食べる魚類学: 2007年11月アーカイブ

銚子から来たサンマ

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 所謂プロと言われる人たちにがよく「銚子に来たらサンマも終わりだな」と言う。これは今年もサンマを食べ飽きたという意味合いが強く、決して脂が抜け落ちてまずいと言う意味ではないらしい。それが証拠に寿司職人を集めて聞いてみても「まだうまいのはわかってるんだけどな」と入荷したサンマに手を出さないのだ。これはボクと寿司ネタのことを極めてみようとがんばっている渡辺隆之さん(『市場寿司 たか』)もしかり。昔の東京での寿司の世界を教わっている、『鮨忠』さんたちも変わらない。

 そんなことにお構いなく、ほとんど三日に上げずサンマを食べ続けている。そしてとうとう、銚子まできてもやはり「うまいものはうまい」としかいいようがない。例えば最盛期の9月、10月よりも脂が抜けているといえば、そうかも知れない。でもまだまだ十二分に脂の甘さが堪能できる。ましてや三枚に卸した身をなぞるとやっぱり脂でザラリとする。

 そして11月最後の日のサンマだが、やはりうまい。
 うまいのに感激して『市場寿司 たか』に駆け込み「サンマ明日食べたいな」とお願いしても「もう飽きちゃったから嫌だね」とつれない。
 結局、あと残すところ僅かだろうけど、飽きることなく自分でサンマの刺身を作り、塩して焼くしかない。

 今年のサンマ漁の終わりは何時なんだろう?

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ゴマサバの柚しめ

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 そろそろゴマサバのうまい季節となってきて、いままで脇役で甘んじてきた役者が主役となる。これなど歌舞伎の中村仲蔵もかくのごとしではないだろうか。真冬のゴマサバは風格がある。
 さて別の表現をすると「化けた」という。それまで平凡で一段下にみられていたものが、ぐんと飛躍する。そんな飛躍の前兆を感じさせられたのが24日に買い求めた三重県産のゴマサバだ。

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 八王子綜合卸売協同組合『総市』、小振りで2本250円なり。これを仲卸のまな板で下ろして、一塩、紙にくるんで持ち帰る。
 三枚に卸しながら、身を指でなぞると少ないながら脂があって、指先がざらっとひっかかる。

 塩はそんなに強く振っているわけではない。おおよそ3時間も寝かせて、水洗い。水切り、ペーパータオルでよく水気を拭き取る。
 その間に海老名の海老さんにいただいた柚をたっぷり搾る。完熟して明るい黄がまばゆいばかり。果汁には香りよりも、酸っぱい中に旨味が加わってきている。
 柚の果汁に何も加えることなく、ゴマサバを入れる。柚は醸造酢と比べると酸度が低いように思える。だから食べるまで、漬け込む。食べるたびに柚酢の中から取り出すという次第だ。

 夕方まで約6時間漬け込んだものを、しめ鯖同様、血合い骨を抜き、薄皮を取り去り、へぎ造りに。これを皿に盛り、また食べる直前に柚をたっぷり振るのだ。

 柚は完熟してきており、香りは控えめとなり、むしろ果汁自体に旨味と微かだが甘味が加わってきている。この果汁のなかで軽くゴマサバの身を洗うようにして食べる。ワサビはほんの少しだけ。しょうゆはちょっと浸すだけでいい。
 この柚の香の爽やかななかにゴマサバの旨さも、そして脂からくる甘味も一緒くたになって口中を満たしてくれる。これは文字には書けない味わいで、キーを打ちながらもどかしい思いになる。
 とにかく、そこにあるのはゴマサバの味でも、柚の香りでもない。季節そのものだ。

 毎週のように柚を持ってきてくださる海老名の海老さんに感謝。

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 一色の堀さんから大きなスズハモが送られてきた。カライワシを見つけていた堀さんに、その個体をいただきたいとお願いしたら、「海老で鯛を釣る」の例えじゃないけど「カライワシに鱧が付いてきた」といううれしい顛末となった。

 このハモは鮮度的にも素晴らしいもの。まだ死後硬直の最中にあり、身が硬い。ハモの旬は産卵期と重なり、6、7、8月の夏。もうそろそろ冬の足音が聞こえてくる頃となって、味の方はいかがなものかと興味津々でもある。

 1キロを遙かに超えた立派なハモであり、我が家でいちばん大きな70センチのまな板を出す。これでも尾の方が出てしまう、そんな大鱧なのだ。ちなみに意外なことにハモは大きくても大味ということはない。
 これを腹から開いて骨切りをする。後はいかに料理するかであるが、子供達に人気があるのが、一に唐揚げ、二に塩焼きだ。今時、塩焼きに人気があるのは不思議に思えるかも知れないが、我が家ではウナギ目魚類の総てが塩焼きにして好評なのである。

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 そして底冷えのする夜なので「鱧ちり」。当然ながら卵巣は情けなくしぼみきり、赤。でも腸管が白く、肝や心臓もきれいだ。この内臓もうまいのできれいに掃除する。

