食べる魚類学: 2008年7月アーカイブ

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 暑い日々が延々と続いている。
 暑さゆるむ気配すらなく、太平洋高気圧よ元気過ぎだぞ。
 いい加減にしろ!
 そんな朝からヒーヒー大汗かいて市場巡りをしているときに見つけたのが「きめじ」。
 1本3キロ半ほど。
 キハダの「目近(めじ 若魚)」なら価格は激安に違いない。
 聞くとキロあたり650円なり。
 1本買い求めて2500円でおつりがきた。
 この「きめじ」が脂がのっていてうまかったのだ。
 大きいので漬け(づけ)にして、鍋にして、唐揚げにして、握りにして、カルパッチョにもして、と大活躍。
 なかでも真夏のひとり鍋がうまかった。

 水、醤油、味醂、酒の地を鉄鍋に張る。
 キハダの切り身を並べる。
 青唐辛子を刻んで、切り身の上にのせる。
 ガスの火をつけて、アクをすくいながら火を通していく。
 出来上がりに大量の大根おろしをのせる。

 煮上がった切り身に大根おろしをてんこ盛りにして酒のアテにする。
 脂がのっているので、甘味があり、舌の上で適度にほぐれていく。
 酒は滋賀県今津町の「琵琶の長寿 純米酒」なのだけど、旨口ながら後味がすっきりしている。
 ピリカラの鍋に出合いの酒だ。

 面白いもので、キハダの「目近(めじ 若魚)」は外見からは脂の乗りがわからない。
 わかるようでわからない、というのが本音なのだけど、今回のものも値は安いし、その割りに鮮度もいい。
 見た目のよさから、逆に脂の乗りが悪いのだろうと思ったら、真逆だった。

 さて、土曜日に隅田川を始め、多摩地区でも大きな花火大会があり、本日日曜日にもどこかで小さな花火大会、祭が催されているようだ。
 道を行く人が多い。
 祭嫌いのボクはのんびり酒に酔い、本日三度目のうたた寝をクーラーのきいた部屋でいたそうとしている。

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 世の中には、地味な料理というもの、平凡な料理というのがあって、フライなどもっとも「そのような」ものではないか?
 魚のフライは間違いなくうまい。
 だから多少難ありの魚だって、とにかくパン粉をつけて揚げてしまえばいいのだ。
「なんとか食える」
 これがフライというものの役割というか、料理としての格を落としている。

 さて、それではうまいフライ、まずいフライはないのか、というと大ありなのだ。
 アメリカではナマズのフライを好んで食べる。
 そのためにミシシッピ川周辺ではナマズの養殖がさかんだし、ベトナム、東南アジアでもナマズの養殖は重要な産業となっている。
 このナマズのフライなど上のフライだろう。
 ほかに上のものを挙げるとマアジ、マサバ、マダラ、ヒラメ、メダイ、にスズキ、そしてマアナゴ。
 背の青い魚も白身の魚も意外に法則的なものが見いだせなくて困る。
 あえていうとフグのフライはうまくない。
 下手だ。

 さて、昨今豊漁となっているのがサワラだ。
 大型になったものは高いが狭腰(さごし)と言われる小振りのヤツはときにおおいに安い。
 安くて、しかも味もいいし、オマケに卸すのも簡単至極。
 これを1本買い込み、三枚に卸し、血合い骨をのぞき、塩コショウ、パン粉をつけて冷凍保存しておく。
 我が家の言うなれば定番的なおかずなのだ。
 本日も朝方、おかずにこまって揚げたのだけど、うまいので夕ご飯にもまた食べたくなる。

 大分の教育委員会の不正といい、岩手での地震といい。
 不快指数を上げる事件が多い。
 大分の事件など、ボクが裁判官なら無期懲役にしたいのだけど、結局微罪で終わるんだろうな。

 そんな不快指数の高い夕方にはビールを爽快に飲みたいものだ。
 アテは枝豆と狭腰のフライ、これがいいね。

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 我が家にお年をめしたお客様がおいでになる。
 市場でいろいろ考えた末に、焼き物はホウボウに決めた。
 身内なので、そんなにかしこまることもなく、適度に家庭的に。

 産地不明のホウボウは産卵期の痛手から抜け出して、身がふっくらとしてきている。
 脂もありそうなのだ。
 これを4、5本も選んで買い求めてくる。
 旬を外しているために思ったよりも安い。

