管理人: 2007年2月アーカイブ

ヒイラギ科を改訂

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コバンヒイラギのページを作成
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掲載種 1836


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 サケの王者であったベニザケのサケ界での凋落は養殖サケの台頭によるのだ、というのを何度か書いてきた。その昔はもっとも味のいい、またもっとも高価なサケ科の魚であったわけで、戦後北洋でのスターといえばまさに本種をさしていたのである。

 それが今ではときに標準和名のサケとあまり変わらず、またときに養殖ギンザケよりも価格的に低いという現象が起きてきているのだ。
 例えば2006年度の冷凍輸入ベニザケの平均は481円、ギンザケ461円、サーモントラウト519円である。ここでは養殖のサーモントラウトより低く、またギンザケとの差がほとんどない。ちなみに2005年度はベニザケ524円、ギンザケ411円だった。このギンザケ、サーモントラウトとの価格差はベニザケの好漁不漁によっては、まや変わってくるだろう。またますます脂嗜好が進むと、天然物で脂ののりにバラツキがあると、価格がもっと下がる可能性もある。
 そのベニザケには釣りもの、刺し網、巻き網など天然であるゆえの3種類のランクが存在する。釣りものが最上級であるのは当然であるが、刺し網は未成熟のもの、巻き網は成熟しつつある・産卵を控えたものである。塩鮭を専門に扱う業者や魚屋にとってはベニザケというのは良し悪しがあって扱いにくい。それに反してギンザケのほうが品質が一定でいいのだという。
「それではベニザケも養殖すればいいのに」、と素朴な疑問を大都魚類のサケの専門家に聞くと、なかなか難しいのだという。ということで今回のam/pm「紅鮭」の原材料「紅鮭」も間違いなく天然なのである。すなわち天然を差す原材料名は「鮭」「鱒」「紅鮭」となる。ここで間違って欲しくないのは「ますの寿司」にある「鱒類」、「鮭類」という非常にいかがわしい曖昧な原材料をのぞくということ。

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 この「紅鮭」という商品名の“たっぷりしっかり具がおいしい手巻きおにぎり”。なかなか原材料もたまたまベニザケだったのでわかりやすい。しかもご飯、海苔などが香ばしく美味である。とくに中に入っていたベニザケがフレークではなくほぐし身だったのもいい感じだ。この味わいからするとなかなかベニザケも厳選されている。
 ここで原材料表記をもう一歩すすめて原産国を入れてはいかがだろう? おにぎりの価格も138円と高めであるし、ベニザケもなかなかいいものだと思われる。それなら胸をはって「ロシアなのか、アメリカなのか、カナダなのか?」明記してほしいな!

am/pm
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シノブフーズ
http://www.shinobufoods.co.jp/
●参考/日刊シーフーズ・ニュース


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こはだ食べたいぞ

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 最近、思うに「こはだ」とは、なんとうまいものなのだろう。毎日、毎日、食べても、食べても、また、食べたくなる。

「こはだ」とは、江戸に置いてのコノシロの幼魚、10センチ前後のものを言う方言である。でも最近、「新子=4、5センチ」「こはだ=7、8、10センチ前後」「なかずみ=12〜13センチ」「このしろ=15センチ以上」という厳密な区分の内、「なかずみ」を知らない、もしくは省いてしまう傾向を見受ける。ということで「こはだ」の区分が広がって来ている。これには古い職人たち、寿司通と言われる人たちは大いに嘆かれているようだ。でもボクのようにいつも懐寂しいオヤジは、そんな「嘆き」とは無縁である。「こはだ」と出されたものが「なかずみ」であっても全然気にならない。冬の時期なら脂ののった「なかずみ」大歓迎である。それよりむしろ“こはだ”サイズが少ない時期に法外な仕入れをする寿司屋の方が怖い。

「冬になると、脂がのってくるのはいいんだけど“こはだ”サイズは少なくなるね。ちょっと骨が気になってきた。でも味からすると“なかずみ”はいいよ」
 たかさんがネタケースに「こはだ(厳密にはなかずみ)」を仕舞いながら呟く。確かにその通りなので、やや脂が落ちてきたとは言え、この「なかずみ」がすこぶるつきにうまい。
「でも、最近の客は“しめもの”を頼まないよ。だからさ、知ってる顔だけにすすめるだろ。これが嫌なんだよ。すすめなくちゃいけない」
 だから『市場寿司 たか』でもあんまり仕込みすぎても無駄になるそうである。もったいない話である。また“光りもの““しめもの”が嫌いというヤツは愚か者であり、寿司屋での楽しみの大半を知らぬものたちである。

 たかさんの作る「こはだ」は酢も塩もしっかり、適度に利いている。ちょうどすし飯と合わさっても、その酢は感じられないほどで、塩加減から「こはだ」の味わいが浮き上がってくる。ボクは昼の営業前に出来上がったばかりの「こはだ」をつまむのが最上級の楽しみである。

 天気予報では、九州には黄砂が見られたという。とすると今年は「新子」が出るのも早かろう。反面、「なかずみ」すら少なくなって、たかさんが市場を右往左往探し回るようになってしまうのも早いのだろうか。この暖冬傾向が気がかりでしかたない。

市場寿司 たか
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八王子の市場に関しては
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市場魚貝類図鑑のコノシロへ
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 高知市浦戸湾の漁師・永野廣さんから「しばづけ漁を今年からまた始めます」という知らせをもらう。そして送られてきたのがこの画像。「御畳瀬の(漁師)北岡さんと廣丸の仲間で柴を括って錘をつける作業中です」とのこと。
 この「しばつけ漁」は別名「そだ置き」とも言われるもの。また漢字で書くと「柴漬」となる。この場合の「柴」は古くは灌木の枝などをさしたもの。昔話のおじいさんが山に刈りに行く、雑木である。
 これを集めて束ねる。それを川や河口のよどみに沈めておくのである。するとこれをねぐらと思って魚が寄ってくるのだ。それを引き上げながら、こぼれ落ちる獲物を網で掬う。
 この「柴漬漁」はその昔は日本中で見られたもの。年々各地で姿を消していき、今ではもう希なものとなってしまっている。
 獲れる物は小型のエビ、ハゼ、ウナギなど。汽水域なので初夏には真いか(カミナリイカ)もとれそうだ、とのこと。とにかくとれる種は多く、浦戸湾の新しい味覚をもたらしてくれそうだ。

土佐の廣丸へ
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 生粋の沼津っ子である飯塚栄一さんは、また沼津の深海生物をもっとも知悉する。「まあ、飯塚さんにわからないことは誰にもわからないでしょう?」という沼津の漁師や仲買も数知れずなのだ。そんな飯塚さんがどっさりと沼津の深海魚を送ってきてくれた。これは『市場寿司 たか』に持ち込むしかない。
 さっそく仕込み。カナド、ソコカナガシラ、フウセンキンメにトウジン、それにヒメにホウセキキントキまである。朝っぱらから、これを全部食べてみる。やっぱりうまい。

「カナドのうまいね」
 最初に食べたのがカナドなので呟くと、
「こっちの方がいいんじゃない」
 目の前に来たのが小振りのソコカナガシラ。これは片身一かんである。

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ソコカナガシラの片身一かんの握り

「ああ、こっちの方がうまい」
「これがトドメだ」
 次に来たのがトウジン、沼津では「げほう」である。
「もう、どれがいちばんうまいのかさっぱりわからない」
 こんな混沌とした状態に陥ってしまった。

 さて、この珍しい沼津の深海魚。『市場寿司 たか』のネタケースに金曜日にはあるだろうが、土曜日まで残っているだろうか? 早い者勝ちだよ。

 飯塚さん、ありがとう。

飯塚さんの海の世界
http://www.numazu.to/sea/
市場寿司 たか
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 銚子や三陸からくる生のメカジキはうまいのである。でもスーパーなどでは、なかなか国産で生というのには出くわさない。ちょっとお高いデパートやブランドスーパーなんかだとあるにはある。でも切り身1つが700円、800円なんてことになる。
 そんな高級品であるメカジキも中落ちならお気軽に買えるのだ。しかも『源七』のは厳選されている。

 この中落ちを買ってきたら、まずは生で食べてほしい。ボクは刻んだ分葱をまぶして、ニンニク醤油、もしくはショウガ醤油で食べる。また単にショウガ醤油でもいい。我が家の子供たちはマヨネーズしょうゆである。そう言えばカツオやわかし(ブリの幼魚)をマヨネーズしょうゆで食べるというのも、遙か20年以上も前に千葉勝浦のカツオ漁師に教えてもらったのである。また、もし余ったら三杯酢で煮る。もしくは煮つけにするときにレモンを数切れいれて煮上げる。ほかには味噌でたたいて、さんが焼きにもできる。

 ボクはスーパーが苦手である。ほとんど値段を見に行くだけすぎない。スーパーでの値付けは世を反映しているので無視するわけにはいかない。でもあの面白みのない品揃えには、まったく呆れかえる思いがするのだ。そこへ行くと一般の魚屋や市場の「だいだい」の品揃えのなんと面白くて人間味あるれていることか! 
『源七』でのパックも詰めてしまった後と、詰める前では値段が違うし、もっと安くしたいなら自分でせっせとかき取ってくればいいのだ。このときの若だんなとの微妙なやりとりがスリル満点なのである。面白い!
 さて、『源七』の今日のパック詰めはなんだろうね?


八王子魚市場の市場に関しては
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 近年、どこへ行っても見かけるのが“トラウト”もしくは“トラウトサーモン”“サーモントラウト”である。これはニジマスの一世代交配種。すなわち本来この世にないものを人口的に作り出したものである。ただし種としてはニジマスとニジマスの掛け合わせなので「ニジマス」でしかない。そのために成熟しない、また成長を止めたり、早めたりという出荷調整も可能なのだ。

 ちなみに「ます」という概念はその昔、標準和名のサケ以外のサケ科の魚に対して使われたもの。だから「サクラマス」なのであり「カラフトマス」であったのだ。国内でも少ないながらとれるキングサーモンの標準和名にも「マスノスケ」で「ます」が入るし、今は「ベニザケ」だが、その昔は「べにます」であった。
 サケは大量にとれて食べてもうまいものである。だから江戸時代の産地、藩、蝦夷地でのアイヌの人々にとって大切な産物でもあった。特別だったのだ。
 そこにアメリカから「レインボートラウト」が明治期にやってくる。たぶん英語の入ってきた明治初期に言葉の意味としては「トラウト=マス」「サーモン=サケ」の基本は出来ていただろうから、「虹鱒」とすんなり名が付いたのである。ここにまた誤解が生まれる。後々、もっとサケマスの定義を深くするに「トラウト=淡水産」「サーモン=海水産」という意味合いにぶつかる。淡水魚として持ち込んだニジマスはこの点でもわかりやすかったのだ。だから現在での「マスというとニジマス」という概念が純然とある。
 そこにはまさかニジマスが「スティールヘッドになって海に下る」とは知らなかったのが一般的なところだろう。サケのように川で生まれ海に下るのだから当然、海で養殖することもできるのである。でもスティールヘッドをそのまま海で飼うと成熟してしまう。それでは歩留まりも出荷時期も狭いのである。この問題は未だにギンザケには残っている。
 じゃあ成熟しない、また餌を減らしたり、多くしたりの出荷調整に耐えうるサケの品種を一世代交配種で作り出そうとした。それで出来たのが「サーモントラウト」なのである。だから標準和名はなく、どうしても銘記しろとするとニジマスということになる。