 まず出来上がったのは唐揚げ、そして塩焼きは焼き台に乗っている。姫がときどき覗きに来るのは、皮目がきつね色に変わってきているのを観察しているらしい。
 そして「鱧ちり」用に骨切りした湯に落としては、氷水にとる。当然、内臓も忘れずに。

 唐揚げは、ハモ自体の旨味と言うよりも香ばしさが命。とにかく揚げたてを食卓に出す。ビール片手に唐揚げを楽しみながら、塩焼きの加減をみる。土鍋には昆布と湯通しし流水でよく洗った中骨。だしが出たら取りだして、酒塩。

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ハモの塩焼き

 ハモの塩焼きはなんといっても皮の旨さに尽きる。この皮は香ばしく焼いても旨味があり、時季はずれのハモだというのに脂がのって身が柔らかく、甘味がある。塩焼きがあまりに好評であったので、もう一枚追加して焼く。

 そして「鱧ちり」。これはじっくりと酒を片手に。だし汁にハモの身を入れると、フワリと脂の玉が浮いてくる。やはり、このハモは脂がのっているのだ。どうやら産卵後、冬を迎えるにあたってたっぷりと餌をくったようだ。ほどよく煮えたものを口に入れると、ホロリとほどける、甘味が広がる。

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 これはとても「贅沢な味」ではないだろうか? なんだか鍋をつつきながら豊かな気分に浸れる。

 そう言えば11月下旬のハモは初めてかも知れない。過去のデータを調べてみなければわからないが、この脂ののりに新鮮な驚きを感じる。

 うまいハモをお送りくださった掘淳さんに感謝。そしてこれから寒い時期となって一色漁港通いも大変であろうと思われる。くれぐれもお身体にご自愛を。

掘さんの「一色さかな村にようこそ」(愛知県幡豆郡一色町)
http://www.geocities.jp/gtsfp998/index.html
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名古屋で焼きふぐ

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「名古屋で」と書いても愛知県名古屋へ行ったわけではなく「ショウサイフグで」ということはわかるだろうな。今年はショウサイフグが大漁であるのか、毎日のように入荷をしてきている。
 これをまず「ふぐちり」にして、唐揚げにして、一夜干しにしてもいいし、毎日のように食べていたら、そろそろ飽きがきた。そんなときに作るのが「焼きふぐ」だ。
 ショウサイフグを買い求めてきて、みがいて(毒を除去)、紙などにくるみ余分な水分をのぞく。これを骨付きのままそぎ切り。
 漬け込みの地はミリン、醤油、柚。この時期、柚の香りがないと寂しい。いただいた海老名の海老さんにはまことに感謝。

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 これで半日くらいは寝かせる。これを卓上コンロ(飛騨焜炉 どうして「飛騨」なんだろう)で焼くのだ。炭は家庭では白炭がいいのだけど、今回は備長炭しかない。この備長炭を家庭で使うのは無理である。いこす(炭をおこす)ときにバンと爆発、破片を飛ばしたりする。早く今年も白炭を買わねばならぬ。

 これをあとは卓上で焼くだけ。卓上に熱源をおくと部屋中が温かくなる。これはエアコンで気温を上げたときの温かさとはまったく異質の、こころまで温めてくれる、“熱”である。

 焼き加減はお好みでいい。多少生でも刺身にしたっていいような鮮度だから大丈夫だし、焼きすぎて焦げてもまたうまい。フグの身は繊維質が強く、焼くとぎゅっと収縮してしまる。これを食べるに鶏肉に近い食感となる。そう言えば、漬け込んだ柚の香りも口中で立つ。

 まだ11月だというのに、冬型の気圧配置、寒気が日本列島を覆い、気温は新年明けの厳寒期に近いのだという。この厳しい寒さがありがたくなる「焼きふぐ」の味わいなのである。

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 霞ヶ浦市民協会の萩原さんから「土浦の小松屋という佃煮屋でアメリカナマズのお弁当を売っている」という情報をいただいて、せっかくだから予約をいれる。
 今、霞ヶ浦でいちばんやっかいな外来魚がアメリカナマズであるけど、これを根絶するには食べるのがいちばんなのである。その実際に食用としている現物を手に入れて、これまた実際に食べてみたいと思ったわけだ。
 店の方から「売り切れなんですけど2つくらいならできます」という返事があり、これは人気があるんだなというのが想像できる。

 今回の旅の相棒、うなたろう君と土浦の街に入ったとき、そのあまりに味気ない無味乾燥な駅前に落胆した。その「駅前イトーヨカドーの前にあります」というので、このデカイだけで、つまらないビルをぐるりと回る。そういえばビルの反対側で迷った末に、小松屋の場所を聞いたガードマンのオヤジさんの頭から柳屋のポマードの香りがぷーんと匂った。それが唯一の人間的香り、人の幾年を感じられる有機的なものであった。それほどにこのイトーヨカドーのビルは大きい、そして高い。

