魚貝類を探す旅: 2008年3月アーカイブ

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 今、世に騒がれるものにCAS(キャス)冷凍というものがある。要するに過冷却にしたものを、一気に凍結させたもので、食品の細胞を破壊することなく冷凍状態にできる。これはなかなか先進的な技術で国内でも導入している企業は少ないのだ。そんな最先端の技術をいち早く取り入れて、水産物加工を行っているのが隠岐海士町の『ふるさと海士』である。

 実際に島のCAS事業部を尋ねて、説明を受けて、いくつかをサンプルとして送って頂く。そしてまずは、冷凍食材でもっとも劣化の少ないというイカを食べてみることにする。
 場所は我が家と八王子総合卸売センター『市場寿司 たか』。

 解凍はいたって簡単。パッケージのまま流水につけて5分ほど。取り出すと、透明感のある美しいフィレで、まな板にのせて切ると、しっかり弾力を感じる。
 これをひも状に刺身にして、食卓に出すに、だれも冷凍品だとは気が付かない。驚くのはその爽やかな甘味と旨味である。隠岐周辺の「白いか(ケンサキイカ)」の味の良さはよくしられるものだが、加うるに、この弾力、硬さはまるでとれたての状態に近いだろう。
 魚貝類を調べるに当たって、たくさんの冷凍のイカを食べてきているが、味もそうだが、これほどの食感というのは他に例をみないものである。海士町の目の前の海で揚がったばかりの「白いか(ケンサキイカ)」をCASにかけるというのが、どれほどの威力を持つものかを実感する。

 次いで、これをプロである『市場寿司 たか』の渡辺隆之さんに食べて、握ってもらって、値段から意見を聞いてみる。
「これは凄いね。もともとイカは冷凍しても悪くならないものだけど、これはプロでも冷凍だとはわからないね。赤いか(関東でのケンサキイカの呼び名)としては甘味がちょっと薄く感じるけど、新鮮な証拠。甘いのが好きなら、解凍してちょっと寝かすといい」
『ふるさと海士 島風便』のショップでこれを買い求めるとフィレ3枚で送料込み4800円。このフィレ3枚は刺身の歩留まりから丸で1キロ前後とすると、築地場内のケンサキイカの値段1キロあたり2500〜3500円前後からするとやや高い。しかし築地場内は卸値だから一般消費者にはかなりお得、しかもイカをさばく手間が不要となると、家庭で手軽に最高級の味を楽しめる。
 たかさんは値段的にも
「寿司ネタとして、この値段はうれしいだろうね。一枚一枚、必要なだけ使えるし。オレなんか、ちょっと高い寿司屋やってたら使っちゃうかもなー」
 いや、現実に既に使われているのではないだろうか? 最近の寿司屋というのはかなりの高級店でも冷凍物を使っているのだという。

 島根県隠岐は日本海に浮かぶ、美しい諸島なのだけど、離島としてのハンデは大きい。そのハンデを補ってあまりあるのがCASであるかも知れない。
 
ふるさと海士
島風便
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島根県庁
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島根県水産課
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 2月12日、島根県での魚貝類を見る旅の初日、雲行き怪しく「海は大荒れの予想」となっていた。それでも松江魚市場では豊富な魚貝類を見ることが出来たし、また魚市場でたくさんの人たちと出会えたこともあって、充実した一日となった。
 なかでも思いも寄らぬ、収穫が現松江市内の魚屋が素晴らしかったことだ。
 ここで予め書いて置くが、ここには旧島根町などの店も含まれる。

 まずはヤマトシジミさんが常連となっている市内砂子町にある『シンコー』である。ここは外見的にはいたって在り来たりのスーパーでしかない。ところが店の前に並んだ魚貝類に目が点になる。なにしろ総て地物ばっかり。「泥えび(クロザコエビ)」、ツキヒガイにテングニシ、アマダイにムツ。

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シンコーにあったテングニシとツキヒガイ

 店内にもムツ、ホウボウ、アマダイに中海のシジミ。今では中海のシジミは貴重だし、値段もなかなかお高い。
 店の前に魚貝類を並べるのは午前中早い時間のみ。徐々に店内の冷蔵ケースに移される。魚が店先にある時間に行くことをお勧めする。
 海が荒れてきていて魚が少ないというのに、この豊かな品揃えは、旅人としてもうらやましい。

 次なるは恵曇漁港前の小さな魚屋さん。まさか、これが魚屋だというのは誰も気がつかないだろう。でもがらっと引き戸を開けると、ここにも見事という他はない魚が、しかも格安で並んでいる。

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 アカガレイ、「ちこだい(チダイ)」、「てなし(ヤリイカ)」、スルメイカにベニズワイガニ。ヤマトシジミさんは海が荒れているせいで「やっぱり魚が少ない」とがっかりしていたが、これで少ないのと逆に驚く。しかもここの値段は信じられないほどに安い。

