管理人: 2007年9月アーカイブ

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 長年クロダイ師であったので、その味わいは知り尽くしている「わけではない」。なぜならばヘボ釣り師であったからだ。釣り雑誌にコラムを持っているのに、「ヘボ」はないだろうと思われるかもわからないが、釣りの醍醐味の半分は坊主(釣果ゼロ)にあると思っているのでへっちゃらである。

 そのクロダイが旨くなるのは秋口から寒い時期までではないだろうか? 「乗っこみ(産卵期)」には市場に溢れるほど入荷してくることがある。値段も安いのだが、味はイマイチ落ちるように思える。そこからすると秋から寒くなるにしたがい旨味も脂ものってくる。

 このクロダイは当然、刺身ということになるが、鍋にしてもいいのである。瀬戸内海で「ちぬ飯」と言うクロダイを丸のまま使った炊き込みご飯がある。ご飯に炊き込むというのは出汁の出る、旨味のある魚だから出来ることだ。だから鍋に使ってもうまい出汁が出るし、絹のように軟らかな繊維質の身も味わいは上々と言える。

 遅く帰る日が続き、家族は食事を終えている。冷蔵庫を探してクロダイは半身、豆腐、水菜しかないけれど、これで充分、ひとり鍋ぐらいは作れる。クロダイは適当に切り、粗塩をまぶしておき、熱湯にくぐらせる。昆布だしをとり、酒と塩で味を調える。ここにクロダイ、豆腐、水菜をぶっこむだけの簡単至極な小鍋である。ここに島根県松江市米田醤油店の「白だしぽん酢 ゆずほの香」の小鉢を添えて、酒は「三千盛 純米酒」。

 クロダイの身は思った以上に脂がのり旨味甘味があり、しっとりしている。鍋にしみ出た旨味も上々で、ポン酢ともども汁として飲んで、また愉快になるほどに味がいい。

 これで仕事でささくれだった心身共に「ゆるーい気分」にほぐされていく。やっぱり遅く帰った日のお父さんには小鍋仕立てがいちばんだ。
 そう言えば9月も終わり、過ごしやすい日々となってきた。とともになんだか人恋しいな。だれかボクと大酒を呑む人いませんか?

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、クロダイへ
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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 活けスルを仕込んでいた『市場寿司 たか』、渡辺隆之さんが、「あらよ!」と軽く湯がいたゲソを握ってくれた。あとは耳との二かん。これが絶品というか官能的な旨さだ。
 この美しいお身足(ゲソ)に興奮するひとも多いだろうなー。あるいはこの握りを見てふと恋人と会いたくなるとか、独り身が切なくなるとか、どこかしら心の中がざわついてくる。
 そして食べたらもっと、もっと、心の中のざわめきが大きくなるのである。きっとこんな握り二かんのために寂しいオヤジはやるせなくて死んでしまうかも知れない。しかも急に秋めいてきている。遠くで聞こえるのは「美しい水車小屋の娘」の旋律、ビオロンの音だろうか? 「寂しいな」、五十路オヤジには夢も恋もないのだ。
 せめてあと3,4かんゲソと耳を握ってくれたら五十路オヤジは救われるのになー。
「おーい、たかさん、ゲソを追加」

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「ダメ……」。

『市場寿司 たか』
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、スルメイカへ
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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 スルメイカは旨い上に安い、それに用途が広いと三拍子揃った優れた海産魚貝類である。そのスルメイカが鮮魚として流通するときにふたつの方法がある。ひとつはで下に氷を敷き詰めて、その上にスルメイカを並べたもので市場では「下氷」と呼ぶ。これはやや大型船の上でスルメイカを釣り上げたら、一度氷水でしめ、それから氷の上に並べたもの。もうひとつは、小型船舶によって沿岸で釣り上げたスルメイカを氷海水に生きているまま放り込み、しめ、出来るだけ早く消費地に出荷したもの。市場に到着したときにも氷水の入った海水に入っており、到着したものを触ると吸盤が吸い付いてくる。当然生きているわけではないが、「活魚」のように新鮮という意味合いで「活けスルメイカ」と呼ぶ。
「活けスルメイカ」の産地は千葉県、静岡県、三重県など比較的関東に近い地域。その鮮度と身の活かり具合から「下氷」よりも高値となっている。

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八王子総合卸売センター『総市』に活けスルが格安で売られていた。どうやらこの日、下氷のスルメイカも「活けスル」も市場が飽和状態となるほど入荷量が多かった模様。これが見事なスルメで買わずに通り過ぎるのは無理!

 ボクはこの生きのいいスルメイカをときどき買ってきて、慌ただしい日のお昼ご飯のおかずにする。活けスルメの値段はキロ当たり800円から1200円くらい。1ぱい400グラムから500グラムあるのでお昼ご飯のおかずにに400円から500円の出費。でも後はご飯だけで済むのだから簡単で、外食することから比べて安い昼飯となる。

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 活けスルメはゲソと耳、ワタを取り去る。今回は八王子総合卸売センター『市場寿司 たか』の渡辺隆之さんがワタの醤油漬けを造ってくれた。ゲソと耳、刺身用に切り落としたところは別に冷凍保存する。ということで活けスルメイカに捨てるところはまったくない。
 胴の部分は丁寧に皮を剥いて、薄く厚みを半分に切る。これを素麺状に切ると、これが「いか素麺」の出来上がりである。薬味はネギとショウガ、タレは安直に島根の「隠岐の味覚 飛魚だし(あごだし)」を使った。
 ご飯のおかずには甘味が欲しいので、この「飛魚だし」がまさに、良い加減のものだった。「いか素麺」のタレは醤油、多めの味醂、酒、それとカツオ昆布だしの旨出汁八方なのである。このやや水分の多いタレをかけてそれこそ素麺のようにすするのだ。その八方出汁を作れない時間のないときには「隠岐の味覚 飛魚だし(あごだし)」はとても便利である。

 さて、忙しい日のお昼ご飯、丼の「いか素麺」にタレをぶっかけて、かき回して、ご飯に盛り上がるようにのせる。イカの旨味はアデニール酸、そこにグリセリン、グルタミン酸などが加わって甘味を追加。当然、ご飯の糖質と出合うとドエリャーうまいわけで、ご飯1杯で止められるはずもない。まあ五十路だから2杯で我慢する。これならお昼にカツ丼を食べることを鑑みると抜群のダイエット食だと言える。よく考えると3杯飯を食べてもダイエットにはなるだろう。メタボリックオヤジのお昼ご飯は「いか素麺」に限るということだ。

井ゲタ醤油
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海士物産
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 オオミゾガイの旨い食べ方はなんだろうね? せっかく産地に電話をかけたのであるからと、斜里で聞いてみた。その答えが「バター焼き」である。ボクは貝の食べ方にあって「困ったときのバター焼き」という自家製慣用句を使っている。これはあまり料理をしない人が見知らぬ貝を見つけると、とりあえず「バター焼き」にするかな? と思うらしい、ということから閃いた言葉である。
 この「オオミゾガイはバター焼きね」という短絡的な答えが多いのには改めて驚いた。市場でオオミゾを買っている料理人ですらそうなのである。まったくモッタイナイとしかいいようがない。

 ボクと八王子の寿司屋である『市場寿司 たか』で試行錯誤、あれこれ料理していちばんというのが刺身である。刺身と言ってもまったく生ではなく「ほっきがい(ウバガイ)」やトリガイと同じように軽く湯通しする。
 気をつけなければならないのが、鰓を中心にして大量の細かな砂を噛んでいるということ。だから仕込みは丁寧にするにこしたことはない。

 これをワサビ醤油で食べるのであるが、その甘味と旨味、食感の良さに思わず感動してしまう。ボクなどオオミゾガイに恋をしてしまうほどに耽溺しているので、市場で見つけると思わず頬スリスリしてしまう。この光景があまりにも奇妙に見えるのかよく仲買から「コラ!」と注意されるのだ。

 さて閑話休題。
 ここでオオミゾガイの3つの魅力を挙げておきたい。
1/うまいこと(わかりやすい!)
2/安いこと。
3/意外に知る人ぞ知るといった存在であること。要するに通ぶることが出来るんだな。

 そのうち、これだけうまいのであるからオオミゾの値段も騰がってくるかも知れない。その昔、バケツ一杯100円でも売れないと言われていたエゾイシカゲ(石垣貝)」が今やキロ当たり3000円前後もする。今の内にせっせとオオミゾガイを飽食するのが、ボクの青田買いなのである。

●マルゼン食品のホームページへ
http://www.interq.or.jp/world/maruzen/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑のオオミゾガイへ
http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/heterodonta/sonotamarusudare/oomizogai.html
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http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/heterodonta/bakagai/ubagai.html
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http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/heterodonta/nikkougai/saragai.html


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 オオミゾガイというのは、市場でときどき見かけるもので、そんなに珍しくもないだろうというのに、ほとんど一般に知られていない、ボクの大好きな二枚貝である。これがどんな漁法でとられているのか、主要な産地はどこなのかが長い間わからなかった。それが徐々にわかってきたのである。

 9月25日に八王子魚市場で見つけた荷(発泡の箱)には『マルゼン食品』とあって電話番号がある。地名がないので致し方なく電話をかけてみる。これが苫小牧の業者さんであった。苫小牧といったら「ほっきがい(ウバガイ)」の大産地である。電話の方に「オオミゾガイは苫小牧のどのあたりで、どのような漁であがっているか」問うと、斜里からの陸送品であるという。それで斜里漁協に電話すると確かに今現在とれているのが判明した。
 オオミゾガイをどのような漁法でとっているのか聞くと、「ほっき漁」のときに混ざって揚がってくるのであるという。「ほっきがい(ウバガイ)」は船でケタ網というのを引いてとる。言うなれば底引き網漁である。当然、「ほっきがい」以外にも魚も他の貝類もとれる。貝では「白がい(サラガイの仲間)」とオオミゾガイがとれている。すなわち最近市場でも定番的な二枚貝となっている「白がい(アラスジサラガイ、サラガイ)」とオオミゾガイは「ほっき漁」の副産物だったのだ。
 この「白がい」、オオミゾガイが未だに一般にあまり知られず、値段も安いままというのが面白い。確かにオオミゾガイの入荷は少なく、知名度が低いのが当たり前としても「白がい」など市場に毎日のように入荷してきているのだ。

 ここで「ほっきがい」で有名な苫小牧の業者が、斜里からオオミゾガイを買い取っている理由がわかってくる。斜里は北海道でもオホーツク海に面する町で関東からすると遠い。例えば斜里の名産品である「きんき(キチジ)」や「ほっきがい(ウバガイ)」という人気のある値段の高い水産物なら出荷できるが、知名度の低い値段の安い貝を扱うには経費がかかりすぎる。そこで「ほっき漁」の副産物である「白がい」やオオミゾガイをいち早く出荷していた苫小牧まで運んでいるのではないだろうか? ちなみに苫小牧(樽前)、室蘭の「ほっきがい」は築地などでも上物として認知されている。

 さて、ここで書いておきたいのは、刺身にしてオオミゾガイが「ほっきがい」より落ちるかという話。詳しくは02に書くが、ボクは味わいの良さは同等、むしろオオミゾの方が上品ではないかと思っている。市場では「ほっきがい」がキロ1000円前後、オオミゾガイも1000円前後で値段も同じ。と言うことはオオミゾガイ、そんなに安くないでしょう? と思われる方は素人なのである。「ほっきがい」の貝殻は重く、ワタが多い。オオミゾガイの貝殻は薄く、ワタが少ない。また刺身に出来る部分が水管と足なので全体の重さの比率からして多いのである。