 小松屋はこの大バカビルから道路を挟んだ前にあった。なんだか街並みにとってつけたような、店舗設計としては程度の悪い作りのもの(仮店舗かもしれない)。このへたくそさ加減が凄いと言えば凄い。なかを見て回り、佃煮などを味見。店の一角に調理場らしきものを見つける。

 この店の佃煮というのが味はいいのだけど、すでに袋詰めされたもので味気ない。少しぐらい量り売りの情緒を残してほしいな。結局、他にはなにも買わないで、うなたろう君と一つずつ買ったのが「ずどん」である。「どん」は丼風な弁当の意味ですぐにわかるだろうけど、「ず」は今時のひとにわかってもらえるのだろうか? ナマズの「ず」を市場などの符丁としていたのを使ったもので、たぶん霞ヶ浦の魚問屋でもさかんに使われていたのではないだろうか? このようなある意味粋な言葉を弁当の名に使っているのが憎いね!

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 これを帰宅後、電子レンジで少し温めて食べてみる。驚いたのはアメリカナマズの天ぷらにかかっていたのが甘酢醤油のつゆだったこと。当然、当たり前だがアメリカナマズの天ぷらはクセがなくほっくりしていてうまい。その上、もっとうまいのがレンコンである。これが餅っとしていて少し酸っぱい味わいととても合う。その上、ご飯がまたうまい。

 アメリカナマズは霞ヶ浦の張り網で上がったものよりもクセが感じられず、臭いも皆無である。どうやらこれは養殖もので一定期間清水でおかれたものではないだろうか? その昔、アメリカナマズは養殖されるために霞ヶ浦に持ち込まれたのだ。今でも細々と養殖は続いているらしいとは聞いているが、これも近々確かめなくてはならない。

 さて、思わぬ拾いものというか、無機質な鉛色のやるせない場所で、やっと温もりのあるものに出合った気がする「ずどん」であった。ここで私的なリクエストがあって、アメリカナマズのカツ弁当というのをどなたか作っていただけないだろうか? 「ずどん」はとてもうまい。でもまだまだオヤジ年齢で仕事上も現役のボクの場合、やや料理としての雅さが鼻につく。ちょっと完成度が高すぎるのだ。これでは心に「ずどん」とこない。むしろ単純極まりない「カツ弁当」なんて一発でノックアウトされそうなんだけどな。

小松屋 土浦市大和町5の3 029・821・0373
霞ヶ浦市民協会
http://www.kasumigaura.com/
第3回全国タナゴサミットータナゴを通して地域の希少生物との共存を考える
http://www.kasumigaura.com/calendar/webcal.cgi?form=2&year=2007&mon=12
うなたろうの部屋
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 天ぷらネタ(種)を教えないまま食べてもらって、「あれ?」という顔つきになる。「まん天」を作ると、この怪訝そうな食べ手の反応が楽しい。

 さて材料は真っ白な塊。これを手でほぐし、ペーパータオルなどに少し置いて余分な水分を除く。

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マンボウの身には包丁は無用。総て手で割く

 この水分の抜き方は好みで変えて欲しい。水分を抜けば抜くほどからりと揚がるし、揚げた後、時間が経ってもべちゃっとしない。でもその分、怪しさがなくなる。
 これに塩コショウして、天ぷら粉をまぶし、衣をつけて、やや高温で短時間に揚げる。今回は天ぷらだけどフリッターにしてもいい。

 さて、これを食卓に置くと、外見からは材料がわからず。そして食べると、うまいんだけど、「なんだろうな」と考え込むはずだ。
「イカだ」「タコだ」「新製品の蒲鉾だ」なんて騒いでくれると、作り手としては思うつぼ。

 まあじらしても仕方がないので材料を発表すると、最近入荷が増えているマンボウの身なのである。
 マンボウは真っ白な身と腸と肝がセットになって入荷してくる。身はあきらかに手で割いて、肝と和えて食べるというのが漁師流、本来のやり方。でも港で食べるならいいかも知れないが陸送の途中で鮮度はかなり落ちている。残念ながら水分の多いマンボウの宿命ですな。
 それとここでちょっと、うち明け話をすると、マンボウの身はいつも少しだけ売れ残る。これは肝と一対でしか買わないという人が多いためだ。だから仲買で残り物を買うと「あんた偉いね」なんて勝手に値引きしてくれたりする。これがしめたものなのだ。

 市場でマンボウを見つけると、まずは腸が欲しい。これを焼き鳥風に焼くのを「まん腸焼き」と呼び、次に欲しいのが身であって、これを天ぷらにして「まん天」と呼ぶ。

 この「まん天」の味わいはイカにしては軟らかい、旨味も強い。とするとエビかなというと違う。とにかく軟らかくて、食感が不思議なもので、甘味がある。高温で揚げて、衣も香ばしいのでついつい箸が延びる。

