マイワシの天ぷらを初めて食べたのはいつのころだろう? 意外に高松の食堂だったように記憶するが瀬戸内でマイワシというのもおかしい。自分で手開きして衣をつけて揚げるというのは大学頃の自炊生活にでもやっていたこと。そして記憶をたどっていくと南小岩の定食屋さんに行き着いた。南小岩から鹿骨の方に歩き銭湯に通っていた。その帰りに小さな定食屋で夕食を食べていたのだ。たしかイワシの天ぷらがいちばん安かった。
思えばボクの小岩時代は暗かったな。大学のカラーが灰色系統で、利用する電車が総武線、住んでいるのが夏暑く冬寒い海抜0メートル地帯、周りに緑は皆無なんだから十代後半の身には応えた。でも千葉街道近くの中華料理店で食べていた下揚げして作るレバニラ炒め、フラワー通りの炒り豆屋なんて今思い出しても涎がタラリである。
さて定食屋ではイワシが2本、みそ汁にお新香がついていた。これではちょっと寂しいので、もうひとつ。沼津魚市場近くの『丸天』の天丼にはデカーいマイワシの天ぷらが甘いタレをくぐらされてのっている。ことほどさようにイワシは天ぷらにしてうまい。
またイワシと言ってもニシン科の「いわし」と言われる魚では、カタクチイワシとマイワシとが天ぷらでは双璧。カタクチイワシの軽さ、香ばしさに、マイワシの芳醇、濃厚な味わい。どっちがうまいとは決めかねる。ただ夏から初冬にかけてはマイワシが安いし、冬到来ともなればカタクチイワシに軍配が揚がる。そろそろカタクチイワシに材料を代えなくては。
そして昨今、ボクにとってイワシの天ぷらは酎ハイボールの肴(あて)となる。家族にとっては“おかず”なのでとても便利な一品でもある。また、夕食を魚にするか肉にするか、家族のことを考えるとある程度のタンパク質や必須アミノ酸が必要となる。その意味でもマイワシは優秀だし、育ち盛りに、またボクのような危険な年齢にはマイワシのドコサヘキサエン酸とかエイコサペンタ塩酸なんて大切なんだろうな。
と言いながらマイワシの天ぷら3枚で酎ハイボールが3杯目である。これじゃ体にいいわけないよ。後に続くのは「わかちゃいるけど………」ですな。
最後にマイワシ天ぷらの作り方を。まず手開きにして、背ビレや尻ビレなどをきれいに取り去る。ここに軽く振り塩。コショウを振るのも味わいに曲がでる。これに小麦粉をまぶす。小麦粉のなかに耳かき一杯ほどのカレー粉を入れるとカレーの風味はしないけど味わいに深みがでる。このコショウ、カレー粉などは好みである。他には天ぷら地に卵黄を入れる、マヨネーズを入れる、食用油を加える、カイエンヌペッパーを振り込む、青海苔を混ぜ合わせる、どうでもいいことだから好きにしてくれ。これを表面をカラッと、中をフワリと揚げる。うまいぞ! イワシの天ぷら。酒飲みすぎるぞ! 身体には気をつけろよ! いかりや長介みたい?
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