青森の田向さんに送って頂いたもので取りだした途端にうまそうだ、と思ったのがマフグの一夜干しである。一匹分のマフグが皮を剥かれ三枚におろし、一夜干しにされ、それを冷凍したものである。
夏になると青森津軽海峡、北海道噴火湾にはマフグやゴマサバが大挙して回遊してくる。たぶん北海道でも青森でも市場にはフグが山になっているものと思われる。この北でとれるフグたち、夏であるがために値もほどほなのだが、味わいは決して悪くない。想像だが、それに目をつけたんだろうな田向さんは。
この一夜干し、軽くあぶってむしくってスダチをしぼり酒の肴にしたのだがとてもいい味なんである。
そして田向さんから「2時間ほど塩抜きして鍋に使ってください」と予め教わっていたので、これもやってみる。ところがこれは大失敗であった。フグの身にうまみがない。そこで考えてみたのは干物として食べてみて上々なのだから「塩抜きはしなくていい」ということ。残っていたのを、関東で言うところの湯豆腐仕立てにする。
フグを適当に切り、熱湯をかけて冷水に取り、素早く水気をとる。昆布だしにフグいれて、豆腐、ネギという単純極まりない材料とする。くつくつといってきて煮上がったフグの身をスダチ醤油で食べる。それがマフグの切り身自体が微かな塩味を残してうまいし、それを受けて湯豆腐としても最上の味わいとなる。9月になって急に涼しくなって今期初の鍋なのである。それが絶品で鍋の幸先吉と思われた。
田向さ〜ん、肌寒の10月の黄昏にもマフグの湯豆腐が食べたいな。
青森「田向商店」
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