 この市場で見つけた無名の二枚貝、こんな存在を見つけるのが市場歩きの醍醐味のひとつだ。そして市場の達人は魚貝類の青田買いに勤しむのである。

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 先週の土日は一人っきりだった。家族はてんでに外出して、静かな静かな休日となった。そんなお父さんの真の休日には、こんな酒の肴がいちばんという刺身を作った。これがいかにも平凡極まりないもの。なぜならば値の落ちてきたサンマと、今年は豊漁なのか毎日のように入荷してくる下りガツオ。ともにお買い得だし、旨味も脂も最高にのっているし。これをさりげなく一皿盛りにしてニンニクと海老名の海老さんにいただいた柚をそえる。
 しかし、これがたった40円のサンマなんだろうか? 脂ものっている上に、ジワリと旨味も舌の上に浮き上がってくる。それ以上に存在感大なのが安売りの下りガツオであって、これがまさかこんなに旨いものだとは、今月最大のうれしい誤算なのである。

 たった一人っきりのお父さんは「王禄」を立て続けに飲みながら、黒潮さんに感謝してついつい顔がほころんでいるらしい。なぜなら暗がりから飛んできたヒヨドリのピーがボクを見て首をひねっている。そして「飯をくれ」とピー、キーとなく。いつもは冷蔵庫に餌となる果物を探しに走っていく姫がいない。これはちょいと寂しいが、ひとり酒はうまいなー。


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 マボヤの産卵期は冬から春。産卵のために秋から、産卵期、そして産卵後の回復期は旨味が減り、また身がやせ細ってきてしまう。そして産卵後、盛んに海水中の微生物、プランクトンなどを吸い込み初夏には旬を迎える。さて夏の最盛期から、秋になって、寒くなってもマボヤの入荷は続く。いつまでこのマボヤのうまい時期が続くのか、ボクは市場で定期的に購入して試しているのだ。

 今回のものは青森県産の小振りの天然もの。マボヤに関しては、味と大きさはあまり関係がないようだ。これがうまい。養殖と天然ものの違いはその食感だと言われている。天然ものの方がシコっとしているのだという。確かに言われてみれば、さすがに天然だけのことはある、と思うものの、それほど大きな違いは感じられない。むしろ味わいよりも天然ものの姿のよさを愛でながら、ぐさっと半割にして刺身にする。

 これを塩とスダチで食らうのだ。マボヤに三杯酢とか醤油とかいろいろ好みはあるだろうけど、ボクは塩と柑橘類以上にうまい食い方を知らない。またマボヤには甘口旨口の酒が合うように思える。だから石川の菊姫を1本買ってきて、その肴とする。
 そろそろ朝晩は肌寒さを感じるようになってきた。この個性派の肴と旨口の酒がしみじみいいのであるよ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑のマボヤへ
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 さて、最近よく見かけるのが島根県からのマアジの荷である。さて、その安値にも驚くのだが荷を見ただけではまったく島根だと思えないというのにも問題がある。

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これ島根県産というのが、ただすーっと通り過ぎる人に見えるだろうか? 紙に書いた文字は市場職員のもの

 市場のダイちゃんが
「ちゃんと“JFしまね”と書いてあるでしょう」
 と言うのだが、五十路のボクにはよくよく見ないとわからない。
 実を言うとこの荷の説明書きも伝票を見て書いているわけで、並べるときにもこの日の富山ものとは「箱を見て産地がわからないのが島根、横にわかりやすく書いているのが富山」ということで運んできているわけだ。最近、この白い発泡に浮き彫り文字で、というのが多いのである。でもこの「浮き彫り」というのが見えない。例えば築地の荷受けを通り抜けても、まったく気がつかないのである。もしもこの「浮き彫り」だけで発泡の値段が高いならまったく無駄ではないだろうか?

 見本にこれもあまり上手とは言えない同じに日に来ていた富山のマアジの荷と比べてみると歴然としている。この富山産のものもあまりにデザインがヘタクソすぎる。例えば書体にしても、箱と文字のバランスにしてももしもデザイナーとして見たら噴飯ものの、考えの足りないレイアウト。でもこの稚拙な箱の文字の方が「浮き彫り」よりも目立つのだから本当に箱代が無駄である。

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富山から来た荷。これもデザイナーとしてみると「ヘタクソ」と言いたい

 ついでに行っておくと最近、仲卸で「日本海産」と書かれた文字、但し書きがある。これは箱の横にこれも目立たない浮き彫りで「日本海」と書いてあるせいだ。日本海と言えば山口県から北海道まで広いのである。なぜこんな箱を使うのか、これもワケがわからない。もしも箱の値段が高いなら、モッタイナイと言っておきたい。

 さて、文句を言っていても始まらない。もしも島根の方が見ていたなら、この箱の重要性を強調したい。築地の荷受けでもそうだが、今では鮮魚のほとんど総てが相対取引なのである。とするといちばん肝心なのは荷受け職員がいかに売りやすい荷を作るかだろう。だから箱は重要なのだ。荷受けで目立つのは確かに真横である。ここに目立つ文字でコピーをつけるのがいちばん正しいと思う。
 例えば島根なら「アジは日本海 島根」だとか、「日本海 しまね」だとか。とにかく島根と日本海が大きく目立つようにデザインする。たぶんこれだけで荷受けの競り場では一頭抜きいんでた荷となるだろう。後はパッチとラベルだけど、これは5キロばんの箱につけるには予算の点で無理だろう。

 さて、改めて富山のマアジと島根のマアジを並べて見てみるかな?


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 さて毎年、10月になると殻付きのマガキがどっと入荷してくる。それが近年、9月に早まっているのだけどなぜだろう? でも初物が来たとなったら試してみるに限る。
 それで土曜会で共同購入。5個持ち帰って食べてみた。
 産地は岩手県山田湾のもの。この山田湾はまことに美しいところで、たぶん早々に出荷検査をクリアしたのも海がキレイである証拠だろう。でもそれとマガキのうまさは関係ない。

 残念ながらお彼岸直前のマガキはまだまだ痩せていた。味の点でももうひとつというところ。この画像をみても剥いたときの膨らみが感じられないのがわかっていただけるだろう。

 この箱に入った三陸からの殻付きのマガキは寒くなるにしたがい、どんどん身を太らせて味もよくなってくる。だから毎週食べてみるとその季節の歩みが感じられる。最近では季節を感じられるものも少なくなってきている。マガキを食べながら秋の進み具合をみてとるというのも一興かも知れない。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、マガキへ
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甲殻類を改訂
スベスベエビのページを作成
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オキヒメヒオドシエビのページを作成
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シリブトシャコのページを作成
http://www.zukan-bouz.com/koukakurui/shako/siributoshako.html
フトユビシャコのページを作成
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掲載種 1954


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ソコダラ科を改訂
ムスジソコダラのページを作成
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ズナガソコダラのページを作成
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ソロイヒゲのページを作成
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カタダラのページを作成
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ツバメコノシロのページを作成
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チョウチョウウオ科を改訂
トゲチョウチョウウオのページを作成
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掲載種 1950


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 沼津魚市場西浦の定置網でひろったフグは総てコモンフグだった。拾ったときには「ショウサイフグだろう」とあまりじっくり見ないでバケツに放り込んでしまったのだ。それが思わぬ拾いものだったわけで、喜び勇んで河豚刺し、河豚ちりといたしたのである。
 さすがにコモンフグは、そんじょそこらの「名古屋(ショウサイフグ)」とはワケが違う。うまいのなんのって、口福感を存分に味わえた。

 コモンフグは青森県以南ではありふれた魚であるが、漁獲量が多いのは西日本。関東で安いフグと言ったらショウサイフグ、マフグなのだが、それよりもボクはコモンフグの方がうまいと思っている。

 河豚ちりには欠かせないのがうまいポン酢醤油である。ここに待ってましたとばかりにうまいポン酢があったのである。まさにこの日のために島根の人が持ってきてくれたように思えるから不思議だ。
 製造元は島根県松江市内の米田醤油店。まだ試行錯誤の最中であると言うが、これは明らかによくできている。酸味と柚の香り、また醸造された白だしの旨味がほどよいのである。「白だしぽん酢 ゆずほの香」という雅趣あふれる商品名もいいと思う。このポン酢を使ってみて米田醤油店の他の商品も味わってみたくなった。来週にでも日本橋「しまね館」に行って探してみなければ。

 彼岸前のコモンフグで、まだ旬とは言えないだろう、と期待半分の河豚ちりを仕立てた。材料はなにもなくて豆腐とネギだけの彩りに欠ける鍋。これが絶品であった。妻などははっきりと「ポン酢の美味しさのお陰ね」なんて言うが、コモンフグ君も素晴らしい旨味を持っている。

 河豚ちりを食べると、早く秋らしくなって欲しいものだと思う。そして沼津にいってまたコモンフグを拾いたいものだ。

注/フグを自分で調理することはお勧めしない。食べるときには自己責任で。また商用の場合はフグ調理師免許が必要になる。

米田醤油店 島根県松江市東本町3丁目58

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、コモンフグへ
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 さて八王子総合卸売センターでもっともわがままな男、コマちゃん、ボクが持ち込んだ沼津の魚を握りにして一気食い。その値段たるや、ほとんど信じられない安値で食っておきながら、勝手にランキングをつけて寄こした。(画像のホウボウだけは沼津産ではない)。これを一挙公開する。驚くなよーー!

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●その堂々一位が意外にまともな答えで、「でんでん(オオメハタ)」。
以下総て市場魚貝類図鑑のURL
http://www.zukan-bouz.com/suzuki2/suzukika/oomehata.html
「コレはね。ほんまにうまい。白身としてダントツだね。二重丸だね」

●二位はなんと定置網のかたわらで勝手に撮影用に拾ってきた、チョウチョウウオ。
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「この白身と比べたらイサキもホウボウもこんなに低いね。オレに言わせると。脂が甘かったよ」
注/この魚、ぜったいにまずいと思いこんでいた。それが今回うまかったのだ。早く改訂しなければ!

●三位が定置の小アジ。
http://www.zukan-bouz.com/aji/aji/maaji.html
「アジは小さいのがいいのかな。味(アジ)があったね」

●四位、カゴカキダイ。
http://www.zukan-bouz.com/suzuki3/sonota/kagokakidai.html
「脂がもっとあるとよかった。でもうまい白身だ」

●五位、ツバメコノシロ。
http://www.zukan-bouz.com/suzuki3/sonota/tubamekonosiro.html
「平凡だね。まずくはない。これだけ出されたらいいと思うよ」

●六位、かさご(ユメカサゴ)
http://www.zukan-bouz.com/kasago/fusakasago/yumekasago.html
「これ上品だけどもの足りない」

●七位、ごそ(ハシキンメ)
http://www.zukan-bouz.com/kinmedai/hasikinme.html
「存在理由がわからないな。キンメみたいだね。でも沼津って感じじゃない」

「白身もこれだけ食べ比べるとわかるね。良し悪しが。また次回もヨロシク!」

 という生意気なコマちゃんでした。


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 さて競り場から沼津名物飲食店街「にし与」に向かう短い距離の間に横殴りの雨に濡れそぼる。早朝なのに観光客もちらほらと見える。そのさしている赤い傘が印象的だ。ついでにトイレまでまささんと走る間にも濡れる濡れる。本日は気温が高く、曇り時々驟雨、湿度100パーセントではないかという不思議な天候である。いつもの事ながら競り場にいるとほとんど天気のことなど忘れている。

 そう言えば競り場で滋愛丸の船長と会ったのを思い出す。これは本日(17日)漁はお休みということにほかならない。ちなみに志下、戸田の底引き網は深夜2時か3時出船、夕方にもどって船上で選別した魚を大型バケツに氷詰め。それを翌日、競り場に運ぶというもの。だから明日(18日)、底引きの魚はないということだ。台風の影響でしらす船が出られなかったことといい、自然相手の漁というものの大変さがわかる。
 これがわかっていないのが政治家や行政者ではないだろうか? ボクは農林水産省に内定した人は必ず2年だけ水産農業の体験しなければならないという法律を作りたい。話は横道にそれるが安倍内閣で選ばれた赤城農林水産大臣は絆創膏だけで有名であるが、それ以前の以前の段階で農業とも水産業とも密着しているようには思えない。漁師さんなどの大変さを知るにつけて、あんないかがわしいヤカラを選ぶこと自体、安倍ちゃんはバカだったとしか言いようがない。

