食べる貝・イカタコ学: 2009年2月アーカイブ

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 関東の市場ではほとんどマテガイを見ることがない。
「そんなことはない。このところ毎日のように来ていますよ」
 仲買などではそんなことをいう。
 残念ながら、関東の市場に毎日のようにやって来ているのはマテガイではなくオオマテガイなのだ。
 マテガイが潮干狩りなどでとれるのに対して、オオマテガイはそれよりも深いところに生息する。
 友人のセトボンの情報によると、山口県では、これを潜水漁でとっているのだという。
 房総半島以南にいる貝だから、別に資源的には山口県が特に多いわけでもないのだろうけど、ようするに潜水漁を行う地域でしか水揚げできないという代物なのだ。
 土曜日にオオマテガイを見つけて、4本ほど買い込む。
 キロ当たり1200円で、量りに乗せたら、クマゴロウ(八王子綜合卸売協同組合マル幸水産)がよく見もしないで、「250円置いておけよ」と言ったのだ。
 クマゴロウ、オマケしてくれたんだろうね?

 我が家ではオオマテガイは貝殻のまま直火で焼く。
 貝から外して、水管と足に分けて、開いてから湯がく。
 貝から外してたっぷりのバターで焼く(ソテー)するなんてこともやっている。

 今回は近所の農家で作っている大葉春菊、水菜、芹(千葉県産)、日本ほうれん草をゆでて、三杯酢に浸しておく。
 オオマテガイ4個は開いて振り塩。
 直火で急速に焼いて、トントンと刻んで三杯酢のお浸しにざっくりと和えてみた。

 食卓に緑があるのは、なかなかうれしいものだ。
 そして三杯酢に浸した青菜がうまい。
 オオマテガイは貝らしい旨味を適度に発揮してくれているのだけど、今回は脇役だな。

 これは誰でも知っていることかもしれない。
 ただ、心配なのでつけ加えておく。
 お浸し、酢の物などに葉物野菜を使う。
 そんなとき何種類かミックスすると、1種類の葉物のお浸しよりも、ぐんと味がよくなるのだ。
 これは200坪ほどの畑を耕作していたときに覚えたことなのだけど、一般家庭でも必ず知って置いて欲しいたぐいのものだ思う。

 さて、週末土曜日は厳しい寒さで、震え上がる。
 近所の食用梅の花は満開なのに、冬に逆戻りしたかのようだ。
 猫の梅太郎がやけにボクの膝に乗ってくる。
「お前も寒いんだね」
 梅太郎は娘猫なので余計に寒さが身に染みているようだ。
 可愛そうなので熱燗を顔にまぶしつけてやる。
 うれしそうだ。

2009年2月21日
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、チョウセンハマグリへ
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 島根県益田に名物があり、その代表選手がチョウセンハマグリである。
 チョウセンハマグリとは聞き慣れないだろうけど、築地などで「地はま」と呼ばれて、大層な値段がついている国産天然のハマグリのことだ。

 ちょっとチョウセンハマグリのことを書いておく。
 国内には内湾性のハマグリと外洋性のチョウセンハマグリがいる。
 残念ながら内湾性の方は危機的な状況にある。
 だから「地はま」というのがチョウセンハマグリを差すことになる。
 ただ、外洋性だって、そんなに安穏、堅調とはいかない。
 常に資源管理を心がけないと、すぐに枯渇の憂き目に直面する。
 ともに国産は高価であり、特に大型となるチョウセンハマグリたるや歩留まりの悪さからも、超高級であると思ってもらいたい。
 蛇足だが、標準和名の「チョウセンハマグリ」というのは出来るだけ早く改称すべきだ。
 例えば、国や地域(海外の)が冠されているものに「台湾ガザミ」がある。
 これはあくまで「台湾=南方の」の意味だが、「朝鮮」にはこのような学術的な意味合いが皆無だ。
 朝鮮半島には様々な恩恵を受けているし、深く血縁で結ばれる地でもある。
 このように「本」に対しての「異」的な使い方は失礼極まりない。
 ボクが提案する新標準和名は「ゴイシハマグリ」である。

