食べる魚類学: 2007年10月アーカイブ

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 煮つけは絶品であるけど、我が家では“なまり”にすることが多い。“なまり”はかつお節など「節製品」を作るときに下ろした魚を煮熟(しゃじゅく 茹でること)して表面の水分を乾かしたもの。かつお節工場などでは大量のカツオ類を茹でるのでここに旨味成分が溶け出し、そこでまた茹でることで「熟成」も加味されるけど、我が家のは単に茹でる工程でしかない。

 さて作り方は
1/マルソウダを三枚に卸す。皮はそのまま。
2/これをお湯(塩は入れない)で仲間で火を通す。
3/おかあげ(笊などにそのままとること)して、あら熱をとり、骨を抜き、冷蔵庫にラップをしないで一日か半日ほど寝かす。

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あら熱をとったら骨を抜く

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なまりの出来上がり

4/これをそぎ切りにして、塩コショウ。ピュアオリーブオイルで焼く。このときニンニク、鷹の爪などを好みで使ってもいい。我が家は子供中心なのでニンニクを香りづけ程度に。
5/焼き上がったら、パセリとエクストラバージンオイルをかけまわす。

 この料理はパンにも合う。当然子供たちにも人気があって市販のなまりを使っても作る。ただし市販のものは煮熟しているためか多少苦みがある。だから自家製の方が上である。

 このほかにもマヨネーズで和えたり、煮物にも使える。意外に冷凍すると悪くなるので、冷蔵保存して3,4日で食べるようにする。また天日乾燥してもいいのだけど、最近の気候のせいかなかなかいいものが出来ない。

 さて、この「なまりのオリーブオイル焼き」はワインに合うのですね。しかもシャブリがいい。変化球でリースリングもありだな。
 でも貧しいお父さんには麦焼酎が関の山ですな。

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 マルソウダガツオを生で食べるというのにはちょっと抵抗がある。これは伊豆半島で海釣りをしたおりに、まったく獲物がなく(これを釣り用語で「ぼうず」という、20年以上前につけたボクのペンネーム「ぼうずコンニャク」にはこんな意味もある)、帰途、網代の魚屋で買い求めたのがマルソウダだ。どうしてこんな雑魚的な魚を買ったのかというと昼過ぎの魚にあったのがマルソウダとマアジだけだった。これは防波堤釣りには格好の荒天が漁船の出漁を阻んだためだろう。ちなみにこんな好条件でねらったメジナがゼロというのはいかにボクがヘボであったかが、わかる人にはかわるだろうね。

 そのとき魚屋で言われたことが
「マルソウダは生で食べたら当たる。毒があるだからね」
 ということで若い身空で、その夜はマルソウダの煮つけと唐揚げ、近所のスーパーで買ったお総菜で酒を飲んだんだった。

 その後、伊豆半島ではなんどもマルソウダは「当たるよ」という話を聞いた。
 これをマルソウダがたっぷりとれる鹿児島の若潮君に聞くと、南さつま市笠沙ではマルソウダ自体をあまり食べない。また鹿児島では小さなマルソウダは生でも食べるが大きいものはやっぱり食べないのだという。

 じゃあ、マルソウダはまずいかというと晩秋から冬にかけてのものはビックリするほどうまい。ボクはヒスタミンに強いのか生で食べても当たったことがない。でも万人向きじゃないだろうな。
 神奈川県の雑魚を仕入れてきて、なかなか面白い店頭にしている「やまぎし」でやや小振りのマルソウダを見つけて俄然万人向きのうまい料理を作ってみることにする。それが「たたき」と「なまり節」である。

『やまぎし』で買ったのはまだ秋なのに脂がのっている。
 まずは美味なる「たたき」を作る。
 背の前の部分のウロコをすき引きし、三枚に卸したものから血合い部分を取り去る。ボクはこの血合いが当たる原因ではないかと不得要領に考えている。
 これを金ぐしに刺して強火で炙り、みりんと醤油(みりんより多め)、ニンニクで風味漬けしたタレをかけ回す。脇には名残の茗荷、生姜。
 マルソウダの身には本当に濃厚なまでの旨味がある。これを強火で思いっきり引き出したわけだからまずいわけがない。というか旨すぎるのである。

 マルソウダの旬は黄昏の10月から初冬まで。この官能的な美味をお試しくだされ。

●マルソウダを生で食べることに関しては自己責任で!