 閑話休題。
 早朝からの競り場見物でボクなど疲労はピークに達している。「にし与」の自動ドアがガラリと開くと、そこにいたのが尻高鰤さんなのである。うまそうなアジフライと生ビールがカウンターに並んでいる。いったいこれ何杯目のジョッキだろう。
 ちょっと戸惑ったのが、「にし与」に座敷があるものだと思いこんでいたこと。疲れ果てて足を投げ出したくなっていたのに、長靴そのままでテーブル席というのはちょっと辛いものであった。

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 ここで帰りの運転を免れている人たちは当然生ビール。やがらのやがらさんもJasminさんもこちらの我慢している辛さを無視してうまそうに飲んでいるのが大人げなく思う。その上、尻高鰤さんの「こんどはにごり酒」にはうらやましいよりも憎たらしい。「尻高鰤のバッカヤロウ!」。沼津の飯塚さんもいっぱいやるのだろうと思っていたら本日は大人しい。どうやら体調を崩していたらしい。

 壁に貼られた品書きからイワシの刺身(カタクチイワシ)、メダイの刺身と銘々定食を注文する。ボクは「沼津定食」というフライと刺身を取り合わせたもの。久しぶりの「にし与」の定食だが、やはりアジフライの旨さは傑出している。
 刺身などが来たときJasminさんからかなり強烈なご不満が出る。
「ぜんぜん地魚がない」
 ここで「にし与」の弁護をさせてもらうと、この店、地元にあってはうまい定食を出す店としては定評がある。その上、当日は連休明けで魚がない日なのだ。ただし普段でも目の前にあった底引き、また定置網などでとれた魚を食べたいとなると確かに弱い気がする。これは「にし与」ならずとも、沼津魚市場周辺の寿司屋、定食屋などでも必ずしも底引き網の魚を重要視していない、という現実がある。だいたい「にし与」よりも遙かに保守的な品揃えの店も多い。このあたりが沼津魚市場周辺の飲食店の弱点である。また、この弱点を作り出しているのは観光客の無知というのを忘れてはならない。ちなみにボクは「にし与」が大好きである。なにしろここのアジフライ、東京でどの店で食べるよりも何倍もうまいと思う。

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 楽しい宴の最中、今回参加のMさんの姿が見あたらないのを思い出す。しかも「にし与」はケータイ圏外なのだ。外に出てケータイを入れるが留守電となっていた。

 競り場に帰り着くと菊地利雄さんが競り落とした魚貝類が山となっている。
 これに佐政水産の青木修一さんにお願いした魚を取りに行く。佐政水産では青木さん、中村君が忙しそうに魚を出す準備と引き渡しに追われていた。今回のアラもソコアマダイモドキもベニテグリ類も安くて助かった。青木さん毎回ありがとう!

 競り落としたのは、しまえび(ヒカリチヒロエビ)、赤えび(ツノナガチヒロエビ)、ボタンエビ、のどくろ(チゴダラ)、ごそ(ハシキンメ)、カゴカキダイ、アラ、ソコアマダイなどなど。その上、菊地利雄さんから定置網の小アジをたんといただいた。
 とにかく「これ欲しい人」、「はーい」と手を上げてどんどん分けていく。いいものを手に入れた人もダメだった人も、なんだか幸せそうだから面白い。今回の超目玉であるソコアマダイ(値段は秘密に)は、まささんがジャンケン勝ち。
 今回の魚貝類に関しては、ほとんど利潤無しで競り落としてくれた菊地利雄さんに、返す返すもお礼を申し上げたい。その上、場所まで占領してたっぷり楽しませてくれた。考えてみれば沼津の魚貝類を調べられるのも菊地さんのお陰である。今回改めてそのありがたさが身にしみた。

 午前10時近くに解散となる。みんなお土産を持って楽しそうに沼津を後にする。

 帰路の東名、国道はガラガラだった。ここで家族へのお土産がないことに気づき。ヒモマキバイさんお勧めの町田のアイスクリーム屋に立ち寄る。この人、幸せなのはいいとしても五十路を前にしてアイスクリームに目がないと言うのも変な人だね。

 帰宅は昼過ぎ。
 とにかく大急ぎで甲殻類の撮影。4時に少々うたた寝。またまたツバメコノシロの同定、アシロ科のまったく検索不能の魚などがあって、いつの間にか夕食時となる。

 夕食は「ニギス(これも同定のために持ち帰ったもの。やはりカゴシマニギスが混ざっていた)と赤えび(ツノナガチヒロエビ)、しまえび(ヒカリチヒロエビ)の漁師風煮つけ」、ごそ(ハシキンメ)と小アジの刺身、赤ごち(ベニテグリ)の天ぷら、かさご(ユメカサゴ)の塩焼き。子供用にハンバーグなどを作る。

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ニギスの漁師風煮つけ。旨味を出すために「赤えび(ツノナガチヒロエビ)」、「しまえび(ヒカリチヒロエビ)」を加えている。味は濃い甘辛

 ニギスの煮つけ、小アジの刺身がうまかった。その上、久しぶりのベニテグリの天ぷら。ベニテグリは同定のためのものだったが、やはり探していたルソンベニテグリがいたのも本日のツキを思わせる。ルソンベニテグリとベニテグリの味比べは、ほとんど差がなかった。ルソンベニテグリの方が小振りなのでベニテグリの勝ちかな。

 午後10時前に本日2度目のシャワーを浴びてダウン。


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 日記風に。

 深夜、1時過ぎに国道129号線を南に下る。隣にいるのは幸せな独身生活を送るヒモマキバイさん。途中、今時珍しい超低速暴走族に出合い時間が押してしまうが、それでもゆっくり走って沼津魚市場到着は午前3時。尻高鰤さん、Jasminさん、鮟鱇さん、まささん、海老名の海老さんなど既にボクたちを待ちの状態となっていた。

 競り場にくると既に大成丸、太共丸、和丸の志下トロが選別の最中となっている。エビ類もかさご(ユメカサゴ)もニギス、目光(アオメエソ)もほどほどの漁と見た。その内、戸田の船も到着して競り場の確保にやっきとなっている。

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 太共丸の桶にタカアシガニが投げ込まれている。しかし、昨年から探している、あぶらがに(オオエンコウガニ)が見つからない。
 かさご(ユメカサゴ)は相変わらず多く。アオメエソの形がいい。ごそ(ハシキンメ)の大きさも揃っていてこれは仲買当たりはうれしいだろう。ただしあぶらごそ(ヒウチダイ)が小振りであるし数が少ない。ソコアマダイ、ギス、ニギス、喉黒(チゴダラ)、ヤナギムシガレイ、メイタガレイ。雑魚としてはカスミサクラダイ。
しまえび(ヒカリチヒロエビ)、赤えび(ツノナガチヒロエビ)、甘えび(ジンケンエビ)、ボタンエビ、手長えび(アカザエビ)、ウチワエビがあって、雑魚としてアカモンミノエビ、ミノエビ、センジュエビ、オキナエビ、ヤサオキナエビ、エビではないがオオコシオリエビがある。

 さて我々一行に御殿場からMさんも参加して競り場を回る。皆さん、築地も八王子の市場の経験済みとはいえ、さすがに水揚げ港の活気、そして魚貝類の豊富さには圧倒されているようだ。こんなとき一度期にたくさんのことをお教えしても、きっと頭脳が追いつかないだろう。とは思いながらも出来るだけ多くの魚貝類を説明する。

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 菊地さんが来て、困ったときに18番柱で待たしてもらいたいとお願いする。そして佐政水産の青木修一さん、お二人と会うのも2ヶ月ぶりとなる。
 5時前になると尻高鰤さんは18番(菊地利雄さんのスペース)で一休み。そこに大阪から、やがらのやがらさんが到着する。今のところ言語は東京弁なので安心する。ここで「やっと着きましたデー」なんて言うと面白いんだけどね。
 6時前には沼津の甲殻類学者飯塚栄一さんが登場となる。今日は少々お疲れの様子だ。

 活けにあって珍しいのがゾウリエビ。他にはマダイ、メイチダイ、たくさんの汐っ子(カンパチの若魚)。イセエビが解禁というのに、ぜんぜん見かけない。貝売り場にはクボガイ、サザエ、クロアワビ、たぶん養殖のエゾアワビ。
 大島から来ているものにはアオダイ、ウメイロ、イラ、イサキ。ここで「頭屋分店」さんに会い、挨拶を交わす。「おめえ、久しぶりだな」「いえ、まあ」なんて感じだ。

 黒板を見ると巻き網が3船、底引き網くらいで定置がない。残念だなと思ったら西浦定置が入船していた。

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 水揚げの多くがマアジと水かます(ヤマトカマス)、いなだ(ブリ)、汐っ子(カンパチ若魚)、小イサキ、ボラ、ヘダイ、カゴカキダイ。雑魚としてはツバメコノシロ、ホシザメ、アイゴ、ウミヒゴイ、ヨメヒメジ、クロホシイシモチ、チョウチョウウオ。ここでJasminさんが「ホシザメください」とゲット。またボクはツバメコノシロをたくさんもらってきた。ツバメコノシロには数種いて詳しい検索が必要なのだ。

 5時になると陸送ものの競りが始まる。それが底引きまで到達したのが6時半過ぎだった。到着から3時間以上競り場にいたことになる。少々疲れたので「にし与」で朝ご飯。


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 北海道や東北で「つぶ」と呼ばれるものに2系統ある。ひとつはエゾバイ属であり、もうひとつはエゾボラ属である。標準和名でみるとエゾバイ属には最後に「バイ」がつくし、エゾボラ属には「ボラ」がつく、わかりやすいのだが、現実はそんなにあまくない。
 例えば「バイ」のシライトマキバイなど北海道では「灯台つぶ」だし、同じくクシロエゾバイなど「泥つぶ」だったりする。

 面倒なので「バイ」を「煮つぶ」、「ボラ」を「刺身つぶ」と呼んだらいいとボクなど勝手に思っている。その刺身つぶの代表選手が真つぶ(エゾボラ)であり、脇役として何種類か主役回りに並んでいる。この脇役を主役Aに対して市場ではBつぶという。さて脇役だから主役よりも値は安い。確かに味もいちだん落ちる。そのBつぶの中でももっともB級に思えるのがアツエゾボラなのだ。この「アツ」はそのまま「厚みが厚い」、貝殻が厚いと言うこと。だから歩留まりが悪い。その上、身がやや黄味がかっているのだ。

 こんな体たらくだから、なかなか表舞台には出てこない。やっと買われたかと思ったら「安い宴会だからね」とか、「真つぶがないかなね」なんて言われる始末。
 さて、ボクの回りくどい文字の羅列にそろそろ焦れてきたのだと思う。じゃあ、なぜ今回の主役がアツエゾボラなのか? それは単純明快、うまいからだ。

 確かに歩留まりが悪い、でも真つぶキロ当たり1800円に対して1000円はうれしいだろう。それに身の色合い。ボクはクリームイエローは美味しそうな色だと思っている。

 このちょっと苦くて、直ぐ後に甘味がくるつぶの味が大好きなのだ。その合いの手に食うのがワタである。アツエゾボラのワタはうまいのである。だいたいねっとりと甘味がある。
 ちなみに画像のもので1個95円なり。これでもお父さんの晩酌の一品にはちょうどいい大きさだ。

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サバ科ニジョウサバのページを作成
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紅藻綱オゴノリ目を改訂
シラモのページを作成
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ツルシラモのページを作成
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緑藻綱を改訂
ミル目ミル科ミル属
クロミルのページを作成
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タマミルのページを作成
http://www.zukan-bouz.com/kaisou/ryokusou/tamamiru.html
シオグサ目シオグサ科
カタシオクサのページを作成
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掲載種 1944