 まずはホウボウの頭を落として背開き。
 やや強めの塩をしておき、水で洗い流して酒に漬け込む。
 これを冷蔵庫で半日乾燥させる。

 後は焼くだけだから簡単至極。
 でもこんな単純な料理に、お客はいたって感激してくれたようだ。
 焼き残った2枚ほどをお土産にお持ち帰り願った。

 面白いことに酒を使うと、焼き色がきれいに着く割りに硬くならない。
 そこに適度な酒の風味が残る。
 産卵後の荒食いで思った以上に脂があるのか、甘味が強い。
 夏のホウボウ、なかなか捨て難し。

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 さて、とうとう梅雨があけたのだ。
 これから数日、耐え難い炎暑が続くはずだ。
 当然、食欲は落ちるだろうし、なんだか体が気だるい、そんな憂鬱な日々が続くにきまっている。

 そんな耐え難い暑い日々にお勧めなのが、出始めた青唐辛子を使った煮魚である。
 今回の材料は築地場内で買い込んだ500円パックのマグロぶつ。
 それが余ったのでもう一度凍らせて保存していたもの。

 解凍して、軽く湯引き。
 水分を切っておく。
 鍋に水、酒、味醂、醤油を煮立たせて、沸騰させてやや煮詰める。
 ここにマグロと青唐辛子の刻んだものを放り込むのだ。
 煮詰めるように強火で、短時間に作る。
 出来上がりに、また青唐辛子を振り込めば出来上がりだ。

 あっという間に出来上がるのに、意外なほどうまい。
 合わせるのは、青森県三浦酒造の「ん」。
 安くて、うまくて、きれのいい酒だ。

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 島根県浜田市の「どんちっちあじ」というのは巻き網でとったマアジで脂肪の比率が高く、しかも漁場が近い(鮮度がいい)ものを差す言葉。
 どちらかというとマアジという庶民派の魚に品質保証をつけたものと思ってもらった方がいい?。
「どんちっち」を買う限り、味の方は間違いなく一段上だと思って間違いないのだ。
 でもいずれにしろ、ちょっと地味だな、なんて思っていたら、「どんちっち」というブランドを立ち上げた浜田市で、その上のマアジを試験出荷してきた。
 釣りもの、型がよく、しかも一定期間活かしておいて、出荷直前にしめる。
 そうだ、今ではマアジの代表格になってしまっている「関あじ」と同じ出荷方法なのだ。

 水産物はとるのも大変だけど、それを流通させるのも大変なのだ。
 まったく同じ魚でも出荷する箱の大きさ、量、仕立て方(氷や、下に敷く紙)で値段が変わる。
 だから試験的に出荷することも、最近ではよくあることなのだ。

 この「どんちっちあじスペシャル」も出荷の形態ではまだまだやるべき課題が多い。
 例えば、今回は下に氷を敷いての出荷なのだけど、氷の上に流通時のショックを和らげるクッション材がしかれていない。これだと氷の凸凹が下になる方についてしまう。
 築地では、これだけで大きなマイナス要因となる。
 また一匹600グラムほどもある大アジを8本入りにしているが、5本にする方が値がつく。

 さて、固い話はやめて、今回の「どんちっちスペシャル」を食べてみる。
 当然、刺身にするのだけど、脂が多いものと少ないものを2本もらってきた。
 これは渡邉祐二さん(浜田市水産物ブランド化戦略会議専門部会部会長)が場内ではかってくれたもの。
 総て脂質10パーセント以上なのだけど、方や12パーセント代後半、方や12パーセント代前半とでた。

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今回いただいたマアジはすべて直前に脂質を計測してもらった。そろそろマアジのシーズンも終盤となる。それでも12パーセントから13パーセントの脂質ありと出た。

 帰り着いて卸してみると脂質の高い方が抱卵したメス、低い方がオスであった。
 産卵期にはオスの方がうまいと思っていたので意外だ。

 さて、今年はマアジを飽食している。
 とくに島根半島の定置網マアジにうまさでノックアウトされてから、ちょっとやそっとのうまさには動じなくなっている。
 だからこの「どんちっちスペシャル」にも味わいで驚かせられることはなかった。
 ただただ味のいい、脂ののったマアジだ。
 あえて言うと、2本の味では脂の層の厚みが違っている。

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 それでは、「スペシャル」な意味あいはないではないか?
 と思われるだろう。
 否である。
 やはり、これは「スペシャル」なマアジである。
 とにかく脂も旨味も充分であることはくどいほど書いておきたい。
 そこに活けのような食感を感じるのだ。
 もともと長崎県から島根県までのマアジは日本最高峰とされてきているのだ。
 これなら総合点で「関あじ」を超えられるのではないだろうか。

