食べる貝・イカタコ学: 2009年8月アーカイブ

倉橋島の磯もの

0

isomonosan09.jpg

イワガキの間に、うれしい倉橋島の産物があった。
それをこれから紹介して行きたい。
まずはニシキウズガイの仲間たち。
磯玉、磯ものなどと言われるもので、磯遊びという主に春先に村総出で楽しむ行楽がある。
磯あけ、磯開きなどともいい。
例えばひな祭りなどの時期にお弁当持参で磯に繰り出して、様々な食べられるものを採取して遊ぶ。

この磯遊びでとれる巻貝の多くは、ニシキウズガイ類とカサガイの仲間なのだ。
今でも磯開きなどの行事がどこかに残っているはずで、ボクなど一度は経験したいと切に思っているのだ。
倉橋島から送られてきたものは、クボガイ、クマノコガイ、コシダカガンガラ。
これは典型的な磯玉のたぐい。

小さな巻貝なので、あまり売り物にもならなかった。
それが近年はかなり高価なものとなっているから驚きなのだ。
このような磯にある何気ない貝に、都会人は引かれるところがあるのだろう。
小さ貝を蓋つきの両手鍋でくつくつ煮ながら、なんだか楽しくなるのだ。

食べてみると、なによりも磯の香りと、ほんのりした甘み、そして微かな苦みがある。
どうにも小さいものなので、煩わしいばかりでもあるが、せっせと爪楊枝でほじくりだしては食らい。
なかなかやめようとしてやめられない。

isodama09.jpg

クボガイ、クマノコガイ、コシダカガンガラ、味に違いがあるようでないような。

過ごしやすい日曜日だったので、窓辺で蝉の声を聞きながら、酒のアテにさせてもらった。

作り方
1 貝をよく洗う。
2 鍋に貝、水と酒を入れて、弱火にかける。
3 くつくつ沸いてきたら、しょうゆを加える。
4 鍋止めして、少し置く。煮上がったばかりよりも味がしみる。

広島県倉橋島 日美丸へ
http://ww5.enjoy.ne.jp/~kogera0401/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、
クボガイへ
http://www.zukan-bouz.com/makigai/kofukusoku/nisikiuzugai/kubogai.html
コシダカガンガラへ
http://www.zukan-bouz.com/makigai/kofukusoku/nisikiuzugai/kosidakagangara.html
クマノコガイへ
http://www.zukan-bouz.com/makigai/kofukusoku/nisikiuzugai/kumanokogai.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

広島県倉橋島、日美丸さんからたっぷりのイワガキが届く。
思った以上に大きなもので、いちばん大きいのは卓球のラケットくらいある。
なかにはクボガイ、コシダカガンガラ、マツバガイ、オオヘビガイなど倉橋島磯の味覚もたっぷり。
うれしかったのは倉橋島の麦みそまでいただいたことだ。
日本全国のみそを食べてみたいと思っているので大感激。

慌ただしく撮影を済ませて、慌ただしく、倉橋島のイワガキにかぶりつく。

iwagaki09n.jpg

とにかく大きいもので、1個手づかみで食べたら、濃厚で、その割りに渋みの少ない味わいに圧倒される。
このところ東北、四国(徳島)などのものを連続して食べている。
みな少しずつ味わいが違っている。
ただ、その微妙な違いがうまく表現できない。
ただただ倉橋島のイワガキがうまいな! なんてありきたりな言語でもうしわけない気がしてくる。

生で食べた後に、直火に近い焼き方で、焼きガキを作る。
すぐに貝殻を押し上げて、汁が滴り落ちてきて、シューシュー焦げる音がしてくる。
焼き加減が難しいのだが、焼けるそばから食べて、また焼きたくなる。

iwagaki09nn.jpg

もったいないのでめったにできないのだけど、イワガキを焼くと、非常にうまい。
渋みも、濃厚すぎる味わいも消し飛んで、あっさりしている。
後から旨味がくるというか、もの足りないなと思って続けて食べてしまう。
イワガキを飽食するなら焼くのがいい。
焼いて腹一杯、イワガキを食い尽くすなど、贅沢の極みだ。

