お魚三昧日記: 2007年1月アーカイブ

 寝床に入るとまるで墜落していくかのように眠りに落ちていく。と、その心地よい墜落感を邪魔をするヤツがいる。それが姫なのだ。
「父ちゃん、もう6時過ぎてるよ。起きろ」
「今日は市場やめたいんだけど」
「わがまま言うな。起きろ」
 眠気を堪えて時計を見ると7時近いのである。とすると1時間くらいは眠っていたことになる。仕方がないので市場に向かう。前夜は大雨、それが地面を濡らしている。その水分が凍り付いていないので、それほど気温は低くはないようだ。でもクルマを出すのは大変。クルマが厚さ数ミリの透明感のある氷で覆い尽くされ、車内にはいると氷の監獄に閉じこめられたようだ。もったいないけど貴重なガソリンを使い暫しクルマを温める。

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凍り付いたフロントグラス。冷え込みの厳しい三多摩地区ではありきたりなもの

 7時半近くなって八王子魚市場。鈴木さんは既に一仕事終えた後のようで暇そうにしている。近海には見事なアカガレイ。ダイちゃんに先日来ていたロシア産マガレイのことで聞こうと思っていたらつかまらない。
「源七」に昨日の「あん肝(キアンコウの肝を蒸したもの)全部売れちゃったの」と聞くと、
「当たり前だろ、オレが作ったんだから」
 若だんなに思いっきり自慢される。

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若だんながあきる野市の「スーパー小山」さんと納め用メカジキのさいころを作っているところ

 八王子総合卸売協同組合「光陽」で姫はラーメン、ボクはメンチカツ定食。疲れているのに食欲が落ちないのは返す返すも残念でならない。
「三恵包装」でチューブワサビ、チョコレート。
 八王子綜合卸売センター「平成食品」ではボク考案の「豚の薩摩しょうゆ漬け」を売っている。それでも暇そうなので姫にお茶をいれてもらう。「市場寿司 たか」は満員。無駄話も出来ない。
 結局、市場ではほとんど何も買わないで帰宅する。

 帰宅後、メールの返信を出来る限りして、掲示板のチェック。疲れを感じて「永六輔の土曜ワイドラジオ東京」を聞きながら、もう一度寝床にもぐり込む。時刻は10時過ぎ。いつの間にか眠ってしまっていて、ラジオからは久米宏の声がする。この方、お年の割には才気走りすぎている。それが抑えられないほどに頭が冴えているのだろう。考え方など、どちらかというと好きなのだが、その作り出す番組には墨子が城を守っているような息苦しさを感じる。
 結局、夕方になっても体調が回復しない。4時過ぎてやっと宅急便の営業所に三重県の岩田昭人さんからの荷物を取りに行く。中身は珍しい魚貝類などなど。中に2本入っていた「生からすみ」に驚喜する。冷凍便なので、明日の朝から撮影を開始。

 夕食はスルメイカのげそ入りきんぴらゴボウ、サバ水煮缶でグラタン、そのままも肴として残す。ほうれん草のスパゲッティ、ウルメイワシの干物、さごち(サワラの幼魚)のみそ焼き、塩カラフトマスで鍋。肴は尾鷲の生からすみ。これで鮟鱇さんにもらったバンビの絵柄の「若鹿ワンカップ」、中島酒造の「高尾山」。

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マグロ、サケ、サバなどの水煮で作るグラタンは家族用。新玉ねぎがあったので作ってみた。我が家ではこまったときにはグラタン

 食後、画像の整理、サイトの改訂を始めるが、やはり身体がだるい。この一週間の疲れがぜんぜん消えていかないのだ。9時から「アドマチック天国 河童橋」を見て、そのままダウン。


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

 台風一過のような市場の週明けである。場内には何もなく、とくに近海(鮮魚を箱単位で扱う)が寂しい。またかなり値が上がっているようで魚屋さんが、うろうろと仕入れるかどうか思案に暮れている。
 そんな八王子魚市場で見事なアカガレイが置かれている。産地不明であるが荷が少ない状況でキロ当たり2000円は安い。アカガレイは刺身にすることはなく、ほとんどが煮つけか塩焼き用。味のいいカレイで値がつくのはいいとしても、意外に料理屋などで扱いづらいもの。だいたい最近煮つけの価値が下がって来ているのである。煮つけは料理の中でももっとも歩留まりのいい食べ方。「もったいない精神」を大切にするなら、「食育」をすすめるなら「煮つけをもっと食生活に取り入れろ!」。

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 時化のせいか、注文なのか「源七」に1キロを遙かに超える「白川(シロアマダイ)」が来ている。香港からの輸入ものでキロ当たり2000円。やっぱり市場に魚がなくなっても値上がりの幅は小さいのだ。

