食べる貝・イカタコ学: 2006年10月アーカイブ

 秋も深まって、そろそろ今年も終わりだな、なんて気の早い声も聞こえてくる。その10月下旬から年末までがいちばん忙しく慌ただしく、そして当然のごとく疲れが溜まりがちな時期でもある。
 この時期にまさに旬を向かえるのが柿と牡蠣。ボクはこれを嫌と言うほどに食らう。昨日の朝は八王子総合卸売協同組合「光陽」で牡蠣フライ定食。これが4つではもの足りない。「追加だ追加だ」となってしまう。

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 昼には柿5つ、子供の食べ残しのピザですませる。夕ご飯まで仕事をしながら柿3つ。

 夕には生牡蠣10個、ドジョウの丸鍋、滋賀県高島市朽木村の鯖なれずし、自家製アンチョビーのスパゲッティ、茹でたキタアカリ。いやあああ、この厚岸産の小振りの牡蠣がうまいのなんのって。「ドジョウ、牡蠣、この合間に鯖なれずし、ドジョウ、牡蠣」に宮城の浦霞で満足満足。

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丸煮にしたドジョウは明らかに中国産。見たところ2種類いるのを撮影しなければ

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ボクがもしも金持ちになるようなことがあったら(絶対にないのだ)毎日50シェルは食いたいと思う

 今日の朝には牡蠣の浅だき(ちなみにボクは関西系の言語使いなので煮ると「たく」は区別しない。したくない)、アサリのみそ汁に京芋の子と豚の三枚肉厚切りをたいたもの、マルハラフーズの「サンマたまり醤油干し」、ご飯二膳。、柿2個。
「ああ、それでもまだ柿を食べたい。昼には牡蠣の入った温かいうどんにするぞ」

 なんて思いながら仕事を脇にどけて物思いに耽っている。こんなときにはブルックナーの五番でも聴きたいものだし、金原亭馬生の「幾代餅」というのもいいのだ。

 さて、疲れがたまるとどうして牡蠣(マガキ)を食べたくなるのか栄養学的に述べると、「やはりタウリン」かなと思い至る。牡蠣には良質なアミノ酸が豊富に含まれる。なかでも目立つのがタウリンなのである。他にもタウリンの豊富な魚貝類はあるものの消化の良さ、また可食部での含有量を考えるとマガキに勝るものはない。
 そのタウリンの機能には「貧血予防」「肝臓の解毒作用の強化」「強心作用」「不整脈の改善」「血中コレステロールの減少」「インスリンの分泌促進」「視力の回復」などがあるという。【『エビの栄養・イカの味・貝の生態』(奥谷喬司、鈴木たね子 アボック社)、『おさかな栄養学』(鈴木たね子 成山堂書店)を参考にする】
 どうりで牡蠣が食べたくなるわけで昨日は生食用の殻がき、加熱用のカキとちょっと散財しすぎてしまった。その上知人隣人などからいただいた柿もなくなって、今日は近所の農協に買い出しに行かなくてはならない。
 我が家では秋のこの頃、とても貧窮する。この状況を家人は人知れず「柿牡蠣貧乏現象」と呼んでいるらしい。


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

 昨日のこと八王子綜合卸売センター「高野水産」の社長から声をかけられた、それで押っ取り刀で駆けつけるとそこにあったのが和歌山県からきたというイボアナゴ。大小入り乱れて発泡の中で蠢いている。種名を教えて食べ方や味わいを教えると「少し持っていきなよ」とうれしいことを言ってくれる。

 さて巻き貝であるミミガイ科にはアワビを始め美味なものが目白押しである。市場で見かけるミミガイ科をあげるとクロアワビ、エゾアワビ、メカイアワビ、マダカアワビ、トコブシ、フクトコブシ。また海外から輸入されてくるものの種類も非常に多い。そんななかにあってイボアナゴは関東の市場で見かけることは非常に希。
 そんなイボアナゴを以前、宮崎県の「浜乃茶屋」さんからたっぷり送っていただいたことがある。磯遊びなどでの獲物であるらしい。どうもこのようにイボアナゴは磯ものでも換金するものではなく「遊び」の対象とする地域が多いのかもしれない。

 さてさて最後にこのイボアナゴの味わいなのであるがすこぶるつきに美味なのである。身がふっくらして柔らかい、そして甘味があって。彼のトコブシに勝るとも劣らずだ。
 磯ものの宿命として乱獲の危惧がある。これなども適度に管理、末永く楽しめるようにして欲しいとも思う。

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我が家では最近、アワビ、トコブシなどを酒蒸しにするよりも煮貝にすることが多い。醤油との相性がとてもいいのだ。まず鍋に酒と同割の水、そして醤油適宜を合わせる。そこにほんの少しだけ砂糖を入れるのだ。この砂糖は味を付けるのではなく、貝からの甘味を引き出す役割を演じる。煮立たせないようにして10分前後、そのまま鍋どめして出来上がる

「浜乃茶屋」
http://www.cmp-lab.or.jp/~unagi/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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