 養殖であることから生食しても比較的安全である。ニジマスだから身の色合いは美しく、そして味もいい。チリで養殖して北海道に輸入、そこで骨などを抜いて後は切るだけにしたものが「刺身サーモン」である。
 チリという国は南米のしかも最南端にある。当然、地理的に産地としては遠いのであるが格安のギンザケの生産とサーモントラウトやアトランティックサーモンをフィレに加工するなどでサケ界ではノルウェーとともに二大勢力となっている。現在のところチリではギンザケの生産が主要なものである。これに追随してきたのがサーモントラウト。それが証拠に我が国においても見かける機会が増えていて、市場などでは毎日のように大量に解体されている。
 その上、生食の場合、アトランティックサーモン、次いでサーモントラウト、そしてギンザケというの序列が出来ている。またアトランティックサーモンが刺身、スモークサーモンなどになるのに対してサーモントラウトは生でも塩蔵、また西京漬けなどの加工品にもなる。

 画像は『市場寿司 たか』でのもの。たかさんのところは個人営業の寿司屋ではもっとも格安に寿司を提供している。しかも一人っきりで切り盛りするということで、なかなか激務の毎日なのだ。だから、その手間と、味わいを鑑みて、少ないながら冷凍や加工品を使わざるおえない。それで、とにかく「サケの生」を選ぶときに、散々迷って選んだのが「兼由」の刺身サーモンである。

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 ボクもときどき味を見ているが非常に味がいい。やはりサーモントラウトとしては割高なものだが骨抜きもされていて便利なのである。

 実をいうと回転寿司ではもっともっと多様に養殖サケを利用している。たぶん、輸入ギンザケも、そしてサーモントラウト、アトランティックサーモンも仕入れ値の加減でどんどん使い分けているはずだ。そして本来は一般の寿司屋では主にアトランティックサーモンを使っていた。
「(値段を安くしているから)お昼にはどうしても、サーモン類が必要なんだ。でも種類はわからないね。最近まで生(鮮魚)を使ってたけど、冷凍もある」
 これは本日も含めて都市部の寿司屋の何人かに問い合わせたときに共通する答え。この「サーモン」にサーモントラウトが進出してきているのだ。このときに問題となってきているのが市場などでの取り引きで使われる「トラウト」という言葉。これでは“マス”になってしまう。そしてサケにもマスにも使える「サーモン」という言葉が登場してくる。

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 だから「兼由」の商品名も「刺身サーモン」なのである。ちなみに裏面にはちゃんとサーモントラウトと表示されている。


兼由
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 毎年、困ってしまうのが高知の永野さんから“えがに”トゲノコギリガザミのメスが到来して、その旨さを表現することである。ぜんぜんうまく、その「うまさ」が表せない。お手上げである。

 例えば、我が古女房が目の前で“えがに”を食べている。それはもの凄く険しい顔つきになっているのだ。これなどグンカンドリが獲物をくわえてきて、それを横取りしようと近寄ってきた仲間に対する「アレ」そのものだ。とにかく一杯確保して、「みんな少しずつ身と内子を残しときなさいよ」と言った途端に黙って“えがに”と格闘している。
 あとは完全に食べ尽くすまで無言となる。どうやらボクもそうなるらしい。この内子のコクというか、旨味というかを舌で堪能しながら、あまりの衝撃に脳天がしびれていく。そこにカデンツァのように来るのが身の爽やかな、それで明確な甘味。まさにモーツアルトのピアノ協奏曲を呼吸少なく一気に聞き通す、そんな30分間なのである。

 そして本日は家人の命令で「残しておいた」、内子と身を使った恒例の玉子焼きを作るのだ。これはとても単純すぎるもの。いい鶏卵を求めてきて、銅の玉子焼器を熱して、“えがに”入りの卵を流し入れる。入れた途端に火を消して、トロリトロリなのをご飯にかけるだけなのだ。そう言えば昔は天津丼にしていたのが、単純に玉子焼きになったのは我が家では“えがに”を食べることでの進化に違いない。

 さて、この時期にしか食べられない究極の美味“えがに”は永野さんの「土佐の廣丸」へ。また永野昌枝さん、廣さん、ありがとうございました。

土佐の廣丸
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市場魚貝類図鑑のトゲノコギリガザミへ
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 築地4丁目から、築地場外、行列のできるラーメンの『井上』、『きつねや』などを通り越して、築地場内を左に曲がる。その道の前にあるのが『長崎県漁連 東京直売所』である。
 ボクの築地での目的が魚貝類を見ることなのだが、場内とともに、ここも外すことの出来ないところとなっている。長崎県は名物のマアジを始め、日本でももっとも魚貝類の豊富なところ、当然その漁獲する種の数も凄まじいのだ。それを長崎県から最速便で持ってくる。
 2月17日にも清潔な見やすいキジハタやクエ、大量のアオハタなど冬にもってこいの鍋、刺身材料が並び、そこに巨大なコマサバ、マサバ、イサキなどが格安で売られている。
 また長崎の特産物のコーナーも、さすがに充実しており、銀座などに出来ている各県のアンテナショップ以上に楽しめそうだ。
 面白いのは長崎県の出身者が立ち替わり、訪れてくること。東京のど真ん中にあって長崎の言葉を聞けるのはここくらいかも知れない。

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入江さんは昨年のシーフードショーで知り合った。まさか『長崎県漁連 東京直売所』の担当であるなんて、最初はビックリしたのであった。

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この干しエビ、よく見るとアカエビやシバエビなどが混ざっている。これなど国産でしかも長崎ならではの優れものかもしれない


長崎県漁連
http://www.jf-net.ne.jp/nsgyoren/
東京直売所
http://www.jf-net.ne.jp/nsgyoren/topix3/index.html


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 徳島県農林水産部水産課が徳島県の漁師にアンケートした「漁師さんが選ぶ! 旨い魚」が公開されている。私、ぼうずコンニャクも協力させて頂いていますが、このように実際に挙げてもらうと面白いものだ。徳島県に感心のあるなしに関わらず面白いと思うので、一見くだされ。

http://www.pref.tokushima.jp/generaladmin.nsf/topics/13C8210F531DFC7B49257243002A74EA?opendocument


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 高知県で“えがに”というのはトゲノコギリガザミのことである。このガザミ科のカニのなにがすごいかって言うと、素直に白状すると「うまい」ことである。しかも重さ3キロを超えるかもという巨大種で、「大きいから大味では」という予想を裏切るように、じわりじわりと強い旨味、それでいて甘味あっさりという繊細で上品な味わいなのだから恐れ入る。
 その“えがに”の旬がこの冬のとき。しかもなんといっても子持ちのメスがうまいのである。このうまさたるや、ボクの表現力では表しようがない。
 まさに「食べてみなければわかりません」というもの。

 さて、遠路はるばる我が家に到着した“えがに”をとったのは土佐のはちきん、永野昌枝さん。我がサイトでもお馴染みの永野廣さんの若き恋女房そのひと。その雄姿をこの日曜日の早朝に見たのである。それもテレビで、それもそれもボクの大好きな『遠くに行きたい』という日本テレビの番組において。
 詳しくは
http://www.to-ku.com/midokoro/thisweek.htm

 それで慌てて、永野さんにケータイ。昌枝さんの元気で可愛かったことなどを話すと、なんと昌枝さんから「見てくれてありがとう」とのお返しに“えがに”がとどいたのだ。別に期待したわけじゃない(?)けど、番組を見てうまそうでうまそうで困っていたのだ。だから今夜は“えがに”を食べて食べて食べまくって、遠く高知を思うのである。
 ちなみに東京では中目黒の『ぼうずこんにゃく』で“えがに”が味わえるかも。

市場魚貝類図鑑のトゲノコギリガザミへ
http://www.zukan-bouz.com/kani/gazami/nokogirigazami.html


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 築地には年間に20回近く行くのではないか? 主にその季節、そのときどきの魚の状況や値段をこの世界一の魚貝類の市場へ見に行くのが目的なのである。その折りに決して買ってこないのが鮮魚である。これは産地からかなりの量の鮮魚が到来する我が家の特殊事情もあるし、築地がけっしてお安くないということもある。

 じゃあ、なんにも買わないのか? というと必ず買ってくるのがマグロのパックである。これは当日卸したマグロの中落ちや切れっ端などを詰めたもの。だいたい1000円ほども出せば、“うまいマグロ”が手軽に味わえる。でも今までいちども手を出したことがないのが最底辺の500円パックである。
 これには間違いなく本ま(クロマグロ)は入っていない。当たり前だが入っているのはほとんどが冷凍のメバチマグロ。もしくは生のメバチの中落ちである。
 17日に買ったものでも「いいな」と思ったのが冷凍のメバチの2パック。あとは1000円、2000円、高いと1パック5000円なんてものもある。こうなると、高いものには大間のクロマグロが入っている可能性もあるだろう。そんなところが日本一のマグロどころ・築地のすごさなのだ。そんな築地でせこーく500円パックを2個買う。これだって築地の醍醐味のひとつだ。

 ひとつは鮮魚も扱っている『小島』のぶつ。もうひとつはマグロ専門店『高英』のもの。『小島』のはまったくの赤身だけ、片や少しだけ脂のあるところが混ざる。
 さて、これを食べ比べてみる。これが甲乙つけがたいものである。『高英』の脂のある部分はたしかに甘味があってうまいのである。これは1パック400グラム以上入っているだろうから、かなりの値打ちもの。じゃあ赤身だけの『小島』が落ちるかというを、これは赤身としてうまみのある上物なのだ。

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マグロ専門店『高英』で買ったもの。脂の部分が混ざっている

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鮮魚も扱う『小島』のもの。全部赤味だが、うまい。

 築地場内を歩いていて真っ先に気づくのは鮮魚を扱う仲卸と同じくらい、いやもっとマグロだけを扱う専門店の多いことだ。なんとこの狭苦しい場内にあるのは日本一、いや世界一のマグロたちである。当然、安いものでも築地は築地、とうぜん、他にはないうまいマグロが無数に転がっている。だから比較的一般人の入りやすい土曜日や、プロたちが引けた後の9時過ぎなんかの場内でマグロパックを探すのは賢い庶民のあり方なのである。
 明日は休日という土曜日など、お父さんの酒の肴、夕ご飯のお供に築地のマグロパックは安くてうまくて、満足度大。ちょっと贅沢して3パック買ってもなんと千の五百円でしかない。買い方のコツは全部違う店で買うこと、同じ店で買った方が安くなる可能性もありお得だが、食べ比べる楽しさがない。
「これは中落ちよ、こっちはブツ。こっちはマグロ専門店のだから、こっちは?」なんて、まさに誰にでも出来る食の冒険である。これぞ築地食育の最たるもの。楽しいぞ!

