水産会社、加工品図鑑: 2006年9月アーカイブ

 青森の田向さんに送って頂いたもので取りだした途端にうまそうだ、と思ったのがマフグの一夜干しである。一匹分のマフグが皮を剥かれ三枚におろし、一夜干しにされ、それを冷凍したものである。
 夏になると青森津軽海峡、北海道噴火湾にはマフグやゴマサバが大挙して回遊してくる。たぶん北海道でも青森でも市場にはフグが山になっているものと思われる。この北でとれるフグたち、夏であるがために値もほどほなのだが、味わいは決して悪くない。想像だが、それに目をつけたんだろうな田向さんは。

 この一夜干し、軽くあぶってむしくってスダチをしぼり酒の肴にしたのだがとてもいい味なんである。
 そして田向さんから「2時間ほど塩抜きして鍋に使ってください」と予め教わっていたので、これもやってみる。ところがこれは大失敗であった。フグの身にうまみがない。そこで考えてみたのは干物として食べてみて上々なのだから「塩抜きはしなくていい」ということ。残っていたのを、関東で言うところの湯豆腐仕立てにする。
 フグを適当に切り、熱湯をかけて冷水に取り、素早く水気をとる。昆布だしにフグいれて、豆腐、ネギという単純極まりない材料とする。くつくつといってきて煮上がったフグの身をスダチ醤油で食べる。それがマフグの切り身自体が微かな塩味を残してうまいし、それを受けて湯豆腐としても最上の味わいとなる。9月になって急に涼しくなって今期初の鍋なのである。それが絶品で鍋の幸先吉と思われた。
 田向さ〜ん、肌寒の10月の黄昏にもマフグの湯豆腐が食べたいな。

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青森「田向商店」
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 さてマルハラフーズさんに送って頂いた干物でもっとも気に入ったものを紹介したい。ボクが勝手につけた名称が「肝臓壊し単味干し」。サンマの脂はほどほどだろうか? 何気なく魚焼きにのせてジワリと焼き上がる。味見なのだからと家人と1本手で半分に割って口に放り込む。いけないことにこのとき左手には缶ビールを持っていたのだ。その熱いこと、またうまいのでビールをグビリ、グビリ。焼き上がったサンマをむさぼる、またグビリ。
 実に困った状態に落ちいてしまったことはすぐにわかった。頂いたのを全部焼いてこんどは日本酒の肴にする。脇から勝手に取っていくのは子供達。子供達には「さば漁師まかない干し」の残りを焼いてやる。家人もどちらかというと酒よりもご飯なので「本漬け 塩さんま旨味干し」から手を引いてくれた。
 これはまさにボクのようなオヤジには堪らない代物である。世のお母さん、お父さんを愛しているなら、こんな干物を用意して頂きたい。塩とサンマだけなのにこんなに味わいが深いし、しかも後味がいい、ついまた口恋しくなって、サンマの身をむしりとる。こまったのは食べ過ぎるのと、酒が進みすぎる。後一本となって宮崎「八重桜麦焼酎」を開ける。残り少なかったのもあるが長野の「夜明け前」がなくなったのだ。麦焼酎にも合うのだこれが。
 重い二日酔いの頭を抱えてこれを書いているのだが、ご飯にはみそや醤油味の干物が合うが、酒には塩の単味が最高だ。今時の酎ハイ党である家人の意見は違っているが、ボクはガンコにそう思う。

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マルハラフーズ
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 ドコサヘキサエン酸などイワシに含まれる有益な成分が巷ではしきりに取りだたされる。とうぜん、市場にもイワシ製品はいっぱい見られるのだが、ありそうで探すと見つからないのがイワシのハンバーグだ。
「似たようなのがいっぱいあるんだよ。うちは値段で仕入れているだけだから」
 と八王子の仲買が持ってきたのがこれ。
 小振りなハンバーグが3つ入って小売りで150円から200円くらいだろうか? 売値がわからないのが市場の弱点である。「いわしハンバーグ」とあるがタラ(たぶんスケトウダラ)、サバ(たぶんノルウェーなどの輸入品)、パン粉や卵白、食塩に魚醤まで使っている。これが味がよくて子供にも歓迎されるすぐれものであった。
 このような加工品から今時の「食育」というのも始めてはいかがだろう。