 閑話休題。
 益田のハマグリのなにが珍しいかというと、漁法である。
 普通、ハマグリは桁網(底曳網)でとる。
 それが浜田では小舟をあやつり一個一個、箱眼鏡で探し出して、鉾で突いてとっているのだ。
 朝鮮半島から、北海道、千葉、伊豆半島、山陰、長崎にかけて行われているものに見突き漁(磯見漁)というのがある。
 主に磯場でハマグリやアワビ、海藻など箱眼鏡を使い鉾、竿、ヤス、カギなどをつかいとるもの。
 「イソマワリ」、「メズキ」、「ツキンボ」、「カナギ」、「イソツキ」など地方地方で様々な呼び名がある。
 それが益田では「磯見」となる。
 普通磯周りで行われているものを、砂地の貝に応用したのは益田の漁師さん達の独創である。
 底引きではなく、一個一個とるために決して取りすぎることがない。
 取りすぎないから大きく育つ。
 これ以上資源管理的に優れた漁はないのだ。

 今回のものはJFしまねの佐々木さんにいただいたもの。
 佐々木さんは「清流高津川日本一を祝う会」のメンバーでもいらして、その活動範囲は広く大きいのだ。
 さて、いただいたものは大振りで見事なもの。
 当然、いちばんうまい食べ方だと思っている。
 焼きハマグリにしてみる。
 強火であぶったらただでさえ膨らんだ身が、余計に膨らんでいい匂いが立ちこめる。
 味つけは生醤油と清酒のみ。
 もったいないのだけど味つけの酒に益田の銘酒「扶桑鶴 純米吟醸」を使う。
 この焼きハマグリの旨味甘みの芳醇無比であること筆舌に尽くしがたい。
 ほおばるに口の中がパラダイス化してしまう。

 今回は煮はまにすべく、焼きハマグリは最小限としたことに空しさを感じる始末だ。
 しかし、益田のハマグリのなんと美味であることか!
 
2009年2月12日
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参考/『磯漁の話』(辻井善弥 北斗書房)


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 昨年から旅に次ぐ旅である。
 毎月のように旅に出て、その土地土地の産物を見て回っている。
 もちろんあくまでも仕事であるために、疲労困憊しながらもうまいものをできるだけ食べて、お土産も欠かさない。
 ボクがよく旅をしていると聞いて、「さぞやうまいものを食べてくるんでしょうね」なんて言う人がいる。
 特に市場を見て回ることが多いので「おいしい魚いっぱい食べたでしょう」と思われているようでもある。
 残念ながら、市場で見かける素晴らしい魚、地元の人は食べられても、ほとんどの地域で旅人のものじゃない。
 なんと、旅先で店に入って、いざ地物を食べたいと思っても、いきなり養殖カンパチ中心の刺身が出てきて、悲しいやら、情けないやら。
 旅人が食べたいのは、地の魚なんですと言っても、「メニューに載せられませんから(毎日はないから)」なんてアホな理由で、陸送(よこから持ち込んだ)ものの魚が出てくるのだ。
 写真付きの品書きなどを作っている料理店がある。
 品書きを印刷しているところも多々存在している。
 割烹料理店などとうたっているのに出す料理を固定しているのだ。
 このような愚かしいことはファミレスだから許されるのだ(最近はファミレスだっていろいろ工夫している)。
 普通の料理店がファミレスの真似をして勝てるわけがない。
 まともな割烹料理店はそんな下等で下品な行為はやめるべきだと思う。

 金沢では老舗の食堂『寺喜屋』でうまい地魚が食べられた。
 しかもたっぷり、当然、幸せな気分になった。
 その上、お土産に買ったお刺身がよかったのだ。
 多くの町で地魚を飽食するなんて高望みなことは不可能となっている。
 「いやいや探せばありますよ」と言われるかも知れないが、旅人には無理、旅人が歩くような場所に限ってろくな食い物がない。
 そこへいくと金沢はすごいぞー。

 ボクが思うに、各地の料理店などで地魚をふんだんに食うのは難しい。
 むしろ町の普通の魚屋さん、市場、スーパー、ときにデパートなどにはふんだんに地魚の刺身が売られている。
 最近の交通事情を鑑みると、帰宅に要する時間はますます短縮傾向にある。
 氷を入れてもらって、水漏れしないように包装していただくと「お土産に刺身」というのも難しくないのだ。
 ということで最近では地魚はお土産で、という仕儀となっている。