 さて、500円と限っても築地場内には買い迷うほど並んでいるのだ。そこに600円とか700円とか微妙な値段のもある。それから今回は“ぶつ”とか“切り落とし”を選んだのであるが、中落ち(三枚に卸した中骨についた肉)だけで比べるというのも面白そう。それなら冷凍ではなく“生”である可能性もあるし、安い本ま(クロマグロ)の可能性も秘めている。


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 このスリーエフ『トウカツフーズ』というメーカーの作ったお握り、裏麺の材料を見て「大丈夫なんだろうか? この表示で?」と目を疑った。なんと原材料名なのに「醤油焼鮭」なのである。これでは「輸入ものであるのか? 養殖ものなのか?」がまったくわからない。たぶん、この表示は合法的なものであって、大量消費するコンビニお握りの表示は行政などでも野放しなんだろう。

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 でもこのお握りの原材料が標準和名のサケであるのか輸入のギンザケであるのか、サーモントラウト(トラウト)であるのかは大変重要である。「鮭」とあるなら標準和名の我が国で古来から慣れ親しんだサケだろうと思うのは大きな間違いであって、「鮭」という概念は「サケ科サケ属」全般に広がっている。
 とすると「鮭」という漢字表記はおかしい。この場合の正しい表記は【醤油焼鮭(標準和名)】とするべきである。セブンイレブンの「北海焼鮭」でも思ったことだが、コンビニ業界は養殖、天然、輸入、国産というとても大切なことにまったく無関心であるようだ。
 この表示紙の右上に「安心素材」とあるが、ぜんぜん「安心表示」ではないことをはっきりしておきたい。

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 さて、食べてみるにやはりコンビニお握りの味わいは平均化してうまいのである。どうも原材料は標準和名のサケかもしれない。ボクなどそれほどサケ通ではないので食べただけでサケの種名が当てられない。やや脂の少ない「鮭」の身に醤油味がほんのり感じられる。なかなか工夫された味わいである。
 このような工夫が25万トン前後も漁獲されている標準和名のサケがあるのに、それに比肩するほどの養殖サケを輸入することもなくなるだろうと思える。


スリーエフ
http://www.three-f.co.jp/
トウカツフーズ 埼玉県川口市元郷4の5の1 


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来月3月10日に築地に置いて、『土曜会』を行います。
早朝7時半に波除神社集合で、午前中には終了する気軽な築地案内です。
築地場内の案内、市場などの勉強会、また買い物アドバイスをいたします。

申し込みはメールにて
メール申し込みを受けましたら、『土曜会専用掲示板』のアドレスをお知らせします。


yobi@ZUKAN-BOUZ.COM


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 1か月ぶりの築地である。時刻は7時半。近年、築地は一般客が早朝から押し寄せて、賑やかなことこの上ないのであるが、今日は人出が少ないようだ。いつものように波除神社、海幸橋をわたって場内に入る。場内はいつものようにターラーが凄まじい勢いで行き交い、激しくハンドルを切り、人と物の間をすり抜ける。積み上げられた発泡の山、古くさび付いた製氷所。
 場内水産棟はここからちょうど扇のように奥に向かって広がっていく。その要に一番近い入り口から入っていく。入った途端に【日本丸大】でちりめんを買っておく。ちりめんはいつも徳島から取り寄せているのだが、ちょうど切らせているのだ。築地場内にあって、ちりめん、しらすの品揃えではこの店がいちばんではないか。ここで買い求めたのが産地不明ながらキロあたり2700円という手頃なもの。これを500ほど買い求める。ちなみにスーパーなどで売られるちりめんの最小単位は30グラム袋、やや大きいもので60グラムなのである。比較して500グラムという分量がわかるだろう。築地場内ではあまり小さな単位で売ってくれない。ちりめんなら最低でも300グラムくらいを買う。

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 場内を見て歩くに、今週の荒天を繁栄して、全般に値段が高いようであるし、まためぼしい魚がほとんどない。そんななか【丸半佃寅】に北海道江差からのイバラモエビ。当地では「鬼えび」である。これは甘エビなどのタラバエビ科ではなく珍しくモエビ科。身がしっかりしていて甘味がある。見ているとご主人らしき人が「それは昨日のだ。ダメダメ」という。さすがに築地は「いいものを売りたい」という気概がある。

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 そのまますすむと【飯田水産】という店でヒメコダイを見つける。この店、いいものおいているな、と感心してヒメコダイを撮影すると。「撮影はだめ」だという。どうもこの店は一般人お断りの店であるようだ。
 活けのトリガイ、クロアワビ、タイラギを見かける。アカガイも豊富にある。さすがに築地だなと思うときである。

 その先に【角に十の字】。ここは珍しくマカジキを扱っているのだ。ちょうどマカジキを解体していて、これが土曜日でなかったら買って帰りたいものである。マカジキは今でこそマグロの陰に隠れているが、その昔は赤身の刺身と言えばマカジキという時代があったのである。

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 魚がないせいなのか、今日の場内は人が少ない。そのぶんじっくり見てまわれるのである。佐島からのワカメ、秋田からの黒メバル、青森からのウスメバル。

 三陸からの“かじか”ニジカジカが目につく。【小島】という店でニジカジカを見ていたら中にギスカジカを見つける。キロ/700円であるので、これを購入する。最近、ギスカジカが八王子に来ないのである。同じく【小島】で冷凍ばちの切り落とし500円も買う。本日の場内歩きのテーマが「マグロ500パックを買ってくる」というもの。

“このこ(マナマコの卵巣)”の袋詰めを【丸富】で見つける。一袋3300円は安い。ロシアからの輸入甘エビ類を解凍して売っている店で東サハリンの種名のないパンダルス属の“ぼたんえび”を見つける。あとは三陸底引き網での“ぶどうえび(ヒゴロモエビ)”。

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 ぼんやり歩いていると、不意に声がかかる。気がつくと【大音】さんの店の前。
「これなんでしょうね」と見せられたのが“青ひらす(ホワイトワレフー)”のスモーク。これは千葉県市川市の三洋食品の作ったもの。なかなか美味なので、【大音】さんに取り扱ってみたらとすすめる。

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 キンメダイ、ヒラメ、オニカサゴにカサゴ、アカムツにクロソイ。なんでも揃ってはいるが珍しいものめぼしいものが見つからない。マハタ、キジハタ、オオモンハタ、アオハタ、クエなどが多いのは冬らしいともいえそうだ。なかには20キロを超えるクエもある。またなかでもアオハタの多さは群を抜いている。

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これは総てアオハタ

 そろそろ疲れたなと思っていたら【高梨】の前に来ていた。その店頭にあった能登産“甘エビ(ホッコクアカエビ)”の値段がすごい、なんとキロ/27000円なりである。
「一本で500円くらいになるんじゃない。二本ならちらし寿司が食える」

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 確かにその通りだがこれは見るだけで満足。他には“鬼えび(イバラモエビ)”、“ぶどうえび(ヒゴロモエビ)”“ぼたんえび(トヤマエビ)”。どれも半端な値段ではない。

 築地魚市場というのは鮮魚だけがいいのではない。先の【日本丸大】はちりめん干物、乾物。
【近長】には見事な昆布が何気なくおかれている。いい昆布を見ると無理しても買いたくなるのだが、今回は断念。

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【丸蒲食品】には各種すり身。“ぐち(シログチ)”ハモ、“たら(スケトウダラ)”、これを買ってきて自家製の練り物を作るのもいいだろう。

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 そろそろ9時近い頃、マグロの【鈴与】で鮟鱇さんに出合う。その【鈴与】に珍しくコシナガがあって、なんと売れてしまっている。これは残念至極。これはもう何年も探しているもの。寿司図鑑にはどうしても欲しいマグロネタなのである。今年は幸先悪しである。


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『まつ浅』は八王子大和田のいたって平凡なそば屋である。カツ丼もサンマーメンも、もちろんそばだって、味がいいので評判なのだ。でも、この店の通称浅やんを有名にしているのが、食いしん坊釣り師としてなのである。なにしろ「うまい魚しか釣らない」というまっとうな沖釣り師なのである。今時の「釣りはスポーツだ」なんていう風潮は大嫌い。釣った魚をいかにうまく食うかというのが、この男の主題になる。

 その浅やんお勧めは数あれど、最近一押しなのが、「さばのしょうゆ干し」。この作り方が凄まじい。
 まずは秘伝の醤油ダレを作る。「どうやって作るの」と聞くと、「教えるわけないだろ」とけんもほろろ。たぶん、そば屋だからしょうゆにみりんかな。それを大きめのタッパーに入れて大磯の沖合にある「瀬の海」に船出するのだ。この船の本命は当然、マアジ。

「最初にね。アジは必要なだけ釣るわけ(これは自慢である)。今の時期のアジもうまいからね。だいたいそこそこアジを釣って、もういいかなとなる。そしたらさ、うわっかた(浅いところ)を走っているサバを狙うの。今の時期はね、底にいるサバはうまかねえ。上のがいいの。水面近くにカタクチイワシがいっぱい群れているの。これをいっぱい食ってるからかね。上にいるサバがうまいの」
 どうやら「上にいるサバ=ゴマサバ」、「底にいるサバ=マサバ」であるようだ。
「釣り上げるだろ。そしたらさ、すぐに頭落とすの、そして開いて、しょうゆの中に放り込む。まだ身はいかってる(生きている)だろ、しょうゆのなかでクククっと反り返えってくるのさ。しょうゆをすってるんだろうね」

 大変な代物をもらい受けたものである。でも今夜の晩酌、肴はこれしかない。
 夕食の支度が終わり、落ち着いたところでサバを焼く。身の方から焼き始めたら、驚いたことに身がクククっと反り返り始めた。
 これはいきなり海の中から釣り上げられたゴマサバが、「いやだいやだ」と思っている内に、頭をストン、身をばんと開かれてしまう。「私、死んだの」と気づく間もなくしょうゆ地獄に放り込まれてしまって、頭がないので泣くに泣かれない。きっと「私つらいわ、つらいわ」と泣いてるんだろう。それに浅やんのあまりの早業に「死んでしまったんだわ」とわからなかったのかな。成仏できなかったんだろうね。その怨念がこんなガス台の上で蘇ってきたのだ。「成仏しろよ、成仏しろよ」と箸でなだめながら焼いていく。

 焼き上がると、こんがり、こんがり、それはそれは見事である。しょうゆの色合いの表を外すと中には真っ白な、それでいてプックリ盛り上がるような身がはじけている。

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 味わいの表現は難しいけど、しょうゆ味は、それほど強くない。むしろ香ばしさが鼻を通り抜けていく。そして暖冬だとは言え、2月のゴマサバにこんなに脂がのっているなんて。そう言えば高知名物「清水サバ」の旬も真冬だったな。冬のゴマサバ恐るべし。こまったことにサバがうますぎて、酒がすすまない。「佳肴とは言えませんな」なんて三遊亭圓生の長屋のご隠居風に呟いてみるが、「でもうまいね」ともしみじみ思うのである。
 しかし食いしん坊釣り師とは「凄いもの」だと浅やんに感謝するのだ。