 残念ながら、12日、ほとんど港での水揚げを見ることが出来なかった。そして市内に帰り着いて立ち寄ったのが『ラパン』である。

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出雲市大社のブリ。小伊津のイトヨリ、アマダイ。宍道湖のフナにシラウオ。「のどくろ(アカムツ)」に中海のヤマトシジミ。これを見て興奮しない魚好きはいない

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フナのこつけ(フナの細切りにした刺身に、フナの卵をまぶしてある)は宍道湖・中海周辺の郷土料理

 松江城からもほど近い母衣町にある外観はオシャレなスーパーだが水産物の品揃えが素晴らしい。しかも新鮮この上ない。たぶん、都内でみるどのスーパーよりも置いてある魚は数段上だと思って欲しい。

 出来るだけ多くの知り合いに松江の印象、また松江市内で買いたいお土産を聞いてみた。残念ながら一人として豊富な魚貝類を挙げた人はいないのだ。まことにこれは残念でならない。
 市内至る所に見事な品揃えの魚屋があるという。松江で和菓子なんて固定観念を捨てて、加うるに島根の全国有数の豊富な海産物をお土産にするのはいかがだろう。
 春となって、そろそろお勧めなのが旬を向かえるマアジ、「赤みず(キジハタ)」、「真いか(ケンサキイカ)」、イサキにマアナゴ、サザエにシイラ。買って帰りたい魚貝類を挙げたらキリがない。

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 3月の隠岐の旅では、美しい景色、また島の歴史などに感動すること多々であった。
 さすがに二上皇の流された、悲劇の島でもあるし、イカ寄浜など伝説や昔話も豊富であるようだ。
 さて、その雄大な景色、歴史、様々な食材に感動した旅で、もっとも驚嘆したことはなにか? というと隠岐西ノ島の“踊る岩ガキ売り”との出会いである。
 ボクは、この“踊る岩ガキ売り”という意表を突く存在に、まるで「ネッシーの存在を確認する」以上の興奮を思えてもいる。

 西ノ島の“踊る岩ガキ売り”は二人組である。片やイワガキ養殖を営んでいる朝日日本海さん、片や西ノ島の広報・振興を担っている、若だんな。一見、ただのオヤジコンビであるが、イワガキを持たせると凄い。
 両手に持ったイワガキを交互に持ち上げながら、わけのわからん歌を歌って、踊って踊りまくる。「もうやめて」といってもなかなか止めないのが難点だが、ついつい一緒に踊ってしまいたくなる魅力がある。
 西ノ島にも芸能や民謡はあるだろうけど、過去にこれほどの至芸はあっただろうか? このコンビの歌と踊りを見るだけで「西ノ島」に渡ってよかったー、と感動できるだろう。

 ちょっとここで断って置くが、この西ノ島の養殖イワガキは絶品である。このうまいイワガキを買って、楽しい踊りと唄がついてくるなんて、この世で最高の贅沢だともいえそうだ。

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 実は、この“踊る岩ガキ売り”の芸をもう一度見たさに、6月にでも再度隠岐に渡ろうかと思い悩む日々が続いている。
 ここで結論めいたことを書くのははばかれるのだが、あえて書く。世界中の人が隠岐でイワガキを買い求め、そしてこのおバカなコンビの歌と踊りを見て頂きたいと思う。そうすると、どうなるかと言うと、きっとバカバカしすぎて世界中から戦争が無くなり、憎しみも悲しみも消え去ってしまうに違いない。
 世界平和が、隠岐西ノ島の“踊る岩ガキ売り”にかかっている。このコンビを見ても、けっしておバカなオヤジ二人組だとは思わないで欲しい。

島根県隠岐西ノ島町
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 さて、丸々1週間の旅を終えて、大きな疲労の波が押し寄せてきている。それでも帰りの新幹線などで旅の途中、また帰り着いてから浮かんできた隠岐への感想をここで綴ることとしたい。
 前回2月の島根本土の旅は大変だった。横殴りの雪と、大波に、海を見に行くのではなく、人に会いに行く、という旅となってしまった。そして3月となり、辿り着いた島根は春を迎えて、穏やかな気候となっており、まさに隠岐への船出日和だったのだ。

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隠岐美人三人。知夫里島にて

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西ノ島で出会った可愛い子馬

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海士町でみた月は寂しかったなー

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これはなんでしょうね?