若潮君のお魚三昧生活
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 ボラの刺身をからすみの副産物というのも変だろうな? このところボラを見つけると、まずは真子が入っているかどうかが気になる。肝心の本体はそっちのけ。
 ある日、八王子綜合卸売協同組合『やまぎし』の混み魚のなかから大振りのボラを見つけて「どうしようかな?」と迷っていたら、お隣の「コリアンフーズかや」の成田山が「半分もらってあげるわよ」と言ってくれる。さてここは冒険だ! と下ろしてみたら小さいながら黄に微かなマゼンタの入り交じった卵巣が出てきた。
 そこで身の方は成田山に差し上げる。

 卵巣が出てきただけでボクなど舞い上がってしまった。ほったらかされた身の方は、よしさんが丁寧に三枚に卸す。そうだと思い、腹側の身を刺身にする。これを「コリアンフーズかや」に持ち込み、成田山特製の酢みそを回しかけて食べる。

 このなんだか赤い色合いの微かに辛みのある酢みそがうまい。
「本当はここにゴマ油とニンニクを足すんだけど、今日は突然だからね」
 成田山の夫であるお父ちゃんといっしょについつい一気に食べながら、
「こーれはマッコリルだしな」
 お父ちゃんが思わず漏らすのだ。
「そうだマッコリルだ」
 といきたいところだが、残念ながらクルマだし、午前9時過ぎだし。お父ちゃんとともに泣きました。

 この時期のボラはとにかくうまい。刺身だってほっぺた落ちるほどにうまい。でもこの韓国風の酢みそは、それ以上にいい。もちろんこの酢みそをいただく約束をして泣く泣く帰途に着く。

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 主に西日本の料理に「いり焼き」というのがある。これは関東の方に説明すると薄くても濃くてもいいのだけれど「すき焼きのしたじのような味つけの汁で魚を煮て食べる」というもの。
 すき焼きの下地は「酒、砂糖、醤油、水」、割合はお好みでとなる。我が家では「水4/砂糖1/酒1」をベースにして合わせ、鍋に入れて煮立たせてから水を足したり、酒、砂糖を足したりする。濃いめの下地を作っておき薄めるのが基本。
 例えば島根県、瀬戸内海などの「いり焼き」はかなり薄目で野菜も魚もどんどん放り込んで煮てしまう。対するに泉南(大阪)では、やや濃いめの下地で玉ねぎを先に放り込んだところにハモをそれこそ「ちりり」と軽く煮て食べる。今回の話題からはそれるが大阪では初夏に「鱧がとれると泉南玉ねぎがでる」ということわざがある。泉南地方はハモの産地でもあり、また玉ねぎの産地としても有名なのだ。10月末になってまだぼちぼち名残のハモがあがる。ハモのいり焼きはまだまだ楽しめそうだ。これがもの凄くうまい。また魚はハモ、アナゴ、マサバ、ゴマサバ、マグロ類、マイワシ、マダイなどいろんなものが利用できる。ときにアサリやホタテ、エビなどもいい。

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 さて今回は旬の小羽イワシを使い、やり方は大阪泉南方式でいく。そして下地は濃いめ。材料は基本的には玉ねぎと小羽イワシとする。これは我が家の朝ご飯に作ったもの。「いり焼き」はご飯にも合うのである。
 ときに酒の肴に楽しんでいても、子供が脇からどんどん箸を伸ばしてくる。まあ甘辛い味わいは老若男女すきなんだろうな。
 子供達の朝ご飯のおかずなのだからやや甘めの下地、煮立ったらまずは玉ねぎを入れる。そして玉ねぎの上にマイワシの身をのせていくのだ。のせたイワシは好みの煮え加減になったら銘々がとる。この小羽イワシが適度の脂がのっており、口の中にいれると適度にほどけてくる。このほろっとほどけるときに砂糖ではなく脂から来る甘味と、強いイワシの旨味が心地よいのだな。余韻が残る。
 ご飯にのせてふはふはと食べて、最後に玉ねぎでまたご飯をかき込む。大人には山椒を薬味としてお勧めする。

 さてこれがイワシ三題のその一である。

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小羽イワシ三題

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 小羽イワシを13本買った。八王子総合卸売センター『総市』で380円だった。ミノルちゃんが税金をオマケしてくれて、ちょっとえらいとほめてあげた。
 当日、我が家には他にもたっぷりの魚貝類がある。それでまずはイワシの処理を市場(『総市』)から始める。市場で頭を落とし、内臓を捨てる。
 これを持ち帰り、手開きにする。