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藤七 静岡県静岡市清水区蒲原東17


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 愛媛県の宇和島、八幡浜などで作られる「じゃこ天」の原料というのはホタルジャコを筆頭に様々な小魚なのである。その小魚の小骨も多少のウロコもそのままにすり身にして揚げてある。ここには多量の旨味が含まれ、煮物を作るときなどはカツオ節や煮干しなどを使う必要はない。じゃこ天の旨味だけで素晴らしい煮物が出来るのだ。それで我が家では何はなくとも、この「じゃこ天」と里芋、ジャガイモ、大根などをたく(ボクは四国出身なので「たく」なのだ)。これで至極簡単に、すこぶるつきにうまい煮物が出来るのである。
 用意するものはいたって少ない。さし昆布、じゃこ天、ジャガイモか軽く下ゆでした里芋か大根だけ。水に昆布、ジャガイモ、適当に切った、じゃこ天を入れて火をつける。ことこと沸いてきたらアクをすくい。酒、砂糖、醤油で味つけする。これだけで、あとは何もしないのだ。
 そしてじっくり、じゃこ天の旨味がジャガイモに乗り移ったら、いっきに食ってしまう。我が家などではおかずとも言えず、おやつとも言えず、いつの間にか鍋はからっぽ。残っているのはややだしがら状になってしまった、じゃこ天だけなのだが、これに辛子を塗りたくって酒の肴にするのである。子供は嫌がるが、ボクには役割を終えた、じゃこ天がこれまたいい味わいなのだ。これは大人だけしかわからない味だ。
 さて、じゃこ天でたいたのはメークイン。これが里芋ならもっといいのである。それがまだ夏が終わったとはとても言えない9月初旬。なんと気温は34度まで上昇。八百屋をのぞいても里芋は高く、三多摩一野菜が安いという八王子綜合卸売センター「ビックリや」でも7、8個入って一袋600円もする。そろそろ石川早稲ぐらいは安くなってもよさそうであるが、今回は里芋を断念。10月には土垂里芋、冬になると八王子名物の石川大根でたくのもいい。困ったことにまた腹が減ってきた。

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薬師神かまぼこ
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 さて、ここで予め書いておくべきことは、田向商店の味わいの方向性について。それで「青森」というのは本当に「東北なのか」というのから話を進めたい。
 初めて青森市に行ったのは青函トンネルの開通したときだから1988年なのである。青森駅の近くには三角形の汚い建物が出来て、開通記念の博覧会のようなものをやっていたのだ。岩手からやっと青森へとクルマを走らせて、なんという美しい山野だろうかと感動したのに、その象徴的な建物(これを作ったヤツは馬鹿者だ)のアホさ加減、拙い発想に急激に気分が暗くなってしまった。その急落感を立て直してくれたのが青森駅前の不思議な空間、市場群なのである。
 その市場で感じたのは三上寛の歌から感じられる強烈な個性であり、決して吉幾三(この人の歌、能動的に聞いたことがない。コマーシャルなどから受ける印象である)のわかりやすい東北のイメージではない。その市場の薄暗い路地、迷路にはまるで東南アジアのような激しい色合いがあるし、どこにも単に「北国」を思わせるものはなかった。
 市場に盛り上げられた赤いホヤのかたまり、大量のサメの頭、蠢くシロウオ。太いおっかさんの二の腕に、ぜんぜん理解できない言語。これがボクの青森の第一印象であるが、2度3度と訪れてもこの印象は薄れない。その市場のお総菜の甘辛さ、食堂で食べた煮つけの甘さ、濃厚さ、また汁の辛さ。ニンニクの風味。青森では味つけも熱帯の熱さを持っている、と勝手に思いこんでいたのだ。