 隠岐諸島は知夫里(ちぶり 知夫村)、西ノ島(西ノ島町)、中ノ島(海士町)の『島前三島』と『島後(どうご 隠岐の島町)』の島からなっている。その島々総てを、三泊四日で回る。
 そこで見つけたのが多種多様な美味である。磯回りではサザエ、アワビ、マダコ、そして「岩のり」、ワカメ、「神葉草(ホンダワラ)」、「はなたれ(アカモク)」。隠岐周辺の深場では「松葉がに(ズワイガニ)」、「紅かに(ベニズワイガニ)」、「白ばい(エチュウバイ)」、オオエッチュウバイ、「赤ばい(チヂミエゾボラもしくはエゾボラモドキ)」、「赤めばる(ウスメバル)」、メバル、ヤリイカにケンサキイカ。挙げたらキリがない。
 天然物もあればマサバやブリ、イワガキ、ヒオウギガイなどの養殖も盛んである。
 この美味であることは筆舌に尽くしがたい。
 素材もそうだが、隠岐独特の料理法も素晴らしい。例えば「れんこのみそ焼き(キダイ)」、岩のりをあぶる、ワカメの加工品である「板わかめ(めのは)」、「べこ(アメフラシ)料理」。とれたばかりのヤリイカの塩焼きは絶品だった。「鬼えび(イバラモエビ)」は生もよかったが、塩焼きの旨さにビックリ仰天した。そう言えば、島で水産物に従事する人たちも、聞いてみると単純な料理法を好まれているようだった。
 意外に新鮮だったのが「白ばい(エッチュウバイ)」のフライ。スルメイカで作る「焼きいかの麹漬け」なんてまさに酒を盗む佳肴だ。
 水産物が主役ではないが「隠岐そば」には感動した。そば粉十割にサバ、アジなどのやや甘めの汁をかけて岩のり、ネギをちらしただけのもの。これは我が、そば食い人生の中でも出色の出来事になった。
 隠岐で忘れてはならないのが、こじょうゆみそや、麹を使った食品。また海産物を麹などで漬け込んだ加工品もある。それに加うるに、うまい日本酒があるのも素晴らしいことではないか!

 それこそ無数にある隠岐の美味だが、これがなんと多くが観光客、また島民以外の人間には手に入らないように隠されてしまっているのだ。これを「隠岐・食の埋蔵金」、「隠岐・食の隠れ金山」と呼びたい。不思議なことに今回の旅での感動的食の出合いは、すべて一般家庭の作り出したものや、伝統的な料理法にのっとったもの、はたまた伝統的な加工品ばかり。そして対するに、水産物の多彩であるにも関わらず、よそ者が食べられるのは定型化したブリやサバ、せいぜいがズワイガニ、キダイなど既知の魚貝類ばかりとなっている。
 港では素晴らしい雑魚が揚がっている。また養殖の「めじろ(ブリの若魚)」もいいだろうが、天然ものの立派なスズキ、「くろや(メジナ)」が揚がっている。高級な「白いか(ケンサキイカ)」だけではなくスルメイカ、「もんごう(カミナリイカ)」も見られた。これら多種多様な魚は誰が食べているのか? 「これを旅人にも食わしてくれよ」なんて定置網の水揚げを見ながら思ったものだ。
「岩のり」、「板わかめ(めのは)」も地元の方が食べているものが、お土産屋で手に入るものよりも味わいとしては上であろう。

 島々を巡り、この隠し財産を島外、観光客にもなんとか売ろうという取り組みを見た。これがなかなか始まったばかりで、課題が多い。「松葉がに(ズワイガニ)」、イワガキなど徐々に知名度を上げてきている「売れ筋商品」だけではなく隠岐の産物の多様性を全国に知らしめていくには何が必要なのか? どのような方法をとるべきなのか?

 ここで提案なのだけど、「隠岐は隠岐らしく、島根の多彩な産物を網羅して、隠岐の人がうまいと思うものを、隠岐の料理法で、隠岐に来た人に食べてもらう、隠岐以外にも売る」これが今、隠岐にいちばん必要なことだと思う。既製の板前料理などできるだけ早く、片隅に追いやるべきだ。もしくは捨て去ってもいい。
 すると島を訪れて、また再度島に渡る旅人が増えるだろう。隠岐のものを名指しで買う人も増えるはず。当然、島の魚貝類自体の評価も上がるのではないか?
 離島という、ハンデをなんとかプラスに向ける。この島根県の取り組みは前途多難だ。

隠岐諸島
知夫村役場
http://www.chibu.jp/
西ノ島町役場
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海士町役場
http://www.town.ama.shimane.jp/
隠岐の島町
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(順番は旅の行程による)
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隠岐の旅は本土の旅が終了後に始まる


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 松江魚市場を後にして、島根半島の港港を巡るはずが、なんと小雪ちらつき、海は高波。どの港も出船を見合わせているのだという。致し方なく、恵曇漁港でスルメイカの水揚げを見て、日御碕を目差す。

