業』のキャサリン・ロスだろうな。これも誰もわかってくれねーだろうな。ボクの永遠のマドンナだ。
 なにしろサヨリの旨さは鮮烈である。その一片が舌に触れた途端、サヨリならではの旨味がしみてくる。しかも春だから脂の甘さもある、そして旨味もある。これなら酒の旨口辛口吟醸本醸造などどうでもいい感じである。ただただ舌に春だなという余韻を残してサヨリは一片一片消えていく。加山雄三ではないが「幸せだな」と言った気分になる。

 さてサヨリの旬もそろそろ終了となりそうだ。春を惜しむようにせっせとサヨリちゃんを買い込んで、「幸せだな」という春の宵を楽しまねば。


市場魚貝類図鑑のサヨリへ
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 北浦というのは宮崎県でも最北の地にある。地図を見ると面しているのは太平洋ではなく豊後水道といってもいいのだろう。海岸線が複雑に入り組み、風光明媚なところであるように思える。
 この豊後水道の入り口で巻き網でとったマアジを活かしたまま、1週間餌ぬきして出荷したもの、それが「灘アジ」である。市場で見る限り、釣りアジと、巻き網などの一般的なマアジとの中間的な値段で売られている。ボクが見る限り1キロあたり1500円から1800円くらいだ。並のアジはキロ1000円以下なのと比べて、かなりお高いものとなっている。でもキロ当たり4000円以上はする「関アジ」とくらべると遙かに安い。また当日の釣りアジの値段が2300円だから質さえ良ければ手が出ようというもの。

 このアジに最初に目をつけたのが八王子市内の「スーパーイシカワ」さん。
「このアジがいいんだよ。身がしっかりしてる。形(大きさ)も手頃だろ。使いやすい。それに脂もあるよ」

 北浦の「灘アジ」は大きさを揃えて浅い発泡にキレイに並べられてくる。まずこれだけでも買い手の目を引く。しかもここ数日続けて入荷してきているので、既にかなりの人気をはくしている。だから発泡を開けるとすぐに売り切れとなる。大急ぎでこれを2本ほど確保する。

 夕方になって迷うことなく刺身にする。卸していても腹の部分がしっかりしている。これは未消化の餌が体内から除かれているためだろう。皮を引くと身に弾力があるのか、まな板に置いてコロンとしている。まずは何もつけないで食べてみる。生臭みは皆無だ。やや小振りであるが脂がある。なによりもシコっとした食感があるのがいい。
 これは醤油よりもスダチと塩の方がいいのではないか。手塩皿に粗塩とスダチを用意して晩酌のアテとする。これがまさに絶品である。窓を開けると気持ちの良い風が桜の花びらを運んでくる。春の物憂い宵に辛口の酒とうまいアジの刺身というのが、一庶民のお父さんには至福の時である。

 北浦漁協のホームページを見ると2003年に宮崎県の水産物ブランド認証をとったとある。「関アジ」ほどには話題性はないものの。巻き網という比較的一般的な漁法で漁獲。餌抜き期間をもうけるだけだから、あるていどまとまっての出荷も可能だろう。値段も高からず、低からずと、ほどよいもの。そこにあるのは商品としての最低限の「差」であろう。今、市場に求められているのは明らかにこの最低限の「差」なのである。「関アジ」の行き過ぎたブランド化を真似しないで、独自の形を確立したというのが素晴らしい。北浦漁協は見事である。

北浦漁協 宮崎県延岡市北浦町市振541-4
http://www.jf-kitaura.jp/index.html


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