●最後につけ加えると、八王子大和田『まつ浅』はうまいそば屋であるのだ。
まつ浅そば店 東京都八王子市大和田町6丁目12-28
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 青森の田向さんのところから来たアブラツノザメの「はらす」。これを田向さんのアドバイスにしたがって「お吸い物」に仕立てる。
 田向さんは、「“はらす”を一口大に切り、一塩しておく、これを沸騰した青ネギを入れた湯のなかで煮立たせないように15分ほど煮る」ということだった。確かにこれはあっさりと上品なお吸い物になる。でもすすってみてややもの足りない。むしろ「はらす」のエキスをしっかり汁に煮出した方が味がいいのではないか? と思われた。

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水とはらすとネギの青い部分だけ

 それでもっとも簡単な方法でスープをとってみる。アブラツノザメにはまったく臭みがない。でもことこと煮ていくと、アクも出るだろうし、やはり生の肉片なのであるからクセも出てしまうかも知れない。それで水とネギの青い部分、そして「はらす」の細切りを入れて火をつける。湧いてきたらよくアクをすくい取り、煮立たせないように15分ほど。
 塩で味を調えて、青ネギをとりだし、器についでネギを散らした。これがなんとも素晴らしいスープなのである。まったく臭みがない。そしてスープには濃い旨味と、脂分からくる甘味が感じられるのだ。たぶんこれにコショウをふり、ラーメンスープにしても「魚貝由来のスープ」だとは思うかも知れないが、だれもサメの腹身までは思い至らないだろう。

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 スープで味わった後にもう一度、今度はセージとローズマリーの乾燥葉を入れて30分ほども煮詰め、塩コショウで味つけ、冷やしてジュレにしてみた。これがブルルンとした食感であって旨味が強く、いい味わいである。オシャレを気取ってシブレットを飾ると見た目にも非常に美しい。
 アブラツノザメの「はらす」は和だけではなく、フレンチの素材としても面白そうだ。


田向商店
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マダラ子の煮つけ

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 いったい「たらこ」とはなんであるのか? 「親の顔が見たい」というならば、鷹を生むトンビの親、スケトウダラさんが「私恥ずかしながら親なんです」と名乗り出ることになる。
 なんだ、タラ「子」というから「たらちり」「タラの昆布締め」の鱈かと思えば、練り製品になってしまう「あんたのようなヤツが親かいな」というのは酷だろう。スケトウだって好きですり身になっているわけじゃない。それに鮮魚としてもうまいのである。

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これがマダラの子。なんだか表面が薄汚れていて、見ていて迫力がある

 じゃあ、正真正銘の鱈、真鱈の子はどうなんだいというと、これが不肖の子なんである。市場での評価はかなりの下段。だいたい白子があれほど優れているのに、真子の安さはヒドイじゃないか? 白子はキロあたり5500円もするのに、真子は1000円しかしない。かの「たらこ」だってキロあたり4100円だからマダラ子の4倍なのである。

 その価値4分の1の「真たらこ」が大好きな人がいるらしいと気がついたのが今週になってから。八王子綜合卸売センター『高野水産』が毎日仕入れてくる一箱を、そのままごっそり持っていく。誰なんだろうと気になって張り込みを開始。
 すると意外やいたって普通の食堂のオバチャンなのである。
「バカね。わたしゃ、生まれが山形だっすから。この煮つけたのが好きなんだよ(ここんところ波線を描くように高低をつけて読んで欲しい)」
 お客にも好評で小皿に入れておくと真っ先になくなるんだという。それを脇で聞いていたのが秋田出身の寿司職人。
「そうだ。子供の頃食べていた“たらこ”は“鱈子”でもマダラのこだったすね」
 なんだか二人してうれしそうだ。
“真だら子”は決して“すけそう子(スケトウダラ)”のようにきめが細かいわけでもないし、旨味が強いわけでもない。「でもコックリした味がいいんだー」という。
 それならと一腹、買ってみる。この一腹がなんと500グラム近くある。キロ当たり1000円だから、こんなにたっぷり買い込んで、500円玉でおつりが来る。

 作り方は鍋に砂糖、酒、みりん、醤油を煮立たせる。煮立ったところに一口大に切った「真たらこ」を放り込む。煮汁は酒が多めで全般に甘めにする。食堂のオバチャンが「甘い方がうめーよ」というのに素直に従がったのだ。鍋を適度に返しながら短時間で煮上げる。残念だったのは“真たらこ”を一度期に入れて丸まらなかったところだけ。

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 この煮たらこがうめー。うまくてご飯が進みすぎ。なんといってもやっぱり甘くホッコリホッコリした優しいのんびりした味わいがいい。煮つけをほぐして、ご飯にまぜまぜして“真だらこ飯”にしてもうまい。
 さて、ボクが思うに今の世の無機質でギスギスした都会人には、北国のホクホクと暖かい味わいが救いとなる。間違いない!

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 福島県相馬市原釜からきたアブラツノザメの腹す(はらす)がうまいと書いたら、「それなら青森のも食べてみてください」と田向商店からも送られてきた。なぜなんだろうと発泡のフタを開けたら、そのわけはすぐに合点がいったのである。納得するよりも先に驚いたと言った方がだとうだろうか、そこにあったのは巨大な一反木綿だったのだ。持ち上げると1枚で軽く1キロを超えている。まさか、これが一枚の「腹す」であるとは、持ち主はいかなる大きさなのか?
 築地に入荷する「むき鮫」のなかでも田向商店のは最上級だとされるが、それにしても腹すのこの脂分の多さや、また厚みはなんだろう。これが津軽海峡ならではの釣りものなのだろうか? おったまげたな!
 驚いたばかりいても仕方ない、とにかく焼いてみる。煮てみる。お吸い物を作ってみるのだ。
 最後になってしまったが、田向さん、うまいものをありがとう!

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サケ科を改訂

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信州サーモンのページを作成
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掲載種 1835


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 ある日、市場で知り合いの魚屋が、仲卸に呼び止められて、
「あの、安い“キング”あるんすけど持ってきません。2本だけなんすけど」
 その会話に割り込んで、箱の中を見せてもらう。これがアトランティックサーモン(標準和名のタイセイヨウサケ)なのである。
 アトランティックサーモンは今でこそ「サーモン」で通るのだけれど、長い間「キングサーモン」と呼ばれていた。その名残がなかなか消えないのだ。生食用サケでは今や最高級品としての位置を確保している。

 日常的に市場でみられるサケ科の序列をみると生食用と加熱用で2つに分かれる。
 生食用では
一、アトランティックサーモン(タイセイヨウサケ)
二、サーモントラウト(ニジマス)。量的にはアトランティックサーモンを抜き去っている
三、ギンザケ(宮城県産 値段は高いが量は非常に少ない)

 この中で生食用のトップにくるのがアトランティックサーモンである。生食用にできるのはサケ科でも養殖されたものだけ。天然は原則としては生食は不可となる。もし食べるなら寄生虫などの問題から自己責任となる。そして養殖のサケというとノルウェーでのアトランティックサーモンが嚆矢とも言えよう。同時期に国内では宮城県女川でギンザケの養殖が始まるが、量的にはまったくノルウェーの敵ではない。ノルウェーでの養殖ものが輸入され始めたのが1980年代。生食できると言うことで人気を博したのが1988年あたりからだろう。そして養殖サケが世界的に見ると天然魚の生産量を抜き去り。今日では日本に置いても天然のものを凌駕する勢いなのである。すなわちアトランティックサーモンという養殖魚は日本のサケ科の歴史ある硬い秩序を根底から破壊してしまったのである。
 ノルウェーから本種の輸入が始まったときいちばん問題となったのが「タイセイヨウサケ」という標準和名、もしくは「アトランティックサーモン」という英語名である。これではあまりに馴染みがなく誰も買っていくわけがない。それで苦肉の策で「キングサーモン」として売り出してしまったのだ。この“キングサーモン”が回転寿司、街の一般的な寿司屋でも料理屋でも瞬く間に受け入れられてしまうのである。そして今や生鮮品としての輸入量が2万トンを超えてアトランティックサーモンなくしては寿司業界は成り立たない状況となっている。
 アトランティックサーモンの養殖はノルウェーで始まり、南米のチリの飛び火、そして現在ではイギリス、カナダ、アメリカ、オーストラリアなどへも広がっている。この各地からの輸入ものが築地では一同に交いして見ることが出来る。
●本稿はボクのメモである。アトランティックサーモンに関しては、これからも書き加えていく

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これはイギリスからのもの

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 築地場内は日本広しといえど、見て回るにこれほどワクワクする場所は他に見いだせない。すなわち大人の、食に感心のある人にとっての最高の遊び場である。ただし場内と言うところはあくまでプロが最優先される。一般人は一歩下がって、見て回り、そして買い物をすべきである。
 そんな築地での買い物指南をするなら、これぞというものがいくつかある。もちろん鮮魚の素晴らしさは世界一、これ以上ないものがふんだんに見受けられる。でも初めての築地だったり、あまり魚を扱い馴れていないという人には、鮮魚は冒険過ぎるものかも知れない。そんなプロ的な場内にあって初心者が気軽に買い物が出来るのがマグロ屋と天種専門店である。

 今回の『山五』は天種の店。この手の店にあるのは、めごち(スズキ目ネズッポ亜目ネズミゴチ科の仲間数種類をさす)、シロギス、マハゼ、クルマエビやシバエビ、貝柱(バカガイのもの)などである。他にも季節季節にいろんなネタが到来している。この時期ならマダラの白子なんかもある。「へえー白子も天ぷらになるんだね」なんて驚かれるだろうか? これがプロの手にかかると至味となるのである。
 プロはここで天種を探して持ち帰って仕込みをする。でも初心者や忙しい向きには、ここで開いているのを持ち帰ると便利極まりない。しかも初心者なのに、まるで「天ぷら職人のまねごと」が家庭で出来るのだ。

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 今回ここで見つけたのがギンポである。漢字で書くと「銀宝」。江戸前の天ぷら種としては今では幻ともいえそうな魚。味は当然最上級である。
 見た目はまるでドジョウのよう。背ビレが硬く、素手で触ると痛い目に遭う。天ぷらにするには持ち帰り、背から開き、硬い尻ビレを丁寧に取り去る。これを一般人がやろうとすると大変である! 10本も開くのに小一時間もかかり、身がぐちゃぐちゃなんてこともあり得る。ここは素人と自認して開いたのを求めてくる。持ち帰ったら、開いたものをもう一度丁寧にチェック。残っているヒレや小骨を取り去る。
 後は揚げるだけである。薄力粉を冷やしておく、あまり衣を練らない、油の温度が低くならないように少量ずつ揚げるなど基本に忠実に。これだけで信じられないほどうまい「銀宝の天ぷら」が出来上がる。