 日御碕は島根半島の最西端にある風光明媚な観光地。日御碕神社、出雲日御碕灯台などがあるが、むしろ自然そのものを楽しむのに最適に思える。
 その日御碕を目差しながら、地元で海藻などをとっている大国紀子さんと電話で連絡する。待ち合わせ場所は大社町から日御碕に向かう途中にある民宿『幕島』である。
 出雲市内から、出雲大社を右手に見て、海に出る。クルマから見る日本海は重苦しい雪雲に被われて、黒く沈んで見える。かなり海が下の方に見えるようになり、日御碕神社に向かって坂道を上る途中でヤマトシジミさんがハンドルを急激に左に切る。険しく細い坂道を下ると、民宿『幕島』の前に出た。

 さて、島根の水産物を丹念に見ていく旅の初日、港での水揚げを見るはずが荒れ模様の天候で残念至極なものとなった。そしてその大空振りの日をすくってくれたのが大国紀子さんと、民宿『幕島』の女将さん(名前をお聞きできなかった)である。
 大国さんが当日の荒れ模様を予感して前日に取り置いてくてたのが、島根県ならではの食用海藻「そぞ」だ。標準和名をユナという。ユナに毒があるわけではないが、ゆでて食べるとアセチレンガスのような、独特の風味が鼻をつく。そのため食用とする地域はほとんどない。

 なんと我々は総勢6人となっている。この大人数で押し掛けてさぞや迷惑と思ったが、大国さん、女将さんは快く民宿の食堂らしい部屋に招き入れてくれる。大国紀子さんは電話からも感じられたが、まことに穏やかで笑顔が可愛らしい。また対照的に女将さんは。きりりとした出雲美人である。

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 テーブルと椅子が並ぶ部屋をよくよく見回すと、どうやらここは釣り人(『幕島』は関東で言うところの釣り宿)の休憩所にあたるものだ。壁にはアオリイカ、ブリ、ヒラマサ、クロダイなど大物の写真がたくさん貼られている。

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 待つほどもなく、大国さんが「そぞ」を持ってきてくれる。これはまさしくユナであり、話を聞く限り、この地域では「そぞ」というのは幾種類かの海藻の総称であることがわかる。

 そして女将さんが最初にご馳走してくれたのが、「そぞの胡麻酢かけ」である。ユナは思ったほどクセがなく、むしろシャキシャキした食感が心地よい。
「これはゆですぎたかもしれんね」
 地元で生まれ育った女将さんには、ユナの風味がゆですぎて消えていると言う。

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 ヤマトシジミさんなど、思わず「うまい」と漏らすほどなのだが、地の人には「そぞ」の真味がないと感じるらしい。ここでわかったのはゆでた大国紀子さんは「そぞ」の香りが少ない方が好みであるということ。当たり前のことなのだけど、日御碕の家庭家庭でも「そぞ」のゆで加減が違っているということだ。

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 次に出てきたのが「そぞのお雑煮」だ。海藻でも褐藻類の収穫期は春だけど、紅藻類である「そぞ」は初冬から取ることが出来る。この地域は海辺まで山が迫り耕作地が少なく普段でも野菜が貴重であるはず。しかももっとも野菜の少ない正月に食べる雑煮の具としては手頃な前海の海藻ということになる。そして食感のよさ、独特の風味から「そぞのお雑煮」が生まれたのだろう。
 汁物に入れた「そぞ」もお餅のもったりしたなかに、しゃきっとした食感を生み出し、海藻の香りがたって非常に美味である。
 ユナ特有の香りは、あまりゆですぎない方が感じられるというので、さっと湯通ししたものを出していただく。ここには確かに曰く言い難い香りがあるものの、ボクとしては好ましい“食材としての個性”に思える。この風味が「そぞ」ならでのもので、けっしてイヤなものではない。
 ユナの他に日御碕名産のヒジキ、アラメ料理までご馳走になる。どれも味つけがほどよく、おいしくいただけた。とくにアラメの旨さは出色のものだ。アラメのうまさに感激していたら、女将さんがお土産に持たせてくれる。

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 大国紀子さんと、女将さん、おいしい海藻料理をありがとうございました。
 感謝とともに、こんどはぜひ民宿『幕島』に一泊したいものだと切実に思った。民宿前の海の美しいこと。この夕日の美しいだろう前浜で一日遊んでみたい。

 蛇足になるが、昨今の食の欧米化や家庭で料理を作らない風潮によって、海藻の食文化は年々衰退しているように思える。女性雑誌などでダイエットテーマが幅をきかせている。また健康に関するテレビ番組もまことに多い。そんな健康やダイエットになくてはならないのが、海藻なのだ。海藻にある豊富なミネラル、アミノ酸、ヨード、食物繊維、この総てが現代人には欠乏している。それなのに世の人々は、うまくも何ともないくだらない無味乾燥なサプリメントでこれらを補給している。そんな味気ないものを食らうくらいなら、「うまい海藻料理」を食った方が何倍もいいだろうに。食育に取り組む人たちにも言いたいのだけれど、「海藻を忘れたらいかんぜよー!」。