 まだまだ試験的な出荷だが、来年度には「どんちっちスペシャルあじ」で市場を「あっ!」と驚かして欲しいものだ。

島根県浜田市「どんちっち」
http://www.city.hamada.shimane.jp/kurashi/nousui/suisan_don.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、マアジへ
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 ホシガレイはうまい。
 でも高いな。
 5月、静岡県沼津市沼津魚市場に2キロ上の巨大なホシガレイがいて、担当の山田さんが
「今日は安いよ、キロ9000千円くらいじゃない」
 なんてニヤリと笑っていたっけ。
「買わない?」
 そのときボクは青い帽子をかぶっていたのだけど、
「買いませーん」
 ホシガレイは大きいほど高く、また味がいい。

 そして7月になって築地場内で見つけた活けは600グラム、キロ当たり2500円で手頃だ。
 産地は三陸なのでホシガレイとマツカワガレイが混生する地域だ。
 この両雄、値が下がらないし、瓜二つ。
 マツカワガレイは養殖されているのにホシガレイの養殖は聞かない。
 これ理由があるのだろうか?

 さて、帰宅して卸してみると、身が反り返る、じわりと包丁を跳ね返す。
 このシコ、コリっとしたのが涼やかでいい。
 初日はこの食感を楽しみ、翌日の刺身はうまさを楽しむ。

 さて刺身にしたら、かならずついてくるのが骨せんべい。
 こいつがないと子供達が納まらない。
 ある意味、こっちが主役とでもいえそうだ。

 卸すやいなや、骨せんべいを揚げる。
 二度揚げするのだけど、最初は低温で、二度目は高温で香ばしく。
 揚がったら、紙に取り、振り塩をパラパラ。
「出来上がったよ」
 子供達は呼ばなくても横に立っている。
 父ちゃんが刺身を持って席に着く。
 そのとき、骨せんべいは跡形もなく消えているのだ。
 せっかくビール(偽物ですけど)をあけたのにー。

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 国内ではベニザケはとれない。
 一般的にはそうだけど正確には、ほとんどとれないというのが正確だろう。
 春から夏にかけて量は少ないけどとれる。
 これは三陸近辺がベニザケの回遊の南端にあたるからだ。
 回遊の通り道にあたる根室からのものが多い。
 この根室産のベニザケを築地場内『大音』さんで見つけてすぐに買い込んだ。

 これがまことにうまいのだ。
 生だし、一度も冷凍していない。
 それをムニエルだとか、フライだとかにする。
 このベニザケの身のうまさをどう表現したらいいのだろう。
 苦しむのだけど、とにかくベニザケ独特の旨味があって、これが濃厚なのだ。
 しかもここに適度に脂がのっている。

 その短期間水揚げされる国産ベニザケの料理法として最高峰なのが塩焼きなのだ。
 出来ればカマ(胸ビレから鰓ぶたまでののど頸の部分)をズドンと筒切りにしてこんがりと焼き上げる。
 平凡すぎる料理なのに圧倒的なうまさを感じる。
 脂ものっており、甘味があるのもいい。
 サケ類の身には独特の風味というか臭みがある。
 ベニザケにもそれを感じるのだけど、微かなもの。
 これがアメリカなどでも好まれるものなのだろう。
 敗戦後北洋でのサケマス漁が始まったとき、ベニザケは缶詰になりアメリカへ輸出されていたのだ。
 当然魚臭くないのでパン食に合う。
 その代表的な料理法がムニエルなのだけど、これも絶品である。
 ルイベ、酢締め、フライなど一本のベニザケで大層口福を感じる。

 さて、毎日暑い日が続いている。
 近所の空き地にはオオケタデが美しい紅色の花をたらしている。
 ベニザケの入荷が終わると夏本番となる。

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 名古屋駅から歩いて数分で柳橋市場に到着する。
 この市場のことはまたご報告するが、意外に淡水魚を扱う店が多かった。
 その一軒が「マルナ淡水魚」で、ここで子持ちの割きど(割いたドジョウ)を発見。
 思わず1パック購入してきた。
 子(卵)も親も、かなりたっぷり入って1260円。
 旅の途中でもドジョウの前は素通りできないものである。

 まずは鍋の地を作る。
 水6に味醂1、醤油1を合わせて一煮立ち。
 ここで味見して加減する。
 ネギを刻む。
 それこそ鍋に入れて溢れるくらいいにたっぷり用意する。
 割きドジョウは湯通しして、冷水にとり、滑りをていねいに落とす。
 背ビレ、腹ビレ、胸ビレなどを手でつまみ取る。
 鉄鍋にドジョウを並べて、真ん中に生の卵を置く。
 地をはって火をつける。
 子に火が通れば出来上がりだ。
 ネギをてんこ盛りにして煮ながら食べていく。

