食べる貝・イカタコ学: 2006年3月アーカイブ

 関東の市場でもよく見かけるものに「灯台つぶ(とうだいつぶ)」というのがある。略して「とうだい」なんていう。これはどうも北海道での数種の巻き貝をさす言葉。そのどれもが属名を出したくはないがBuccinumに属し、もっとランクを下げるとヒモマキバイグループなのである。このグループで食用として流通するのはヒモマキバイ、オオカラフトバイ、シライトマキバイ、クビレバイ(量はいちばん少ない)の4種。また東京湾、相模湾にいるサガミバイ、相模湾以南にいるスルガバイもこの仲間である。特に千葉県銚子などであがるシライトマキバイはスルガバイと紛らわしいタイプがあり、この2種が別種などだろうかと疑問に思う。
 この6種をざっと説明する。(この4種に関しては、ぼうずコンニャクの私見と思って欲しい。これにしっかりした分類、また検索方法があるなら指摘して欲しい)

●オオカラフトバイは北海道特産ともいえるだろう。主に厚岸、釧路、根室などから入荷してくる。
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市場魚貝類図鑑のオオカラフトバイへ
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●ヒモマキバイも厚岸、樽前、そして北海道日本海側。
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市場魚貝類図鑑のヒモマキバイへ
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●シライトマキバイは千葉県銚子、福島、北海道南部など太平洋に面する地からの入荷が多い。また剥いた状態での入荷も多々見られる。
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市場魚貝類図鑑のシライトマキバイへ
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●クビレバイというのはいちばん難しい。日本海とオホーツク海に棲息するもので、まちがいなくクビレバイと思われるのは日本海からの白ばい(エチュウバイ)に混ざっている。もしくはヒモマキバイなどに混ざって典型的なクビレバイが見つかるが、どうも謎の巻き貝である。
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市場魚貝類図鑑のクビレバイへ
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●サガミバイは東京湾、相模湾に棲息。市場で見られることはまずない。
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市場魚貝類図鑑のサガミバイへ
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●スルガバイは相模湾以南のやや深海に棲息する。産地では消費されているが流通することは希。
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市場魚貝類図鑑のスルガバイへ
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 以上を「灯台つぶ」として少しずつ説明していきたいがオオカラフトバイ、クビレバイ、ヒモマキバイを一群、シライトマキバイを一群、スルガバイ、サガミバイを一群として3ページとする。これは「灯台つぶ学事始め」である。ぼうずコンニャクの混乱をわかって欲しいのだ。


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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 金曜日の市場で魚屋のオヤジと立ち話、目の前にあったのが北海道産のアサリである。この色合いの違いに魚屋のオヤジは「(本州のとは)別種だろ」と疑問に感じているのだ。
 確かに木更津などから来るアサリは白や青色で模様がくっきりしている。これがアサリの概念の基本かも知れなくて、それからするに北海物はまったく違っている。全体にサンドベージュ(砂色)もしくは白泥色、やや赤身がかったり、まったく白であったり。模様は微かに筋が入る程度である。また何よりも貝殻が厚いのは魚屋などの嫌う所以である。
 これは本州のアサリよりも遙かに北海道の方が成長が遅い。そのためにやや貝殻が硬くなる。また東京湾、浜名湖では春と秋に産卵期があるのに北海道産は夏に一回だけ産卵が行われる。このために当然旬(北海道産のアサリの旬に関してはまだ把握していない)も違ってくるし、市場での評価も賛否両論となるのだ。
 北海道での産地は主に釧路、厚岸、根室あたり。箱には大まかに「道東産」と書かれていることが多い。かなり大型のものが入ってくることがあり、これがために北海道ではアサリがよく成長するのだと思いこんでいるようだがまったくの見当違い。実際にこのところあまり大型のものは見かけない。
 味わいは他の産地と変わらない。貝殻が重い、また出汁がでないという評価もあるが、そんなに気にすることもないだろう。個人的にはこの灰色のアサリは大好きである。

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市場魚貝類図鑑のアサリのページへ
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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 エゾバイが「磯つぶ」と呼ばれていると書いた。その「磯つぶ」にもう一つあってそれがコエゾバイである。産地は北海道の噴火湾から厚岸までが目立つ。この貝少々やっかいなのは貝の収集家にとっては複数種になってしまうらしい。またそれが正しいのかも知れないが、一般人にはとてもついていけない。それと比べると北海道樽前浜『マルゼン』など区別は明解である。エゾバイが「磯つぶ」ならコエゾバイなどはおしなべて「子いそツブ」としている。
 そのコエゾバイのグループ、すべて挙げるとコエゾバイ、ヒメエゾバイ、チシマバイ、この3種が少しずつ特徴を重ならせて区別が難しい。また同じ産地、同時に入荷したものを見ていても区別が難しく漁師にも魚屋にも一般人にも関わりがないと思って良し。
 味わいはエゾバイ、すなわち「磯つぶ」同様にいい。しかもエゾバイより安く、1000円前後で手に入ることも往々にしてある。