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 社長の吉種登さんをつかまえて船橋でのアカニシのことを聞く。
「あんなものうまかない。あれは戦後に鎌倉に出したんだ。そしたらよ組合で江ノ島にいったわけさ。そこでサザエの壺焼き食ったんだけど、『こりゃ“にし”だろ』って言ってやったんだ。そしたら『旦那声が高いよ』っていいやがる」
「あとな“にし”は船橋の草競馬(船橋には今も競馬場あるんだろうか? それにしてもあんたフォスターかい)で売ってた。これくらい(手で形を作りながら)適当に切っだろ、それを串に刺して焼いてるの」
 アカニシがサザエの偽物に使われたというのは聞いたことがあるが生き証人が身近なところにいるなんて。考えてみると戦後などは魚自体が不足していた。だから1965年(昭和40)くらいまではこんなことがあったわけだ。よく似た話では銚子のヒラメがニゴイだったというのもある。考えてみれば今のように魚の味にうるさくなったのは、そんなに昔の話じゃない。
●これは決して現在の話ではない

 八王子綜合卸売センター「高野水産」に荷が到着している。並べ終わるまで八王子総合卸売協同組合。「丸幸水産」にもめぼしいものはない。他に店も同様なのだ。

 八王子綜合卸売センター「高野水産」に戻ってみると思ったより荷が多い。ただし養殖物が多いのは致し方ないか?

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 礼文島からのニシン、壱岐からカサゴ、マアジに「すけそ(スケトウダラ、市場ではあくまで“すけそうだら”)」。根室からエゾボラ属の入会がきている。クリイロエゾボラ、ウスムラサキエゾボラ、ドウナガエゾボラ。登別からはビノスガイ。

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 社長曰く
「明日の方が魚少ないってよ」
 煮魚用の魚を探してみたがキロ2500円のカサゴを買う気にもなれず。小さな“すけそ”を一本買う。

「平成食品」でコーヒーを入れてもらい一息。最近、疲れがとれないのだ。「伸優」で信州味噌。我が家では主に麦麹味噌を使っている。でもたまには信州味噌もいいだんべ!


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 年末は家人とふたりだけだったのでお節も作らず手抜き料理で済ますつもりだった。それが宇和島市の「薬師神蒲鉾」さんから、また鹿児島のわかしおさんから、うまいものをいっぱい頂いてにわかに豪勢な夕食となったのである。
 やはり薬師神さんのところの竹輪蒲鉾はひと味違う。とくに素晴らしかったのが「手焼きちくわ」である。家人がほとんど一人で食べてしまって恨めしくさえ思えた。また、じゃこ天を炭火で焼いたのがしみじみうまい。ほんのコップ一杯の日本酒が恨めしい。

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 それと鹿児島地鶏の刺身。去年もわかしおさんに頂いて感激したのだが、これは何度味わっても魅力的だ。ほかには旗野農園のパクチョイと薩摩地鶏の切り落とした端っこを使ったたきもの。ほっき(ウバガイ)の湯引き。またほっきのヒモや貝柱でおからも炒ってみた。
 明らかに胃の具合が悪くて今年は酒をほとんど飲めない大晦日なのだが口福感をたっぷり味わえた。

 家人恒例の紅白歌合戦。今年はふたりっきりなのでつき合わないわけにはいかない。でも9時過ぎまで見ていて知っている歌手というのが美川憲一と森昌子だけ。ふたりとも大大大嫌いなので憂鬱になる。ボク一人なら断然3チャンネルを見ている。
 それから11時過ぎまでメールや雑事。年越しそばは山形県の「小川屋」の乾麺を使った鴨南そば。画面は行く年来る年なんだろうか? 家人がこんどはアイドル番組にしたのでパソコンの前に戻る。少しだけ「東京のさかな」の校正をする。

 そしてまたまたテレビの前まで戻るとNHKでさだまさしがディスクジョッキーのテレビ版のようなものに出ている。これ昔の「セイヤング」のようで懐かしい。
 ここで家人がビールを出してきた。ビールくらいなら大丈夫だろうと、コップ一杯。これに沼津の「カネマル笹市」のアカアマダイの干物。これも体調からすると恐いくらいにうまい。
 久しぶりの、さだまさしのしゃべくり、非常に面白い。まったくすごい人だ。ちなみにボクの思い込みなのであるが、さだまさしの最高傑作は「交響曲(シンフォニー)」だ。この曲長すぎるのでなかなか深夜放送でもかからなかった。当然、テレビじゃ無理だよな。(これはクラシックファンの意見なのだが歌謡曲はどうして3、4分なんだろうか? それは内容は空疎だからだ。それからするといい曲なら10分だろうが15分だろうが全部流すべきだ。だいたいブルックナーなんて1曲で1時間くらいある。さだまさしの「交響曲」は10分以下ではないか)
 そろそろ2時と言うときに眠くなってダウン。

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 さて明日は胃の具合は治癒しているだろうか? 明日は安良里「魚武」の潮かつおを切り分ける日。カレンダーの前につり下げて新年が良い年であることを祈る。沼津の菊地さんに感謝しなければ。


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