 金沢と言えば天下に名だたる近江町市場。
 この市場観光客向けの面もあるにはあるが、未だに金沢の台所、すなわち“ケ”の市場としての機能を充分果たしている。
 今回の大松水産にも地元客がいっぱいいたのだ。
 そこで見つけたのが「白ばい」の刺身用パック。
 「白ばい」の標準和名はエチュウバイ。
 越中富山だから「富山でたくさん揚がる」と思いきや、主な産地は山陰である。
 今回の「白ばい」も地物ではないようだが、金沢には日本海中からエッチュウバイなどが集まってくる。
 日本でいちばん「白ばい」が好きな県と言ってもいい。
 だから金沢で「白ばい」を買うのは妥当なのだ。

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 小振りのエッチュウバイ4個、ワタを取り去り、よくよく滑りを揉み出してきれいである。
 脚とワタの中間にあるヒモまでていねいに添えられているのがうれしい。
 値段を失念したのが返す返すも大失敗だが、「安いな」と思ったのは間違いない。

 金沢から4時間以上掛けて帰宅。
 適当に刺身状に切るだけで、忙しかった旅最終日のボクの酒の肴となった。
 エッチュウバイ(エゾバイ科エゾバイ属)の旨さは甘さである。
 エゾボラ類(エゾバイ科エゾボラ属 いわゆる真つぶなど)がコリコリした食感を楽しむのに対して、旨味甘みを楽しむ。
 酒の肴としてしみじみこの旨さを堪能するとともに、「関東ではなぜエッチュウバイの刺身を食べないのか」不思議で仕方ない気持ちになる。
 さて、改めて書くけど金沢大松水産の「白ばい」の刺身はうまい!

大松水産
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 思わずうなるほどうまいものがある。
 例えばマガキの酒蒸し、蒸したものなど、最たるものではないかと思うのだけど、意外に一般家庭ではやらないようだ。
 我が家の蒸しガキの作り方が頑丈なフッチェンロイターの皿にマガキを4つ、5つ並べ、電子レンジでチンというもの。
 よく寸胴鍋などで酒蒸しにするのだけど、明らかに文明の利器である電子レンジに味で軍配が上がる。

 さて、簡単な料理なのだから、殻付きカキを買ってきて頻繁に作ればいいと思われるだろけど、意外に我が家でもそんなには作らない。
 なぜだろう?
 理由はないのだけど、まさかとは思うのだけど、蒸しガキのためにわざわざ、殻付きカキを買い、フッチェンロイターを出すのが疎ましいからだろう。
 しかも殻付きマガキをいくつ買うのか?
「ええい面倒だ」と思っていた矢先に面白いものを見つけた。
 そのまま電子レンジでチンすると蒸しガキになるという優れもの。
 ただ問題なのが商品名がないのだ。

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 パッケージを見ても、細かく見ても商品名がない。
「なんだこれは?」
 仕方ないので、一番大きな文字である「殻付きカキ」とだけ言っておこう。

 要するに紙の防水パックに殻付きの生きたマガキを入れて、フィルムをかぶせたもの。
 中には7つのマガキが入っている。
 フィルムに小さな穴を開けて、あとはチンするだけよ、なんだからうれしいね。
 仲卸での値段は今回は出さないことにする。
 でも殻付きカキで1個あたり100円が相場だから、700円しても安いな。

 この容器ごと電子レンジに入れて回すこと4分。
 またまた容器ごと取りだして、フィルムを破くと出来上がりだ。
 皿を用意する必要がない。
 このままの方が容器を移し替えるよりもうまいだろう。
 蒸し加減も上々で、とにかく香しい、うまそうな匂いがただよってきて、思わず殻付きマガキを手にとる。
 この芳醇で、膨大なうま味のかたまり、しかも香りの高さたるや文字に出来そうにない。

 『市場寿司 たか』でみんなで食べたのだけど、全員感激至極。
 仕事が終わっている、夜中組の市場人など、酒の肴用に買いに走っていく。
 なぜ、こんなにうまい商品なのに、商品名がないのだろ。
 ボクなら「チンしてみんかい、おんどりゃ」なんて面白いと思うけどな。
 どことなく深作欣二的で怖面白ないか?

2009年1月29日
木村海産
http://www.chugoku-np.co.jp/setouti/seto/12/971203.html
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