食べる魚類学: 2007年3月アーカイブ

春の子持ちサバ

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 春になるとサバの味わいが途端に落ちる。これが魚屋の悩みの種なのである。どうして味が落ちるのかというとマサバの多くが臨月を迎えるためである。じゃあオスはいいだろう? というと残念ながら夫婦ともども身質が悪くなる。
 だから魚屋は「春のサバは腹をさぐって仕入れる」。ちょうど魚屋が首を振って諦めた大きな腹をしたサバを買い込んできた。見た目は太りじしの見事なもの。腹を触ると真子の形がわかる。でも成熟度が低いようで身には脂がのっているのが明確にみてとれる。
 さて、脂があるのだから半身はしめさばにする。そして半身だが、なんとか真子を生かした料理にできないだろうか? 例えば煮つけ、みそ煮。ともにダメだろう。マサバの卵巣の味はよくて、その真味を壊してしまう。出来るなら焼きたい。焼いて夕食の一品としたい。
 考えていても仕方がない。半身の血合い骨を切り取り、そこに袋状のくぼみを作る。卵巣を埋め込んで振り塩をする。しばし時間を置いてじんわりと焼き上げてみた。産卵前のマサバの身はもろく、なんだか形が整わなかった。卵巣が飛び出てしまうか、と不安を感じながらやっと焼き上げる。
 その焼き上がりを、熱い内に口に放り込む。やはり脂がのって、それが甘味となって感じられる。卵巣はほっくりと、こちらも甘味と旨味があって、身の濃厚な味わいにアクセントをつけている。絶品ではないか、この親子焼きというやつは。
 春サバはまだまだ脂がのっている。いちばん悪い時期にはいたっていないのである。そして、春ならではの真子の味わいを今こそ堪能すべきだろう。

市場魚貝類図鑑のマサバへ
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 和歌山県有田市辰ヶ浜からの魚々ちゃん便に見事な活け締めのコチ(まごち)が入っていた。これは寿司ネタにしてみたいものだ、と『市場寿司 たか』に持ち込む。
「そうだ。そろそろコイツがうまくなる時期だね」
 たかさん、大急ぎでネタの切り付けをして、小振りの握りに仕立て上げた。
「コチっていやー夏って思っていたけど、よく考えてみると春から初夏までの魚なんだね。身に脂って言うんじゃなくて旨味があるよね。それにうまく締めているから透明感も残ってる。これはたまらん旨さだね」
「そうだね。今まさに真ゴチの旬ということだね。そう言えばこのあたりの寿司屋とか料理屋はあまり、コチ使わないね」
「高いからね。例えば2000円(キロあたり)したとするだろ。ヒラメの2000円と、真ゴチの2000円じゃ、歩留まりからして真ゴチの方が割高だろ。それにヒラメが悪い時期だってお客は、真ゴチを選んでくれないからね」

 こまったことに二人で1本のコチを平らげてしまうくらいにうまい。
「たかさん、オレ達の味見はこの辺にして、お客にも出してあげよう」

魚々ちゃんさかなや仮店舗へ
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問い合わせは
cfdbt706@jtw.zaq.ne.jp
『市場寿司 たか』
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市場魚貝類図鑑のコチへ
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 ホタルジャコは浅い磯場などに棲息する小魚である。名の「蛍」とは腹側に発光器をもって光るからである。ダイビングはしないが、磯場などに潜り、このパールピンクの魚が発光している様はさぞ美しいだろう。それだけでも海に潜る人がうらやましい。

 このホタルジャコは四国愛媛県などでは「ぶり網」でもって漁獲対象となっている。この「ぶり」というのは網につく「ぶり木」という浮木のことであって、当たり前だが魚のブリではない。他には底引き網でもホタルジャコをとっている。その水揚げされた総てのホタルジャコと草草の小魚が、愛媛名物じゃこ天となる。
「どうしてじゃこ天の材料はホタルジャコがいいんでしょう」宇和島の薬師神かまぼこさんに聞くと、「潰して(すり身にして)いちばん旨味の出る魚だから」なのだという。