 残念ながら家族がいると天ぷらでゆるり、一杯ともいきかねる。まあほんの一本だけ分けてもらって、子供達が喜ぶのを見る。まあこの五月蠅い食卓も酒の肴かもしれないなー。

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 最近大きなメバチマグロを毎日のように仕入れてきているのが『マル幸』のクマゴロウ。このメバチマグロの身がうまいのは当然として、中落ちのかきだし、腹際の身なども濃厚な旨味があってすこぶるつきにうまい。
 クマゴロウが独特の柳刃下ろし(なんと柳刃一本でデカイマグロを下ろす)を見ていたらひっぺがした背鰭を「やるよ」とくれる。この背鰭下の身がかき出すのは大変だけど、きめ細かな赤身でいい味なのだ。

 これをかきだし、叩いて、甘い東京沢庵と和える。なんで東京沢庵かというと家人が好きで買い置いているからだ。まずは大量に刻んだ沢庵を赤身と混ぜ合わせながら醤油で味つけ。皿に盛り、そこにまた沢庵を天盛りにする。
 ここに生姜の絞り汁を振ってもいいのだけど、以外に沢庵は臭い消しになる。生姜はむしろ邪魔者かも知れない。日本料理の世界に“出合いのもの”という表現があって、相性のいいもの同士をいうのだけど。このマグロと沢庵などまさに出合いのものだ。

 これが我が家の定番料理となった「まぐたく」である。
 教えてくれたのが『市場寿司 たか』の渡辺隆之さんで「すし屋(住宅街に店を持っていた)をやってたときに“つまみ”に出してたんだよ」と語る。
 と言うことで酒とも出合いのものだ。

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「いやあー、うまいねー。アメリカナマズのフィッシュアンドチップス」その旨さに思わずこんな言葉が口をついて出る。
 フィッシュアンドチップスは確かイギリスの料理だったはず。たぶんたぶん北大西洋だから材料はタラだろう。それがアメリカ大陸に渡り、いつの間にやらミシシッピー川などでたくさん、それこそゴチャマンととれるナマズで作られるようになった。

 このアメリカのナマズというのが「Channel catfish」。水路などに多い猫に似た魚が霞ヶ浦、利根川に輸入、そして養殖されるようになったのは1980年代。これが霞ヶ浦に逃げ出して、それこそ爆発的に増えている。
 本来霞ヶ浦の漁業というのは寒い時期にはワカサギ、夏から秋はウナギ、その他の季節はモツゴなど雑魚とエビが対象であった。すなわちとれるもんは全部売れたわけだ。
 それがどうだろう、21世紀の霞ヶ浦たるや世界中から到来した売れない魚で溢れている。特に困っているのがアメリカナマズなのである。コイツ、うじゃうじゃ増えて肉食性なので困りものだが、鋭い棘で武装までしている。網に入るといちいちペンチで棘を切り取るのだけど、そんなもんじゃ追いつかない。

 困った困ったと頭を抱えているばかりじゃ解決しそうにない。なにかコイツを売る方法はないのかね。今のところほとんどがフィッシュミールになって肥料になるものがほとんど。
「困りましたね」
 霞ヶ浦の漁師さんに声をかけると、
「こりゃとても味がいいんだ。最近じゃナマズのフライを出す食堂もあるっぺー」
 そうか、やっと人々にアメリカナマズがいかにうまい魚であるか膾炙してきているようだ。
 それでも今現在、霞ヶ浦、利根川であがったアメリカナマズのほとんどはフィッシュミール原料となっている。これは私、ぼうずコンニャクが勝手に『もっと食べようアメリカナマズの会』でも作って多くの人に、このうまさを宣伝するしかない。

 さて目の前にあるのは2キロほどのアメリカナマズの半身である。骨のある部分を切り捨てて適当に切る。これにコーンスターチをからめてジャガイモのchipsと一緒に揚げる。chipsは薄切りという意味もあるが木っ端という意味もあり、ボクは好みからジャガイモは適当に切りとばしている。

 これを揚げる油の温度は始め弱く、徐々に高くしていく。出来うる限りカラリと揚げるのがいい。揚げたら紙などに取り、また紙を代えて塩コショウする。
 揚げたてを食べるのがいい。当然、片手に持つのはビール。

 さてアメリカナマズは他のどんな白身よりもフライや唐揚げにしたとき上だと重う。ベトナムから輸入しているバサなどもナマズであり、アメリカ人ならずともこの白身の旨さにはうなるはずだ。
 この最上の揚げ物材料がどうしてほとんど廃棄処分となるのだろうね。まったく日本というのは不思議な国だなーー。
●本内容にはフィクションが含まれる

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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、アメリカナマズ
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 イシガレイは刺身にして最上級の魚である。ただし活け、もしくは活け締めにしたものは。野締め(漁獲時に死んだもの)はどうにも食感が悪く皮目の臭みが移り、あんまり上等とは言いかねる。
 でも野締めのよいところは値段が非常に安いと言うこと。キロ当たり1000円以下というのは魅力的だろう。
 肉厚の500グラム以上のを見つけて、その上、鮮度がよかったら間違いなく買い求める。
 持ち帰ったら、すぐに体表の石(実はウロコ)を包丁ですき取り、5枚に下ろす。この時期真子を持っているので煮つけてもいいのだけど、家族の要望でムニエルを作る。