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 そして刺身、唐揚げ、いり焼き用に下ごしらえ。

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 この料理三題を語っていく。

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 最近「塩鮭」を食べているだろうか? 多くの方が「食べている」もしくは「頻繁に食べている」と答えるだろう。でもそれは「塩鮭」であって「塩サケ」ではないというのをご存じだろうか?
 コンビニなどで材料に「塩鮭」と表示している。これは困ったもので、あえて言うと適切ではない。この表記では養殖ものか天然ものかもわからず、ましてや食べている魚の種類がわからない。
「塩鮭」といったら我が国古来よりの「白鮭」すなわち標準和名のサケと思いがちだ。ところがコンビニやお弁当の材料に標準和名のサケが使われていることはそんなに多くない。最近の傾向で言うとチリからの養殖ギンザケ、養殖サーモントラウト(もしくはトラウトサーモン。種としてはニジマス)が多く、ベニザケ、サケがそれに次ぐ。面白いのは個人営業の魚屋でもサケ離れが進んでいるのだ。
 知り合いの魚屋をつかまえて「店に置いている塩鮭を見せてくれ」と今春数名の店先を見て回った。すると総ての店舗にあったのはギンザケ、サーモントラウトであり、少ないながらベニザケとカラフトマス(三多摩地区と山梨は昔からカラフトマスを好む地域なのだ)があった。そしてそこにはサケはなかったのだ。これはサケ離れというよりも「脂嗜好」がますます進んでいるために違いない。

 我が家では養殖ものを日常に食べるのに少々躊躇するものがある。そこで市場で「時鮭(サケ 天然)」、「秋鮭(サケ 天然)」、「紅鮭(ベニザケ 天然)」を買っている。サケとベニザケの共通点は未だ養殖されていないということ。ただし「秋鮭」、「時鮭」は山漬けだが、ベニザケは塩水に漬けたものという違いがある。この違いがどうして生まれるのか不明である。ボクはどちらかというと塩水で立て塩にするよりも塩の中に埋め込んで熟成したものを好む。きっとベニザケにも塩漬けのものがあるんだろうけど、探す余裕がない。

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 さて今回買ったのはアラスカ州ブリストル湾で刺し網でとったもの。アラスカ産でも産卵回遊で集まったものを巻き網でとるもの。刺し網でとるもの。群の小さい時期に小型船で刺し網でとるものなど、丹念に調べると良し悪し、値段の高下がある。残念ながら我が家で買うものはメーカーで選んでいるだけ、しかも狭い八王子の市場で置いてある中での選択なので、きっともっといいベニザケの塩鮭があるんだろうね。ちなみに「時鮭」の値段はキロ当たり(頭つき1匹単位で買う)1300円前後、「秋鮭」(頭つき1匹単位で買う)が700円〜850円ほどである。
 ベニザケは半身売りでキロ当たり1300円、これが1.26キロだから1625円となる。ベニザケを選ぶかサケを選ぶかというのはそのときの冷凍庫の空く具合で決める。サケはなんといっても1匹単位なのでかさばるのだ。
 持ち帰ったら厚さ2センチほどに切り分ける。スーパーなどよりも厚めだろう。ベニザケの片身で端切れを出しても12〜13切れはとれる。だから1切れ150円くらいだろうか? このクラスだとスーパーではもっと薄目で1切れ250円くらいするから市場で買う方が品質的にも価格的にも得だ。

 ベニザケの味わいは脂はそこそこで、そこからくる甘味は薄く、むしろ魚本来の旨味成分が堪能できる。塩水仕立てなので熟成による複雑な旨味に欠けるが、我が家の子供などにはむしろ好評である。

 市場の活用法としても、また天然もの志向からもこの半身1本買いというのは賢いやり方ではないだろうか? これも市場愛好者ぼうずコンニャクの慎ましやかな提案である。

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エドノフーズ
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 築地場内長崎漁連直売所に「やいと(スマ」が並んでいた。さすがに長崎県漁連は地元魚をよく知っているな、と感心する。築地など関東の流通の場には少ないがスマはこれから飛びきり旨くなってくる。
 例えばカツオは秋口から晩秋までが下りの時期、この時期いちばん脂がのっている。それなら同じサバ科の魚にも脂がのっているのは当然のことだ。サバ科の魚にもいろいろあり、一般に和名の後に「かつお」のつくものがうまくなってくる。ヒラソウダ(がつお)、マルソウダ(がつお)、ハガツオ、そしてスマ(がつお)。そのスマが冷蔵ケースに並んでいる。そこから1本選んで持ち帰る。