 築地場内ではなんども天種を買ってきている。この手の店で売っている小柱なども最上級のものが多い。またシロギスのある店ではそれを、シバエビのある店で一品と買い足していくのも楽しいだろう。注意すべきは店の人が忙しいときや、過度な質問は避けるべき。築地での買い物はあっさり速やかにが原則。蛇足だが、場内で天種を買って、これも築地の八百屋で「天ぷらに使える野菜ありますか?」と買い求めてくると、その日の天ぷらは完璧なものとなる。築地場内場外の八百屋はそれは見事な野菜が揃うのである。
 今回の『山五』は天種の店として、とても親切であった。これは特筆すべき点。


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 八王子総合卸売協同組合『丸幸水産』は鮮魚を中心にした仲卸である。クマゴロウがマグロの柵取りをしている後ろに、なんだかボクを惹きつける古くさい缶詰を見つけたのは、もう去年のことなんである。でもこの大振りの缶詰が「サバの水煮缶」であることを知ったのが今年のこと。それで思わず一缶買ってきてしまった。値段は350円だったろうか? しまった領収書をなくしてしまったのだ。
 でもとにかくそんなに高いものじゃない。赤い1ミリくらいの四角囲みの罫線に「川」のロゴがどことなく水産業華やかりし頃の面影を感じる。

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サバはかたまりでどーんと入っている

 この「さば水煮缶」をおつまみに焼酎を飲むのも、魅力的である。ただし夕食ともなればそれだけでは寂しい、この一缶、425グラムでなにか作れないだろうか? 冷蔵庫を探してとろけるチーズとベーコンの切れっ端、新玉ねぎを見つける。ジャガイモは常備しているし、牛乳は? コップ一杯ほど残っている。

 おもむろにフライパンにベーコンの細切れを放り込む。少し油を入れて弱火をつける。その間に新玉ねぎを縦方面に切り、ジャガイモを洗ってホイルに包み5分間チン。

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サバはベーコンや野菜と一度炒めるのだ。これが肝心

 ベーコンがコンガリしてきたら「さば水煮」をほぐしながら放り込み、少し炒めて、新玉ねぎ、ジャガイモを、またまた放り込む。ある程度炒めたところに牛乳をどばっと放り込んで一煮立ち。ここで塩コショウ。味を調えて、耐熱ガラスの皿に入れる。上から生のオリーブオイルを回しかけて、とろけるチーズをかぶせる。
 これをオーブンで10分から15分焼くのだ。

 自慢じゃないけど、我が家での基本的な食事はほとんどすべてボクが作っている。実際に作れなくてもコンセプトを伝えてから家を出る。
 我が家の日常で一度もやったことがないのが作る料理を考えてから買い物をするなんて大バカ野郎な行為。これは絶対にやってはいかんのだよ。間抜けだし、バカだし、季節を冒涜している。そのときどんな料理を作るかは、季節季節に「いいな」と思ったものを買うだろ。するとその材料が瞬時に勝手に決めてくれる。

 グラタンが焼き上がるまでにみそ汁を作り、きんぴらゴボウを作り、ニンジンのスティック、ブロッコリーのサラダを作る。テーブルに常備菜、めかぶ、佃煮、漬物を置いている間にオーブンがチンとなるのだ。

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サバのグラタンの出来上がりだ

 ボクは焼酎のお湯割りに「銚子のさば水煮」の残り、これにレモン、醤油。これで夕食は一丁揚がりである。

 この「川岸屋水産」の「さば水煮」がいい味である。ぜんぜん臭みがなく、しかもサバの旨味とコクが凝縮されている。久しぶりに食べる「さば水煮缶」そのまんまだけど、肴としてもいいものである。
 また確か東北だっただろうか、素麺やうどんの漬け汁に「サバ水煮」や「ツナ缶」をほぐして入れていたのを思い出す。この「水煮」「オイル漬け」のことももっと調べなければならないな。

川岸屋水産 千葉県銚子市東小川2978
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 八王子魚市場にキロ当たり3100円の香川産のアカガイが来ていた。取り扱っていた鈴木さんに
「大きさにバラツキがあるね。それでもこの値段?」
 聞いてみる。
「国産は今、高いんですよ。これも大きさが揃わないからこの値段なの。これみてよこんなのがある(いちばん大きいのを計りにのせる)」

 量ってみると350グラムもある。だから1個1085円となる。この大きさでは1個1かんの握りにもならない。半身を使えばいいんだろうか? そこへちょうど通りかかった寿司屋に聞いても
「(半身じゃ)形がきれいじゃないよ」
 横に手を振っていくのだ。これは一個のアカガイを開き、その開いたウネを生かして形を作るのである。半身ではそのウネが出来ないということ。
 発泡の前に座ってアカガイを手に取ると、みな持ち重りがする。これは間違いなく刺身にしてうまそうである。お金があるときなら好奇心に駆られて買ってしまっただろう。
 でも1個1085円のアカガイは買いだろうか?


市場魚貝類図鑑のアカガイへ
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 ニチロは鮭に関しては草分け的会社である。古くは明治期にカムチャッカへサケ漁にのりだしている。そして大正期のサケの缶詰生産。今でも「鮭といったら日魯」という意識が水産業に携わる多くの人たちにある。
 これはそんなニチロの白鮭をつかったもの。材料表示に「白鮭」とあるのは他のサケ属とわけるときの呼び名。本当は秋に定理に入ったものなら「秋鮭」、沖でとったものなら「銀毛」とか「目近」とか書いてくれるとありがたい。また何度も書くが原材料表示は()入りの標準和名で、というのがいちばんいい。だから「白鮭(サケ)」「秋鮭(サケ)」とかの表示がより最善だろう。
 さて年間25万トン前後もとれているサケ(標準和名のサケ)が意外に魚屋、スーパーでは見かけない。コンビニのおにぎりでも人気は薄いように感じるのだ。それではどんな使い方をされているかというと、本製品のようなお茶漬け、お弁当用のフレーク、そして、ふりかけ原料となりはてているのだ。
 だから何気なく我々が食べているものが、国産のサケなのであるというのも知っておくといい。フレークにするということは一度完全にほぐしてしまって、骨などを取り除かなければならない。その散々いじり回したものを食用としている。
 本当は切り身を自宅で焼いて食べるのが何倍も健康的であるというのを忘れてはならない。
 このフレークにも焼いてほぐす、蒸してほぐすの2種類がある。そしてこれは「蒸してほぐしたもの」である。蒸しているので、けっして香ばしいわけではなくサケの旨味と塩味を楽しむ。蒸しているがためにふっくらとしているのも魅力的なのだろう。でもこの身のボソボソ感は嫌だな。
 

ニチロ
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 岐阜県、長野県の山間部などに「煮いか」という郷土食がある。郷土食というのは正確ではないかもしれない。なぜならば日本海側の町などから越中鰤のように山越えしてもたらされるもの。その昔はとれたてのスルメイカを浜で茹でて、一晩くらいかけてきたものだろう。裕福な家では鰤を、そうでなければ「煮いか」で正月を迎えたのだともいう。これを適当に切り分け、生姜醤油で食べるのである。

 この茹でたスルメイカ、ヤリイカ、もしくは輸入イカなどは日本海側だけでなく、常磐、東北などでも作られている。当然、生のイカよりも味の劣化が遅く、保存性もいい。それで浜茹でしたのだろうから、イカがとれるところならどこでも作られていたのだろう。また日本海側では「“煮”いか」であるけれど太平洋側では「“茹で”いか」という呼び名にも「煮る」という言葉の地域による意味合いの違いを感じるのだ。

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 今回の「釜ゆでいか」というのは茨城県大洗町、清水商店のもの。酸化防止剤、pH調整材などが入っているものの、味付けは食塩だけ。青森から持ってきたスルメイカを茹でただけというのがいい。身はぷるんと柔らかい。そのまま生姜醤油でもいいし、酢の物、炒め物に使ってもなかなかうまいものであった。

 さて、このイカを茹でるという加工法を持っている地域はどのあたりなんだろう。意外に日本全国で行われている気もするのだけれど、確信が持てない。これも今年の課題である。

清水商店  茨城県東茨城郡大洗町磯浜町6881-72


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 お茶の水から湯島天神に向かい、坂を下って地下鉄湯島駅までのコースはボクの無駄歩き最短コース。時間があればそのまま上野広小路、御徒町と歩くのだが、冬の夕暮れ時を楽しむのには、この最短コースでも充分である。
 その湯島駅に下りてしまおうという交差点そばにあるのが「よろずや」である。夕暮れ時にみる「よろずや」がなんともいい風情なのだ。陳列ケースの下側が白いタイル張り、その奥の裸電球の色合いがなんとも美しい。
 いつも冷蔵ケースをのぞいて、「やっぱり湯島という土地はお高いんだな」と思いながら通り過ぎる。この日も“生ダラ1切れ600円”“生かじき1切れ800円”とあって足がすくむのだ。でもその奥にうまそうな「こはだ」がある。

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 見たところ間違いなく“こはだサイズ”。この時期は「なかずみ」が多く、小振りのを見つけるのは大変だろうな。見ている内に「こはだ」を買いたくなる。
 店の脇に回ると女性がいて、白衣の老人がまな板の前に向かっている。
「こはだ幾らですか?」
「一人前700円です」
 やはり、そんじょそこいらの魚屋よりは値段は2段くらい上である。でもせっかくだから一人前お願いする。「サヨリを混ぜましょうか?」というので2種盛りに。ついでに「タコ酢500円」。合計1200円は我が家としては散財である。

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 この「こはだ」がなかなかうまい。〆ぐあいがやや軽く、ほんのりこはだの味わいが生きている。仕入れが上手なのだろう。まったく生臭みがない。サヨリも上々。タコ酢の酢の味わいが上品で爽やかである。
 まあ、酒場で遭難するよりも、「よろずや」で散財する方が遙かに健康的である。月に一度は「よろずや」で〆ものを買うというのもいいだろう。


よろずや 東京都文京区湯島3丁目34-12


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 日野市豊田駅前にもコンビニがあって、ときどき利用している。たぶん傘を買ってしまった回数の最大はここである。でもここが「スリーエフ」という名前であることを初めて知ったのである。だいたいコンビニに入っても店名のことなどまったく興味の対象ではなく「便利だから入る」すなわちまさしく「コンビニエンス」な使い方をしているということだ。

