食べる魚類学: 2009年11月アーカイブ

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ある夜、築地のイングリッシュパブ(正確ではないかも)でやたらにバーボン(何故だ)を飲んでいたら、左右縦横どこから見ても漁師にしか見えないウエカツさんが、フィッシュアンドチップスを注文したと同時に叫んだのだ。
「フィッシュアンドチップスにはモルトビネガーがなきゃいけん」
このウエカツ言語には出雲、東京、ときどきオーストラリア(この人の先祖はコアラらしい)などがごちゃ混ぜになっている。
「モルトビネガーってなんなのさ」
「ええ、ぼうずさん、しらんの。だめだねー」
ワハハ、ワハハ、ワハハ......とコアラの目をして笑うのであった。
そして出てきたフィッシュアンドチップスには、ちゃんとモルトビネガーなるものがついてきたのだ。

「これこれ」
ウエカツさん、おもむろに瓶のふたを開け、
「本場じゃーどばどばっと一瓶くらいかける人がおる」
ほんまかいな? とは思ったが、この薫り高い、かすかに甘みを含んだイギリス製の酢がうまかったのだ。
これなど大阪の豚まんを酢に浸して食べる、に通じるものがある。

ただしフィッシュアンドチップスに非常に合うかというと疑問だ。
だいたい揚げたポテト自体うまいわけで、水割りのバーボンがクイクイいける。
白身のフライもうまい。
ボク的には、イカリソースをどばどばビジョビジョにかけた方がうまいんじゃない? ということはその場では言えなかったね。

しかし本場イギリスでは〝モルトビネガーなくしてフィッシュアンドチップスを食べない〟と言われては改めて自宅でやってみないわけにはいかない。
そこでモルトビネガー探しを何故か京都で始める。
三条あたりに明治屋があって、そこにあったのだ。
ただしアメリカ製。
本場物ではないので、待て暫しと考えてやめた。
この日、食通のヤマトシジミさんが一緒だった。
これまた何故かボクと一緒に築地でウエカツさんの叫びを聞いていたので、アメリカ製でもいいやと購入する。

ボクは探しに探して、結局京橋の明治屋でパブに置かれていたのと同じ銘柄「サーソンズ」のものを見つけ買い求める。
そしてスケトウダラのフライにポテトのフィッシュアンドチップスにどばどばビジョビジョにかけたらまずくはなかった。
お酢好きなのでうまい、とも思ったのだ。
思わなかったのが子供たちで、お父さんはもう一度、フィッシュアンドチップスを作り直したのだ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、スケトウダラへ
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スケトウダラを一本買った。
粗はみそ汁に、身はフライに、そして抱えていた卵巣は塩漬けにする。
ちなみにこのスケソ(スケトウダラ)、1本400円なのだ。
ちょっと単純計算してみる。
たら子一腹、スーパーで買えば200円くらいだろう。
だからフライと豪華絢爛なみそ汁を200円で作れたことになる。
パン粉、卵、みそ、昆布一切れなどいくらにもならないだろう。

さて、振り塩してビニール袋に入れてほったらかしておいたスケソの卵巣を魚焼きの網の上でじんわり焼く。
作っておいた小かぶの一夜漬けを切り、この二皿で遅い晩酌。

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たら子が焼ける間にシャワーを浴びて、ほっと一息。
焼きたてのたら子を、そして合いの手に小かぶをつつきながら、日本酒をいっぱい。
今回は旅の前なので、多摩自慢辛口。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、スケトウダラへ
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島根県大田市(おおだし)和江は日帰りの底曵網漁で有名である。
ここでは様々な発見をしているが、今回のはまさに大発見。
高鮮度のソウハチガレイの刺身のうまさにビックリ。

普通ソウハチガレイは干物原料でしかない。
この干物が独特の風味と脂から来る渋みがあって、なかなかうまい。
島根県など山陰でも「えてがれいの干物」は上等なのである。

だから干物の魚だろうと思っていたのが大間違いだった。
活け締めにして水揚げしたそばから出荷して、身はまだ硬直している。
刺身にして透明感があり、食感がいい。

また何よりもソウハチガレイの旨味の濃厚なことに驚きを禁じ得ない。
一切れ一切れが舌に強い味わいを残してくれる。
さて、ソウハチガレイを干物原料と見なしていたことに反省。
またソウハチガレイの刺身をもっと多くの方に食べてみていただきたい、今日この頃なのだ。

