街歩きをして、魚屋を見つけたら「締め鯖」を買うことにしている。これなら帰宅時間が長くても安心して持ち帰れる。そして江東区三好であるが、季節は初夏。下町の雰囲気のいい魚屋を見つけて「締め鯖(関西での生ずし)」でも買って帰ろうかと思い立ち、これまた気さくなオヤジさんに声をかけようとして……、「マサバのいちばん悪い時期」であるのを思い出した。それで「酢で締めた鰺はないでしょうか?」と聞くと
「酢鰺ならあるけどね。締め鯖がいいよ」
これがなかなかいい声だ。
そんなことを言われても、なおかつ買ってきたのが酢鰺である。
これがてっきり酢締めの鰺だろうと思ったら、違っていた。酢締めというのは、マアジを三枚に卸して、強い塩をして置き、それを洗い流して酢をくぐらせる。もしくは一定時間酢に漬けたもの。でも10枚500円の酢鰺はまったくそんなものではなく、どっぷりと酢に漬け込み、骨まで軟らかくしてある。酢締めの鰺が生ものだとしたら、こちらは保存性のある加工食品といった感がある。
この酢鰺であるがとにかく軟らかい、薄皮をひっぺかして血合い骨もそのままで舌の上でなんなくつぶれてしまう。そして鰺のうまみのある身と酢の味が口中に広がり、そこに適度な塩気がくる。粉ワサビもたっぷり添えてもらったから。ちょんちょんと乗せて、軽くワンカップを半分だけ。腸のポリープさえ取らなければ3杯はいけたかも、残念至極。
酢鰺を作っている。食べているという方がいたら教えて欲しいな。我ながら、下町でこんな新たな発見があるなんて思いも寄らなかった。
●江東区三好にあった魚屋、屋号を聞かないで帰ってきてしまった。また画像を見ても屋号が判明しない。残念である
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