 これはだいたい伊豆半島以南に生息していて、漁獲対象となっているのは愛媛県八幡浜から愛南町まで、他の地域では明らかに雑魚である。でもどの地域でも漁師さんなどに言わせると、「小魚のなかじゃいちばんうまいんです」と定評がある。驚いたのはそろそろ500種になろうかという我が「寿司図鑑」のなかでも出色の寿司ネタのひとつであった。

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ホタルジャコの下ごしらえはいたって簡単。鰓と胸びれを人差し指と親指でつまみとるだけ。小アジなども同じ要領でいい

 それを和歌山県有田市辰ヶ浜からの魚々ちゃん便に見つけて久しぶりに「小魚の唐揚げ」を作る。このホタルジャコの唐揚げがうまいのだ。
 水洗いしてウロコや汚れを取り去る。鰓ぶたを開いて鰓と胸びれを指で挟んでちぎり取る。こうするとズルズルと内臓もとれてしまう。これで唐揚げ用の下ごしらえはお仕舞いだ。1匹あたり2,3秒しかかからない。あとは片栗粉をまぶして揚げるだけ。弱火から中火でゆっくり、そして最後に強火で揚げる。
 また我が家は子だくさんなので、家族のためにポテトを一緒に揚げることがある。言うなればフィッシュアンドチップスである。今回はジャガイモをかいていたので小魚だけとなっているが我が家の定番料理である。
 揚がったら紙の上などにのせて塩コショウして出来上がりだ。
 これから暖かくなってくると夕べに小魚の唐揚げとビールがいちばんいい。

薬師神かまぼこ
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魚々ちゃんさかなやは近日開店
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市場魚貝類図鑑のホタルジャコ
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 ニジマス(サーモントラウト)の海での養殖は1980年代初頭に始まり、とくにチリでは顕著に増大している。そして今や市場や小売りの場で見かけない日はないくらいである。このサーモントラウト(トラウトサーモン)というのは「自然界に存在するニジマスそのもの」ではなく、作られた一世代だけの交配種、すなわち成熟しない「食用だけのために作り出されたもの」だ。言うなれば鶏で言うなら成長の早いハクショクレグホンをブロイラーとした以上に、人口的である。
 サケというのは成熟すると味が落ちる。例えば標準和名のサケが未成熟の白サケ、時サケ、鮭児を珍重し、成熟がすすんだ「ぶな」が安いのを見てもわかるだろう。だから養殖する家畜としてのサケはギンザケのように成熟するものよりもサーモントラウトのように成熟しない一世代交配種が優れてるのだ。

 サケ科の魚は種により用途を違えている。まず天然のサケは原則的に生食は出来ない。養殖ものだけが生食として公に流通できるのだ。その養殖サケで例えばタイセイヨウサケ(アトランティックサーモン)は値段が高くほぼ総てが鮮魚として流通している。輸入ギンザケはほとんどが加工されたものでの輸入。そして多くが冷凍輸入、それを解凍して塩鮭やムニエル用の切り身に加工される。すなわちタイセイヨウサケは刺身、スモークサーモン、そして高級な切り身になる。ギンザケは主に熱を通す食材になるのだ。ここにサーモントラウトがあって、これは生食、塩鮭などの加工品にも使える。これは身自体の味がいいということと、また原材料の値段が安いからだろう。とするとサーモントラウトは万能のサケと言える。

 さて、この画像の説明を始めよう。これは我が家からクルマで十数分のところにある大型のスーパーにあったもの。加工品の種類としては「塩鮭」である。「塩鮭」とは言っても昔ながらの塩に漬け込むというのではなく、塩水に漬けたもの。最近は市場で見る限り、「山漬け」とか「ふり塩」とかよりも、塩水で立て塩にしたものの方が多い。またパッケージに「脂がのっておいしい」とある。これなど現代の嗜好を顕著に表している。塩鮭を選ぶ場合も「脂が少ないがアミノ酸による発酵がすすみ、風味旨味の増した昔ながらの天然サケ」よりも「風味も熟成による旨味もないけれど脂ののった養殖サケ」の方が好まれているのだ。
 この製品の表示としては「トラウトサーモン・養殖・チリ」とあって消費者が最低限知りたいことを明確に伝えている。この点で三和というスーパーは合格だ。最近思うことだが、大型のスーパーやデパートの方が小さな魚屋や小型スーパーよりも表示はしっかりしている。このあたり個人商店も負けないようにして欲しい。そうしないと消費者の信頼は大型小売店に持って行かれてしまう。
 そして当日、同店舗で目立つ場に置かれていたサケが、このトラウトサーモン(サーモントラウト)、タイセイヨウサケ(アトランティックサーモン)、ギンザケという輸入養殖サケ。そして特売のコーナーにベニザケ、標準和名のサケが置かれていた。
 また100グラムあたりの値段は158円。これは東京近郊での塩鮭の一般的なプライムゾーンだ。八王子、築地など市場の卸値で見ると100円前後、大型の流通業だったらもっと大きなロットでの仕入れとなり、卸値はより低いだろう。まるで工業製品のように生み出されていく養殖サケ、価格も安定しているだろうから「出来るだけまとまった量を取り扱う小売店ほど有利な商品」と言える。とすると、養殖サケは街の魚屋よりも大型小売店(スーパー)で買う方がいいということになる。
●サケの考現学はまだまだ書き進む