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 話は変わるが、長崎県漁連直売所でこの時期お勧めなものは数々ある。数々あれど特にお勧めと言ったらオキアジ、スマ、ウスバハギだという。この長崎県漁連直営の店、ますます楽しくなってくる。お店の入江さんほか皆さん、気さくに対応していただけますので、お立ち寄り願いたい。

 閑話休題。
 やや小振りながら、このスマの刺身が絶品なのである。まだまだ脂ののりはイマイチ。やはり後1か月待ちたいところであるが、とても旨味に満ちている。「寒い時期のスマはカツオよりうまい」という人が多いのもうなずける。カツオと似て、カツオとまったく違う味わいなのだ。

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 このスマの刺身にのめり込んだのが我が家の姫、ほとんど一人で平らげてしまった。しかもいつもカツオをマヨネーズ醤油で食べるのに、スマは生醤油を選ぶ。
 我が家の姫も魚のわかる娘になったものだと、父ちゃん喜ぶのときであった。

長崎県漁連東京直売所
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑
スマ
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 ときどきウナギ屋で出てくるのが骨せんべいというもの。要するにウナギの骨を素揚げにしたもの。簡単至極な料理に思える。それでは簡単で手間いらずかといえば、これがなかなか面倒くさい料理なのだ。
 このウナギの骨せんべいの作り方をここで一席。

 まずは、ウナギ屋でウナギの骨をもらってくる。どこの市場にも一軒くらい淡水魚・ウナギを扱う店はあるもので、たぶん無料でくれるはず。

1/これを持ち帰ったら、よーく洗う。ウナギの骨には腎臓をはじめ苦みの素となる血液がいっぱいついている。血液を洗い流すのは水の中に漬けるのがいちばん手っ取り早い。

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最初は骨に腎臓、血液などもろもろの汚れがついている

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なんども水をかえていると、血液がの骨から抜けて白っぽくなる

2/なんども水をかえながらよく洗ってワタを取り去った骨を、新聞などに広げて水分をきる。そして料理ばさみで適当に切る。

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新聞などに広げて水分を切る

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これを適当に切る

3/冷蔵庫にラップをしないで半日ほども入れておくのだ。これで余分な水分が抜ける。後はやや低めの油でゆっくりと揚げる。

 この骨せんべい、うまいというよりも香ばしい。しかもなんだか、なんだか、アンニュイにつまんではポリポリ。面白いのはみな食べながら目があらぬ方向を向いてしまうようだ。どうやら物思いにふけるときウナギの骨せんべいというのは最適な食い物らしい。
 幸福な王子様もポリポリやりながらネコと人生を語らったりしたのだろうかねー?

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秋のサヨリ

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 市場でサヨリを買おうとすると、きっと誰かが「吉永サヨリちゃん」と言う。まあ年齢は50歳以上に限られるが吉永小百合の根強い人気を感じると共に、「小百合世代」ではないボクには着いていけない。ちなみに吉永小百合の全盛期は昭和30年代(1960年代)であり、しかも映画が主要だったはずだ。ボクがこのようなドラマや映画に興味をもったのは1970年前後からであり、絶対に「小百合世代」もしくは「小百合スト」ではない。
 そして今回は続けて「秋なのにサヨリちゃんかえ?」とくる。サヨリの旬は冬から晩春までと思いこんでいる人が多いのだ。まあボク自身もそうではある。でも魚貝類を調べている限り、年中旬にかかわらず魚は食べてみる。

 まあまあ、閑話休題。
 今回のサヨリは八王子総合卸売センター『ケン水産』で見つけたもの。産地不明だがとにかく魚体の美しさから、5、6本買い込んだ。買い込んだとき表面がざらつき、やや硬くしまっている感じを受けて、これは脂はないに違いないと確信する。サヨリに脂というのも変だが、適度な柔らかさには当然脂の存在が関わっている。脂がある方が柔らかい。もともと脂の少ないサヨリでも旬の春には微かに脂から来る柔らかさがあり、それは手に取ると感じられるものである。

 その脂のないサヨリを単に刺身にする。これがうまかったのだ。しかも小振りであり、脂もほとんど無いに等しいに関わらず。そのときサヨリのうまさはその微かな苦みと、上品ではあるが血合いからくる酸味にあるのではないかと思った。この血合いからは旨味すら感じられるのだ。