このような稀な経験をさせていただいて、日美丸さんには感謝。
珍味オオヘビガイなど倉橋島の味覚探訪が以後続くのである。

倉橋島 日美丸のサイトへ
http://ww5.enjoy.ne.jp/~kogera0401/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、イワガキへ
http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/pteriomorphia/kaki/iwakaki.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

iwagakisara09.jpg

徳島県徳島市津田町といえば、市街といってもいい場所柄なのだ。
市内中心部を流れ来る新町川と園瀬川の交わるところ。
こんなところに県内有数の漁港があるところが、徳島の素晴らしいところだろう。
ハモ、ワタリガニ(ガザミ)、エソ(マエソ)、ボウゼ(イボダイ)など徳島市には前海に豊かな魚貝類がたっぷりある。

iwagakihako09.jpg

さて、ここ津田漁港地先から1個1キロ以上のイワガキがやってきた。
重い、重い。
1個850円はたいした値段で行きつ戻りつ、考える、考える。
クマゴロウの『マルコウ』なので、「何やってるんだ。このオヤジは」と声がかかる。
「イワガキのこれって間違いじゃないよな」
「そうだよ。ハチゴ、読めないのか」
「サンゴ(350円)にならないかい」
「無言」

iwagakikuma09.jpg

いやいやながら買い求め、クマゴロウに剥かせて、中華『さくら』へ持ち込む。
大皿に盛りつけてもらったら、それはそれは見事だった。
イワガキのいちばんうまい時期は過ぎ去ってしまった、とはいえ、うまいな。

iwagakisakura09.jpg
よろこんで盛りつけをする、中華『さくら』のまささん。手前は関係ないけど相模原橋本の『多子作』さん

こんな光景を横から見ていた山梨県のトラック行商人太田さんも交えて、4人で試食。
食べた順からため息がもれる。
本当に名状しがたい味とはこれだよなーー。
津田地先のイワガキは心底うまい。
しかも長々と続く微かな渋み、旨味が殷々心地良いな。

「夏を感じる味だよな!」

イワガキの食べ方
1 貝殻をむく。
2 身を外して真水で貝殻や汚れをささーっと落す。
3 食べやすい大きさに切って、あとは食べるだけ。

味付けはなにもいらない。
イワガキにはちゃんと塩味がついている。
今回はレモンを添えてみた。
なぜかオレンジ色の国産レモン。中華『さくら』にあったものなのだ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、イワガキへ
http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/pteriomorphia/kaki/iwakaki.html
八王子市場案内へ
http://www.zukan-bouz.com/zkan/sagasu/toukyou/hatiouji/hatiouji.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/index.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

tubuwasabi09.jpg

アヤボラといっても誰も知らないだろう。
でも意外に食べている巻貝なんだよ。
最近都内のスーパーとか地方を旅していても、市場などでたびたび見かける。
表側は「つぶ」とある。
「つぶ」といったら普通、エゾバイという巻貝の仲間を思い浮かべるが、こっちはなにひとつ、縁もゆかりもない。

アヤボラの困ったところは丸のまま食べると「えぐい」。
コホンコホンとむせるほどにエグイ。
ところが足(所謂身の部分)は甘みがあって美味なのだ。
底引きなどで一緒にとれて、困ったものなのだが、ようするに食べ方さえ知っていればうまい巻貝なのだ。

吉祥寺の文化ストアーに魚屋があってそこで見つけたのがこれ。
魚屋さんで作ったのではなく、仕入れたものだと思うが、会社名がわからない。
味付けがほどよく甘く、アヤボラのうまさも生きており、なかなかよい製品だと思う。
その上、このような生鮮では売れない魚貝類をうまく利用して、このあたりも素晴らしいね。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、アヤボラへ
http://www.zukan-bouz.com/makigai/bansokurui/fujitugai/ayabora.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/index.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

satou09.jpg

最近「バチ玉」見ない。
築地にもあまり来ていないようだな。
探して歩いていると場内「濱長」に本場九十九里のバチ玉があるではないか?
少々小振りだが、値段がキロあたり1300円とはありがたい。
たぶん韓国産アカガイの半値だろう。