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 朝方、5時過ぎには目が覚める。気分爽快だ。これはこの一週間、ほとんど都心に出なくても済んだことによる。やはり片道1時間半の往復、しかも魔の中央線に乗って、というのは疲れる。
 仕事的には暇であったのだが、サイトの改訂は膨大であった。壊れた甲殻類の目次はまだ半分しか出来ていない。ハタ科、ネズッポ科、フサカサゴ科メバル属の一部、カレイ科の一部、海藻の褐藻類、輸入魚の目次の改訂。新しいページ形式を考えたのはいいが、2000ページを作り直すのに何ヶ月かかるのだろう。
 また時間があると『海藻』(宮下章 法政大学出版局)を読み直している。これを読むということは古典も、また広辞苑も出して置かなくてはならない。その上、『水産加工品総覧』まで広げると机の上は危険な状態となる。暇が出来たら買いに行こうと思っているのが「流転の海」第5部『花の回廊』(宮本輝)なのだが当分無理だろう。貧乏なので文庫本が出るまで待つか? そう言えば『流転の海』の3部『血脈の火』など、もっとも新刊本が早く登場する荻窪ブックオフまで、わざわざ買いにいったのだった。どうしてそんなことが出来たのだろう。

 7時前まで市場魚貝類図鑑の改訂をして姫と外に出る。

 八王子魚市場、静かだったな。面白いもの皆無。もの凄い量のマアジ、サンマ、イワシ。ここで『魚茂』さんにつかまり立ち話。ようするに「最近は背の青い魚が安くて脂がのっている。自家製の干物もうまいよ」ということ。八王子市並木町『魚茂』の干物をよろしく。昨日は『源七』には塩釜からの生ばち(メバチマグロ)が入荷してきていた。その切れっ端がないかな? と探すがどこにもない。本当につまらないなー。

 とにかく腹が減ったので八王子綜合卸売センター『市場寿司 たか』。店の前に3人ほど待っている。かなり待ってやっと姫と朝ご飯。ボクは『市場寿司 たか』名物「豪海ブツブツ丼」、姫はイクラとカッパ巻き。「豪海投げ込み丼」は島根県産のエチュウバイ、大分県産のサヨリが入っていたが、タクワンが欠けていた。ボクはタクワンの入っていない「ブツブツ丼」はイヤなのだ。それに「みそ汁はいらない」っていったのに。たかさん反省するべし。

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 土曜会のメンバーが来ないのだなーと思っていたら、海老名の海老さんが柚を持って登場。ほどなく不幸なヒモマキバイさん、稚鮎と銀子さん一家。ヒモマキバイさんたちと交代で店を出て、総市水産、『土谷食品(トコロテン屋さん)」まで歩く。

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『土谷食品』ではできたての竹輪麩、トコロテン、コンニャクが買える。

 本日の『総市水産』の凄いこと。サンマ10本がなんと380円しかしない。マイワシが同じく350円。まだ早い時間なのに店の前に人だかりがしている。

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『総市』の土曜激安市は新しい八王子綜合卸売センター名物になりそう。この安さは本物

 八王子総合卸売協同組合をぐるっと回って、9時前には『高野水産』が帰り着く。こちらの品揃え、はたまた値段の安さも半端ではない。それからの1時間ほどが戦場と化したのはいうまでもない。ヒモマキバイさんたちはクロムツ、「白貝(サラガイ)」、「えぼだい(イボダイ)」などを買う。ここでヒモマキバイさんがイボダイを「バターフィッシュ」と呼ぶのには参ったな。バターフィッシュを加工品以外で見るのは本当に難しいのだ。
 我が家はソコイトヨリ混じりで入荷してきたイトヨリ、スルメイカ1ぱい、『綜一水産』のサンマをみんなと分け合って二本を買い求める。午後北海道からの魚貝類がくる可能性大なので買い控える。

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『カワベ』の上州牛薄切り、非常にうまかった。コマちゃんやるなー

 帰宅は10時半過ぎ。午前中はサイトの改訂。とくにヒレグロのページに粘液の窪みの画像を加える。画像の整理。

 八王子総合卸売協同組合『肉の菅原』の名物ハムカツでお昼ご飯。そう言えばヒモマキバイさんはシュウマイを買っていたっけ。たまにはそちらにしてもよかったかな。

 帰途TBSラジオ「永六輔の土曜ワイドラジオ東京」を聞いていると、ボクが童謡だと思っていた大好きな「里の秋」は戦後、南方から帰ってくる父を思う歌であったというのを知る。しかも最初に唄ったのが川田正子である。ボクは戦前戦後の歌謡史に興味があって関連書を読んでみたいと思っているのだけど、川田正子はその中心部に存在する。またサトウハチローの「もずが枯れ木で」が反戦歌であったりするわけで、このあたりの入門書をなんとか探さなくては。

 午後からは仕事。画像の保存。合間に換気扇の修理やら、電話がなんどもかかってくるやら、なんだかどっと疲れが出るほどに忙しい。

 夕食は八王子綜合卸売センター『土谷食品』の竹輪麩とスルメイカ、メークインの煮物、サンマの塩焼きと刺身、ホヤ、牛肉の塩コショウ炒め、キャベツとミョウガとニンジンと大根とキュウリのスダチサラダ、シラモ、ワカメの酢の物。疲れると和食系になる。
 肴は『土佐の廣丸』の酒盗。酒は「常山 冷やおろし」。

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竹輪麩(ちくわぶ)、メークイン、スルメイカの煮つけ。とにかくスルメイカを出汁代わりに作る我が家の定番料理

 食後、北海道からの荷物が届いていないのを思い出す。たぶん航空便ではないので中一日かかるということだろう。
 9時からテレビ東京「アドマチック天国 石見銀山」を見る。この島根県西部は本当に見所満載。浜田のことが思い出される。温泉津を始めもう一度行きたいな。

 夜11時過ぎまで仕事。以後記憶無し。


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「大黒さんま」とは昨年(2006年)から、北海道厚岸漁協が船上で大型のサンマだけを厳選して出荷してきているもの。いうなれば最近流行のブランド魚(この言葉いやだねー)である。この一週間ほど並サンマが40円〜50円というときに250円、ときには400円近い値を付けている。

「これがうまいんだよ」なんていう寿司屋、料理屋も決して少なくない。その言葉を裏付けるように、目の前にかなり上物というサンマが100円なりであるのに「大黒さんま」350円を持っていくのだから、こーりゃ本物にちげーねーや、ということで1本300円を買って帰る。
 まずは重さを量ると200グラムちょうど。当日の並が160グラムだから、かなり差がある。その差は姿にも現れていて、頭の後ろ背中が盛り上がって見える。これラグビーの重量級選手といったごっつい体つきだ。またサンマは鮮度がよいほどクチバシの黄が強いといわれるが、まさにこの大きな黒灰の背、銀色の体色に最先端の黄金色が浮き上がって見える。

 これを晩酌のアテにする。最近、鮮度の良し悪しということでは入荷してくるサンマの、ほぼ総てが刺身になるということ。またほとんど全部が脂ものっていること。そこにくる「それ以上のサンマ」ってどんなもんだろう。
 実際口に入れてみて見事なほどに脂がたっぷりのっている。でも並と比べてもそれほどではない。やや「上」というものだ。それよりもビックリしたのがもちっとふくらみのある食感と「シコッ」とした歯触り。これは船上で厳選して丁寧に氷り詰めにしたからこそ味わえるものに違いない。
「ええ?」と思って昨日は「大黒さんま」ではないが、100円の並では上というものを比較すべく買ってきてみた。やはり食感はもちっとしていないし、歯触りは「シコッ」ではなく「ビィニュ」であった。この食感、かなり味わいに影響を与えるようでやはり「並上」よりは「大黒さんま」がうまいなーと思わせる。きっとたぶん脂ののりも他を圧倒しているのかも知れないが、この「シコッ」がそれを感じさせないようだ。その分、食べた後にじわりじわりと旨味と甘味がぶり返してくる。これは高値で買っても損はしないだろう。

 さて、本日の「大黒さんま」は安値200円、高値350円であった。そして普通のサンマの最安値はなんと40円ほど。この差額、違いが「わっかるかなー」。

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 東京湾と駿河湾で「顎無(あごなし)」と呼ばれる魚がいて、この名もあんまりよろしくないのに、標準和名のクロサギというのもちょっとね。これをたっぷり仕入れてきた八王子綜合卸売センター『高野水産』の社長が嘆く。もっといい「名前つけてくれよ」。

 でもでもこの魚にそんなに雅な、うまそうな名前をつけても仕方ないかもしれない。例えばマアジ、イワシと比べても、「劣性で判定負け」するだろう。当然、マダイ、メダイ、アマダイなどとは比ぶべくもない。
 ひとつだけ取り得があるとすれば刺身は在る程度うまいということか。今回のものは多分、富津あたりでとれたものだろう。それが無謀にも8キロ判(8キロ入りの発泡スチロール)できたのだから、高野社長の嘆きもわかるってもんだ。

 さて、キロ当たり600円、1匹200円ほどのクロサギ君は売り切れとなっただろうか?
 ボクは鮮度的にイマイチだったのでムニエルにして楽しんだ。この手の旨味に欠ける魚にはムニエルやフライがいちばんよい。

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 これはイケましたね。身がやや柔らかいのだけど、バターで焼くと身がふわりとして、香ばしい味に出来上がった。

 これなら「あごなし」に目がないという人も出てきそうだ。

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 さて、関東に近くて漁業が盛んであるのが福島県。南は小名浜から北は原釜まで有数の漁港が目白押し。その福島で盛んなのが底引き網である。そして、底引きにつきものなのが「めごち」である。「めごち」には何種類もあって産地によって種は決まってくる。福島県産は先ず間違いなくセトヌメリである。
 セトヌメリの「せと」は当然「瀬戸内海」からきている。どうにも東西、南北で隔たりがありすぎる産地に戸惑うかもしれないが、瀬戸内海の海水温は低めで安定しているというのを覚えておいて欲しい。

 福島県産で問題なのが取り扱いがやや粗雑であるということ。だから有名天ぷら店では福島県産「めごち」すなわちセトヌメリは使わないだろう。でもそれだからこそお値段が安いということで貧乏なお父さんにはありがたいお魚であるとも言えそうだ。なぜなら美味なのだから。

 ここで横道にそれるが「めごち」を天ぷらだねに卸すのは初心者でも簡単に出来る。とにかくウロコを取る必要がない。頭部近くのエラ下にある刺を含めて頭を落としてシッポを中心にして切り落とさないように三枚に卸す。文字で書くよりも出来上がりを見て欲しい。

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 作りますものは当然の如く天ぷら。これは技術に差が出るのであるが最近の天ぷら粉が優れている。ほとんど失敗がないほどにからっと揚がるのだ。

 後は皮目の香ばしさを楽しみながら酒のアテとすべし。意外に「めごち」界の王者ネズミゴチにも負けなかったりして。

市場魚貝類図鑑のセトヌメリへ
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 と、言ったのは『市場寿司 たか』の渡辺隆之さん。うれしそうに小イサキ(うりぼう)を選んでいる。
「片身1かんには大きいかなー」
 半身で1かんが望ましい寿司ネタの世界で、ちょいと大きめに育ちすぎた感はあるが、キロ当たり500円は安すぎる。今年はイサキが高いのである。
 さて、今回の小イサキは15センチから18センチほど。イサキの産卵盛期は4月から6月うらいまで、これは昨年生まれたものであろう。これが秋から冬にかけて、今年生まれの、脂ののった、それこそ「片身1かんサイズ」が入荷してくる。だからこの時期は小イサキの前哨戦といったところだ。

 市場で見ていると小イサキに手を出す料理人は手練れだというのがわかる。例えば、魚は小さいほど安い。でも小さくても味がいい種がいてイサキなどその最たるものなのだ。
 たかさん、これを10本ほど買い求め(これは出来るだけ当日に使い切れる分の仕入れを心がけているから、これでこそ「市場寿司」なのだ)、大急ぎで店にもどり仕込みにかかる。まずはウロコをとらないで頭を落とし、はらわたを取り、三枚に卸す。血合い骨を毛抜きで抜き取り、皮を引く。これをさっと洗って出来上がり。その皮だけもらってくる。実はボクも5匹ほど買い求めているのだ。

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 帰宅して頭を落として、たかさん同様に仕込む。やはり今回の小イサキは昨年生まれであるようだ。脂が薄い。それで身をペーパータオルに包んでおく。脂が少ないということは、また水分が多いということ。だから水分をほどよく抜いてやるのだ。