 ううううーん、吉永サヨリ恐るべし。

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秋のシロギス

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 シロギスの産卵期は初夏から秋である。でも相模湾での産卵は7〜8月が最盛期。当然、秋のキスは痩せている。痩せているけれど、不思議なことに秋のシロギスも刺身にしてなかなかいけるのだ。でもこのとき注意点が1つだけある。それは皮を生かした造り方にすることだ。

 今回のシロギスは相模湾産。鎌倉小坪→川崎北部→八王子綜合卸売協同組合『やまぎし』がもってきた入相に入っていたもの。体長20センチを超えて立派ではあるが触ってみるとザラザラする。これは脂がないということに他ならない。例えばこれが5月のシロギスなら体表がぬめ皮のようだ。

 持ち帰ったシロギスは三枚に卸して、血合い骨を抜く。これに軽く振り塩、焼き串を刺して皮目を焼き、冷水にとる。焼き霜造りの出来上がりだ。これが深夜の酒の肴になる。
 一切れ、二切れ、口に放り込むと、やはりシロギスの身に脂は少なく、そこから派生する甘味も薄い。それを補ってあまりあるのが皮の香ばしさと旨味である。スダチをたらした醤油との相性も抜群。空腹感のない深夜の酒の肴としてはうますぎる一品だ。
 酒は福井の『常山 超辛口冷やおろし』。やはりシロギスには辛口の酒が合うのだな、と改めて思うのだよ。

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 福岡など九州北部ではブリの若魚のことを「ヤズ」と呼ぶ。関西では「ハマチ」、関東では「いなだ」のブリの若魚である。が最近は「ヤズ」だったら九州ものだろうとわかる仲買も少なくなっていないだろうか? 最低限八王子ではその感を強くしている。
 産地表示や魚名のことで標準和名での流通が叫ばれているが、実を言うとボクは大反対である。標準和名は最低限でいい。例えば、アマダイと言うよりも「ぐじ」だろうし、別に千葉県産のケンサキイカが「赤いか」と呼ばれてもいいではないか。
 国産魚に関する限り地方名を大いに尊重して標準和名を排除すべし。そこに登場して頂きたいのがプロの方達なのだ。例えば、ボクが思うのは仲買というのは掛けかえのない職種だと思っている。この魚を選んで仕入れて、卸売りをする人たちに、この「ヤズ」を理解するようなプロが多いのだと思う。またその前段階にいる荷受けもかくあるべし。

 そんな玄人の世界があるからこそ、食文化が深くて、奥行きがあるのである。近年、この食文化の玄妙さ、奥深さの大切なことがわからぬ人が多すぎる。そんな唐変木が安易に豊海移転だなんて短絡的なことを言い始めるのだ。例えば築地には底知れぬ食文化の深淵がある。それを壊してはならない。それと同次元で魚貝類の地方名もなくしてはならないのである。

 まさかと思うけど京都で「ぐじ」がアマダイになったら最低だろう。また関東で「赤いか」がケンサキイカというのも変だ。例えば関西では「ぐれ」であってメジナであっていいはずがない。

 さてさてたくさんの「ヤズ」を前にしてブリの若魚の低価格を寂しいな、と思う。これは今時の大バカ野郎の必要以上のグルメ嗜好と、魚貝類のような自然界にあるものに、工業製品に求めるべき画一性を要求する唐変木が増えているからだ。「おい唐変木ども、もっと深みのわかる大人になりなー」。

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カツオの揚げたたき

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 我が家には子供が多く、日々困窮して暮らしている。と言うことで安い素材をうまく食べたいと言うのが、これまた日々の願望となっている。
 そしてカツオなのだが、今年、飛び抜けていいものは高いが、ほどほどのものは、とてもお安くなっている。と言うことは節約のために毎日でもうまいカツオを食べればいいと言えそうだ。でもここで我が家には大きな障壁が立ちはだかる。それは子供である。刺身だろうが、たたきだろうが、毎日となるとてんで食べようとしない。でもそんなときに考えたのが、コレ。