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 松江魚市場には海産物が溢れかえっていた。特に隠岐からの「松葉がに(ズワイガニ)」、近隣漁港からのアマダイなど国内最高峰のものが、ずらりと並ぶ。まさに壮観としかいいようがない。魚好きには、まことにワクワクする感動的な光景がそこにはある。
 ただ、それをしても松江魚市場をもっとも特徴づけているのは宍道湖、中海の魚貝類だろう。
 シジミ、コイ、ウナギ、「もろげえび(ヨシエビ)」、スズキ、シラウオ、「あまさぎ(ワカサギ)」、これを宍道湖七珍と呼ぶ。今回の松江魚市場では、その七珍のいくつかが見られるだろう、と期待していた。

 当然、スズキはすぐに見つかり、またすぐ場内の中程で、透明パックに入ったシラウオが並んでいるのを発見する。
「こんな大きいのは初めて見た」
 いつい声に出るほど、宍道湖のシラウオは大きく、また産地であるからこそずば抜けた鮮度。この薄暗い場内で透明で表面がキラキラして見える。このまま江戸前握りにしたら東京でどれくらいの値段がつくのだろう。ボクなど庶民にはとても手が届かない代物に見える。
 昔、大阪中央市場に飾ってあって見事であるのが記憶にあるが、宍道湖のシラウオは関東ではあまり馴染みがない。

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 シラウオの隣でバタバタはねているのが30センチを超えていそうな大型のフナだ。体形色合いからするとオオキンブナではないだろうか? ギンブナとオオキンブナの区別はボクには難しく、この画像を見て多くの方達に判断していただきたい。
 競りに参加していた魚屋の本川さんにお聞きすると、
「なかなか高いで、買えないな」

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 いくら位するのだろう? 聞きそびれてしまった。この時期の大フナは「子まぶり(子つけ)」になる。これは刺身をひも状に切り、塩湯でしてバラケさせた卵をまぶしつける。観光パンフレットなどではコイの写真が載っているが、フナの方がうまいように思う。
 宍道湖で「地鮒」と呼ばれていたものにはキンブナとオオキンブナ、ギンブナなどが挙げられる模様。松江では、このようにフナを食べる習慣もまだまだ健在。それなのに地物は少なく、高いために、足りない分を岡山県などから陸送されてくるもので補っているように思える。

 当然、シジミがあって、ふと市場の窓の外を見ると、なんと大橋川の岸辺で船からシジミかきをしている。護岸には葦、ネコヤナギだろうか、まだ裸木である。まだ岸辺の家々は目を覚ましていない。

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曇り空 寒しじみかく 岸辺の葦の孤独さよ 問答坊主

 場内の慌ただしく、喧噪なのと比べて、なんと静かな情景なのだろう。もしもまた松江市で時間ができたら宍道湖、大橋川、中海でのシジミ漁をじっくり見てみたい。

 今回は「あまさぎ(ワカサギ)」もウナギも、「もろげえび(ヨシエビ)」もコイもウナギも見られなかった。
 宍道湖七珍にあるなかでいちばん印象が弱いのはヨシエビだろう。大阪では「きえび」なんて呼ばれるがありふれたものだ。これを七珍のひとつに数えなくてはならないのにはワケがありそうだ。例えば島根県の一番東にある美保関には小型底引きの船がある。ここでその昔豊富に揚がっていたのが、クルマエビなのだ。

 また宍道湖が大きく取り上げられているが、中海の魚貝類が忘れ去られている。例えば松江では宍道湖産よりも中海産のシジミの方が値が高いようだ。
 その上、市場に高く積まれているのが岡山県産のサルボウ。島根県ではこれを「赤がい」と呼ぶのだけど、地元にはなくてはならない食材の一つ。その昔、大産地であり、岡山県などに出荷していた中海のサルボウがとれなくなって久しい。今では逆に、岡山県産サルボウが市場に積まれている。

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岡山県産「赤がい(サルボウ)」

 県の水産試験場でも中海のサルボウをなんとか増やせないかと研究が進んでいるようだ。中海は、一時計画されて、今では凍結されている干拓事情での水質の汚濁や、水域の締切などを改善する方向にある。すでに干拓された農作地にも放置され、排水ポンプの音だけが空しく響く場所が安来側では多々見受ける。そのような現状からも中海をなんとか元の状態にもどすべき。この県水産試験場の取り組みに関しても市民、また全国から、もっと注目を浴びて欲しいものだ。