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 まずは裏の原材料から見てみる。それが「焼鮭」である。まったくこれは原材料表示としては最低である。こんな表示に出くわしたら法律的には正しくても消費者としては怒るべきだ。今、国会で醜さを露わに松岡農林水産大臣が「法律通りに詐欺行為をやっています」というのと同じだ。これまでにも書いてきているが「鮭」というのはあまりに中傷的な言葉でしかない。はっきりいって漢字での「鮭」というのは原材料を表示するときには使わない方がいい。提案したいのが本品の場合なら「焼鮭(宮城県産養殖ギンザケ」とすべきだ。わかってくれるかなファミリーマートさんとファーストフーズさん。
 今回のも含めてコンビニでの原材料表示は早急に改めて行くべきだというのがわかっていただけただろうか?

 国内で生産されている天然のサケ類は25万トン前後。対するに養殖されて輸入されるサケ類はそろそろ天然物に迫ろうとする勢いであるというのを書いてきた。また“脂好み”が進みすぎていて明らかに日本人の嗜好は「天然→養殖」という方向性できている。それに過剰に反応しているのが大手スーパーのバイヤーと呼ばれる人たちであり、コンビニなのである。
 その養殖サケの多くは輸入されたものであるのだが、我が国にも養殖サケは存在する。その主要な生産地が宮城県なのである。養殖サケが世界的に主流になるきっかけはノルウェーでのタイセイヨウサケ(アトランティックサーモン)養殖からである。これが1980年代に始まっている。それに対するに我が国のサケ養殖は宮城県志津川において1960年代後半には研究に着手、1970年代半ばには大手水産会社の主導でギンザケの生産を開始している。国内でサケ養殖の方が歴史的には遙かに古い(養殖サケの歴史では)のである。そして一時は宮城県を中心に産業的にも大きく成長していたのだ。
 これが大きな打撃を受けたのが、チリからの養殖ギンザケの輸入によってである。皮肉なことにチリへ養殖技術を最初に持ち込んだのは我が国の大手水産会社なのである。これが1980年にギンザケ養殖を開始、後に我が国の技術より遙かに進んでいたノルウェーでの養殖技術をチリ国内に持ち込む形で飛躍的に生産量が増え、ノルウェーを上回るサケの生産国に成長する。そして世界的に養殖サケの生産量が増えるとともに価格が大きく下落してきているのだ。
 我が国の養殖技術よりもノルウェーが作り出したものが世界的に見て明らかに優れているとされる。すなわち国産の養殖ギンザケはノルウェーのタイセイヨウサケなどと比べて市場で見ても地理的な条件を加味するとランクが下なのである。その状況を打破すべく宮城県などがすすめているのが県内での養殖ギンザケの質の向上化である。優れた肉質を作り出すための資料の開発、また養殖場の環境の整備などを行っているのだ。この宮城県の養殖ギンザケは非常に美味であることを明記しておく。