 そして田向商店を知ったのは築地魚市場なのである。アブラツノザメの皮を剥かれた身が2〜3本。細長い発泡に入って脇に大きな文字で「田向商店」とある。これはここでは触れないがこの「むき鮫」というのは八王子と深い関わりがある。それで田向商店に電話で問い合わせたのだ。そしてアブラツノザメなどを送ってもらった上に田向商店で作られているサメの煮つけなどのレトルトパックもいただく。この味わいが思っても見ない上品なものであったのだ。決して甘すぎず、そして塩分濃度も低い。それでも味気なくないのはアブラツノザメから出てくる旨味があるからなのがわかる。すなわちアブラツノザメの旨味を活かすために味付けが淡いのである。これは田向商店の「サメで培われた繊細さ」なんだと改めて思ったのが、今回送ってもらった「赤魚の煮つけ」である。
 アラスカメヌケ(赤魚)は白身なのだがゼラチン質の皮目に多量の旨味を保持している。これを濃厚な味付けで閉じこめてしまうということも考えられるが、淡い味付けで汁と身に旨味を等分に閉じこめるという方法もある。田向商店のは明らかに後者の味わい。赤魚の身をほぐしながら汁ごと食べるのだが、これがまことに地味豊かである。これなど昼飯に出てくると今時の都会のサラリーマンの緊張感を適度に抑えて、ほっと一息つかせてくれそうだし、夕食にあると家庭に和やかな空気を作り出してもくれそうだ。
 今回、田向商店から送られてきたのが「まふぐの一夜干し」「キアンコウのブツ、肝」「赤魚の煮つけ」、もうひとつ不思議な固形物があるが、解凍してみなければ。この1パック1パックを開けるのがなんとも楽しみである。

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田向商店
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 シーフードショーではたくさんの面白いものを見つけたのだが、これは本年度見つけたもっとも優れたもの。
 我が家で使っているペーパータオルというのはリードと、もっとも安い粗悪なものの2種類。魚などの水分を取る、また鮮度保持、煮物でかつお節を一緒にたくときなどにはリードペーパータオルを使っている。でもこのリードペーパータオルが水分を取るのはいいが、とった水分をまた魚にもどしてしまう。またじめじめした感じになるのだ。それがソフト剛・剛にはまったくない。また強くて薄いので使いやすいのである。
 価格を見ると200枚で1450円というのが少々高いのであるが、脱水シートよりも安いことを考えると、一般人にも魅力的かも?

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しょうゆ漬けを作るために、ほぐして洗ったイクラの水分を取っているところ

三和紙工
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小野商事
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 先週末のこと、「お父さん、薬師神さんから荷物が届いているわよ」と家人からケータイ。押っ取り刀で帰り着くとなかには鯖寿司と「薬師神かまぼこ」のじゃこ天。じゃこ天がうまいのは当たり前であるが、それ以上に驚かされたのが鯖寿司である。
 家人など大阪や京都に立ち寄れると買ってくるのは鯖寿司なのである。かの京都四条通り側の名店のなどは今や4000円近いのではないか? とても手が出ないね、なんて昨年ため息をついた。そんなときに届いた鯖寿司。これには家人が目の色を変えてしまった。
「早く」というので一切れ。その顔つきからしてもっと欲しいのがわかり、また一切れ。ボクも我慢できなくなって食べてみたら、これは久しぶりに最上の鯖寿司なのである。とにかく鯖の締め加減が絶妙である。愛媛県宇和島産なのだろうかマサバの脂ののりが見事と言うしかない。噛みしめるとジワリと甘い脂が浮き上がってくる。
 すし飯もさすがに四国なのである。はんなりと上品(四国の味わいを表現するにこの言葉がぴったり)。「お父さん、全部食べてしまいそう」と言いながら本当に全部平らげてしまった。ボクも負けずに食べてしまったのだが、ぜんぜん勢いが違う。
 この「薬」マークの鯖寿司、取り寄せが出来るのか? これは電話でもするしかないな。