 普通、たたき、漬けは、強火で炙る、熱湯をかけ回すという方法はあるが、ともに加減醤油(酒や味醂で味付けた醤油)をかけ回しても、しっかり生臭みは残っているのだ。当然、高い魚を買うほど、そんなことは回避できるとしても我が家は子だくさんで貧乏所帯なのでとてもそんな贅沢は言っていられない。
 そこで焼くのも、熱湯をかけるのもダメなら揚げてみたのが、「ぼうずコンニャク流揚げたたき」である。油を高温にまで熱して、火傷しないよう気をつけてカツオの身を滑り込ませる。それで表面をカリっと揚げたなら、味醂と醤油、下ろしニンニク少々の冷やしたタレに漬け込む。これを冷蔵庫で半日寝かして食べる。

 子供ならずとも揚げた香ばしさには弱いものだ。そこにやや甘口のタレがきて、旨味と脂がたっぷりのった秋のカツオ。カツオの4分の1である腹身があっという間になくなってしまう。これがまたビールのアテにいいのである。

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今回は皮を引いてしまった腹身であるが「揚げたたき」だったら皮つきのほうがいい

 今年の秋はカツオとサンマがたまらなく旨く感じる。これはボクだけの思い込みだろうか? 食っても食っても、また食いたくなる。そして共に安いのだからうれしい。
 考えてみるとサンマにしてもカツオにしても複雑な料理法は無用。単純で明解に料理して美味。
 さてカツオの料理法を書いてきたら明日はサンマが食べたくなった。この秋はカツオの次の日にはサンマと日替わりでいこうかな。明日のサンマは『市場寿司 たか』で「豪海投げ込みサンマブツブツ丼」に決めたのだ。

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 八王子綜合卸売協同組合『マル幸水産』のクマゴロウが、老眼ながらもなにかをせっせと切ってパック詰めしている。
「クマゴロウ、何切っているの?」
「びんちょうの腹も。見りゃわかるだろ」
 この言い方が気にくわない。いかにも忙しいから「あっちへ行け」とでも言わんばかりだ。こういう態度は嫌いだな。ちょっと嫌がらせに「一本売ってくれよ」と攻撃する。市場では、このパック詰めの慌ただしいとき邪魔されるのがいちばん困るのだ。しかも切り身にして儲けようと企てているのに、煩わしいだろうな? と思っていると、案の定。
「だーめ、欲しかったら一袋買えよ。5キロ入りだけどな。ハハハ」
「そう言う意地悪を言うからクマゴロウは嫌われるんだろ」
 さんざん粘ったら、一本よこした。これ「税金負けろ」といったらぴったり200円なり。

 話は大幅にそれるが、スズキ目サバ亜目サバ科マグロ属というのは市場では花形なのだ。特にクロマグロなんて、昔でいうところの美空ひばり(ボクは大嫌い)とか今で言うとSMAP(未だにこのグループが認識できない)のごとくだろうか? またまた古い表現ではあるがその他にもドル箱スターは数知れず。そのマグロ類が標準和名で呼ばれることが皆無だというのもテレビスターと似ていないだろうか? 例えばクロマグロは「本鮪(ほんま)」、メバチマグロは「ばち」、ミナミマグロは「いんど」、コシナガマグロは「ばけ」、ビンナガマグロが「びんちょう」。唯一、キハダマグロだけが「きはだ」で例外である。

 閑話休題。
 この200円の腹もは回転寿司などで「ビントロ」と呼ばれる、キハダマグロのいちばん脂ののった時期の副産物。ひとつで200グラム以上あり、煮ても焼いてもうまい。だから市場で見つけるとつい買ってしまうのだ。
 市場から持ち帰ると、とにかく塩コショウしてムニエルとオリーブオイル焼きにする。日々慌ただしく、面倒な料理を作るわけにはいかないので、とにかく簡単に。

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ムニエル

 ムニエルは粉をつけて高温で素早く表面を焦がす。こうすると表面はカリっと中は脂がのっているので柔らかい。思わず昼間からビールが欲しくなる。そして仕事から帰り、深夜に焼いたオリーブオイルでマリネー、これも予想外に美味。オーブンレンジのグリルで焼き上げて、海老名の海老さんにもらった柚を振りかけて食べたら初めての味わいで新鮮だった。

 八王子綜合卸売協同組合『マル幸水産』では「びんちょうの腹も」をかなり仕入れているのではないか? とすると今日もクマゴロウが老眼の目でせっせと切り身にしている可能性大。今日は3本くらいせしめてやるのだ。
●八王子綜合卸売協同組合『マル幸水産』は“わかる人”にはすごい店である。しかも一般客にも優しい。

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