 ドジョウ鍋を作るたびに「もっとたっぷり買ってくればよかった」という後悔の念が浮かぶ。
 山椒をたっぷりかけた割きドジョウがなんともコクがあってうまい。
 これを滋味とでも言うべきなのだろうか。
 食べても食べてもうまいうまいとしかいいようがない。
 そこにコックリと甘味のある卵をつまむのだけど、「ドジョウは夏の味かな」なんて改めて思う。

 冷たくひやして置いた「玉乃光」をときどきぐっとあおるのだけど、ドジョウ鍋に酒は無用と感じるときがある。

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 マダイがうまいというほど月並みな話はない。
 ええ加減にせい、とでも言われそうだ。
 世に「鯛よりうまいイワシ」とか「鯛よりうまいサバ」なら面白いだろうが、「やっぱり鯛は鯛だな」なんて面白くもなんともない。
 でもこの目の下一尺弱の鹿児島県阿久根からきたマダイがうまいのなんのって、絶叫したくなるほどだ。
 普通、「桜鯛」というと春だし、「落ち鯛」というと秋だ。「寒の鯛」というのもありで、冬ですな。
 まさか「夏鯛」はないだろうと思っている人手を上げて。
 きっと無数にいるだろう。
 でも夏のマダイはうまいのだ。
 どうしてかっていうと春に産卵する南日本のマダイは、産卵後腹が減る。
 当然、エサをむさぼり食うのだけど、産後のリバウンドではないけど、腹減りで夢中になってエサを追い、肥えて身体に凝脂たまるのが夏であるわけで、鹿児島県のマダイなど初夏には脂がのりきっている。

 この刺身がうまかったね。
 塩焼きにしてもジュウジュウと脂がしたたり落ちる。
 潮汁もだだごとではなかった。
 そして翌日には「鯛茶でちゃちゃちゃ」。
 これは「ちゃちゃちゃと仕事を終わらせる」なんて意味の「チャチャチャ」だ。

 残り物のマダイの刺身を、みりんと醤油、ショウガの絞り汁少々に漬け込み、胡麻を振り入れ、青じそ、青ネギ、ミョウガのせん切りを加える。
 小半時漬け込んだら、ご飯にのせて、熱湯を注ぎ入れる。
 後はチャチャチャとかき込むのだけど、うますぎるマダイのエキス入り湯が口中をやたらに刺激していく。
 強すぎる旨味、そしてそれを適度に緩和する香辛野菜と、白ごま。

 茶碗一杯4、5分の間ながら、大きな満足感というか、幸福な気持ちはなんだろう。
 さすがに鯛は鯛なのであろうか?
 今回は素直に王道を行くボクなのであった。

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 毎年、暖かくなると入荷してくるのがアヤトビウオだ。
 現在のところ出荷してくるのは和歌山県串本市の「出口水産」だけだけど、たぶん温暖な地方ではまとまってとれているはずだ。
 6月、7月の市場ではツクシトビウオ、ホソトビウオが多く、トビウオが希に入荷してくる。
 そこにやたらに寸詰まりのアヤトビウオが来ると、そろそろ夏本番だなと思う。
 こんなことで「今年の梅雨明けは早そうだ」と思うのは変だろうか?
 アヤトビウオは発泡に並んだところは背が黒く地味だけど、翼(胸鰭)を広げると佳麗だ。
 この文様の色合いは地味だけど、妖艶な夜の女王を思わせる大胆で目立つものだ。
 さて、この美しい翼をまとっている主が、デカ目のずんぐりむっくり、チビデカを思わせる。
 鈍い体形なのでとても飛べそうに思えない。
 このアンバランスな外見は、漫画のキャラクターにでも使えそうに思える。
 市場で手に取った居酒屋の主人が、
「どう見ても、うまそうに思えないなー」
 呟いていたのがよくわかる。

「うまそうに思えない外見」ではあるが、実はなかなか味がいい。
 寿司職人の渡辺隆之さんなど、ボクが持ち込んだアヤトビウオを握りにしてみて、味がいいのでたくさん仕入れに走ったくらい。
 身がしっかりして水分が少ない。すなわち他のトビウオ類よりも食感がいい、シコっとしている。
 旨味も充分にあり、これがいける味なのだ。

 今回はミョウガを合わせて、たたき風にしたが、単に刺身にしてもいい、
 外は朝方からの雨がしとしと降り続いている。
 忙しすぎて、今年はアジサイの花を見ていないのだけど、そろそろ満開だろうか。
 こんなことを思いながら「土佐鶴」を不精にも室温でやる。

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