 ここで面白いものを見つけたのだ。そのお握りが、ずばり「銀鮭」、そして原材料も「銀鮭」とある。

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 しかしこの表示の仕方、だれが考えたんだろう漢字である。コンビニのお握りを買い裏側を見るようになって気がついたことだが、原材料表示の指導をするにプロは存在しないようだ。我がサイトを見てもらうとわかるのだが、標準和名は常に「カタカナ」であり通称、商品名は原則「」でくくる。もしくは漢字か平仮名書きなのだ。すなわちこれだけで標準和名か通称か商品名かが明確にわかる。それなのにコンビニの表示はなんなんだ「責任者出てこい!」。
 でもまあ原材料「焼鮭」とか「鮭類」よりはましなのである。でもね、この銀鮭は養殖なんだろうか? 天然だろうか? 国産だろうか? 輸入だろうか? さっぱりわからん。消費者はこんなところに注意した方がいい。
 近年、ギンザケというと天然だとアラスカかロシア産である。でも非常に量は少ない。そこからするとチリからの養殖ギンザケの多くは日本に来ているのだ。その量たるや凄まじい。2006年で72326トン。ちなみに国産サケの年間漁獲量が25万トン前後だからギンザケだけで3分の1にもあたる。しかもこの多くが塩水に漬けられて塩鮭となっている。と言うことでチリ産の養殖ギンザケが原料ということか?
 ちなみに我が国ではギンザケにタイセイヨウサケ約26000トン、サーモントラウトなどを足すと175000トン前後になる。
 先に国産のサケの漁獲量が25万トン前後と書いたが、ここから輸出量を引くと19万トン前後となる。しかもチリなどからの輸入ギンザケは“はらわた”も頭も落とされ、ときにフィレでの換算である。どれだけ日本人が養殖のサケ類を食べているかがわかろうものだ。だからこの現状を食べている側にも教えなければならない。
 しかるに今回の「銀鮭」を販売するスリーエフも埼玉の「トオカツフーズ」も表示は「銀鮭」だけとは嘆かわしい。もっとコンビニ業界も良識を持って食べ物を売って欲しいものだ。

 と言うことで、いろいろ思い、そして調べた後で食べてみた「銀鮭」を……。これ味わいとしてはがっかりだな。セブンイレブンやam-pmが優秀すぎるのだろうか? 平凡な味わいだし、中身の銀鮭(塩水につけて作った塩鮭だろう)が少なすぎる。脂があるか、風味があるかなど感じないままに喉の奥に消えてしまった。早食いすぎたのかな。また合成保存料や添加物はまったく使われていないようだ。その点では偉い!

 最後にコンビニで鮭おにぎりばっかり買うようになって考えた。ひょっとしたら切り身や丸など市場や魚屋、スーパーなどで取り扱うサケ類よりもコンビニなどで取り扱うものの方が量的に大きくなって来ているのではないか? これはどうやって調べたらいいんだろうね。

参考資料/水産庁「水産物輸出対策の現状と課題」、日刊シーフーズ・ニュース「2006年12月サケマス輸入貿易統計」

スリーエフ
http://www.three-f.co.jp/
トウカツフーズ 埼玉県川口市元郷4の5の1


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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 八王子綜合卸売センター『高野水産』に相馬市原釜の八巻水産から
「なんだこれ、おおい、なんだろうな? “はらす”って書いてあるぞ」
 といった代物がとどいた。どうも砂刷り、すなわちはらわたを包み込んでいる薄い部分であるようだ。
「なんだか白いぞうきんみたいだな」
 立川で居酒屋をやっている『太鼓』さんが、手に持ってひらひらさせている。どこか楽しそうだ。この方、こうやっていろいろネタ探しをするのが好きなのである。
 そしてこの日は八巻水産からアブラツノザメのむき身も並ぶ。

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福島県相馬市原釜港底引き網で揚がったアブラツノザメを港でむいたもの

「あ、これはアブラツノザメの腹身だね。これはうまそうだ」
 と言うと高野社長が「そうだ」と言いながら少し分けてくれる。
「どうやって料理すればいいのかね」
『太鼓』さんが山形なまりで聞いてくる。
「普通は煮つけだね。きっといい煮こごりができそうだし」
「唐揚げはどうかな」
 こちらは日野市豊田駅南口の居酒屋「うろこ」さん。
「クセがないからね。唐揚げ、軽く干して焼くなんていいんじゃない」

 アブラツノザメは世界中の寒帯、そして温帯域の深い場所に生息している。一昔前まではたくさんとれて宮城県の笹蒲鉾の原料となったり、また高級な練り物原料ともなっていた。また大型のものは、むき鮫として現在でも高く取り引きされてもいるのだ。
●詳しくは青森の「田向商店」のページへ
http://www.tamukaisyoten.co.jp/

 ボクはこれを素直に煮つけにする。そして流し缶に入れて煮こごりを作る。
 煮こごりにする以前に煮つけのうまいのにビックリした。身が柔らかいのにしっかりしているというか、適度な弾力性を持っている。まるで良くできた練り物のようでもあるがしっかり繊維質を感じる。これが噛みしめるとすぐにほぐれ砕けてくれる。その上品な脂分と旨味もたまらない。
 そして冷蔵庫で冷やすとこれも見事な煮こごりが出来上がった。その味わいは筆舌に尽くしがたい。なによりも煮こごりに充分すぎるくらいにアブラツノザメの旨味が染み出している。
「煮つけを食べ過ぎるんじゃなかった」
 後悔していると太郎が白いご飯にのせている。のせたご飯との接点はもう溶け始めて汁になっていく、そこをかき込む。そしてまた煮こごりをのせて、またのせて。
 見ている間に煮こごりはなくなっていくのだ。どうも煮こごりのうまさの真価は酒の肴よりも、ご飯にのせて発揮されるようだ。

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 さて、このアブラツノザメの腹身、また来週も入荷してくるのだろうか? 火曜日が待ち遠しいな。

市場魚貝類図鑑のアブラツノザメへ
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 塩鱒に関する昔の話を魚屋さん、またいっぱんの方達にも話をうかがってきている。そこには予想もしなかった昭和史というものが見えてくるのだ。でも聞き書き、文献を漁るなどの前に、実際に塩鱒を食べてみたい。

 八王子総合卸売協同組合「興実水産」で見事に切り分けられた塩鱒。頭と尾の部分などを鍋仕立てにしてみた。これはなぜか旨くできなかった。昆布だしを取り、まず湯引きした塩鱒を入れて少し煮る。きっと煮ていく間に塩が出てくるだろう。だから塩加減は最後でいいだろう? と思っていたのだがまったく塩分が出てこない。昆布だしを取る次点で、すなわち火をつける前に鱒の切り身を入れるべきだったのだろうか。

 結局、ただ焼けばいいのである。脂がない、と思いこんでいたのは大きな間違い。初夏のいちばん脂がのったときにとれた「鱒」である。焼いてほぐすと透明な脂が照り返すように光る。身がしっとりしているし、なによりも皮が香ばしい。

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 これは「丘」と言われるものだろう。すなわち塩水につけたものではなく、塩を振り、すり込みしたもの。単に塩鱒と言うよりも「塩引き鱒」と言うべきかも知れない。塩をすりこみ時間をおくことで熟成された旨味が醸し出されている。そしてなによりも枯れた皮の風味がいいのである。

 またここでお茶漬けとしたのは厳密には違っている。正確には湯漬けである。最近、発見したことなのだが(遅すぎるかも)、魚や動物質のおかずには「煎茶」「ほうじ茶」など、とにかく茶葉の旨味は不要である。湯という素であるからこそ、旨味のあるおかずの味わいが生きる。
「塩鱒」を焼く、焼きたてを箸で適度にバラしてご飯にのせて、茶碗の縁から熱湯を注ぐのだ。けっして熱湯を塩鱒にかけていけない。これでは塩鱒の旨味は早く染み出すだろうが香ばしさが失われる。家庭で楽しむお茶漬けだからこそ味わえる上質な味わいを楽しむには心配りが大切なのだ。
 塩鱒と湯とご飯とをかき込む。その「塩鱒」を口の中で噛み砕いたときにジュワッと旨味の広がりくるのが凄い。まるでナイヤガラ瀑布の真下で飛沫を浴びるような衝撃を感じる。その上、皮の香り、鼻に抜ける香ばしーい気体には陶然と我を忘れてしまいそうだ。

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 しかも塩鱒とご飯とお湯なのだから三杯食っても四杯食っても太りはしないだろう。これは我が家では新たな常備菜となる。そしてますます肥満が気になって動きが悪くなったら「今日は塩鱒茶漬けで我慢しよう」と幸せな決断をすればいいのだ。

 閑話休題。
 塩鱒は安くて、そして焼きたてはうまいのである。そしてそして自然にも優しいので、もっともっと人気のおかずになってもいい。「美しい日本」をとりもどすためには無駄なダム(長野県でまた無駄ダムを造り始めた悲しいな)や道路を造らないで「塩鱒」を食べるべきだ。べきなのだ!

市場魚貝類図鑑のカラフトマスへ
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八王子の市場に関しては
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 商品名の「北海焼鮭」はつけもつけたり、いろいろ考えたんだろうな。いかにも日本人の日本人的心をくすぐるような、こんなところにもセブンイレブンの強さがあるんだろう。でも原料が「鮭ほぐし和え」はないだろう。これは「いけません」。実際になにが原料なんだ「責任者出てこい!」と昔の人生行路みたいなことが口から転び出る。

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 味わいからするとこの「鮭」はサケであるようだ。でも「銀毛」とか「目近(めじか)」とか言われる沖取りのサケなんだろうか? それとも秋に定置でとれたもんなんかい、「責任者説明せい」。どうしてこの曖昧な表示が許されるのかわからん。「鮭」というなら養殖の輸入ギンザケも「鮭」だろう。町の魚屋なら「サケとはですね」なんて答えもしようがコンビニの「私には責任ありません」というお姉ちゃんには答えようがないだろ。これは「武蔵野」という会社が悪いのか? セブン-イレブンが悪いのか? それとも今の制度が悪いのか? 「どっちやねん」と聞きたい気分である。

 ちなみにこれが沖取りのサケであった場合、サケを三枚に卸して中国に送る。そこで丁寧に骨取り。この骨取りは大変だろうな。でも個人的にはこのように丁寧に身をこねくり回したサケは嫌いだ。それを最輸入、調味して「おむすび」に入れるわけだ。結局、科学的法律的なものをクリアするとなんでもいいという商品とも思える。

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 また国産の沖取り、沿岸のサケの多くはこのようにコンビニや外食産業で使われ、消費される。もしくは中国などに輸出されるのだ。そこでいろんな付加価値が加わる。例えば、「丘」と呼ばれる昔ながらの塩引き鮭もあるだろう。塩水につけられた熟成のないものもあるだろうし。いろいろ考えられるだろうが、やはりしっかりどんなもんが「おむすび」に入っているのかしっかり、しっかり、しっかり表示しろよ! セブン-イレブン、と言いたい。
「合成着色料、合成保存料は使用していません」の文字が泣いてしまうだろう。
 そして最後に、この表示が曖昧な「おむすび」味は上々であったことを忘れずに記す。たぶん「丘」と言われる塩引きではなく、塩水につけたものが原料であろう。でもうまいな。

製造 武蔵野 埼玉県朝霞市
セブン-イレブン
http://www.sej.co.jp/index.html


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 八王子名物ってなんだろうね? いろいろありそうで、実はないんだよな。お土産に繊維の町だからネクタイというのも変だし、高尾山の厄よけ団扇も唐突すぎる。和菓子、洋菓子店数あれど「これが八王子」というのはまったく見つからない。ボクの一押しは八王子ラーメンだけど、お持ち帰りは出来るはずもなく……。
 そこへいくと「魚茂の干物」はどこに出しても恥ずかしくない。だいたい味も安全性も天下一品だろう。この「魚茂」の干物はサンマ、サバ、マアジなどいろいろあるが、なかでもボクは「鰯の開き」がいちばん好きなのだ。これは天気のいい日に「魚茂」の茂じいさん(茂雄)さん82歳が丁寧に開き、塩をして干したもの。高尾山からイチョウ並木を通り過ぎる風が、素晴らしい干物を作る。