 このイシガレイのムニエルはなんど作っても絶品である。白身で繊維質の身は適度に硬く、噛みしめると旨味を感じさせて適度の早さでほぐれる。そこにバターの風味が来ると言うことなしの幸福な気持ちになれる。

 産卵期を迎えてイシガレイの入荷も多くなってくるに違いない。これを楽しまぬ手はないと主夫は思う。

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 メバチマグロのかき落としや尾の部分を『源七』の若だんなにいただく。
 ここからスプーンで身をかき出して、ネギトロに。後に残った筋を玉ねぎと甘辛く煮つける。

 マグロ類の筋ほど煮て旨いものはない。これだけで鍋を仕立ててもうまい。
 でも朝ご飯のおかずだからまずは定番の煮つけと決まったわけだ。
 作り方はいたって簡単。醤油、酒、砂糖に水を加えて味を加減。火をつけて一煮立ちさせたら、ここにマグロの筋や粗、玉ねぎを放り込む。このとき骨を絶対に総て取り去ることだ。間違って混ぜ込むと、マグロの骨は硬いので大変なことになる。

 火加減は終始強火で。煮汁をからめからめてマグロ、玉ねぎに吸収させる。この煮汁には玉ねぎの甘味とマグロの脂、旨味が混沌と混ざり合っているので、うまーい煮つけが出来上がる。
 これを片口に小山の如く盛り、煎りごまを振り出来上がりだ。

 これでご飯を食うと、きっと三杯飯となるに違いない。なにしろこの甘辛い、やや甘目がちな味わいはご飯の甘味と相乗効果でより甘い。その甘さがいやな甘さじゃないんだよな。なんというのだろう「嫌みのない甘味」、そして適度な醤油辛さ。
 夕べに作ったら当然酒もすすむ。こんな惣菜めいた料理が家庭を明るくするに違いない。

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 ホウボウが大好きでネタケースに毎日入れているのが『市場寿司 たか』の渡辺隆之さん。
 実はホウボウを寿司ネタにする店は少なく、ボクはこれが不思議でならない。たかさんならずともホウボウほど味のいい魚も少ないはずである。

 このホウボウは寒くなるに従いうまくなり、春に産卵すると途端に味が落ちる。だからボクは肌寒さを感じるとホウボウを買う。それを『市場寿司 たか』で味わってみるのだ。

 今回のホウボウは千葉県竹岡産。『マル幸』のクマゴロウがもってきた入会(いろんな魚がまぜこぜに入っている)に混ざっていた鮮度のいいもの。

 たかさんネタ用のホウボウが仕込み終わったところにもう一匹で嫌な顔をするが、「ええい我慢せんかい」と一喝して刺身にしてもらった。
 当然、泣き袋(浮き袋)も湯通しして脇に。
 これが10月よりも脂がのり、甘味が増している。ましてや浮き袋の筋肉のとろっとした脂はもっと甘い。

「これが夜だったらよかったのにね」
 たかさんが悲しそうに呟く。
 時計は10時を回ったばかり、
「さー、あと半本(2升)仕込まなくちゃ」
 ボクも仕事に向かうべく、市場を後にするのだった。

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 朝方目覚めたのは6時前。大急ぎで木更津のきんのり丸さんから送られてきた新のりをあぶる。「秋の一番摘み」10枚に、「青混のり」10枚。2年ぶりくらいののり焼きで自身がない。
 姫を起こして外に出るとひどい雨だ。
 八王子総合卸売センター『市場寿司 たか』には7時過ぎに到着。店内は雨のせいかお客がいない。jasminさんと海老名の海老さんが到着していて、ネオテニーさんはまだ来ていない。ここで「とろたく」「ワサビ巻き」で新のりを味わう。

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 巻物を口に入れると、のり自体の味わいがはっきりわかる。甘味があり、口の中に旨味が余韻として残る。ボクはこの巻物2本で勢いがつき新のりを敷き詰めた「豪海ぶつぶつ丼」。これもうまかったー。
 jasminさん達は旬のホウボウなどを加えて、「のり巻き2本+おまかせ握り」。おいしかったかな? 相変わらず姫はイクラと卵焼き。食べ終わったころにネオテニーさんが到着。

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 その後に続けとどっとお客がなだれ込んできた。

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 一足先に「土谷食品」で待っていたjasminさんたちと合流して八王子綜合卸売協同組合に回る。

 こちらはそろそろ混雑が始まっている。

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 土曜日には『ユニオンフーズ』に可愛らしい小学生の売り子さんが立つ。この子がいるだけでコロッケの売れ行きがいいのではないかな?

