八王子ですし屋といったらとにかく多いのが『鮨忠』という店。これは八王子市南町の『鮨忠本店』からののれん分けした店。この『鮨忠』の中でも「横川町」、「元本郷」、「元八王子」のお三方には、寿司に関していろいろ教えてもらっている。
土曜日教えてもらったのが青柳の仕込みである。
八王子上壱分方町の『鮨富』さんから「青柳(バカガイ)を掃除して何も入れていない鍋に身の部分を入れて一握りの塩を加える。これを手でかき混ぜながら火にかけて、手を入れられなくなったら冷水に取る」というのを教えてもらった。これは『市場寿司 たか』の渡辺隆之さんもこれに習っている。
そして『鮨忠』さんたちのやり方であるが、むき身にしてワタを取り去った青柳を常温の塩水に入れる。これを火にかけて、かき混ぜながら温めていく。そして湯に手が入れられなくなって、青柳の身の色合いが程良く変わったら冷水に取るのだという。
教えてもらったら、すぐやってみるのがボクの信条である。土曜日に八王子魚市場に残っていた北海道八雲町のバカガイを全部引き取りいざ挑戦。
「鈴木さん(八王子魚市場の貝などの担当)、ごっそり青柳もらって帰るぞ」
カッコつけて言い放ってみたら。
「あと1キロしかないだろ」
ニコニコ笑って2百円まけてくれる。あ・り・が・と!
1 むき身にして星(貝柱)、足とワタ、身にわける。
身(足)の部分にワタが入っている。またこの時期、北海道のバカガイは産卵期なので、ワタと生殖腺を押し出すように取り去る
ヒモなどはみそ汁や煮物に、貝柱は天ぷらに
2 鍋に身と塩を入れて水を加える。
このとき水は透明で澄んでいる
3 火にかけて箸でかき混ぜながら時々水の温度を指で確かめる。
火にかけると水が微かににごり、身が少しだけ締まる
4 どこか透明であった身の部分が白くなり、微かに仕舞ってきたら、ちょうど指を入れていられない温度になっている。
5 これを冷水にとり、水分を切って、身を開いて出来上がり。
冷水にとったら、こんどは流水下で汚れやぬめりを完全に取り去る
これがボクの晩酌の肴。青柳の持ち味は独特の苦みと甘味、これに高清水の辛口を2合ほど
塩と身だけで煎るようにするのと、塩水を使うのと、どちらも甲乙つけがたく味がいい。なにしろ青柳の火の通し方は難しいのだが、このやり方なら簡単に「火の通り」が判断できる。
寿司などの技術本には熱湯に潜らせるとあるが、明らかにこの『鮨忠』方式、『鮨富』方式の方が上であるように思える。また塩水を使う方が一度にたくさんの仕込みが出来るように思うのだが、これは素人にはわからない。
市場魚貝類図鑑のバカガイへ
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