 松江市周辺の淡水魚、汽水域の魚貝類を食べる習慣は、食文化を高める上でも重要な役割を演じてきた。観光という観点からみても、価値は高いし、需要は高いままで持続しそうだ。この地ならではの食文化を宍道湖、中海だけでまかなえるようになると、理想的だ。
●松江魚市場見学はまだまだ続く。

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翌12日の松江市は雪だった

 山陰本線の本数の少ないのにはビックリした。時刻表を見て、鳥取駅を目差したときには、猛ダッシュ。
 やっと鳥取ライナーというのに飛び乗ったときには、息が切れて、切れて、座席に座り込んだときには、どっと疲れが全身に広がった。考えてみると、昨日から今日にかけてのバスではほとんど睡眠がとれなかったし、岩美町では、それこそフル回転で動いた。このときまだ午後4時前なのが信じられないほどに、今日一日が長く感じられる。

 鳥取から、倉吉、大山ときて、米子を超えて、安来駅で5分間停車。やっと島根入りだ。
 島根県は妻の母親が育ったところで、なんどか訪れたことがある。
 漁港という点でも浜田、多岐とじっくり水揚げを見ており、いかに島根の水産物が優れているか、また量的にも多いというのを知っている。
 ところが残念なことに水産県島根ということでは一般的な認知度が非常に低いように思えてならない。来る前にやったアンケート、料理人、魚屋に聞いた限りでも、島根の水産物を挙げられる人が少なかった。
 もちろん、仲買や荷受けでは、量が多いし、また浜田市での「どんちっちアジ」などのブランド化されたものもあり、よく知られている。
 でもその次にくる料理人、飲食店主には「島根」の文字が浮かんでこないのだ。ましてや一般人にとって島根というのは小泉八雲や古都松江、出雲大社、世界遺産岩見というのは出てきたとしても、「おいしい島根」すら浮かばない。浮かんだとしたら和菓子と宍道湖七珍となる。
 宍道湖七珍というのがくせ者で、島根の一部である松江市周辺部だけのもので、そんなに量がとれるわけでもない。逆にこれが出雲松江地区の水産物に対する概念を狭めてしまっている。例えば松江市は恵曇や美保関、大社など豊かな港を近場に控えさせている。そこから揚がる日本海の幸はすさまじいばかりに多く、しかも美味極まりない。実際に、松江市内松江魚市場には、それこそ魚好きなら、涎をたらしそうなうま魚が毎日大量に入荷している。それなのに観光地である松江にくる観光客は日本海の幸を食べたいという認識はあるのだろうか? これは大いに疑問。
 せっかく日本海に長くのびた島根という水産県でありながら、一般人が「水産物が豊か」であると感じないのは、非常に惜しい。ましてや、まだまだ料理人や飲食店主などにも島根を知らぬ人が多いのだ。
 これからは「島根に来たらおいしい魚貝類を食べなきゃ」とか「島根の魚だからうまいはずだ」とか県自体の認知度を上げる必要がありそうだ。
 ライバル意識を持てというわけではないが、富山県氷見で「きときとの魚」を食べるよりも、島根に来て、うまい魚を食べて「だんだん」と観光客に言ってもらうべきだ。

 松江駅前のホテルにたどりついたとき、なんと小雪がちらつき始めた。
 岩美町の漁師さんが「明日から大荒れだよ」と言ったのが現実のものとなりそうだ。

 ホテルの部屋で11日のメモを清書する。そのノートを整理し終わらない内に眠くなる。
 時計は11時半を超えたばかりだが、明日は早朝から松江魚市場へ向かう。
 やっと、慌ただしい旅の第1日目が終わる。

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 鳥取市と言えば『駅前市場』と『太平マーケット』だろう。20年以上前のことだが、このふたつの市場での一時が楽しかった。それこそ溢れんばかりの魚貝類があり、また鳥取市自体が街らしいざわついた、喧噪のなかにあって活気があった。

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 そんな駅前を早朝に通り過ぎたときに、「なかったのだ」駅前市場が。
 駅自体が平面的で無機質なものとなってしまっていて、その昔の庶民的な温もりが欠片ほども見えない。確か、あれは20年ほど前のことだったろうか? 周辺のスピーカーから流れてくる歌に「斉藤由貴だね」という女子高生の話が耳に残っている。
 鳥取空港からジェット機で帰る予定で、残り時間からするとどこに立ち寄るのも中途半端だったのだ。バス停のあるベンチから見た駅前が、ごみごみしてだから活気があった。