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クマゴロウ、イシガレイを切る

『マル幸』の竹岡(千葉県)の入相からjasminさんにイシガレイをすすめる。野締めのイシガレイは刺身とはいかないがムニエル、フライにして美味。老眼のクマゴロウにワタと石、頭を落としてもらう。
 ここで何を思ったかネオテニーさんがおっちょこちょいに超高値のマサバを買ってしまう。そりゃいいマサバかも知れないが、いきなり初手からそんなものに手を出したらあかんだろう。他にはズワイガニのメス。

『三恵包装』で姫がお菓子。『十一屋ジャパン』で季節の漬物。皆さんしきりに真子入りのボラを探すが見つからない。今年のボラの卵巣は非常に高値で品薄であるようだ。

 八王子総合卸売センター『高野水産』が8時過ぎには帰ってきた。あいかわらず圧倒的な量、そして安さでお客が店頭に膨れあがる。ここでjasminさんがホウボウ、ネオテニーさんは何を買ったやら。三人とも早々と支払の列に加わる。

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けだし『高野水産』は凄まじい。この安値、量、どこにも負けないだろうな!

『カワベ』に回るととてもうまそうな牛コマがある。コマちゃんはすすめてくれるが、明日は霞ヶ浦への旅。『大商ミート』で肩ロースも買い込んだことだし今回は止めようとしたら姫が勝手に「お肉買う」といってきかない。それで牛ロース薄切り300グラム、オマケしてもらって900円。コマちゃんいつもすまないねー。

 9時半過ぎになって4人をさそって八王子魚市場にまわる。jasminさんはここで北海道増毛「遠藤水産」の生ニシン。
 そのまま『源七』を冷やかしていたら、姫が勝手にこんどはマグロのカマを買い込む。ボクは『源七』ではお金を遣わない主義なので「ただでくれよ」とお願いするがダメ。結局姫がお小遣いで買う。

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若だんなの作る「あんきも蒸し」は作るとあっという間になくなる。隠れた八王子名物なのだ

 若だんなは遅い時間にも関わらず、ちょうどこれから「あんきも」を蒸しにかかるところ。これをネオテニーさんが一本予約。10時前には皆さんとお別れする。

 午前中は野菜などの買い物。お昼はいい加減に出来るだけダラダラと仮眠をとる。なにしろ明日早朝から茨城霞ヶ浦を目差すのだ。

 夕食はきんのり丸さんの新のりでおむすび。

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 マグロかまから掻き落としたものをニンニク生姜でたたき、塊の部分は刺身にする。このカマの脂の強いところがうまい。他には牛ロースの塩コショウ焼き、セロリなどのステック、具だくさんのみそ汁。

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これが500円なりで姫が買い込んだマグロかまの一部。うまかったかって、当然。なにしろ上物のメバチマグロですかなね。

 午後9時過ぎとなって、そろそろ明日の支度にかからなければ!

木更津 きんのり丸さんの新のりに関しては
http://kinnori.cart.fc2.com/
市場寿司 たか
http://www.zukan-bouz.com/zkan/zkan/rink/gest.html
八王子の市場に関しては
http://www.zukan-bouz.com/zkan/sagasu/toukyou/hatiouji/hatiouji.html


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 カイワリという魚をご存じだろうか? 小さくて丸くて、なんとも愛くるしい。そんなことを書いても“食べる”という話になると意味がないと思われるかも知れない。でも味も飛びきりいい。カイワリは姿よし、味わいよしの優れた魚なのである。……もちろん人間の身勝手な評価だけど。

 今回のカイワリは体長15センチ弱。小さな個体だがこれでも立派な成魚。だいたい釣りの対象魚でもあるけど体長30センチなんてのが上がると魚拓ものとされる。普通釣りでも市場でも見かけて20センチ強、小さいと14、15センチが普通だ。

 この15センチほどの形を下ろして、片身を指で一筋になぞると滑りを感じるほどにしっとりしている。この感触は確実に脂である。これを慌ただしく刺身に造ってみる。
 そぎ作りにして脂が雲のように見えている。切り口に斜めに走る繊細な筋にも白さがあって、これも脂だろう。

 この味わいの甘さのほとんどは脂から来るもので、そこに旨味が余韻を醸し出す。
 今回は真昼の食事時でもない試食のための刺身作りであるのが恨めしい。ほんの4、5切れ食べて家族の夕食に残す。と言っても家族も味見程度だけどね。

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サンマ飽食

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 市場を歩いていたら『総市』のミノルちゃんのところにサンマが3本残っている。しかもこのサンマ、とても見事で美しい。11月になって不思議なことにサンマの売れ行きが悪い。

 この3本のサンマを持って、『市場寿司 たか』に立ち寄ると、ここでもたかさんが大量にサンマを仕込んでいる。
「高野(高野水産)に安いのがあったからたっぷり仕入れてきた」
 そのサンマのなんともギラギラと脂がのっていることか。あまりに旨そうなので「投げ込み丼サンマスペシャル作ってよ」とお願いする。

 そのサンマが大量に入った投げ込み丼のうまかったこと。ボクは生きていて良かったなと鈍色の空に思ったものだ。
 そして帰宅。よしなしごとが夕方遅くまでかかり、やっと夕食を作る。子供達にはカレー粉で作った“ちょい辛カレー”。大人はサンマと酢ガキ。

