最近マンボウの入荷が多い。
それで、ついつい毎日のように買ってしまう。
マンボウは“身と肝のセット”と“腸”に分かれているのだけど、買ってしまうのは腸、すなわち「マン腸」だ。
普通の人にとって、食用として市場に並ぶマンボウって、珍しいのだろう?
観光で築地などを歩いている、いわゆる一般人が、マンボウの(残骸の)前に来ると必ず足を止める。
「マンボウって食べられるのね!」、こんな言葉が必ず漏れ聞こえてくる。
さて、マンボウと書かれた箱には、白っぽい不思議な物体が入っている。なんじゃこれは? マンボウにはとても見えやしない。
マンボウは鉛色の背に、銀色の腹、楕円形で尾の部分がハサミで波状に裁ちきられているようだ。
英語ではOcean sunfish、「大洋の太陽の魚」だ。
世界中の温帯・熱帯の海洋を漂よっている。大洋に浮かぶ銀色の身体に太陽の光を受けて、まるで海にも太陽が浮かんでいるようだ、ということだろう。
そんな海に浮かぶ太陽は、ときに定置網に入り込み、ときどき漁師に銛を打ち込まれる。
大きな大きな魚なのであって、小さくても畳半畳、デカイのになると畳二畳、1.5トンくらいになる。
港などでコンクリートの上に放り出されたマンボウの、大きく見開かれた目が、印象的で、ときに悲しい。
こんな大きな体ではとても運べやしない、港で水揚げされると、さっそくマンボウは解体される。
食べる部分は【手で割けるほど柔らかい身】、【脂たっぷりの肝】、【ぶにょぶにょしているが丈夫な腸】、そして地域によっては【皮というか白い寒天質の部分】。肝は黄色だが、その他総てが乳白色だ。
漁港では身と肝で箱詰めされ、腸だけは別に箱詰めされる。
市場にやってくると、中身だけでは、とても「これがマンボウだ」なんて思えない。
関東の市場ではありふれた商材だけど、例えば仲卸(水産物の卸業者のひとつ)の店員に「マンボウ1キロくらいくれないか」と言う。
「はいよ」と、身と適当な大きさの肝を袋に詰めてくれる。
その一連のやり方はテキパキ手なれたものだが、「マンボウの身って面白いっすね」なんて言うことも少なからずだ。
市場人にとってもマンボウは、ふわふわとらえどころのない物体なのだろう。
マンボウのもっとも基本的な料理法は「肝和え」。
身を適当に手で割き、叩いた肝と和える。
海辺で揚がったばかりを肝和えにしたものは、それはそれはうまいものだ。
ただマンボウの水分の多い身は鮮度が落ちやすく、都会に運ばれた時点で、やや生臭い。
都会の居酒屋で食べる「マンボウの肝和え」、それなりに人気があるようだが、これは珍しさが先にたってのものだろう。
対するに最近ぐんぐん人気となっているのがマン腸料理だ。
腸の中華炒め、焼き物、椀種など、どれをとっても非常にうまい。
なかでももっとも人気なのが焼き物だろう。
ようするに塩コショウ、ニンニクの風味などをつけて焼くだけ。
焼きとりのタレで焼いてもいい。
串を打って焼くと、初めて食べる人は、焼きとりのシロのようだけど、「違うな」なんて戸惑うに違いない。
食感はシロに近く、それよりも柔らかい。そして魚と言うよりはイカのような旨味がある。
ボクは夏が来るたびにマン腸の塩焼きでビールを飲む。今日もマン腸、明日もマン腸で食べ飽きない。
ほんまにマン腸はうまいね、なんてしみじみ思う。
マン腸はビールにも日本酒にも合う。
酒をセーブしている身には危険な存在でもあるな。
【焼きマン腸の作り方】
1 マン腸は厚み1〜2センチほどの白い長方形の物体である。大きさはマチマチ。これを軽く水洗い、水分を布巾などで拭き取り、適当に繊維に対して切れ目を入れておく。
2 塩コショウ、日本酒、ニンニクすり下ろしをまぶして手で揉む。
3 これを最低でも小一時間おく。下味をつけておくと2,3日楽しめる。
4 ガス台の上に餅焼きの網を3〜5枚重ねて、強火で金ぐしに刺したマン腸を焼く。とにかく短時間に強火で焼くのがいい
個人的には身が縮むがよく焼いた方が好き。焼き加減は好みでいろいろ試してみるといい。
2009年6月25日
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、マンボウへ
http://www.zukan-bouz.com/fygu/sonota/manbou.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/
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