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市場魚貝類図鑑のエゾバイへは
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 市場でよく見かける言葉に「つぶ」というのがある。「つぶ」とは巻き貝全般を差す言葉である。ただし市場ではそうではない。市場で「つぶ」という言葉がつくものでは「磯つぶ」「灯台つぶ」「真つぶ」「Aつぶ」「Bつぶ」「青つぶ」の6つが主なもの。他にも福島県の「まきばい」、新潟県の「くろばい」など「ばい」というのも巻き貝をさす言葉だがこれは別項を立てる。

 この6つの言葉が指す巻き貝の共通点は「総てエゾバイ科」であるということ。そして総てが北方系の貝。あえて言うと「つぶ」と言う言葉自体が北海道に源があるように思える。また多くが北海道産の貝と言ってもいいだろう。これをひとつひとつ説明していきたい。そして今回の主役は「磯つぶ」と呼ばれることが多いエゾバイである。

 エゾバイは本州東北から北に棲息する小型の巻き貝。市場で見る限り産地のほとんど総てが北海道産である。比較的浅い場所に生息するために北海道ではもっとも産額の多いもの、また煮て食べる貝として代表的なものだ。
 市場での値段はキロあたり1400円前後。ときに2000以上の値段がつくこともあり安定した商材だろう。関東の市場でも人気があるようで築地や八王子でも見ない日はないくらい。これをほとんどの飲食店で煮てしまう。もしくは酒蒸しまで含めると使い方は基本的に「煮る貝」である。
 このエゾバイの煮たものはすこぶるつきにうまい。身はあまり硬くならない、これが甘く、またワタの味の濃さ、嫌みのない旨味も特筆すべきところ。フレンチのシェフでこのジュ(煮出したエキス)をフュメ・ド・ポアソンや魚貝類のソースに加えているという人を知るが、試してみると味が一段と深くなる。
 家庭で貝を煮るのはとても簡単である。酒、砂糖(入れるかどうかは好み)、しょうゆ、水を合わせた鍋に水洗いしたエゾバイを入れて火をつけ、沸騰したら中火。軽く煮上げたら火を止めて煮汁につけておく。煮汁を濃くしないこと、みりんを使わないことがコツである。

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市場魚貝類図鑑のエゾバイへは
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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 最近、市場に一般客が多く見受けるようになってきた。これは八王子、船橋、千葉市、築地でも同様のこと。こんな市場で出くわすのが「お魚ウンチクオヤジ」である。これが半端な数ではなく棲息しているらしく、しかも話すウンチクがほとんど「がせネタ」である。
 そして今日のこと、平日だというのに妻とノンビリ市場を遊泳しているオヤジがホタルイカのボイルを見てポツリ。
「ホタルイカは富山県だけでとれるんだぞ、今が旬だな。確か滑川だったかな、夜、観光船も出てさ、漁で光っているのを見物もできる。これ650円は安いな」
 妻に言っているんだろうに声がデカイ。ボイルホタルイカは3つ繋がりのプラステックトレイにのっている。このオヤジ(60過ぎかな)、いきなり1連だけ取ろうとして、とれないで苦労している。「なんとかしてやれよ」、と知り合いの寿司屋の若だんなに声をかけると、彼根は親切だから「あのう、これはとれないんですけどね」。
 これを聞いてオヤジ、むっときて
「ひとつしかいらないの。じゃあどうするんだ」
 この言い方が横柄なのだ。どうもこのオヤジ、ちょっと前まで企業の管理職なんかにあったんだろう。
 仲買のおばはん(実際に声をかけるときにはお姉さんと言わないととても危険なのだ)、
「あのね、ここは市場だから3つがひとつなの(これ意味不明だけど通じる)。これで650円なんですよ」
「じゃあ、これくれるかな」
 と言うオヤジに
「並んでくださいね。ここは“い・ち・ば”ですから」
 このおばはんの言い方に迫力を感じたのかオヤジが少しびびっている。横で聞いている妻、「夫はバカでしょう」と顔に出ているんだから賢いんだろうね。
 こんな光景が日常茶飯事に見られるのも市場の楽しいところかな?

 さて、こんな話をするつもりではなかった。大急ぎで閑話休題。
 ホタルイカは日本海、また太平洋側では本州、四国にも棲息している。相模湾、東京湾などでは定置網にもときどきまとまって入るので漁師さんたちの格好のおかずになっているようだ。ただ決して出荷するほどはとれない。市場で見かけるのは総て日本海産である。
 一昔前までは富山県が唯一の産地であったのが、今日では鳥取、兵庫などの方が量的には多いように見受ける。また新規参入の山陰、一昔前までは茹で方も形の点でも富山湾でとれるものの足元にも及ばなかった。それがどんどん茹で方や取り扱い方が改善してきている。
 入荷は早いと1月から。木の芽時まで続く。
 値段は富山県産がやはりいちばん高くて、山陰産は安い。ただし山陰産の方が富山県に先んじて入荷してくるので初物値段として高価な時期があるので、庶民は時期早めの購入は差し控えよう。

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これは千葉県富浦の定置網に入ったもの。茹でたのだが、この加減がむつかし〜い。

市場魚貝類図鑑のホタルイカのページへは
http://www.zukan-bouz.com/nanntai/tutuika/hotaruika.html
寿司図鑑へは!
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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