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 ネット上には「伊達のぎん」に使われている質の向上化のための飼料の成分表がある。ここには魚粉、小麦粉、穀物、油かす、その他もろもろ。またビタミンや色素成分であるアスタキサンチン、硫酸鉄にコバルトなど見ているだけでクラクラする微量成分が羅列されている。この魚粉の原料はなんなんだろう。種は産地は? これなど『NOSAN』というメーカーの秘密なのだろうか? でも国産養殖とはいえこのギンザケの身体を作り出しているタンパク質や脂質は国産ではないはずである。国内ではそんなに大量に魚粉用の小魚がとれているようには思えない。この魚粉などの原産地も明記すべきだ。なにしろ「養殖魚とは飼料を間接的に食べるもの」なのだから。
 こんなことにも思いを巡らす、また不安を感じずにはいられない人も少なくないだろう。だから原材料には「養殖」か「天然」かをしっかり表示すべきなのだ。

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 つまりファミリーマート「伊達のぎん」というのは宮城県漁連が多大な努力を払って作り出した最上級の養殖ギンザケを使っているということだ。だから1個あたり平均で130円前後のコンビニお握りにあって158円という高いものとなっている。しかもいわゆるフレークではなく、骨を抜いた大きな切り身状である。具があまりに大きいのでうまく塩飯に納まらないのか、手で持つとぱっくり2つに外れてしまう。ここでわかるのがコンビニお握りというのは生産段階でサンドイッチのように二枚の薄い塩飯を作り具を挟むのだな、ということ。決して「母さんが愛情を込めて握りました」というのではないのだ。でもギンザケの味わいもいいし、またご飯もふっくらしている。やっぱりコンビニお握りはよくできている。

 でもこれを食べると言うことが自然に、または子供たちの時代に優しいのかどうかは「わっからねー」ぞ。

ファミリーマート
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ファーストフーズ
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 築地土曜会ではボクも3点買い物をした。それは青森県大間産のツルアラメと鮪の500円パック、そして氷代わりの冷凍ばち(メバチマグロ)のカマ200円なりを一本。
 このカマを帰り着くなり、みりん、酒、塩、しょうゆの地に漬け込む。後はそのまま気にしないで冷蔵庫にほったらかしておく。これを昨日、思い出したの如くとりだして晩酌のともとする。

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 作り方は出来るだけ時間をかけてじっくりと焼くだけ。けっしてオーブンなんか使わずに、魚焼き器にのせて最低限の弱火とする。表面は多少黒くなっても大丈夫。カマ一本に1時間くらいかけて四方八方、向きを変えながら全体に焦げ目をつけるのがコツ。
 この酒の肴の代金200円(税はオマケしてくれた)と調味料代だから足しても210円にもなりはしない。こんな安〜い代物が信じられぬほどにうまい。ボクの酒の肴なのに家人と娘が脇でほとんどを食い尽くす。ボクは単にそのまま食べているだけ。それに対するに家族は田舎から送られてきた八朔(みかん)をむいてそれにのせて食っているのだけど、八朔一個とカマ一本の大半がきれいになくなってしまった。

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 あんまりうまそうなので真似をしたら、これが何とも、言うにいわれぬほどの美味。でもこれが最後の一切れだったのである。残念だ!

