今、世に騒がれるものにCAS(キャス)冷凍というものがある。要するに過冷却にしたものを、一気に凍結させたもので、食品の細胞を破壊することなく冷凍状態にできる。これはなかなか先進的な技術で国内でも導入している企業は少ないのだ。そんな最先端の技術をいち早く取り入れて、水産物加工を行っているのが隠岐海士町の『ふるさと海士』である。
実際に島のCAS事業部を尋ねて、説明を受けて、いくつかをサンプルとして送って頂く。そしてまずは、冷凍食材でもっとも劣化の少ないというイカを食べてみることにする。
場所は我が家と八王子総合卸売センター『市場寿司 たか』。
解凍はいたって簡単。パッケージのまま流水につけて5分ほど。取り出すと、透明感のある美しいフィレで、まな板にのせて切ると、しっかり弾力を感じる。
これをひも状に刺身にして、食卓に出すに、だれも冷凍品だとは気が付かない。驚くのはその爽やかな甘味と旨味である。隠岐周辺の「白いか(ケンサキイカ)」の味の良さはよくしられるものだが、加うるに、この弾力、硬さはまるでとれたての状態に近いだろう。
魚貝類を調べるに当たって、たくさんの冷凍のイカを食べてきているが、味もそうだが、これほどの食感というのは他に例をみないものである。海士町の目の前の海で揚がったばかりの「白いか(ケンサキイカ)」をCASにかけるというのが、どれほどの威力を持つものかを実感する。
次いで、これをプロである『市場寿司 たか』の渡辺隆之さんに食べて、握ってもらって、値段から意見を聞いてみる。
「これは凄いね。もともとイカは冷凍しても悪くならないものだけど、これはプロでも冷凍だとはわからないね。赤いか(関東でのケンサキイカの呼び名)としては甘味がちょっと薄く感じるけど、新鮮な証拠。甘いのが好きなら、解凍してちょっと寝かすといい」
『ふるさと海士 島風便』のショップでこれを買い求めるとフィレ3枚で送料込み4800円。このフィレ3枚は刺身の歩留まりから丸で1キロ前後とすると、築地場内のケンサキイカの値段1キロあたり2500〜3500円前後からするとやや高い。しかし築地場内は卸値だから一般消費者にはかなりお得、しかもイカをさばく手間が不要となると、家庭で手軽に最高級の味を楽しめる。
たかさんは値段的にも
「寿司ネタとして、この値段はうれしいだろうね。一枚一枚、必要なだけ使えるし。オレなんか、ちょっと高い寿司屋やってたら使っちゃうかもなー」
いや、現実に既に使われているのではないだろうか? 最近の寿司屋というのはかなりの高級店でも冷凍物を使っているのだという。
島根県隠岐は日本海に浮かぶ、美しい諸島なのだけど、離島としてのハンデは大きい。そのハンデを補ってあまりあるのがCASであるかも知れない。
ふるさと海士
島風便
http://www.ama-cas.com/index.html
島根県庁
http://www.pref.shimane.lg.jp/
島根県水産課
http://www.pref.shimane.lg.jp/industry/suisan/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/