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薬師神かまぼこ
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 八王子綜合卸売センター「フレッシュフード福泉」で面白いものを見つけた。これはどう考えてもうまそうに思えないもの。でも、それだからこそ買ってみたいなと思うのが、ぼうずコンニャクの偏屈なところである。
 さて、この「いかときのこのクリームソテー」とはなんぞや? 見るとイカの切り身とシメジ、チーズがのっている。どう見てもうまそうに見えないがミスマッチな取り合わせにオヤジ心をくすぐられる。これは昔、縁日のカーバイトに照らし出された原色のお菓子、「買ってはいかんぞ」と言われた反動だろうか? こんなものについつい手が伸びる。
「キムチ味とかしょうゆ味ならわかるんだけど、これが売れるかどうかはわからないね」
 福さんも首をひねりながら仕入れてきたようだ。卸値からすると300円台後半の小売値になるだろう。
 ちょうど来合わせた八王子の中華レストラン「海宴」さんも同じような衝動に駆られていたようだが、「賄いでも、これは冒険しすぎかな」と買わないで帰っていった。

 イカはペルー産とあるがアカイカに近いものではないか? これに粉末醤油やコーンスターチ、マスタードに米の粉、デンプン、牛乳、ネギや赤ピーマン。材料を見ていると「なんとか思いついた味わいを造り出そう」とする苦闘の後が見えてくる。
 パックからチーズを取りだし、イカなどの材料をフライパンで2分炒める。するとイカが白濁したスープのようなものでくるまれる。そして火を止めてチーズを絡めるのだ。
 さて食卓に出して、ビールの肴にするにはしたが、これは多くは食べられない。イカ自体がスポンジを噛むようで味がない。そこにクリームのような出汁のような、それなりに濃厚な味わいのソースがあるのだが、はっきりいってまずいのである。
 これは冷凍イカをなんとか加工して「売りたい」という積極的なチャレンジではないかと思うのだが、今回に限っては我が家は全員ギブアップ。こうやって流通するからにはある程度の需要があるからなのだろうが、料理としてのニッチがないように思える。
 この横山水産のチャレンジ精神にはエールを送りたいし、また「横山水産」のものを見つけたら買ってみたいと思う。ボクとしてはこのような試行錯誤をするメーカーは大好きである。

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横山水産 福島県いわき市泉町下川字大剣392-1
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 我が家の朝の食卓に必ず並ぶのが納豆とめかぶ、夏ならオクラ、モロヘイヤ、ツルムラサキ。この共通点は「ねばねば」なのだ。この内最低2種類を食卓において、家族は混ぜ合わせてご飯にかける。ねばねばのものにねばねばを合わせたら、「ねばねば」過ぎて困りそうなものだが、なかなか味がいいのである。そんな食卓に家人が不思議な納豆をおいた。それがコレである。
「どうせ、納豆とめかぶを合わせるならと『めかぶ納豆』を買ってきたのよ」というそれを裏返すと青梅の菅谷食品のものなのだ。前にも書いたけれど菅谷食品の納豆はまことにうまいのだ。日野で一番うまいと評判の豆腐屋が「いちばんうまいと思うけどね」というくらいだから菅谷食品は正統派なんだと思いこんでいたら、こんな面白い製品も作っていたのだ。
 中には納豆と袋入りのめかぶ、タレに辛子が入っている。このめかぶの量と納豆の量が絶妙であるし、タレ辛子と合わせてもご飯に合う。まことに朝食にはもってこいの納豆というか食品なのである。
 ちなみに納豆とめかぶ、モロヘイヤ、オクラ、とろろ芋などねばねばを合わせるとまず間違いなく美味なのだ。

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菅谷食品  東京都青梅市友田町1丁目1010-1


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