 夕食時、まずは皮を素揚げにする。小イサキを始め、カゴカキダイ、シマイサキなどの小魚を卸すときに絶対にやってはいけないのがウロコ引きだ。これをやると無駄に身を痛めてしまうし、また小魚で作ることのできる「皮揚げ」ができなくなるのだ。ちなみに「皮揚げ」でいちばんうまいのがシマイサキ、小ダイ、カゴカキダイで残念ながら小イサキは平凡である。でも比べなければ小イサキの「皮揚げ」はまさに絶品、「皮を捨てる」と小イサキの価値自体が半減すると思ってもいい。

 ペーパータオルにくるんだ小イサキの身は適度に水分が抜けている。これを片身二等分にして刺身とする。
 脂はないものと思っていたら、ほんのりと脂からくる甘味が感じられる。そして旨味は十二分にある。
 そう言えば小イサキは寒くなるほど脂がのってくる。晩秋など親を凌駕するほどの美味なのもあって、見つけるたびに一喜一憂するのが、これがまた楽しみなのだ。

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 晩酌には山形県の「杉勇」、やや辛口である。これを飲りながら、「皮揚げ」と刺身を肴にする。ウロコつきのまま揚げた皮が香ばしい。刺身も意外にいい味ではないか? そこに淡麗な酒がきてこれはまた幸せな残暑の夜である。

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 東京都西部には青果をのぞくと八王子に公設市場1、民営市場2、府中に民営市場1、東久留米に民営1、昭島市に民営1の合計6つの市場がある。どの市場も多くの店舗数をほこり、また新鮮な水産物、農産物、多彩な食材を手に入れることが出来る。まさに食いしん坊には無視できない施設である。
 この市場群のなかで東久留米と昭島にはまだ一度も行っていない。関東の市場総てを踏破したいと思っているので、この足元にある市場は出来るだけ早く見ておきたいものなのである。
 そこで今回は通称昭島市場である「三多摩綜合食品卸売市場」に行ってみる。日野市からは多摩川を渡るとそこは既に昭島市である。すなわち多摩川を挟んで隣接する市のひとつなのだ。我が家を7時半に出て「三多摩綜合食品卸売市場」に到着したのが8時過ぎであるから非常に近い。

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 昭島市の「三多摩綜合食品卸売市場」の開設は1957年と古い。1970年代に開設された八王子綜合卸売センター、八王子総合卸売協同組合などと比べて一回り以上年代が古い。その分、歴史のある店舗もあり、昭和の懐かしい香りもそこここに残る。たぶん団塊の世代や、40歳以上の方ならこの市場の風情だけでも感動できるはずだ。建物は長方形である。そこに長い通路が二本、横の通路が三本はしっている。
 八王子の市場に通っていると昭島の市場に関してはいろいろ情報が入ってくる。例えば昭島と八王子の両方に店舗を持つ仲卸もあるし、また両方の市場を利用する飲食店も少なくない。ただしその情報のどれもが「建物が古いよ」とか「魚屋はダメだな」とかいった短絡的なものばかり。
 今回尋ねてみて、「建物は古いよ」というのは古きよく昭和の香りが残ると言うことだし、鮮魚が弱いといっても、さすがにスーパーなどからすると遙かに優れた品揃えであるのがわかった。

 さて青梅線の線路をくぐってほどなく「三多摩綜合食品卸売市場」は住宅街とも工場地帯とも判然としない交差点脇に突然見えてきた。その二本の「三多摩卸売市場」の看板はなかなか目立つ。とにかく駐車場にクルマを止めて、場内に入る。その場内が薄暗い。でもこの薄暗さに浮かぶ店舗がどこか懐かしい。五十路オヤジがワクワクするものばかりだ。

 まず看板のある方から細長い建物に入る。「豊明」という水産物の店があったが鮮魚は少ない。海苔や乾物、食材を売る店が何軒も並んでいる。その間に雑貨店、また海苔、豆腐店は八王子総合卸売協同組合と同じ系列のチェーン店。中華材料の専門店がある。これは珍しいのではないか。

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 そして「岡善」は築地を本店とする魚屋ということか? この通路の端っこに鮮魚店マグロ屋、塩干などを置く店が並んでいる。あえて出色の店はないがスーパーなどよりも鮮度的にも値段!からしても優れている。
 行き止まりとなって、もう一つの通路を歩く、どちらかというと業務用ではないかという肉屋があって、その先に大きな活気のある八百屋がある。

「三多摩綜合食品卸売市場」の店で面白いのが看板である。軒の上に丸くアールを描いて、大きな単純な文字で屋号や売り物が書かれている。これが古くかすれてきていて、この市場の年輪ともなっている。たぶん40代以上にはこの看板を見るだけでも多大な価値を見いだすだろう。懐かしさがこみ上げてくるだろう。若い世代には逆に面白いと感じるところもありそうである。この情緒、風景を長く残しておいて欲しいものだ。

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 撮影しながら歩いていると「渡辺(物産)」と書かれたマグロ屋さんから、「どうして写真をとってるの」と聞かれる。「市場を撮影するのが趣味なんです。この市場は古くていいですね」と言うと、
「そりゃ古いことではよそには負けないね。昭和38年くらいかな。古くなってこの建物もあと3年くらいしか持たないっていうことで立て直すんだよ」

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 この懐かしい建物も後3年なのだろうか? このまま残せるといいだろうに、残念だ。「渡辺物産」では冷凍マグロやサケなどが格安で売られてた。そしてその真ん前にあるのが「嘉根保商店」。日本橋人形町に本店のある海苔屋さんである。「今は貴重な浅草のたねを有明の豊かな海で育てました」という板海苔。これはいったいいかなる意味なのだろうか? 隅田川にアマノリが今でも残っていると言うこと? なかなか面白いものなので写真にとる。

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 お茶の「繁田圓」というのがあって、左手に肉屋。どうやら「三タマ食品」という店がいくつもあるようだ。その隣にうまそうな揚げ物を売っている「星野食品」。思わず、若鶏の唐揚げ(これは若鶏の胸肉だろうかいちまんまるのまま揚げてある)、イカフライを買う。
 そして魚屋さんがあって出口だ。

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 この市場の特徴は中華材料、海苔お茶、かつお節など乾物や食材などだろうか、塩干ものも多い。この豊富さは八王子などにないものである。また肉も安いし、惣菜なども魅力的だ。ただしこの市場ならではの、というものは皆無である。ここに昭島市で作られた納豆や加工品がたくさん並んでいたら楽しいだろうな。そしてやはり鮮魚店は少ない。また品揃えも多いとは言えないようだ。でも鮮度的には他の小売店、スーパーなどよりも優れているし、値段も安い。まず鮮魚をこの市場で買ったなら、近所の大型店舗などで買う気は起こらないだろう。またマグロなどは市場ならではの品揃えだ。昭島市の「三多摩綜合食品卸売市場」はこの豊富な食材から食に感心のある人には素晴らしい市場のひとつだと思える。

●この市場の風情のよさ、また古くて懐かしいことから写真を撮影して回ったわけだが、途中にある「メルヘン」というパンなどを売る店の人から「市場内は撮影禁止だ」と注意された。これが本当ならまことにイヤだな。例えば築地にしろ足立にしろ、最近の市場は観光地化してきている。ほとんど総ての訪問者がカメラを抱えている。それが問題になったとも聞かない。またほとんど総ての市場で一般客が市場のよさを味わうのに好意的だ。当然カメラ撮影も日常のことだ。それが出来ないと言うのは残念でならない。これが「三多摩綜合食品卸売市場」で決められているなら是非もと項目を削除していただきたい。各地の市場で一般客が市場を見に来ることで大きな利益を得ているはずだ。その点も忘れるべきではないと思う。

三多摩綜合食品卸売市場 東京都昭島市武蔵野5-5-1
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 イタリア料理にアクアパッツァというのがある。油と水とで手早く、焼き煮込むという誰にでも簡単にできる料理なのだけど、材料を揃える必要がある。例えば魚だけではなく、ジューを出すために貝なども使いたいし、干しトマト、ローズマリーや生のタイムなども欲しい。そんなもんいちいち揃えたくないので、我が家では単純にオリーブオイルで焼いてしまうのだ。

 ハタは適当に切る。ここにたっぷりの塩をまぶしつける。これをニンニクの香りをつけたオリーブオイルで焼くのだ。とにかくコンガリ香ばしく焼き上げる。最後に白ワインとあればバルサミコを加える。そしてここでもう一度焦がす。最後に魚を取りだして、フライパンについた魚の旨味、お焦げを白ワインで洗い落とす。これを一度沸騰させて皿にそそぐ。この少ない煮汁の上に魚をのせるだけで出来上がり。皿の脇にはエクストラバージンオイルを用意する。

 ヤマブキハタは色合いからしてハタ類のなかでは値が落ちる。でも厚みのある皮、皮下、そして頭部、ヒレなどにたっぷりと旨味が閉じこめられている。これを一気呵成に焼き、焼き上がったら一気呵成にむさぼり食う。ときに香りと油分が欲しかったらエクストラバージンオイルをかけて食えばいい。イタリアにあっては、これが醤油に替わるものなのだから。

 スズキ、カサゴ、ハタなどがあったらやってみる価値ありの料理だ。別に粗だけでもいい。

 このオリーブオイルを使った料理には酒はあいまへんな。できればシャブリかウイスキー、ジンの水割りでもいいかな? 皿の底には魚の旨味を吸った塩味のオリーブオイルが白ワインの風味も加わって溜まっている。最後にはフランスパンなんかで拭き取るように食べて欲しい。

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 先週から『高野水産』が続けて持ってきているもの。それは国産、たぶん三陸のものだというマカジキだ。これが、とにかく安い。なにしろコロ(ブロック)になっているのにキロあたり1500円しかしない。しかも見た目の赤がいいのである。
 それで高野社長が小分けにしている途中から一切れ700円ほどを買い求めてくる。

 これが驚いたことにうまいのである。この色合いからするとキロ当たり、コロで3500円と言われてもおかしくない。驚くべき安値で息を吐いている『高野水産』だから1500円なのかな? と首をひねりながらも、うまいマカジキの刺身でかるく晩酌を傾ける。

 新世紀となって、築地市場でもっとも賑やかなのは大物(マグロ)競り場、それに対して、その奥の奥にひっそりあるのがカジキの競り場である。なにしろ隅田川の岸壁近くだから築地の外れといってもいいだろう。ここにマカジキ、メカジキなどが並ぶ。でも数が少ないのだ。そして圧倒的にメカジキが多い。
 なぜ、マカジキがこんなに減ってしまったのか、たぶん取りすぎだろうけど、漁獲量だけの問題ではない。それは料理屋の基本的赤身がマカジキからマグロ類に変遷してしまったからだ。

 戦後30年代までは「マカジキがなければ魚屋をやっていけない」ほどに流通の基本的な魚だった。これにはワケがあって、冷蔵・冷凍技術の未発達であったとき、多少時間がたっても色合いが悪くなる、味が落ちるなどの品質劣化がマカジキでは遅かったのだ。そこへいくとマグロ類では温度が高いとすぐに脂焼けしてしまう、色変わりが早いなどマグロの消費量と冷凍・冷蔵技術の発達が正比例していることがわかる。

 マカジキの刺身でいっぱいやった翌日には、皮下の筋っぽいところを煮つけにした。これは酒、砂糖、醤油にお酢を加えて煮たもので、蒸し暑いときなどにはややさっぱりした味わいになり、食べやすい。これと、ミョウガ、キュウリの酢の物、古漬けタクワン、ワカメのみそ汁が残暑のときの朝ご飯である。

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 春に産卵して夏には「新いか」というとコウイカを思い浮かべる。それが所謂「通」ってもんでしょう。でも、「新いか」=コウイカというのはあまりに短絡的すぎる。
 春に産卵するイカはかなりの種にのぼり、この「小いか」たちがそれなりにうまい。コウイカ科は体に貝殻の痕跡である、サーフィンボードのような骨を持っている。それに対して、より貝殻の痕跡が消えてしまって、それこそ薄い板状になってしまったのがツツイカ目ヤリイカ科のイカ達。そのヤリイカ科のヤリイカの産卵期も春。当然9月、「新いか」の入荷が始まっている。