 岩美町から川上寿郎さんに送って頂いて、駅前の郵便局の前で下ろしてもらった。その広い道路の向こう側が駅前に当たるはずだけど、そこにあるのは駐車場くらい。とにかく道を渡って市場を探す。鳥取は、この広い道路を渡るとやや寂しく、静かだ。家の前で掃除をしている女性に、聞くと、「そこですよ」と指をさす。でもそこには何もなく、まさかここに市場なんてあるとは思えない。そしてほんの数十秒で「駅前市場」の看板を発見する。
 この建物は、外見からはまったく市場らしい雰囲気をもっていない。もしも市場らしさ、生活の温かさを感じさせるものを求めてくるとしたら最低の代物だ。なぜ、このような設計にしたのか、理解にくるしむ。たぶん中に入る店の人たちは、建物の作りには無関心だったのだろう。
 建物に向かって左側にあるのが食堂だけど、なんだか雰囲気は会社の食堂もしくは今時のチェーン食堂のようだ。このようなへたくそな造りを考えるヤカラは存在自体が理解できない。そして市場内もダメだな。がらんとして薄ら寒い。その昔のゴチャゴチャした、有機的なよさがまったくない。もっと機能的で、しかも暖かみのあるものに出来ないのだろうか?

 まあ建物批判ばかりしていても致し方ないだろう。現代の建築家、設計者が人としての温かみや、使い勝手のよさをどんどん忘れ去って、無機質になってしまっているのは止めようがない。

 その天井が低く、広い市場内にある店舗は明らかに20年前の半数くらいに見える。午後3時過ぎということで、まだまだ夕飯の買い物には間があるためか、人影もまばらである。
 とにかく市場に来たからにはと、鮮魚店を端から見て歩く。うれしいのは、店頭の魚貝類が生きのいいものばかりだし、また値段も安い。魚の表示が、地元の呼び名なのもいいねー。

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「のどくろ(アカムツ)」100グラム380円、網代港の「白はた(ハタハタ)」100グラム130円なんて、関東では卸値以下ではないか? こんなものを見てしまうと、唐突に鳥取市に住まいしたくなる。
 エビも「もさ(クロザコエビ)」100グラム500円、「赤えび(ホッコクアカエビ)」100グラム400円と並んでいる。「どぎ(ノロゲンゲ)」、生のホタルイカがいるのも産地ならではのこと。大きく変わってしまった駅前市場には失望感を感じたが、そこに並ぶ魚貝類はやはり素晴らしい。

 駅前市場を出てこんどは『太平マーケット』まで歩く。鳥取市の道路は駅から放射線状に伸びている。そのほんの駅から数分のところで「太平マーケット」の文字を発見する。

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 しかしそこにあるのは全国展開の居酒屋チェーン店であり、通りから路地に回ってやっと入り口を見つけることができた。この入り口から地下の通路状の『太平マーケット』に下りる。

 下りて直ぐのところに干物が並び、「松葉がに(ズワイガニ)」の水槽がある。これが『浜下商店』という店で、その先に続くはずの市場がない。『太平マーケット』にあるのはこのたった一軒の店だけなのだろうか?

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 一度、地上にもどって、回りを見渡すが、もうどこにも『太平マーケット』の入り口は見あたらないようだ。20年前には細長く魚屋が並んでいた賑やかな地下市場、それが一店舗を除いて消滅してしまっているようである。

 なんだか寂しくなって『たくみ工芸店』まで歩く。せっかくここまで来たのだから鳥取の焼き物を一個だけ買おうと思ったのだ。彼の柳宗悦の周辺にある民芸系の器はあまり好きではない。とくに鳥取、島根のものはどうにも琴線に触れるものが見つからない。今回も『たくみ工芸店』を端から端まで見て回り、やはり好みの器が見つからない。でも市内の市場の凋落を見て、なんだか寂しくなって、その中でももっとも簡素な六角皿を買い求める。鳥取県青谷町山根の石原幸二さん作のもの。この器には、ボクを惹きつける何かがある。

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 さて、深夜バスで鳥取に降り立って、9時間以上経っている。そろそろ明日に備えて、宿にたどり着かねばならない。鳥取駅から極端に本数の少ない山陰本線に乗り込み松江を目差す。

鳥取駅前市場
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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 岩美町観光課の川上寿郎さんにお会いできたのは、今回最大の幸運だった。
 テレビなどでも散々取り上げられていた、「ばばちゃん」の生みの親が、なんと川上さんであると言うこと。そして岩美町の振興に心砕いている、またいろいろアイデアを出して、新しいきっかけを探してもいる川上さんの日々に驚かされた。

 さて、今回の島根県を目的地とする旅の最初に、いろいろ考えて、島根に行く前に出来ることの第一は、お隣の鳥取県の水産物を見ておくことだという結論に達する。
 それで我が家にある本や知り合いの仲卸業の人たち、はたまた市場関係者から聞いて出てきたのが、当たり前のようだけど「松葉がに」のことだらけ。「松葉がに」にはとても手が届かないと思案しているとき「それじゃ、『ばばちゃん』のこともあるし、岩美町によったらどうだろう」と言ってくれた人がいた。そのとき丁度、古い雑誌を見ていたら、これまた岩美町の「ばばちゃん」があるではないか。
 やっと立ち寄る場所が決まっても、岩美町へのとっかかりがない。仕方なく安易に町役場に電話すると、対応してくれたのが産業観光課の川上寿郎さんだった。
 そして実際に岩美まで来て、本当に懇切丁寧に、あらゆる面でお世話になってしまった。その最たるものが「ばばちゃん」料理を食べさせていただいたことだ。

