食べる貝・イカタコ学: 2009年12月アーカイブ

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徳島中央卸売市場榎本兵でナガニシだと思って買ったものをじっくり同定すると、別種のハシナガニシだった。
ハシナガニシのきれいな画像がないので、かなりうれしい。
これを刺身で堪能しながら、ハシナガニシも夜泣き貝だろうか? なんてふと思った。

さて、この話は「夜泣き貝とはなんぞや」から始める必要がある。
誰でも知っているものから、誰も知らないものまで、貝の仲間はあまたある。
しかも一般的に知られている貝は、貝の仲間の中ではほんのわずかばかりで、実際に国内で食用となっているものでもよくよく調べると、非常にローカルなものであることが多い。

例えばマガキガイとかナガニシとか。
マガキガイは高知県ではチャンバラ貝といい、黒潮の洗う地域に転々と食べている地域が並び、沖縄まで南下して初めて一般的な貝になる。
夜泣き貝と広島県広島市周辺で呼ばれるナガニシはもっと複雑だ。

ボクの知る限り、広島県以外でこの巻き貝を好む地域を知らない。
すごいのは広島県でナガニシがあまりとれなくなったためだろうか?
ナガニシに近縁の巻き貝、コナガニシを島根県、鳥取県などから陸送している。
島根の市場人など、「なんでこの貝が広島で売れるのか、不思議じゃのー」なんて言っているくらいだ。

日本海でたくさん揚がるのがコナガニシなら、四国の太平洋側で主にとれるのはハシナガニシであろう?
これがまたボクの課題なんだけど、こいつも広島県に送られると夜泣き貝になるのではないか。
それで文頭の「ハシナガニシも夜泣き貝だろうか?」が浮かんだわけだ。

さて、ナガニシの仲間は内臓(ワタ)が苦くえぐみがある。
それで「煙草螺」なんて呼ばれているのだが、筋肉(足)は甘みが強くて非常にうまい。
ナガニシ、コナガニシ、ハシナガニシを食べ比べて、味の違いがわからない、というほどに差がない。
ハシナガニシはナガニシ族の中では大型の部類。
身も他のナガニシよりも大きい。
じゃあ、徳島県で雑多な巻き貝として足蹴にされているハシナガニシも広島に送ったらさぞや高値を呼ぶんだろう。
やってみなければわからないけれど、面白そうだ。

榎本兵
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ハシナガニシへ



ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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西京漬けの季節なので、白味噌のあらみそ(つぶみそ)を買い求めた。
八王子総合卸売組合『マルコウ』のクマゴロウの横に、タイラギの貝柱が5つ、6つ。
「いくらだい」
「200円でいいや」
明るいナショナル君が「今日はあんまり魚がありませーん」と言う。
本当に定番的なものしかなく、致し方なくカイバシラ1個だけ。

帰宅して半分に切り、振り塩。
半時間ほどおき、水洗いして、合わせ味噌に夕方まで漬ける。
夕食はシチューなので、これはボクの酒の肴。

タイラギは焼くと硬くなる。
だから端っこから少しずつかじりつく。
西京味噌の風味にタイラギの苦みと強い甘みが浮き立ってくる。
口の中で噛みほぐしていると、どんどんタイラギの旨みで満たされてくる。

これを洗い流すのが、赤霧島。
立川の居酒屋『太鼓』さんにもらった絶品焼酎なのである。
そうだ、最近『太鼓』にぜんぜんいってない。
まさに師走なのである。

作り方
1 タイラギの貝柱を厚み半分に切る。塩焼き程度に振り塩。
2 半時間弱おいて塩を洗い流す。水分をよく拭き取っておく。
3 みりん、酒、砂糖、西京味噌(白味噌)を合わせて練る。おかず用なら砂糖多めにする。
4 貝柱を5〜6時間つけ込む。
5 漬けみそから取り出し、みそをを取り除き(水洗いはしない)、遠火でじんわり焼き上げる。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、タイラギへ


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