 大きなサンマを2本刺身にしたら大皿いっぱいになった。でも無くなるのはあっという間だ。
 しかし11月のサンマはまだまだ全盛期の旨さをほとんど残している。すこぶるつきにうまい。
 考えてみるとサンマの刺身を食べていて酒を飲むのを忘れていたくらいだ。さてあとどれくらいサンマ漁が続くものだろう。心配なので毎日サンマを食うことにする。

八王子の市場に関しては
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市場寿司 たか
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 ショウサイフグのことを関東、また関西でも「名古屋」という。これは「尾張名古屋は城で持つ」を「終わり」にかけた洒落であって、名古屋を一段下に見ているものではない。名古屋大好きな人間としては明言しておく。
 寒くなると盛んにショウサイフグが入荷してくるので、「名古屋好き」としては毎日でも買いたい気分である。その料理法に「焼く」というのがある。醤油味醂などで下味をつけて炭火で焼く、もしくは味つけをしないで強火にて炙る。ボクは味つけしないでそぎ切りにしたものを、強火で炙り、焼きたてにポン酢をかけ回すというのが大好きなのである。

 なぜなんだろうね、これは子供も大好きなので紅葉おろしを抜きにして作る。だからお父さんは別皿にとり一味唐辛子を適宜にふる。この場合、七色唐辛子はいけません。

 つけ合わせには名残の茗荷と胡瓜、白ネギの晒したもの。海老名の海老さんにもらったユズがいい香りだ。

 今回合わせた酒は山形の「東北泉」。ちょっと冷やし加減にして2杯だけ。

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 ケムシカジカはカサゴ目であり白身であるにかかわらずいたみが早い。これはオニカサゴやカサゴとは大違いだ。だから締めているのに身がゆるく悪いってことが多々ある。
 今回もやはりそうであり、刺身にも洗いにもならない。こんなときには湯洗いにする。

 だいたい70度ほどだろうか、ちょっと手を入れてみて「熱い」とは思うが火傷はしないというお湯を用意。別のボウルに氷水を作りおく。
 三枚に卸した身をそぎ切りにして、ザルなどに入れて湯の中で数回揺らす。と間髪入れずに氷水にとる。ここで身が「チチチリチリ」と縮む。

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冷水に取った途端、身が縮む。

 この水をよく切ると湯あらいの出来上がりだ。そして肝心要、本当はこちらが主役の肝も茹でて脇に添える。
 醤油に茹でた肝を潰して、その破片を湯洗いで巻き上げるように食らう。これはまことに佳肴としか言いようがない。これに合わせるのは『王禄』の本醸造かな。

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 ケムシカジカの定番的な料理が唐揚げである。市場では唐揚げ用に開いた状態のも見受ける。こんなもの作り方を記すまでもないだろう。

 我が家では出来る限り魚貝類を子供達に食べさせたい。そしてその点でもっとも優れた魚貝料理は煮つけ、ブイヤベースなどだと思っている。すなわち骨ごち煮るというもの。こうするとほとんど無駄が出ない。
 でも若い世代や子供がもっとも苦手とするのもこの手の骨ごと煮る料理なのだ。
 また最近の面白い現象は刺身が売れているということ。これが一見、魚離れのなかで救いのように思っている人たちがいるが大きな間違いだ。刺身は非常に無駄が多く。家庭ゴミが総て消却されてしまうという現実からも「刺身は自然に優しくない」のだということも知っておくべきだ。ちなみに千葉県小見川ではほんの昭和30年代くらいまで刺身の無駄の多さに「殿さんの食い物」と呼ばれていた。

 とすると唐揚げは「煮る」「たく」という料理法に匹敵するほど無駄がない。それこそ内臓を除けば前部ひっくるめて「可食部分」と化する。しかも子供達にも大受け! の優れた料理だ。

 作り方は不必要だと思ったが念のために記しておく。
 まずは魚を適当にばらす。ケムシカジカは皮がザラザラしている、ちょっとゼラチン質でもあるので分けておく。上げる時間の違う骨のある部分と身の部分を完全に分けておくのもコツだ。
 ここにコーンスターチもしくは片栗粉、もしくは小麦粉をまぶしておく。これは好みの問題。
 そのまま時間を置く。粉をつけて少し置くと身の方からじんわりと水分が出てきて表面がしっとりとしてくる。こうすると油が悪くならない。表面が湿っているとからっと揚がらないと思っている人がいるが大間違いだ。からっと揚がらない原因は温度管理にある。

 じっくり時間をかけて1度あげ、いちど引き上げて唐揚げの表面の油が落ち着いてから2度揚げする。
 こうすると味のあるケムシカジカの面の骨まで食い尽くせる。

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 味のあるヤツだな、と思うのか? この不細工が、と思うのか? 大きく分かれる魚がいて、その最たるものがケムシカジカなんである。例えば殿山泰二とキムタク(名前を忘れた。漢字が浮かばない。ボクにとっては無価値な存在なので改めて調べない)とどっちが好きか? と聞かれると、ボクは殿山タイちゃんに手を上げるからケムシカジカが好きなのよ、なんだな。と訳のわからん枕を飛ばしてしまう。
「父ちゃん、これはゴジラだ」という我が太郎の意見もあるから、図鑑本体を見ないで予めケムシカジカの面相を想像願えると「面白いぜ」。