 胴長(所謂頭の部分)が7、8センチ。掌に4、5バイは乗ってしまうほどの大きさである。このヤリイカの子供、各地で水揚げされ、似たもの通しのジンドウイカとともに定置網などに入る。ジンドウイカとヤリイカでは、後者の方が断然高い。それで、産地でも面倒ながら辛抱強く選別に励んでいうるのだ。

 八王子綜合卸売センター『高野水産』に到来した「新いか」、産地は愛媛県八幡浜。鮮度もよく、出荷の仕方もキレイなので寿司屋などがせっせと仕入れている。そこに割り込ませてもらって二分の一キロほど購入した。「初物」なのでとにかく『市場寿司 たか』に持ち込んで握りに。素晴らしいの一語に尽きる味。皮を剥いて、ほんの一瞬湯に通しただけのものなのに、「どうしてこんなに旨味を感じるのか」。たかさんと感動を分け合って、帰宅した。

 我が家で、「小槍(こやり)」を如何に料理するか? 自分自身の最有力料理は塩焼き。丸のまんま塩コショウ、もしくは塩焼きにする。これはよく「ポンポン焼き」と呼ばれるヤツだ。最近、この塩コショウをしてニンニク、オリーブオイル、バルサミコのソースをかけるというのが大好きになっている。でも夕食で「太郎がご飯に合う方がいい」というので丸のまま煮汁に搦めるようにして短時間で煮あげた。
 この甘辛く短時間で煮あげたイカは我が家の子供の大好物なのである。まだ「小槍」だから柔らかい、それなりにイカの旨味もある。この煮汁をご飯にかけて、また最後には、もう一度煮汁を茶碗に入れて、洗ってしまう。だから後の洗い物も楽だ。

 この「新いか」、もしくは市場での「小槍」から、成長してヤリイカらしくなるのが10月である。このヤリイカの登場は秋もたけなわを思わせる。そして「小槍」の季節、すなわち今なのだけど、ボクなど五十路男が夏バテにあえいでいる時期と重なる。「早くヤリイカに育たないかな」というのは残暑に飽き飽きしている、蒸し暑さから逃げてしまいたい、という意思表示でもあるのだ。

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 台風一過の築地。そこには炎暑であった。新橋からの都バスを降りたのが6時40分、場内に入る前にポロシャツが汗でへばりついてくる。しかし気持ち悪い。まずは「築地土曜会」のために場内の下見。ちなみに「築地土曜会」は築地場内でうまそうな魚貝類を買う、その案内会である。毎回、いろんな出来事、うまいものに出会えて、しかも発見多々である。

 外の熱気に反して場内は静かだった。これは台風ばかりのせいではなく、8月下旬から9月初旬の飲食店の不景気のせいだと見た。
 それでも場内には面白いものてんこ盛り。三陸からの「ぶどうえび(ヒゴロモエビ)」、北海道西岸からの「しまえび(モロトゲアカエビ)」、北海道産オオミゾガイ、三陸産エゾイシカゲガイなどがある。ただ残念なのが魚が少ないことだ。珍しいものではフエフキダイ、ウミヒゴイなどしかない。後は高級魚のアラ、クエ。
 やや品薄ながら、魅力はたっぷりある。
 土曜会の前に腹ごしらえすべしと売店をのぞくと調理パンがひとつもない。栗デニッシュという甘いヤツをひとつ囓りながら波除神社に急ぐ。

 7時15分、「築地土曜会」の参加者はまだ誰も来ていない。そのうちポツポツやってきてやはり参加者は15、16人になる。ちょっと多すぎるかも。

 場内に入る前に幹事の鮟鱇さん、ヒモマキバイさんにドライアイスを買っておいてもらう。まだ朝方だというのに確実に30度を超えている。 
 とにかく狭苦しい場内に突撃。めぼしいもの、オオミゾガイ、エゾイシカゲガイ、新いか(コウイカ)、オニカサゴ、「目光(アオメエソ)」などをまとめ買い。各自500円マグロパック、新子(コノシロ)などを購入する。ボクはイリヤマ斎藤でヤマブキハタ、新子などを購入。鶴長でこれまた12品目のちりめん。

 今回から築地土曜会ではいいものを見つけたら、誰かが大量に購入する。それを後ほど分けるということを始める。だからオニカサゴなど1箱買い。

 島根県からは神在月さん、ヤマトシジミさんが来ていて、場内を巡りながら島根県産の魚貝類を探す。ただし見つけられたのは「白ばい(カガバイ、もしくはエチュウバイ)」のみ、島根県と言えば浜田(当然浜田市にある)日本有数の漁港があり、また大社町や宍道湖、海上には隠岐諸島などのこれまた日本有数の漁場が控えている。ここから揚がる魚貝類は多彩で味のいいことで定評がある。またおふたりから「どんちっち」というブランドを始めて聞かされる。島根県西部の浜田市で厳選された鮮魚を「どんちっち」と関して売り出しているのだという。これも当日は見受けなかった。

 また海産魚だけではなくウナギなど淡水魚も見るもの多し。予め下見しておいた「丸悟」でヒモマキバイさんなどは倶利伽藍串(ウナギの半身に卸したものをひも状、蛇が巻き付くように串に刺したもの)を購入していた。ここで一行は大きく盛り上がるだろうと思っていたら、店頭に客がいて、うまくこの店のよさを伝えられなかった。天然ウナギ、店頭で割いたドジョウなど、この店はすごいと思った。

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場内「丸悟」

 9時を大きく回って、大都魚類の第二会議室へ。ここで1時間ほど懇談会。今回は常連も多く和気あいあいに終わる。そして「分けっこ会」。ここではharseeさん、談会Jasminさんが大活躍。一人で回るよりも何倍も多彩な買い物が出来たはずだ。

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和気あいあいの分けっこ会

 後は東卸食堂で朝食。食後、築地の達人つきじろうさんの場外案内。長崎県漁連直売所などを見て解散とする。このつきじろうさんの場外案内はこんど「会」にしたいと思う。面白いぞ!
 ボクを含めて都内を回り、最後に有楽町のガード下でいっぱいというところで3時を大きく回っていた。
 帰宅は4時過ぎ。面白かった。けだし疲れ果てた。
●次回は12月に行います。募集は11月になってから。

築地でお買い物の掲示板
http://csi.or.tv/tsukiji/kb/rb.cgi
築地場内での食べ物に関しては、つきじろうさんの「春は築地で朝ごはん」
http://tsukijigo.cocolog-nifty.com/blog/cat2940921/index.html
文章内の魚貝類に関しては「市場魚貝類図鑑」のサイト内検索で調べることができます。
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 青森県小川原湖は我が国においてかけがえのない湖である。青森県の太平洋側にある大きな湖、小川原湖ではヤマトシジミやシラウオがいまでもたっぷりとれる。まさか、愚かな政治家、行政者がこの湖の埋め立てや、淡水化をしようなんてバカなことを考えやしないものかと、ボクなど日夜心配で堪らない。
 実を言うと人類の開発など結局長い目で見ると破壊でしかなく、将来の子供達に多大なマイナス点を残すだけのものだ。まあ中国の史記など読めば、それくらいわかりそうなものだけど、「貪婪なヤカラ」には理解不能かな。

 その小川原湖から小振りのシラウオが八王子魚市場に入荷してきている。シラウオはサケ目キュウリウオ科である。近い種にワカサギやチカ、アユも含まれるだろう。どっちにしろ命の短い魚。シラウオもアユ同様年魚であり、春に生まれて、春に死ぬ。
 だから夏にとれ始めて、秋へと大きくなり、冬に特大となる。旬は冬から春だろうか? いずれにしろ儚い運命の魚である。

 このシラウオは川や湖の塩水の混じる周辺に棲息。この汽水域の乱開発で激減、高値安定である。信じられないだろうけど、東京湾奥の佃島周辺など昭和初期までシラウオの産地だったのだ。彼の歌舞伎「三人吉三郭初買」でお嬢吉三の言う名せりふに「月も朧に白魚の篝も霞む春の宵」というのなどまさにこのシラウオ漁の篝火だろう。これに紛らわしいのが「素魚」。昼間に四つ手網などでとるハゼ科のシロウオである。この2種は混同甚だしい。例えば佃煮や紅梅煮、天ぷらにはシラウオ、躍り食いするのはシロウオ。と思ってもいい。とにかく食用として用途の広いのがシラウオであり、季節ものの珍味がシロウオだと考えるとわかりやすい。

 これを『市場寿司 たか』で軍艦にして生で賞味。帰宅してかき揚げにする。生で軍艦というのは、たかさんの意見と大きな食い違いがあった。すなわちボクは生が大好き、たかさんには疑問符がフワリと浮かんだようだ。

 これを盤洲、木更津のきんのり丸さんの海苔と合わせて、帰宅後かき揚げにする。これが申し分のない美味。意外に香ばしい中に海苔の風味も生きている。この美味、いかに例えるべきや。言葉もなくむさぼり食う。ご飯のおかずのはずが、かき揚げをとにかくあっという間に平らげる。だからご飯は太郎が大好きな「きゅうりのQちゃん」のお茶漬けで食うこととなる。
 しかしシラウオのかき揚げはいついかなるときに食べても感動できる。この旨さは天ぷら界の大王的存在、もしくは横綱だろうか。横綱として西か東かとにかく対抗するのはバカ貝の貝柱、すなわち小柱だけである。
 ともに昔は江戸湾の、すなわち江戸前の味だったものである。シラウオが大好きと思われる人々よ、なんとか自然保護に力を合わせられないかな。ボクは隅田川河口のシラウオが食ってみたいのだ。

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 ボタンエビを食べたことがありますか? 「はーいあります」と答えた方、『市場魚貝類図鑑』のボタンエビのページを見て欲しい。本当に「このエビだろうか?」ね。
 先ず間違いなく、その「ボタンエビ」は同じくタラバエビ科の「トヤマエビ」(これも『市場魚貝類図鑑』で見て欲しい)ではないだろうか? もしもボタンエビを食べていた、あなた、あなたは可なり希少な人である。

 トヤマエビとボタンエビは棲息している地域も、また色合いもまったく違っている。トヤマエビは日本海と北海道周辺、ロシア、アラスカ、カナダでとれる。資源も豊富で市場の「ボタンエビ」のほとんどがコレ。対するにボタンエビは南は熊野灘、北は岩手県沖くらいまででしかとれない。しかもトヤマエビよりも資源が小さい。すなわちとれる量が少ないのである。

 これを八王子総合卸売協同組合『やまぎし』で見つけて買ってきた。残念ながら産地不明。このように仲卸でありながら産地などに無関心という人が多くて困る。

 これを剥いて刺身にする。遅い遅い深夜の一人酒。でも酒は島根の「王禄」だ(島根のヤマトシジミさんありがとう!)。味は日本酒界でも屈指のもの。
 ボタンエビの甘味とまったりした旨味を口に放り込んでは超辛口の「王禄」で洗い流す。

 幸せだなボクって。きっと五十路オヤジには、これが最上級の幸せだろう。外からはアオマツムシの鳴き声が聞こえてくる。まあ外来種のうるさい鳴き声に秋を感じるなんてちっとも風流ではないけれど、ボクは全然悲観していないのだ。我が人生に……、そして「王禄」がなくなったことに……。

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 高知市浦戸湾漁師、水産業の永野廣さんから酒盗が送られてきた。
「この甘口に造った酒盗が評判なんです。大根おろしと食べてみてくださいね」
 とケータイでも力説するごとく、市場で大根を一本買い込んできた。

 その大根おろしに酒盗、海老名の海老さんからいただいた柚を絞り込んで、じっくりと酒の肴にいただいた。これは正しく絶品である。甘口の酒盗と言うことであざとい味ではないかと、やや倦厭したくなったところが思った以上にさっぱりとして、口に含んで熟成された旨味が生きている。そこに大根おろしが「まさに!」という相性の良さ。