丸貴商店
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ソウハチガレイへ
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ヨロイイタチウオという和名はだれも知らず、「ヒゲダラ」という東京での呼び名も、かなり魚に通じていないとわからないだろう。
やや深海に棲んでいる魚で、主に駿河湾から西で底曵網などでとれる。
タラとつくけど、タラではない。
タラに近い仲間で聞き慣れないアシロ目に属している。
アシロ目では唯一流通する食用魚でもある。
小さいと雑魚扱いだが、1キロを超えると途端に高くなる。
キロあたり2千円から3千円なんてざらだ。

しかも特筆すべきは、鮮魚ではなく、明らかに加工原料なのに高いということ。
加工というよりも料理と言った方がよいかもしれない。
多くが昆布締めになる。
そのまま三枚に下ろして刺身なんてことはしないのだ。

東京でもヒゲダラの昆布締めを名物にする魚屋がある。
こんなものを作る魚屋は高級で敷居の高さを感じる、それほど昆布締めになってしまうと高い。
敷居の高さを感じるくらいなら自分で作るに限る。
1キロのヨロイイタチウオを買っても2千円。

三枚に下ろして、皮を引き、 6時間ほどで軽い締め加減ながらできあがる。
3日くらいは楽しめて、それでも余ったら、焼くといい。
意外に知られていないだろうけど、昆布締めを焼くと非常にうまい。

これは明らかに酒のアテだと思う。
だけども子供たちも好きなのである。
いつの間にか皿の上が寂しくなっている。

ほとんどクセのない白身で、昆布で締めてもシコっとした食感が生きている。
淡白な味わいなのに、昆布の旨みに魚自体の旨みが負けていないのも不思議だ。
やや厚めに切って、心地よい食感の中に、ちゃんと魚からくる、たぶん脂由来の甘み、そして魚自体の旨みが浮かんでくる。

酒は島根県の銘酒『月山 純米酒』。
最近島根は酒所なんだと思うのだけど、「ヒゲダラの昆布締め」は酒をよりうまくさせる肴なのである。

1 三枚に下ろす。振り塩をして一時間ほど。気温によって時間を変える。
2 昆布は酒と水半々に漬けてもどしておく。
3 水洗いして、よく水分を拭き取ったヒゲダラを昆布で包んで冷蔵庫で寝かせる。
6時間程度で食べられるようになるが、昆布の味わいが勝っても、それなりにうまい。
3日くらいはそのままで、締まりすぎたなと思ったら焼いてみてほしい。
これもなかなかうまい。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ヨロイイタチウオへ
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兵庫県日本海側に香住(かすみ 現香美町)という町がある。
松葉ガニ(ズワイガニ)で有名な土地で、日本海の様々な海の幸がとれる。
ここだけで作られているものに「焼きぎす」というのがある。
沖合でとれるニギスを素焼きにしたもの。
たぶん香住周辺だけで作られているのではないだろうか。

関西までは来るが、まず関東では見かけないもの。
なかなか優れた加工品なので残念でならない。
最初に買ったときはただあぶって食べた。
気醤油に生姜で酒の肴に。
これもうまいにはうまいが、大根と煮つけて食べる、湯豆腐に入れる。
あぶったものをほぐして酢の物にする。
小松菜などの煮浸しに加えるなど、むしろ料理材料として重宝している。

今回は大根との煮物を作る。
焼きぎすと大根は非常に相性がよく、改めてそのうまさに感激する。
あっという間に作れるのもいい。



大根と焼きぎすを炒め煮にしたものだから、当然旨味は焼きぎすから出てきたもので、それなのに大根を味付けしてあまりある。
だしの利いた大根はうまい。
ほぐした焼きぎすだって、ほどほど旨味、歯触り、ほくっとした風味が残っていてよろしいな。

これは酒の肴ではもったいない。
ご飯には絶好のおかずであり、まことに味わい深い。
夕べに作るよりも、朝ご飯用に我が家では作る。

料理法
1 大根はやや長い拍子木に切る。焼きぎす適当にほぐしておく。
2 大根をごま油で水分が出るくらいに炒め、焼きぎすを加える。
3 炒めてなじんだら、みりん、酒、少量の砂糖、しょうゆで味付けする。
4 水分が少なくなったら出来上がりだ。鷹の爪などで辛みをつけてもいい。

浜貞商店 兵庫県 美方郡香美町 香住区香住1806-4
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ニギス



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