 場所は岩美町内の『かまや旅館』である。ここは木造の簡素な建物だが、柱などに歴史を感じる。
 どうやら少々遅すぎたようで、旅館に入ると大急ぎで二階の部屋に通される。
 待っていたのが名物の「ばばちゃん鍋」と様々な料理。「ばばちゃん」の本場である岩美町で、その料理を目の前にすると感慨一入である。

 まずは川上さんが「ばばちゃん鍋」を作ってくれる。「ばばちゃん(タナカゲンゲ)」は大振りの切り身になっていて、湯通しされている。

 これを塩と味醂で味つけされた鍋に入れて待つ。ここで改めて「ばばちゃん」の鍋材料としての実力のほどを思い知る。身はマダラよりも弾力性があり、キアンコウよりも繊維質で口中でほろっとしている。ここに旨味が感じられて、いい味なのだ。残念ながら汁に味醂を使っているために、少々重く感じられるが、川上さんによると、まだまだ試行錯誤をしている最中だという。
 その内、昆布だしで塩と酒だけ、もしくは酒と醤油という、もっとも「ばばちゃん」に合う単純なものに変わっていくのだろう。
 しかし、「ばばちゃん」の味わいはよし。
 他には刺身、焼き物、南蛮漬けなどがあった。どれもこれも美味ではあるが本来期待した野性味は感じられなかった。

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ここでしか食べられない「ばばちゃん(タナカゲンゲ)」の刺身と地元であがった「赤えび(ホッコクアカエビ)」。

 どうやら『かまや旅館』での「ばばちゃん」料理は割烹料理の修業をつんだ人が作るもの、「ばばちゃん」本来の味わいはないと思う。でも「ばばちゃん」を初めて食べてみるという向きにはむしろ最適かもしれない。この日もわざわざ遠くから「ばばちゃん料理」を食べに来ていたグループがあって、観光客のいちばん少ない時期としては異例のことだとのこと。
 確かに「松葉がに」はうまい。しかし1人前で1万、2万とかかるとしたら、なかなかおいそれとは食べにこれないだろう。そこに「ばばちゃん」という手軽な名物があると、庶民としてはとてもありがたい。
 また最後に、岩美町で「ばばちゃん料理」を出す店、宿は多い。この珍しくも美味な魚を岩美町でお試し願いたいものである。詳しいことは町の観光課などに問い合わせを。

鳥取県岩美郡岩美町
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かまや旅館
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、タナカゲンゲへ
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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『浜勝商店』が、これだけ目立つラベルを作って、会社自体の知名度を上げる努力をしているという先見性は、最近の地方の凋落振りからすると、素晴らしいことかも知れない。とにかく地方都市ではなにがなんでも、あがいて、工夫して、これ以上人口の減少をくい止め、商業、工業ともに活性化させなけらばならない。

 ここで大切なのが、できるだけ早く土木土建による公共投資をなくし、地方の産業構造を変えるということ。土木は自然破壊をすすめ、人間生活の荒廃は生むが、未来に対する希望や展望は見いだせない。

 ボクが思うに漁業の未来は明るい。水産物は需要が拡大し、きっとその内、品不足に陥る。これは中国やインド、ロシアの発展を見ていると明らかだろう。だかたいちばん大変な今を乗り切るために、漁業従事者の方、水産流通に関わる方には本当にがんばって欲しい。やっぱりここで問題になってくるのが流通コストに関わるガソリン税である。いい加減、この流通業、運送業いじめは止めたらどうでしょうね、官僚、政治家のみなさん。自分たちの身分を守るために既得権の多くを持っている建設業界だけをひいきするというのも変だろう。

 また宮崎県の彼の東国原知事が言うように、どうして県によって道路整備や公共投資が進んでいたり、遅れていたりするのか? これは明らかに過去の有力政治家の汚点である。恥を知るべきだ。
 そろそろ国の舵を取る人たちにも無機質なものを地方に投入するのではなく、もっと人間的な暖かみのある政治に移行して欲しいな。

 さて、地方でがんばっている企業や、県の職員の方を見ると、非常に明るい気持ちになる。
 これからも関東の市場で『浜勝商店』の箱を見るとうれしくなるだろうな。
 浜田社長他みなさん、がんばってくださいね。また立ち寄らせていただきます。

鳥取市岩美町浜勝商店
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鳥取県岩美郡岩美町
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