店員の福地のアネゴにお願いして買い求めてくる。
これは本日の酒のアテなのだ。

場違(バチ)なんて罰当たりな言い方が申し訳なくなるほど、夏のサトウガイがうまい。
そうだ、書き忘れているが、バチというのはアカガイに近い二枚貝、サトウガイのことだ。
旬は夏だと言われているが、実はよくわからない。
入荷が目立つのが夏であるだけのような、そんな気もする。

なぜ場違(バチ)と呼ばれるかというと、江戸前は東京湾内で揚がるアカガイに対して、サトウガイが江戸湾じゃなく、九十九里などの外洋に面した浜であがるためだ。
江戸前じゃない、というのとアカガイよりも味が落ちるがための呼び名らしいのだ。

ついでにサトウガイの「サトウ」が砂糖でも日本の名字・佐藤でもなく、イギリスの外交官アーネスト・サトウにちなむというのも、忘れるべきではない。
サトウは幕末の日本へイギリスの一外交官として赴任してきたのだが、その天才的な語学力と、時代を見極める頭脳によって、維新への扉を押し開けてくれた、日本の恩人だ。
詳しく知りたい方は朝日新聞の文庫版『遠い崖』を読むべし。

ボクは夏になるとアカガイじゃなく、サトウガイを好んで酒のアテとする。
なぜアカガイと比べて評価が低いのかというと、足(可食部)の赤味が弱いためとか、味が落ちるためなんて言われている。
でも、値段ほどには味は落ちない。
むしろ産卵後のアカガイよりうまいんじゃないだろうか?

ちょっと渋みをおびた甘みと、独特の貝らしい風味。
しこっとした歯触りも、とても心地よい。
千葉県大原の名酒、「木戸泉」をやや冷たくして、間の手にバチ玉。
これ、まさに佳肴。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、サトウガイへ
http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/pteriomorphia/funegai/satougai.html
刺身の作り方へ
http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/pteriomorphia/funegai/akagai01.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/index.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

arasuji09.jpg

関東の市場でもシロガイ(白貝)は見慣れたものとなっている。
ほとんどが北海道産で、ホッキガイ(ウバガイ)漁などで一緒に揚がるもの。
値段も安く、味もよく、まことに重宝な貝なのだけど、シロガイの本名を知る人は少ない。
しかも1種類ではないなんて、市場人でも興味のないことだろう。

さて、もっとも入荷の多いシロガイはサラガイ、次に多いのがアラスジサラガイ、そしてベニザラガイ。
サラガイは三角形に近く、見分けが簡単なのだが、アラスジサラガイとベニザラガイはともに楕円形で非常に似ていて、区別がつかない。
これを見つけるたびに、貝殻をむいては確かめ、外見から見分ける方法を探し出そうとしている。

まったくこんなことをやっているのは、ボクだけだろうな。
そして図鑑の改訂の必要性に迫られているのだけど今、サイトの改訂はできない状態になっている。
そこでブログで訂正予告をする。

arasuji0909.jpg

arasuji090909.jpg

画像を見てもらうと、表側ではほとんど違いがない。
裏返すと、赤いのがベニザラガイ、白いのがアラスジサラガイというのがわかる。
長い間、アラスジサラガイも内側が赤いものがいて、殻の表側の筋(成長脈)がより粗いのだ、と思っていた。
でもやはり、貝殻の筋の荒さではなく、内側の赤さで見るべきだと考えるようになったのだ。

ということで北海道苫小牧あたりでとれて、昨日入荷してきたシロガイはアラスジサラガイとベニザラガイということになる。
この2種類はサラガイよりも大型になる。
中身も大きいのですしネタなどにするときには、サラガイよりもよい。
味わいはそんなに違わないのだけれどね。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、サラガイへ
http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/heterodonta/nikkougai/saragai.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ベニザラガイへ
http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/heterodonta/nikkougai/benizaragai.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、アラスジサラガイへ
http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/heterodonta/nikkougai/arasujisaragai.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/index.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

月別 アーカイブ

このアーカイブについて

このページには、2009年8月以降に書かれたブログ記事のうち食べる貝・イカタコ学カテゴリに属しているものが含まれています。

前のアーカイブは食べる貝・イカタコ学: 2009年7月です。

次のアーカイブは食べる貝・イカタコ学: 2009年9月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。