アカハゼの産卵期は初夏から夏。ぎりぎり今が旬であるアカハゼを知る人は少なすぎる。これは誠に残念、残念だー!
ここから後は藤山寛美、ちょっと抜けてるのか賢いのかわからない「子ばか風」に読むこと。
と見事なアカハゼが大阪中央市場にあったとする。産地は和歌山県雑賀崎。これこれは希なこと。名うての板前がこれを見てると、そこにアホな丁稚どんが来て。
「なにしてますの」
「なにって魚見てるのやないか」
「あかん」
「あかんて、なんでや」
「ここは魚屋ですよ」
「知ってるよ。バカ(関西ではアホよりバカの方が言葉としてきつい)だな」
「バカ、バカとはなんですか、涙がぽろり」
「これこら泣いたらあかんて」
「バカはおっちゃんの方やで。ここは魚屋です。魚は水族館に行って見てくださいね。シ、シ」
「なにを言うてるのや、おいしそうなアカハゼがあったから買うて帰えろ、思てるのや」
「あきまへん」
「なんで」
「こんな不細工な魚は売れません。わての美意識がゆるせないの」
「ゆるせないのって、不細工でも食うたらうまいもんのあるやろ、アカハゼちゅうのはそう言うやっちゃで」
「だめ。ワテのようにですよ、器量よしで食べてうまい。魚島(大阪で旬の時期のマダイを贈答する風習)の鯛にしなはれ」
「なにゆうてるんや、鯛は1本1枚(一万円)、こっちゃ100円で3つ。名を捨てて実をとれ言うやっちゃ」
「だめ、ダメダメ、だめなのよ。そんな賢いことされたらうちの店つぶれるでしょう。そしてわてはおまんま食べられないの。涙がぽろり」
ここ数日の睡眠不足で頭はすっからかんに干上がっている。そうなるとついつい浮かんでくるのがバカバカしいことばかり。
閑話休題すぎますな。
さて、アカハゼは安くてうまい。どうして安いのかというとマハゼより身が柔らかく鮮度が落ちやすいのと、まさにその不細工な顔にある。だいたい無精ヒゲまで生やして汚らしい。でも食べてみたら楊貴妃が裸足で逃げるほどの傾城である。
だいたいただ塩焼きにしてウマイという魚は少ないのだが、アカハゼなどはほっぺたが落ちてもう元にはもどりまへん、と言うくらいにうまい。身がホクホクホックリしている。味わいが深い。これは煮ても同じ。とれとれピチピチなら刺身もいけまっせ! 大阪人の喜ぶ値安うして激うま、食べてみなはれ。
●今回のアカハゼは青森県陸奥湾のパラ・ペツさんから。これは素直に塩焼きでいただきました。卵もうまいのは今回大発見。ありがとうございました。
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