 酒は島根のヤマトシジミさんにいただいた「開春 純米超辛口生原酒」。この酒がまた凄い酒であったところに、また佳肴ありの感があった。

土佐の廣丸へは
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通販のことは
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 カニの産地はいろいろある。先週食べたのは高知県の「エガニ」、そして今週は佐賀県太良町の「カニ」すなわちガザミである。ガザミはほとんど日本全国でとれる。でも量的には少ないもの。近年では中国などから輸入されるほどだから、国産品は高値で安定してきている。
 代表的な産地としては青森県、山形県、三河湾、瀬戸内海や九州が挙げられる。なかでも有名なのが佐賀県太良町である。有明海に面するこの地であがるガザミを竹崎ガニ、太良ガニなどと呼び珍重する。また味にも定評があって、名物となっているのだ。

 話は変わるが、ガザミの漁獲量はこのところ底辺で安定している。これは地球温暖化でガザミよりも南方系のタイワンガザミが増えていることもあるが、明らかに人為的な影響が重いとしかいいようがない。例えば諫早湾干拓など土木業界のための、土木業界と癒着する政治家の、一部利権確保(金儲け)が目的の開発である。たぶん庶民は将来泣きを見るだろうし、ここで農業を始める人に明るい将来はあるのだろうか? 日本中干拓地は膨大にあるが、そんなにうまくいっているとは思えない。耕作放棄地も多いはずだ。こんな悪質な自然破壊が生き物の再生産を阻んでしまっている。また浜辺のリゾート開発など、結局人類だけの我が儘でしかない。余談だがゴルフ関係、ゴルフをやる人が政治や経済政策に関わってはいけない。あれも人類の我が儘、悪質な自然破壊である。自分たちの悪質さを認識しながら生きていって欲しい。例えば朝、シャワーを浴びる、ペットボトルを使う、レジ袋をもらってしまう。これらも悪質なことであり、これを「いけないことだ」と認識しておく必要がある。その点ではボクもろくなもんじゃないと自覚している。出来るだけ止めようと努力もしている。ゴルフしている人にその認識がないのが不思議だ。ちょっと愚かではないか?
 こんな将来的には生きるもの総てに大きなツケとなる開発、人類の我が儘がガザミを減らす結果となっているのだ。また現在でも長崎県、佐賀県などが積極的に新幹線などの推進を行っているが、これも人殺し、生き物殺しの悪質な行為としかいいようがない。この国の土建業界も悪質な政治家と癒着するのではなく明るい未来や自然保護に方向転換して欲しいな。

 さて、最近盛んに入荷いてきている佐賀県のガザミ。「オスはうまいんだけど、メスはね」と八王子魚市場内『源七』店頭でも迷ってしまった。夏のオスガザミはある程度定評がある。その分値段もいいのである。メスの値段もオスにつられるように決して安くない。
 ガザミの産卵期は夏、寿命は二年ほど。一年目のメスは産卵、また冬を越し、翌年の産卵後に死ぬ。だからこの九月初旬のメスは1歳と一ヶ月あまりのガザミということだ。身の味わいは産卵と深く関わるので、これを買うというのは冒険だ。迷っていると『源七』のあんちゃんが「買うのか買わねーのか、はっきりしろ」というので1ぱい400円也を買い求める。

 結果はまずくはないが、感動できなかったし、満足度も低いものだった。何となく水っぽいのである。またミソの旨味も薄い。もう少し待つべきではないだろうか? ガザミのメスを食べるなら。

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 昨日4日、6時半に沼津佐政水産の青木修一さんからケータイがはいる。
「ぼうずコンニャクさん、お久しぶりです。あのー、今、目の前にタチウオが5本あるんですが、顔が丸くて体が長いんです」
 これをボクはぼんやり聞いてしまった。釣りでとれた、体が長いということで深海のタチモドキだと早合点したのだ。タチモドキは食用としては、ほとんど認知されていないが魚類額の世界では平凡である。
 ケータイを「切り」にした途端に青木さんの初っぱなの「顔が丸くて」というのが浮き立ってきた。タチモドキではない。考えられるのがヒレナガユメタチ、ユメタチモドキ、ナガユメタチモドキだ。しまったと激しく後悔。大急ぎで返信。競り場での数十秒は大きいのである。幸いに青木さんとはすぐ連絡をとれた。
 このときボクは失念していたのだ。青木さんは仲卸、荷主、水産会社に勤めているサラリーマンとはいえ、静岡県でももっとも魚に詳しい人であると言うことを。青木さんの琴線にふれたものは間違いなく「珍しい魚だ」。
 とにかく1本だけ確保してもらった。これを競り落として、急いで送ってくれる手はずをしてくれたのが菊地利雄さんである。この菊地さんが沼津における魚貝類の師とも言える人である。

 それが4日の夜に届いた。帰宅して発泡を開けてみると間違いなくナガユメタチモドキだと思われた。もちろん我がデータベースにはないものだし、魚類学的にも希少なものである。

 翌6日、すなわち今日。撮影がてら背ビレ軟条を数えたら、はっきりしない軟条を切り捨てて115本ある。これでナガユメタチモドキと確定した。これを市場に持っていく。自宅では長すぎて体長が量れないので市場で横たえ巻き尺で190センチ、計りに乗せて1700グラムであった。

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『高野水産』でまな板を借りてワタを出すと小さいけれど卵巣があった。そして4等分。

 これを『市場寿司 たか』で握ってもらう。これがどうにもうまくもなんともない。まあ珍魚とは決してうまいものではないという典型か。

 帰宅後、ボタンエビ、エゾイシカゲなどを撮影。
 昼食はボタンエビ、エゾイシカゲの刺身。ナガユメタチモドキの塩焼き。
 ナガユメタチモドキは塩焼きでもうまいものではなかった。

 ここまで書くと順風に事は進んできたように思われるかも知れない。それが大間違い。この6日は豪雨、落雷、そして異常な高湿度。じっとしているだけで息苦しい。しかも家庭のごたごたもあって、外出後の中央線内では熟睡、そして東京駅までの乗り越し。午後3時までで一日分以上の疲労が溜まったのだ。


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「そろそろ出てきましたね」。市場の若い衆がボクの目線を追って声をかけてきた。そこにあったのがエゾイシカゲガイである。市場ではなぜか「石垣貝(いしがきがい)」と、わざと間違ったような呼び方をする。
 今回のは陸前高田市広田湾からのもの。これから暮れにかけて三陸、北海道から入荷してくる。

 エゾイシカゲガイはトリガイと同じくマルスダレガイ目ザルガイ科。このザルガイ科の貝はみな美味。本州中部から西ではイシカゲガイがとれるがまだ市場では見ていない。このイシカゲガイを手に入れるのも目標の一つ。ザルガイ、コケライシカゲガイなど他のザルガイ科もこれからとれる。

 さてエゾイシカゲガイの下ごしらえはトリガイと同じ、剥いて開いて湯通しする。まったくの生でもイケルがボクはやはり熱を通した方が好きだ。この湯がいたエゾイシカゲガイの旨さはトリガイ以上ではないかと思っている。トリガイの黒に対して、エゾイシカゲの黄というのはややインパクトに欠けるが、味は負けていない。

 ただ残念なのが年々高騰していることだ。エゾイシカゲガイはそんなに昔から関東で食べられていた貝ではない。寿司ネタとしては目新しい。初めて入荷したときには値がつかなくて困ったほどだという。それが今ではキロ当たり3000円前後で安定している。ときどき4000円を超えることもある。とすると1個60グラム前後のもので180円から240円くらいにつく。
 貧乏なお父さんにとってももっとも食べたい貝、でも値の高いことで悩みの種とも言えるのだ。

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週に2本のサンマ

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 毎週2本のサンマを食べる。塩焼きで、と刺身で。昨日のお昼はサンマの刺身で、ご飯。本当は酒の肴にしたいのだが、忙しくて夜は帰ってこられない。
 八王子綜合卸売センター『綜市水産』で1本購入、その場で三枚に卸して、緑紙に包んで帰宅。お昼時にさっさっと刺身にする。ボクはとにかく柑橘類が欲しい人種なので海老名の海老さんの柚を添える。薬味はショウガとミョウガ。ミョウガの値段がどんどん下がってきているのがうれしい。ボクはネギよりもミョウガの方が好き。
 これをおかずにご飯を食べていたら、ニンニクが欲しくなった。ショウガ、ニンニクと生醤油。それをご飯にのせて、柚をかけ回す。それをかき込みながら、合いの手にミョウガ。これでお昼としては上等である。

 さて、9月3日の厚岸サンマ、1本150円の味は、というと、脂が程良くのっている。旨味というか、サンマ特有の微かな酸味もあってうまいですね。まだまだ脂ののりがよくなってくるとき。さて、今週は後一本の塩焼きサンマとする。

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掲載種 1938


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 去る、7月15日は台風4号が北に通り過ぎたばかりだった。意外に明石大橋に風は吹いておらず瀬戸内海は穏やかに見えた。淡路島から明石側に渡り、明石市までは小一時間もかかったろうか? ナビを見ながらなんとなく明石市街を目差し、気がついたら明石駅まで来ていた。この駅の手前に小さな市場を見た。明石と言えば「魚の棚」であるが、今では観光化されている。こちらの方が地元に密着している市場かも知れない。思ったものの、不慣れな土地であり、後ろ髪を引かれながら通り過ぎる。
 岸壁にたどり着いたら、そこが明石の漁港だった。交番があって駐車場の位置を聞く。港は昼過ぎ、当然、昼網の漁船が次々に入港してきて水揚げが始まっていてもおかしくないが、いかんせん台風一過とあってはいたしかたない。

 駐車場に向かう道路沿いに行列が見える。明石焼きの有名店であるようだ。今回の明石行の目的はは太郎の「明石焼き」が食べたいだったので、目的の店をいきなり見つけたことになる。ところが駐車場からその角の店の前に来たとき、あまりの行列に太郎が「やめよ、他にも店はあるでしょ」と消極的な判断をする。後々考えると、これが大失敗だった。

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 とにかく魚の棚を歩く。魚の棚というのは江戸時代から続く海産物を扱う商店街。水揚げ港のそばに自然に市場というか商店街が形成されていったものと思われる。

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 水揚げは朝と昼。これは瀬戸内海では共通のこと。水揚げされるものはそんなに多彩ではない。水深が浅いことと、水温などの点から魚貝類の種類は限られるのだ。むしろ魚の棚=「所謂瀬戸内の魚貝類が見られる典型的な場所のひとつ」と考えるべきだ。

 商店街は観光客で混雑していた。頭の上にはアーケード、それでやや薄暗いのが落ち着けていい。商店街のところどころに古い家屋が残っているのも好ましい。ただし、やはり観光地化された店舗もあるし、観光客のために改築してしまったという店もある。でもいずれにしろ決して本来の姿を失っていないと見た。
 ボクが見たいのは魚屋、太郎は明石焼きの店を探す。

 台風のせいか魚屋に魚は少なく、かなり店頭は寂しい。でも意外に陸送されたもの(他の産地からの魚貝類)が見られないのはさすがだ。一部店舗に陸送もののケガニ、甘えび(ホッコクアカエビ)、イクラやクジラのベーコン、バイ(これは明らかに日本海のもの)があった。ただしその量は少なく、とれないときには我慢するという魚の棚の良心が見えた。そう言えば明記しなかったが、この日は連休の真ん中、観光地魚の棚としては書き入れ時だろう。

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 当日見た地魚を見た順に羅列する。クラカケトラギス、キュウセン、サルエビ、マアナゴ、クルマエビ、メイタガレイ、マアジ、カサゴ、アカニシ、イシガニ、シャコ、マダコ、コウイカ。種類的には豊漁となっても、この二倍にはならないだろう。でも豊かで新鮮な魚の棚は見られなかったことには違いない。残念。