 さてやや北方系のカサゴ目のケムシカジカを北海道では「とうべつかじか」、東北では「おこぜ」とか「さったろう」とか無数の呼び名があるらしい。それほど存在感があるという証拠だ。でも、はっきりいって港では雑魚に近い扱いをされている。
 福島県原釜の美人のオバチャンが「こんなもの銭にならないだー」と言ってボクに投げて寄こしたこともある。「じゃあ、これまずいんですか?」と聞くと「うめーに決まってるだべ」という答えが返ってくる。足元に転がったのが見事なケムシカジカであって、ありがたく押し頂いてきたこともあったなー。

 さて福島などではケムシカジカをみそ汁に入れて、漁師さんの賄いなんかにする。港のおっかさんも「今日も肝の入ったみそ汁だー。うめーぞ」と「毎朝食べてっから、おら、美人だべ」とも言ってくれる。ちなみに本当に福島県原釜は美人揃いなのだ、これは嘘ではない。

 そのケムシカジカの産卵期は晩秋から冬にかけて。この時期たっぷり卵を抱えたメスが関東の市場に並ぶ。「待ってました」とばかりに買い込んで、醤油漬けを作る。

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 まずは卵巣の膜に切れ込みを入れて半分に割く、これをやや「アチチチチ」っというお湯に放り込んでほぐし、バラバラになった卵をよく洗う。

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卵はお湯の中でほぐす

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 これを生醤油、もしくは少々味醂を入れた地に漬け込むのだ。

 ご飯のおかずならやや甘め、酒の肴なら生醤油だけでもいい。これが卵粒の食感がよくて、潰すと旨味と甘味がある。カサゴ目の卵巣ではうまい方、上々の部類だな。

 ボクのお好みの食べ方は、この時期に出回る赤いサラダ大根をスライスして、醤油漬けの卵をのっけて食べる。意外に酒の進まないものなのは食うのに一手間というか、スライスした大根から卵粒がこぼれないように「オットット」と気を遣うせいかも知れない。

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 ホッケが産卵期を迎えている。産卵期に味の極端に落ちるものと、産卵する直前まで味がいいものとがある。それではアイナメ科のホッケはどうなのかというと産卵期で大きな卵巣を抱えていても味はいいのだ。

 ある日、八王子総合卸売センター『ケン水産』でちゃんと締めの傷跡のついたホッケを見つけ、その1本を買い求めてきた。残念ながら産地は不明。
 これが大きな卵巣を抱えている。この卵巣はカサゴ目のなかではうまくない部類である。
 三枚に卸して、少しだけ刺身で食べる。ホッケを生で食べるのはアニサキスの仲間でテラノーバというのが寄生しているので危険である。刺身はまことに美味なので、残念だ。安全に食べたいという人はふた晩ほど冷凍して食べて頂きたい。

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 そして今回の本命「ホッケのちゃんちゃん焼き」を作る。「ちゃんちゃん焼き」は北海道の郷土料理。主にサケを使って作る。材料はサケ、玉ねぎ、ニンジン、キャベツなどに味噌とバターたっぷり。
 たぶんその歴史はそんなに古いものではない。味噌とたっぷりのバターを使うところから昭和、しかも戦後、漁師さんたちの賄い料理に始まるのではないかと想像している。

 サケではなくホッケで作るというのは実は雑誌に載っていたもので、我が家での「ホッケちゃんちゃん焼き」の歴史は15年(我が家の子供の年齢)ほどかな?

 まずはテフロンフライパンに油をたっぷり入れて、熱してきたら三枚に卸して腹骨、血合い骨を取り去ったホッケを皮側から入れる。ここで皮を香ばしく焼き上げる。適度に焼き上がったら、油を捨てて、ここにバター、野菜、茹でたジャガイモを入れて少し焼き、最後に甘味噌(我が家では白味噌と酒と砂糖)を水(牛乳でもいい。子供はこちらが好き)でややゆるく溶いたものを流し入れる。

 甘味噌とバターが混ざり合って沸々とわき返り、回りの味噌が焦げてきたら食べ頃。この時間ほんの10分とかからない。この甘味噌、バターに野菜、ほぐしたホッケの身をない交ぜにして食べる。これがいかにも簡単に出来て、しかもご飯にも酒の肴にもなる。
 酒の肴とするときにはゆっくりと食べたい。そんなときジャガイモが入っていると子供達の目はそちらに向かう。酒飲みのお父さんの工夫なんですなジャガイモという存在は。ちなみに「ちゃんちゃん焼き」にはいったジャガイモは非常にうまい。

 夕食などで食べるときには、飛騨コンロなどを用意して焦がしながら食べるのもいい。今回のものは子供達はカレーだったので大人向けのもの。当然酒に合わない牛乳、目障りなジャガイモは入っていない。
 これは日本酒ではなく酎ハイボールがいい。

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