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 我が家での煮つけは汁少な目に作る。また鮮度によって作り方を変えるのだ。
 鮮度のよい、またクセのない魚のときには、酒・みりん同量、醤油と水を合わせて煮立ててから、水洗いした大きな魚で汚れにないものはそのまま入れる。もしくはやや小魚であったり、ウロコや汚れが気になるときは湯通し、冷水にとり小さなウロコなどをとってから入れる。これを煮て、ちょうど仕上がるときに搾り生姜をたらす。
 鮮度が今イチよくないときやクセのある魚のとき。まず魚を水洗い、ときに切り分け、これに振り塩をする。20分くらい待ち、これを熱湯で湯がき冷水にとり汚れやウロコなどをきれいにとる。鍋に酒・みりん同量、醤油と砂糖、水を合わせて、そこに処理した魚も入れる。ここに生姜も加えてはじめて火をつける。
 これらを煮汁がトロっとなるくらいまで煮あげる。火加減は最初は強火、沸騰してきたら中火、そして最後にまた強火にする。この煮上がりにプロは足しみりんをする。テリが出るからなのだが、一般人は必要ない。甘味が足りないと思ったときのみ加えるように。また「みりんは硬くなる」「酒は柔らかく」と覚えておこう。柔らかくしたいものには「みりんを入れない」「煮くずれしやすいものには、みりんが必要」なのである。
 さて、今回の目的はここにネギを入れること。ネギと生姜に風味はケンカしないのだろうか? 田向商店のものはネギの風味が勝っていた。でもそれはプロであり、一度にたくさんの魚を煮ることが出来るという利点がある。だからあのような汁だくさんの穏やかな味わいが生まれるのだろう。我が家の煮魚はいつも最小限しか作らない。必ず食べきることを主眼としている。もちろん煮置きしたのは、これはこれでうまいのであるが、やはり煮立てにはかなわない。
 すけそは白身であるのに、そこに独特の風味というかクセがある。これが持ち味と言えるだろう。だから“すけそ”を好んで煮つけにする地域があるのだ。使ったのは内臓では肝だけ、あとは身を適当に切った。これを振り塩、熱湯に通して、冷水で洗い、水気を切り、合わせた調味料のなかで煮あげたもの。鮮度的なこれは致し方ない。
 考えてみると、すけその煮つけは久しぶりである。ボクはすけそ(スケトウダラ)もマダラも、少し落ちるがコマイも、煮つけにするのが大好きだ。何と言ったらいいのだろう? タラ科の魚だけが持つ、この白身の香り、そこに醤油とアルコールの旨味が加わり、なんとも言えないのだ。
 そして肝心のネギだが、「入れてよかった」のである。ネギの香りも、そしてネギ自体も素晴らしく美味。ついつい身をついばむように食い尽くし、煮汁で2杯もご飯を食った。子供にも大好評で、満足至極の朝飯となったのだ。

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 カツオを一本買い求める。刺身や同じように生っぽい「たたき」だけでは食べきれない。だから唐揚げ、中落ちの煮つけなども作って食卓に並べる。それでも翌日、一般家庭だとまだまだカツオは残るだろう。そんなときに作るのが「カツオの揚げたたき」である。

 これはいわゆる「たたき」よりも数倍簡単で失敗のない料理である。なにしろ強火で表面をコンガリと揚げるだけなのだから。
 まず予めタレを作っておく。基本は酒1、みりん1、ほんの少しの砂糖、しょうゆ1。まずは酒とみりんを合わせて鍋に入れる。火をつけてアルコール分が飛ぶくらいに湧かす、すぐに火を弱めて砂糖を加え、最後にしょうゆを入れて味をみる。好みの味加減ならすぐに火を止めて冷やす。
 カツオ4分の1は高温の油で表面がかりっとするほどに揚げてしまう。よく油を切ったら熱いウチにタレに漬け込む。火の通し加減は好みで。我が家は子だくさんなのでやや強く火を通す。
 切り方も適当でいい。スライスオニオンやネギなどをあしらい新しいタレをかけて出来上がり。あとはマヨネーズだろうが柑橘類だろうが、好みの食べ方で食べる。

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 テンジクタチというのをご存じだろうか? 天竺太刀魚というくらいだからどちらかというと亜熱帯の魚なのである。これ、たぶん誰も知らないのではないだろうか? 珍しい魚? と言えばそうでもない。よく市場などで見かけるのだ。見かけてもほとんど総ての人が「タチウオ」だと思って見過ごしてしまう。それほどにタチウオそっくりなのである。
 見分け方は背ビレと目、そして鋭い歯の並ぶ口の底が黄緑色であること。気にして見てみると見極めはいたって簡単である。
 ただ見分けるのが簡単であっても、タチウオと区別する必要性があるのかというと疑問が残る。なぜならテンジクタチもタチウオに負けず劣らずにうまいからである。

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よく見ると、背ビレが黄緑色である。中央の背ビレが透明なのはタチウオ

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 水産の世界には魚卵を主に扱う業者というのがいるそうである。その実体を知らないのであるが、標準和名でサケ、カラフトマス、ギンザケ(少ない)、スケトウダラ(たらこ)、マダラ(まだらこ 少ない)等の卵を取り扱う。まあ主な商品としてはスケトウダラの「たらこ」とサケの「イクラ」「筋子(すじこ)」ということになる。
 この「イクラ」と「筋子」の違いは本来はサケの卵の成熟度によるものである。「またあるていど成熟したものでも「イクラ」というのは丁寧にほぐすという工程があり、例えばアメリカでとれたサケなどの卵はほぐさないで「すじこ」として加工するという。そして今回の「筋子」の原料である「鱒子」であるが、まあ良識的に考えるとカラフトマスの卵だろう。この卵は卵粒が小さく、あまり商品価値の高いものではない。だから成熟が進んだものでもほぐさない。もしくは未成熟のものが漁期では多くとれるなどの理由があるのだろう。