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 また練り物、焼き穴子、イカナゴの釘煮、げんごべいの煮物(「げんごべい」はイカナゴのやや大きめのものであるようだ)などみなうまそうだった。

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 さて太郎にとってはとにかく明石焼きなのである。でも昼過ぎで混んでいる店が多い。そのなかに一軒だけ空いている店を見つけた。腹が減っているというのもあるが、太郎が「ここでいい」と入ってしまう。この店、オバチャンが一人で切り盛りしている。中に入ると明石焼きの定義など書かれており、なんだオバチャン自体がうるさそうに感じられる。
 とにかく一人前ずつお願いする。待っていると、このオバチャン店頭でお客らしい人にいろいろ講釈を垂れているのだ。この時点でボクはこの店はまずいのではないかと予感した。そしてやってきたのに、まずダメ出しをしたのは太郎自身だった。姫もギブアップ。

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 まずいものは早く片づけるに限る。姫の食べ残しを処理して店を出る。うまいまずいは個人差はあるだろう。でも我が家の三人はだめだったなー、この店。
 午後も長けてきた、急いで駐車場に戻る。するとかたわらで太郎が泣いているのだ。確かにあの生の粉なっぽさは寛容な太郎をしても耐えられるものではない。駐車場まで来てこの話をすると、改めて管理のおじさん達がおいしい明石焼きを挙げてくれた。もちろん、さっきの店は入っていなかった。
 泣いていた太郎が、一言、
「父ちゃん、うまいものを食べようと思ったら人気のある店がいいね。我慢して並ばなきゃだめだね」

 これから帰途、名神、中央と、サービスエリアに寄るたびに太郎が焼け食いに走ったことは言うまでもない。


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 最近、活けクルマエビの入荷が多い。まあ、これから冬にかけて多いというのは恒例だが、本来は段ボールの箱におがくずをと一緒に詰め込まれて流通する。大きさにもよるが高値安定でキロ当たり7000円から1万円もする。不思議なのがクルマエビだけは天然ものと養殖物に値段的な差が出ないということ。市場で見ていると野締めの天然物よりも活けの養殖ものの方が明らかに高く、また天然もので大きさにバラツキがあると、また値が上がらない。クルマエビの大きさによって使う飲食店の業種が変わってくる。例えば天ぷらやでは小振りの10グラムから20グラムほどのものを喜ぶし、寿司屋では20グラムから25グラムがいい。あまり大きくなりすぎるとそれこそ洋食でのフライにしか使えなくなるのだ。

 さてクルマエビの大きさと用途などを書いたが、また大きさによって呼び名も変わる。小振りの天ぷらネタに使うものを「さいまき」、寿司ネタ用のものを「中まき」、寿司ネタとしても、天ぷらにもやや大きすぎるな、というのが「まき」である。天然物で25センチ、30センチなんてべらぼうな大きさのを見かけるが、これを「大くるま」なんていう。
 ボクが考えるにクルマエビのいちばん旨いサイズは12、13センチほど、重さ20〜25グラムのものだと思っている。このサイズのエビ独特の風味、甘味、旨味、どれをとっても文句なしである。

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クルマエビの価値を上げているのが、熱を通したときの赤い色合いの鮮やかさだと思う

 さて、中日、水曜日の市場はまことに寂しい限り。荷(魚貝類)自体も少ないし、人影もまばらだ。めぼしいものが何にもないので八王子魚市場内『源七』で「中まき」を数本買い求めてきた。1本25グラムちょうど。明らかに養殖ものであり、産地がわからない。

 これを帰宅後撮影。茹でて、天ぷらにして味をみる。「うーーーん」とうなるほどにうまい。クルマエビがどうしてこれほどにうまいのか? しかも旬はこれからなのに。海の神さんだけが知る謎である。

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 土曜日は朝方6時過ぎには八王子綜合卸売センターに到着。姫が一緒なので手間取るかと思ったら、むしろ「父ちゃん早うせい」と叱られる。
『市場寿司 たか』の前に来たら既にjasminさん、海老名の海老さん、まささんなどが到着していた。その内、鮟鱇一家、稚鮎と銀子さん一家も到着。土佐の「エガニ試食会」の用意を始める。永野廣さんの送ってくれたエガニはかなりの量、残念ながら2匹だけ死亡していたが、それでもカセットコンロ3台で蒸す、茹でる。超小食の海老さんに茹で鍋の面倒を見てもらって、その間に『市場寿司 たか』で腹ごなしをする。ボクは土曜日恒例の「豪海ぶつぶつ丼八の身バージョン」。このお寿司とエガニでお腹がパンパンになる。
 試食会の後は場内を案内。『高野水産』でお買い物。またコリアフーズではキムチなど。
 最後に八王子魚市場に立ち寄り解散。

 帰途、、宅急便に立ち寄り、鹿児島県南さつま市、わかしおさんからの魚貝類を受け取る。

 昼食はいたって簡単に。

 午後から笠沙の魚を撮影。ニジョウサバ、エビスシイラ、ドクサバフグ、ミナミイケガツオ。撮影に2時間。
 午後4時になってどっと疲れが出てうたた寝。夕方まで『市場魚貝類図鑑』の改訂。

 夕食は大商売ミートの三枚肉でしゃぶしゃぶ。これが今期初の鍋。後はニジョウサバの刺身、しめ鯖、毎味水産のトリガイ。

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珍魚ニジョウサバは、その貴重さほどにはうまくなかった

 午後9時からテレビ東京の『アドマチック天国』を見ている内にまたまたうたた寝。はっと気がついたら10時を回っている。11時半まで画像の整理。

 日曜は寝坊する。目覚めると8時を回っていた。こんなに寝坊したのは久しぶりだ。朝食も摂らずに、『市場魚貝類図鑑』の改訂。ブログを書く。画像の保存。

 朝昼食は御前11時過ぎ。毎味水産のエビとエビスシイラのフライ。サラダ、焼きなすび、刻みミョウガ、海老名の海老さんにいただいたニガウリのサラダ。ご飯に夏野菜いっぱいのみそ汁。

 午後から鹿児島県南さつま市笠沙の無脊椎動物の撮影。クモガニ科2種、サメハダホウズキイカ、ヒョウモンダコ、和名がわからないタコ、クラゲエボシ、ニシキガイ。撮影後、標本として沼津の飯塚さんに送る。

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これが危険度最大級のヒョウモンダコ

 夕方まで画像の整理、ちょっとだけ仕事。

 夕食は夏野菜とアサリのスパゲッティ、ニジョウサバの塩焼き、エビスシイラの塩焼き、しめ鯖、海老名の海老さんのニガウリ、永野廣さんにいただいた酒盗。日本酒の後に、ハイボールを3杯飲んだのが悪かったのか眠くなる。それでも11時過ぎまで画像の保存。ニジョウサバのページを校正する。後は記憶無し。


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 八王子土曜会、もしくは土佐のエガニ試食会が終わって、八王子魚市場に回る。土曜会のメンバーが『源七』であれこれ選んでいるときに丸い樽型の発泡にサバが三本。
 ヒモマキバイさんなどが「1本500円かー」なんていっているとき、「500円なら安いね」というと「ゴマサバだよ」とマサさんも。でも目の前にあるのが立派なマサバ、よく見ると隣の2本は確かにゴマサバだ。軽く触っただけで脂がのっているのがわかる。あまりに見事なサバなので、皆さん見ているのを尻目に「買い」ということに。
 慌ただしく店頭で三枚おろしにして、振り塩までして持ち帰る。塩で締める時間二時間と決めていたのに、うたた寝をして、三時間。「しまった」と後悔したものの取り返しがつかない。
 仕方なく、ミツカン山吹と海老名の海老さんにいただいた柚、ほんの少しの砂糖の地に漬け込む。

 さて、塩で三時間は間違いだったろうか?
 間違いではなかったのだ。マサバは脂ののりがいいほど塩が利かない。本日のマサバは三時間でちょうどいいほどに脂がのっていたのだ。小柴といえば東京湾、しかも前海を回遊するのは彼の「松輪サバ」の群なのだ。それがゴマサバに混ざっていたことになる。これは大きな拾いものとなった。

 しめ鯖として見るからに柔らかい。箸でつまむとそこが撓む。その柔らかい一切れを口に入れるやトロリと崩れていくのだ。身に甘味があるし、脂がまったりとしている。一切れが濃厚にうまい。

 ここ3、4日、猛暑止み、涼風吹く日々だ。なんだか「秋らしい」。あれほどうるさかったアブラゼミからミンミンゼミ、ツクツクボウシに入れ替わる。当然食卓でもゴマサバからマサバに交代とあいなる。

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夏から秋にかけてのエガニで、いちばんうまいのは巨大なハサミ

 土佐の高知の名物、「エガニ」の正体はトゲノコギリガザミ、アミメノコギリガザミ、アカテノコギリガザミである。なかでももっとも巨大になり、土佐が誇るエガニがトゲノコギリガザミ。なんと過去には3キロなんていうのも珍しくなかった。
 そして旬は冬だ。何と言っても内子を抱えたメスを食べたら、もういっぺんでエガニの虜になってしまう。では夏から秋にはだめなのだろうか? エガニは。と疑問に思っていたら、『土佐の廣丸』永野廣、昌枝さんからオスメスとりあわせてエガニが送られてきた。

 これを蒸して、また茹でて、たっぷり飽食する。また今回は築地土曜会メンバーや『市場寿司 たか』に来たお客さん、市場仲間にも試食してもらった。
 当然、脳にがつんとくるほどの美味、内子はないものの、それに代わるべき身のうまさが楽しめた。この濃厚な旨さをいかに表現しべきか、ボクには言葉がないのだが、むさぼり食うときの沈黙こそ、その証拠となるだろう。
 実はエガニを食らうとき、誰でも野生を感じさせる顔つきになる。試食していただいた方々総てに野生を感じたことを明記したい。

土佐の廣丸への問い合わせは
http://www.k5.dion.ne.jp/~tokusan/
土佐の廣丸のホームページへは
http://www.zukan-bouz.com/zkan/hiromaru/index.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、トゲノコギリガザミへ
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マイワシの天丼

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 昼過ぎに外出と言うときに、冷蔵庫を探して、簡単な昼食を整える。ボクはこんな「さっさっと手早い料理」を作るのが大好きな性分である。
 見つけたのは、たくさんいただいたミョウガ、旗野農園の青じそ、一枚だけ残った、フライ用に開いたマイワシ。マイワシはフライにするために塩コショウをしてある。昨日、フライを食べて、今日もフライでは芸がない。
 思い切って天丼に仕立てる。まず丼汁は我が家の出汁醤油。味醂1、酒1、醤油1、水1のなかにカツオ節を削り入れ、火にかけて煮立てる。そこに差し昆布をして1週間ほど寝かしたもの。薬味は大根おろし、生姜、海老名の海老さんにいただいた青柚。
 比較的低い油温度のときミョウガ、青じそをまずは揚げる。次いでマイワシを高めの油でかりっと揚げる。マイワシの身はあくまでふわっとして、皮目が香ばしいというのが理想だ。

 残りご飯を電子レンジで1分チン。そこに青じそとミョウガ、マイワシの天ぷらをのせる。薬味は大根おろしと生姜。そこに好みで出汁醤油を回しかけながら食べる。
 予め塩コショウしておいたのが、予想外にいいのだ。塩で生臭みがとれただけではなく、マイワシの旨味が増している。そこにコショウがピリっとくる。揚げものとご飯の重苦しさを、コショウの刺激が軽減しているようだ。
 2口、3口と食べて、残り半分に青柚を搾りかけたら、これも大正解。青柚の香りが、まったく別の趣を醸して、また新たな丼となったように思う。

 マイワシはキロあたり400円で1匹60円弱。青じそ、ミョウガはいただきもので、出汁醤油、ご飯も多寡が知れた、お金に換算するに微々たるもの。おおよそ材料費100円弱のミニ天丼の出来上がりだ。

 まあ天ぷら専門店のものと比べるべくもないが、その辺の食堂よりは上という味。これをして「お父さんの優雅な昼食」と呼ぶのであった。めでたし、めでたし……。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、マイワシへ
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