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 魚屋が店売りだけのために作るものだから毎日の市場通いで鮮魚の材料を仕入れる。それをその日の内に干物に作るのであるから、ひと味もふた味も上の味わいが出来上がるのだ。
 これを焼き上げるとじゅうじゅうと表面に脂が溶けだしてくる。その熱い油に身が揚げ物のようになるのである。その香ばしいこと、しかも身はしっとりしている。
 これはまさに「八王子名物イチョウ並木の干物」なのだ。そして今日も茂じいさんがコツコツと干物を作るのである。

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魚茂  東京都八王子市並木町25-7 042-661-4728


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 市場に「たらこ」が入荷してくるようになった。一般に「たらこ」と言われるのは「鱈」すなわちマダラではなくスケトウダラの子である。「たらこ」「もみじこ」「すけそ子」なんて呼ばれる。マダラの子も今が出盛りで、これも味がいいのであるが、じっくり食べてみると「やっぱ“すけそ”には勝てないな」と改めて思うのである。
「たらこ」一腹はウインナーソーセージをふたつ抱き合わせにしてくっつけたような状態になっている。では一昨日入荷した羅臼産一腹は何グラムだろう? これがだいたい60グラムくらいから80グラムくらいだ。

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 一キロあたり4500円なので一腹だいたい250円見当である。煮るのには3腹は欲しいので、なんと支払が800円あまり。惣菜というのには高すぎるな。これがマダラの子なら半値以下、調べてみると3分の1ほどなのだ。ということで毎年「たらこ」を煮るのは2,3回となる。

 羅臼産「たらこ」の樽状の発泡を前にして小さいのばかり選んでいる人がいる。
「なんでそんな小振りのばっかり選ぶの?」
 知り合いの居酒屋のオヤジなので聞いてみる。
「ウチはね切らないでまるのまま煮ちゃうんだ。切るとどうしても卵がばらけるだろ。嫌なんだよ」
「でも煮る時間が長くなるから硬くなるだろ」
「ドンマイドンマイ」
 そう言えば「ドンマイ」って何語だろ。
 我が家ではだいたい2等分にする。それを予め湯通ししないでそのまま煮立った汁にそっと入れるのだ。あとは短時間ささっと火が通るくらいに煮上げる。

 ついでに割烹料理やで修業した若い寿司職人に煮方を聞くと
「そうだな3等分するよ。そうするとまん丸くなって可愛いだろ」

 でも3等分して卵がばらけないのだろうか? やってみなければわからない。
 やっぱりある程度はばらけてしまう。でもこのまん丸の「煮たらこ」が好評なのだ。食卓にあった時間は3分たらず。ボンボンのような形も子供たちを惹きつけている。でもやっぱり難点は卵が少々ばらけること。でもそれよりも煮る時間がより節約できる。だからフワリと仕上がるのだ。

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 でも貧乏生活なのでばらけた卵がもったいない。
「父ちゃん大丈夫だよ」
 太郎の方を見ると煮汁をご飯にかけて食べている。これでいいのだ!

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 八王子で唯一塩鱒を常備する『興実水産』で塩鱒(一キロほど)1300円を購入する。『興実水産』ではこれを「青鱒」と呼ぶ。初夏に根室釧路沖でとったものだろう。「隣には「めじか」がある。「めじか」はサケの銀毛で産卵回遊する以前の沖にいるもの。これは鱒よりは値がいい。でも秋に沿岸の定置に入った「秋鮭」は明らかに人気がないのだという。それでここにも置いていない。当然、値段は最底辺となる。

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 1本買うと、これを見事にさばいてくれる。頭を落として背ビレ尻ビレを切りとる。それを二枚に下ろして切り身にするのだ。さすがにプロは早い。ほんの5分とかからないで油紙の袋に1本の塩鱒が収まる。

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 塩鱒は香ばしく焼き上げると、なかなかうまいのである。ただし難点は冷えてから。冷えるとやはり脂がないのでパサパサする。でもお握りに入れる限りは充分すぎるほどに美味である。なんといっても香ばしさがいい。でもこのパサパサ感が子供たちの好みには合わないようだ。そのためだろう。今、コンビニお握りの「鮭」は鮭でもカラフトマスでもなく輸入もののベニザケやギンザケ、サーモントラウト(ニジマス)が主流となっているのだ。
 また、この塩鱒には「丘」の文字がある。これは水揚げしてから陸上で加工したということだ。この塩をするにもいろいろあり、輸入もののギンザケなどは「立て塩」すなわちフィレにして塩水の中に浸すことで「塩をしている」ものばかり。この塩鱒は明らかに塩をまぶして作っている。ということで香ばしい旨味を感じる風味もある。でもこれが並木町「魚茂」の言う腹の辺りが真っ黄色な塩鱒と同じ物だろうか。古くは「山漬け」といわれる長時間塩に漬け込む方法で作られた。これはたくさんのカラフトマスを何段にも重ねて長時間塩に漬け込むことで熟成させる。それによって有象無象の旨味成分が醸し出されるので味わいは薄塩を遙かに上回るようだ。この「山漬け」というのも実際に味わってみたいものだ。

 沼津魚の達人菊地利雄さんは御年58歳。代々魚を扱う家に生まれている。中学生の頃の話として、
「当時の物は山漬けであったと思います。現在、山漬けの製品を探しても見つかりませんし、『山漬け』と言う名称を知ってい
る方が何人いらっしゃるのか」
 昔の塩鱒の味わいを思い出してメールをもらった。この「山漬け」の塩鱒のことももっと調べる必要がある事も痛感した。

 最後に肝心な話をしていこう。食物にも「自然に優しい」、「害がある」のふたつが存在する。これは明確に分かれるわけじゃなく、「やや優しい」、「やや害がある」なんて微妙な話でもある。そこをじっくり考えてみるとサケ科の魚を食べるときにいちばん自然に害がないのがカラフトマスではないだろうか? それはまず「養殖ではない」、「完全なる天然でもないが孵化事業は明らかに養殖よりもエネルギーを使わない」、「回帰までの年数が短い」、当然、「天然の海で捕食する他の生物も少ない」、「輸入など移動にかかるエネルギーも国産なので少ない」、ということでサケを次点にしてどうどうの自然に優しいサケ科の雄である。
 またはっきり言って自然保護、温暖化などのことを考えると養殖もののタイセイヨウサケ、ギンザケ、サーモントラウトなどは自然には害はあっても益はない。喜んでいるのは飽食している北の諸国(南北問題の)だけだとも言える。

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3月10日(土曜日)に築地土曜会を行います。

今回は
朝7時半波除神社集合
築地場内見学・お買いもの。
後に「市場での魚貝類の流通について」という勉強・食事会を行います。
以後解散

会費制にするなど詳細はまた後日

協賛してくれる会社もある模様です。

また、今回にかぎっては先着10から20名とさせていただきます。

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集合場所の築地波除神社


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 本来日本で食べられていたサケ科というと主なものはサケ、カラフトマスの2種類である。他にもサクラマスや北洋でのベニザケ、マスノスケ(キングサーモン)などがあるが数量からすると非常に少ない。その我が国での二大サケマスが今はどのようになっているのか? サケは次回と言うことで今回は「鱒」であるカラフトマスを語る。
 サケの孵化事業がいまのように盛況になる前には、カラフトマスは我が国でのサケ科でいちばんの資源を誇っていた。だから大量にとれていたカラフトマスに対して「鱒」という概念が生まれ、「鮭」はサケ1種類だった。すなわちサケよりも安い、そして一段低いものであったのだ。

 市場で塩鱒(カラフトマス)を探す。塩鱒は値段が安く、ながく庶民の食卓を潤してきた。まあ戦前戦後はどこにでもあったものだろう。これがなかなか見つからない。
「太田さんに聞くといいよ」
 と何人かがボクに教えてくれる。太田さんは山梨の山間部で食料品をトラックで売って回っている。太田さんが仕入れに来る木曜日、やっとつかまえて鱒のことを聞く。
「ああ、鱒は今でも売っているよ。興実(水産)さんにあるんだけど」
「どうして鱒を仕入れるの?」
「ええとね。サケよりも脂があるし、鱒が好きだって言う人も多いよ」
「安いからじゃないの?」
「違うよ。今、鱒の方が高いと思うよ」
「養銀(養殖のギンザケ)はどう?」
「それも買うことは買うね。でも鱒は必ず仕入れるけどね」

 八王子魚市場「やまぎし水産」の吉村拓治さん
「檜原村でも南秋川の方だけど、昔はね、魚と言ったら塩サンマ、それと鱒に塩いかね。他にはなんにもなかったの。だってねタンパク源というとねカエルね。大きいヤツ。これがうまかったんだよ。他には野ウサギ、ヤマメやカジカもいたけどね」
「サケは食べなかったの?」
「正月、そうだ歳暮でもらったりね。普段は食べかなった。だいたい鱒よりも塩サンマ(丸のまま塩に漬けた物)だもの」

 八王子並木町の「魚茂」の和智茂雄さん82歳に戦前戦後の話を聞く。茂雄さんは山梨県上野原生まれ。小学生の頃、ちょうど太平洋戦争に突入する年くらいに山梨県上野原で魚の行商を手伝うようになった。この頃もっとも大量に売り歩いたのが塩鱒であったという。
「塩鱒は懐かしいね。腹のあたりが真黄色に脂があってね。これをたわしでごしごしこすると、たわしが脂でべとべとになる。うまかったね」
 サケのことを聞くと
「サケは正月にしか見なかったな。高くてね。あれは戦前は一般の店にはなかたんだよ」
 息子さんの潮さん50歳がこれを補足する。
「八王子で店をやっていても昔は普段サケなんて食べなかったもんよ。旦那衆っていたでしょ。機屋(織物業)のお金持ちが食べたものだった」
*八王子は今でも絹織物の町である

 相模原橋本のレストラン「多子作」さんは本年66歳である。相模原でも総菜用としては塩鱒と塩サンマであったという、ただしサケもそれほど高級というイメージはなかったのだという。

 現在、鱒(カラフトマス)、鮭(サケ)はサケ科でもっとも安い、人気の薄い存在になっている。その価格は今期に限ってはカラフトマスの塩鱒がサケを上回って高いのである。それはカラフトマスが好漁、不漁を一年ごとに繰り返し、昨年は不漁期にあったこと。また今では「鱒は安い。サケは高い」という概念が崩壊してしまっているのである。

