食べる魚類学: 2008年3月アーカイブ

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 西高東低だと思える魚貝類は少なくない。サワラ、マナガツオ、アマダイ、ハモなどすぐに頭に浮かぶし、関東ではとれなくなっただけだが、トラエビ、ヨシエビ、サルエビなどの小エビ類もそうだ。そんななかに「お前もか」と改めて気づいたのがキダイである。
 キダイとは「黄鯛」という意味合いだが、西日本ではおしなべて「連子(れんこ)」で通る。これが西日本ではよく食卓を賑わし、また料理人からも愛されている。それがなぜなんだろうね。関東では影が薄いように思えるし、買い求めると、見た目の美しさの割に、割安なのだ。

 だから春になるとキダイをついつい買い求めてしまう。
 そして作りますものは、主に塩焼き。他には酢締め、唐揚げもうまい。うまいことは、うまいがやっぱり塩焼きに限る。キダイを勝ったらとにかく塩焼きだ。それほどキダイの塩焼きはうますぎるのだ。

 キダイの塩焼きの旨さは皮目の甘味と独特の風味からくるもの。当然、その下にある真っ白な身の、繊維質でほどよく口の中でほぐれるのもいい。
 食べ始めると、もう一気呵成にむさぼり尽くす。当然箸など余計なものとなり、両の手をフルに使って、それこそ骨格標本のようになるまで、身をせせるのだ。
 最後には、骨湯も楽しむ。我が家の骨湯は別に片口を用意して、そこに熱湯を満たして持てないほど熱くしておく。湯を捨てて、骨を入れて、これまたガラガラに沸き立った湯をそそぐ。

 酒を飲んだときに、この骨湯に浅葱を散らしたのが、まことにいい加減だ。アルコールでささくれ立った胃の腑を癒してくれる。
 この美しいキダイの塩焼きと、咲き始めの桜。これぞまさに「春だなー」叫びたくなる。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、キダイへ
http://www.zukan-bouz.com/suzuki2/taika/kidai.html


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 八王子総合卸売センター『高野水産』に小振りの「きんき(キチジ)」が入荷してきていて、“小きん”としては大振りなので、わっと飲食店主が群がる。それをかいくぐり、手探りで6本。「いたた」と手に棘が刺さって、そこがジクジク痛むのを我慢して、入っていた箱を手にとっても産地が書いていない。仕入れてきた高野社長に聞こうにもてんてこ舞いの忙しさ。
 と言うことで産地不明だが、触っただけで脂を感じる“小きん”をささーっと煮つけにする。
 作り方はいとも簡単なもの。
1 “小きん”の鰓を鰓ぶたから指を差し入れてゆっくり抜く。
2 熱湯をかけて、ザルなどに上げておく。
3 深めのテフロンフライパンにたっぷりの味醂、その3分の1見当の醤油を入れてやや煮詰める。
4 ここに“小きん”をゆっくり入れて、強火、そして中火で煮汁にとろみが出るほどに煮あげる。

 盛りつけたのは、武内立爾作の辰砂の深ばち。
“小きん”の煮つけは、この名品に負けないくらいにうまかった。

 キチジの味わいの特徴は白身に均質に溶け込んでいる、ゼラチン(脂)で、これが甘く、そして旨味成分もたっぷりであること。特に皮目の旨さは例えるべくもない。
 小振りなのだけど、骨離れがよくて、箸でつまめる身はつまんで、最後に骨ごと口に放り込む。
 骨湯にしたいと思っても、これでは残るべき出しの素がない。また煮汁だって、このままご飯にかけ回してしまえば飯がどんどんなくなってしまう。

 最後に、この“小きん”の産地はたぶん、福島、宮城、岩手付近だろう。やや深みでカレイ、きんき(キチジ)、ミズダコなどをとるもので、とれる魚貝類は多種多様。“小きん”だけでなく膨大なうまし小魚が混ざる。
 このうまし小魚も、“小きん”も底引き網のある季節だけのものなので、大小に惑わされることなく、速買うべし。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、キチジへ
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