 でもなぜに原材料が「鱒子」なのか? きっと業者としては「鱒=カラフトマス」、という常識と「鱒子」という言葉に馴染みがあるために知らず知らずにそれを消費者にも押しつけようとしているのである。そしてたぶんこれには農林水産省もあまり気にも留めていないように思える。そうでもなければ、世に出回るカラフトマスの卵商品の多くが「鱒子」となって流通している理由がわからない。
 ボクが思うに原材料名に「鮭」「鱒」という文字、最低限漢字は排除した方がいい。なぜならばこれほど曖昧な言葉はないからだ。古くは我が国において「鮭」というのは唯一標準和名のサケを差す言葉であった。だから「鱒」とあればカラフトマスに決まっているだろう、という常識が成立しえたのだ。でも今の世の中サケ科の食用魚は増えに増えている。「筋子」であってもギンザケであったり、ときにはアトランティックサーモン(タイセイヨウサケ)のも流通しているのだ。「鱒」「鮭」という言葉ではとても原材料を正確に表現できない時代が来ているのだ。
 消費者がこの「醤油すじこ」を買う。原材料を見て「鱒」という魚がいるんだと思う。その「鱒」とはニジマスなのか、もしくはただ単に「マス」という魚がいるのかわからないだろう。たぶんほとんどの消費者がカラフトマスにいきつかない。例えば今回の「醤油すじこ」の加工業者、大興水産自体は水産業界の常識で「鱒子」としているのであって悪意はないのだろうが、出来れば標準和名での表示に変えてもらいたい。

 ここ数週間は旧正月前後と言うことで鮮魚が少ない。そのせいなのか「鱒子」をそこここで見かけるのだ。当然、原材料表示は総て「鱒子」、そして産地は圧倒的にロシア、ときにアメリカである。これを冷凍輸入して醤油やみりん、砂糖、塩で調味する。合成着色料、発色剤、防腐剤なども添加して、冷凍保存して在庫化できる商材である。値段は小売値で100グラム前後で300円前後となる。「だいたいアメリカなどからのサケの筋子の半額近いものでしょう」とは塩干の仲買からの話。この安さから、よく売れているという。
 それではと1パック買ってくる。そのままご飯にのせて「鱒子ごはん」でお昼とする。これが意外にうまいのだ。冷凍流通だし、苦みは確実にあるものの魚卵のもつ濃厚な旨味が感じられ、味付けも上手である。これなら出来るだけ無添加とし、パッケージを紙パックにするなど使い勝手、エコロジーのことも考慮にいれる。加えるに表示を正確にすればもっと人口に膾炙するはずである。
●今、ベニザケなどの魚卵に関する情報を探している。

大興水産
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 土曜日に買ったカツオは「ちょっと小さい。でも思ったよりは脂がある」というもの。夕食は雛の日であり、子供用にあれこれ取りそろえている。そこに欲しいのはボクと妻の酒肴だけ。じゃあカツオもそんなに濃厚なうまさよりもさっぱり食べてしまおう、と考えて“塩たたき”にする。
 カツオは4つ割にする。皮目をよく焼き、熱い熱いと悲鳴を上げながら平造りに。これを大急ぎで横倒しにして塩を振る。これで出来上がりなのだ。カツオの身はまだ熱い。それにスダチをふりながら食らう。春のカツオだから脂はなく味わいは軽い。まるで梅の香りのように爽やかである。
 と、妻の方を見ると、マヨネーズたっぷりに生醤油、それをカツオの身にてんこ盛りにして桃の酒(サントリーの銀座カクテルといったもの)を飲(や)っている。これもいいのだろうか? そう言えば、もうあと2切れしかなく、よくみると子供たちの手塩皿にもマヨネーズしょうゆがある。もう一回造るしかない。

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横倒しにしてやや強めに塩を振る

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ボクは徳島県人なのでスダチ。カボスでもユズでもいい

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