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 船橋を本拠地として八王子魚市場に店を持つ『源七』、本来は千葉県産のアサリなどを扱っている荷主でもある。だから東京湾三番瀬のアサリやサルボウ、アカニシ、千葉市蘇我のトリガイなどが季節季節に店頭を飾る。そこにここ10年くらい頻繁にやってくるのがホンビノスガイである。これは本来アメリカに棲息するもの。たぶん船のバラスト水なんかに幼生が紛れ込んで日本各地に広がったもの。本来ハマグリなどが棲息していた地域に汚染が進み、多くの二枚貝や生物が消えてしまった。そこに汚染に強い本種が進入してしまったのだろう。また、これだけのホンビノスが船橋周辺でとれるというのは、東京湾がきれいになった証拠かもしれない。
 とにかくアサリに混ざってとれてしまうホンビノス、かなり大きくなるし見た目もうまそうだ。とれているんだから食べないと言う法はない。と船橋ではいろいろ試行錯誤をしている。茹でても、青柳(バカガイ)のように半生でも、そこそこイケルが、もうひとつ味わいに個性がない。そこで『源七』社長でそれこそ貝の中で育ってきたという、吉種登さんが「佃煮にでもしてみっけ」と最近商品化に踏み切ったのである。
 これはなかなかうまいのだ。しょうゆと砂糖で「さささーと煮るんだ」とせっかちな老人は言ってくれるが、なかなか貝の佃煮は作るのが難しい。だから登老人が作り始めると煮上がるのを待っている。そしてできたてをちょいと頂いてくるのだ。やっぱり貝を扱って六十有余年になると佃煮の味もそんじょそこいらのとは違っている。うまいな『源七 ホンビノスの佃煮』は。
 そう言えば登老人、最近「白はまぐり」と呼ぼうかな? なんて言っているが出来れば販売するときにはカッコをつけて(ホンビノスガイ)とどこかに入れないとダメだよ。

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築地フレッシュ丸都
中目黒漁師炉端 ぼうずこんにゃく

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 先日金曜日の朝方のことである。築地「大都魚類」藤井恵次さんに最近のサケ類の市場での動向をいろいろ教わっていた。それが予想以上の養殖魚の増加や国産サケの消費低迷という悲しい現状がありでかなり興味津々であったのだ。
 そんなときケータイがなる。ちょうど藤井さんにも用事があり、そのケータイの呼び出し音に話を打ち切った。相手は築地市場の怪人尻高鰤さんであった。
「あの。晴海通りに出るよね………。勝鬨橋を渡って………」
 それはボクに対する秘密の指令であった。
 言われた通りに都バスを降りると、そこに尻高鰤さんが待ちかまえていた。そしてとある殺風景なビルに連れ込まれたのである。まるで「太陽に吠えろ」で山さんが軟禁されたような不気味なビルである。そのビルの通路がまことに狭い。また各所に秘密の部屋があり、その一つでは美女軍団がなにやらセロファンに包んでいる。まさか「ヤク(薬)」?
 そんなビルのいちばん奥にある殺風景な部屋に連れ込まれると、そこにはまことに厳つい男たちが居並んでいた。そして出されたのがキンメダイのお頭の一夜干しだ。なんだ犯罪とは関係ないのか? 少々がっかりしたが目の前の焼いた一夜干しがいい匂いである。でもそこに罠が?

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 うまそうなので手に取ると「アチチチチ」と火傷したのだ。これはボクの自己責任かもしれないが一言「熱いよ」くらい言って欲しかった。
 でもこれがうまい。やめられないほどにうまくて手がベトベトになって困っていたら、すーっとペーパータオルが来た。偉い!
「これなんだっけ(固有名詞が出てこなくなったら老人だ)、ええと、なんだっけな」
 尻高鰤さんが困っていると、やけに濃厚な顔つきの首謀者とおぼしきオヤジが
「伊豆稲取のキンメ」
 そうか、これはうまいはずである。
「これ昨日はいったのかな、漬け魚の原料、キンメがあまりにいいんで頭を干したんだ」
 なんだかこの厳つすぎるオヤジ達がいい人に見えてきた。
 その上、またまたこんどは西京漬けが2切れ来た。
「メロです。これはまだ味噌が入っていない(漬かっていない)かもな。味噌の味はいいでしょ」

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 本当にみその味わいがすこぶるつきにいい。一箸つけると止まらなくなる。味噌の味は気温や魚の状況でいろいろ変えているという。よくこの厳つすぎる男たちを見ていると、どこからか中島みゆきの「ヘッドライト・テールライト」が聞こえてくる。そのひとりひとりが魚に関しては凄腕のプロたちだったのだ。
 うまいうまいとベロリと2切れ食べてしまうと男たちは消えてしまった。忙しいのだろうか? これ2切れだけじゃ嫌だな。お土産も欲しい。
 見知らぬビルの細い通路を抜けて重いビニールのカーテンをあけると、さっき美女たちのいた部屋に出た。そしてその美しい女性たちはよく見るとただのオバサンだった。でも詰め合わせているのはギンダラの西京漬けである。

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「ここはね、全部手作りなのよ」
 なんて色っぽく教えてくれる。
 やっぱりなんとかお土産はもらえないだろうか? また廊下に出るとなにやら箱につめて包装の最中。

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「まあ、お土産ですから食べてみてください」
 やった! これがなくちゃ世の中味気ない。

 この「築地フレッシュ丸都」のことを尻高鰤さんにもういちど聞いてみると、やはり従業員の方はみな魚に関してはプロばかり。味付けのプロも何人かいて、水産加工品作りに関して侃々諤々の話し合い、試行錯誤をしているらしい。その甲斐あってというのは失礼だが「ものすごーうみゃー」のであるこの西京漬けが。そしてこれは都内でなら簡単に手にはいるという。とすると東京名物のひとつとでも言えるかも?

築地フレッシュ丸都
http://www.ginmi-maruto.com/


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 世に珍味佳肴というのは多々あるだろうが、意外にいざ食ってみると「それほどでもないな」と首をひねる物も少なくないのである。そんななか幻の味とは言えないだろうが、尾鷲人の隠れ味とでも言えそうなのが「生からすみ」である。
 からすみということで原料はボラの卵巣。これは本唐墨の原料であることは天下に知れ渡っている。というかイタリアでも南半球でも作られているもので、インターナショナルなものと言ってもいいだろう。これを唐墨を作るように作るのではなく、塩イクラのように仕上げたのが「生からすみ」だと思う。これはイクラでもないキャビアでもない。ましてや唐墨でもないもの。
 小瓶に入っているのは黄金色のツブツブツブである。それがほんの少しある粘液質のものでしっとりしているのだ。口に含むと独特の風味と微かな渋みが口の中に膨らんでくる。そこに脂分を含んだ旨味が点々と舌を刺してくれる。この甘味をともなった脂に渋み旨味がマーラーの交響曲7番を聞いているような不思議な世界に誘ってくれる。そこにくるのは「辛口の日本酒でんな、なんともいえまへん」、ついつい杯を重ねてしまって、しまったしまった飲み過ぎたという状況になる。
 そしてこれを送って頂いたのが尾鷲の岩田昭人さん。説明不要だと思うが「一日一魚」の制作者である。まだ実際にお会いしていないが、かなり左利きだろうというのが明白にとれる。そう言えば月刊「伊勢人」の連載を読んでいても、ほどよい揺らぎを感じる。メイチダイにカタクチイワシ、料理する魚の横手には、まず間違いなくコップ酒がありそうである。
 これは蛇足だが、本日の「一日一魚」にはオオグソクムシが載っていた。言っておきますが「岩田さん、けっしてうまいもんじゃありません。酒の肴にはしないように」、くれぐれもご注意。

はし佐商店 三重県尾鷲市中井町1-19 TEL 0597-22-0304
一日一魚
http://www.pref.mie.jp/OKENMIN/HP/ichigyo/index.htm


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 コンビニで富山で作っている、お握り型ますの寿司を探していてみつけたもの。ラベルにコンビニの名がないということは製造メーカーの「昔亭(せきてい)」と言う方が前面にくるべきものだろう。本家本元の富山のメーカーらしく味わいはなかなかいいのだ。だいたい酢飯というのはお昼ご飯としても捨てがたい。ボクなどサケか昆布にこの「ますの寿司」を組み合わせるのが大好きである。

 さて本場富山での「ますの寿司」というのは本来サクラマスを使ったものであった。また我が国で「鱒(ます)」とは主にカラフトマスとサクラマスを差すのだというのもわかってきた。
 繰り返し述べるが「陸封(淡水)」=「マス」、「海産」=「サケ」というのは英語の「トラウト」=「陸封」、「サーモン」=「川もしくは湖から海へ下る、上るもの」というのが入ってきて生じた誤解でしかない。紛らわしくも「サーモン」=「サケ」、「トラウト」=「マス」という誤訳によって生まれたものである。

 その本家本元富山「昔亭」の「ますの寿しおにぎり」の原材料名が「鱒(サケ類)」といういい加減な表示なのはどうしてだろう。ちなみに原則的に天然のサケ科魚類の生食は不可とされる。寄生虫などの問題から生食用としての販売は出来ないのだ。でも寄生虫ということからすると冷凍する限り死滅するはずだ。でも冷凍魚を使うにしてもわざわざカラフトマスや北海道産のサクラマスを使わなくてもいいだろう。またなんらかの方法で酢締めにしたときの寄生虫や細菌に関する情報があって、生に近い販売が出来ているとしても「鱒(サケ類)」というのは解せないな。

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 これを勝手に推測すると原材料はチリ産の養殖ギンザケもしくはサーモントラウト(海面養殖ニジマス)を加工したというこのではないかと思われる。じゃあ産地と養殖か天然か? 「サーモントラウト」もしくは「ギンザケ」という表示はなぜされないのだろう。“原材料名が「鱒(サケ類)」”というのはある意味原材料隠しではないか?
 たぶんコンビニのおにぎりにしたときには表示の義務が法律的にないんだろうな。でも買う側としてはこれはいかにも不親切極まりない。もっと誠実に積極的に原材料の表示をするべきだ。なぜならば日本の魚食のかなりの比率がコンビニに依存していると思われるからだ。そうなるとコンビニ業界の責任は重大である。当然もっと真剣に表示する義務がある。

昔亭
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 このところ銚子から生のメカジキが来ている。特に八王子魚市場内『源七』のものは上物揃い。メカジキというと最近では冷凍流通したものが多い、また海外からの輸入ものもある。でもやっぱり真冬に銚子から三陸でとれる“めか”を食べないと本来の旨さはわからない。
『源七』では毎日のようにメカジキを解体している。その卸しているそばから、中骨から掻き落とした身を、待ってました! とばかりに試食する。あんまり食べ過ぎて
「これじゃ試食じゃないだろ。金払ってけ」
 こんな声が飛んできても、うまいものはうまいわけで、やめられるわけがない。何という濃厚な脂の旨味、甘味が強い。これをご飯に盛り上げてかき込むと至福の味となる。
「若だんな。ウチね、最近家計が苦しいんだけど、持って帰ってもいいかな」
 こちらをにらみつけて、それでも決して「持ってけ」とは言わない。可愛くないヤツだ。でもこれはうまい。
 銚子、三陸、真冬のメカジキは貧乏していても食っておけ! と言うのが本日の格言なのだ。

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