管理人: 2007年11月アーカイブ

銚子から来たサンマ

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 所謂プロと言われる人たちにがよく「銚子に来たらサンマも終わりだな」と言う。これは今年もサンマを食べ飽きたという意味合いが強く、決して脂が抜け落ちてまずいと言う意味ではないらしい。それが証拠に寿司職人を集めて聞いてみても「まだうまいのはわかってるんだけどな」と入荷したサンマに手を出さないのだ。これはボクと寿司ネタのことを極めてみようとがんばっている渡辺隆之さん(『市場寿司 たか』)もしかり。昔の東京での寿司の世界を教わっている、『鮨忠』さんたちも変わらない。

 そんなことにお構いなく、ほとんど三日に上げずサンマを食べ続けている。そしてとうとう、銚子まできてもやはり「うまいものはうまい」としかいいようがない。例えば最盛期の9月、10月よりも脂が抜けているといえば、そうかも知れない。でもまだまだ十二分に脂の甘さが堪能できる。ましてや三枚に卸した身をなぞるとやっぱり脂でザラリとする。

 そして11月最後の日のサンマだが、やはりうまい。
 うまいのに感激して『市場寿司 たか』に駆け込み「サンマ明日食べたいな」とお願いしても「もう飽きちゃったから嫌だね」とつれない。
 結局、あと残すところ僅かだろうけど、飽きることなく自分でサンマの刺身を作り、塩して焼くしかない。

 今年のサンマ漁の終わりは何時なんだろう?

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 岡山県日生での昼食はお好み焼きだった。関東の方にはわかって頂けないだろうが、西日本ではお好み焼きは常に身近にある。例えば喫茶店はなくても「街のお好み焼き屋」は絶対になくてはならないものだったりする。またお好み焼きは子供にとっても大人にとっても、軽食としても主食としても欠かせないものであるのだ。
 そして日生の話に戻ると、いろいろ漁村ならではの水産物入りのお好み焼きを食べるには食べた。けれども“お好み焼き屋のおばちゃん”によると「冬でしたらね。『かきおこ(カキオコとカタカナ表記が正しいのかも)』がありましたん(関西弁です)」。ここ日生で名物というと焼き穴子に冬はマガキ、そしてマガキを使った「かきおこ」なのだという。

 さて「かきおこ」とはなんぞや? それはマガキの剥き身入りのお好み焼きのこと。食べていないので、確実なところはわからないけど、お好み焼きにマガキを入れているわけだから、だいたい再現できそうだ。

 ちょうどここに岡山県漁連の日生産の剥きガキがある。後はお好み焼きの基本的なものを揃える。水でといた小麦粉、ここにほんの少しの塩、キャベツ、青ネギ、卵。

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1 ボウルにお好み焼きの生地、キャベツ、青ネギ、卵を入れておく。この時点で決して混ぜ合わせてはいけない。
2 フライパンを熱して油をしき、かなり強火のままマガキを入れる。フライパン内で適当にお好み焼きの円状マガキを配置。
3 手早く地を一定方向に空気を閉じこめるように掻き混ぜ、配置したマガキをつなぎ止めるように丸くフライパンに流し込む。お好み焼きの裏側(フライパン側)はすぐに焼けてくる。この間、非常に短い。
4 ここでまだ表面は生のままでしかないが火を弱めてひっくり返す。これでマガキに焼いた香ばしさが出るし、熱が入りすぎない。ここからは中火。

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5 焼けたな、と思ったら表面に返し。ソースをかけて青海苔。

 このマガキを、「これでもか」と入れたお好み焼きはうまい。意外にカキの風味はなくて、感じるのは旨味が勝っている。それでもマガキの豊かな味わいは存分に楽しめるのは、お好み焼きという包容力のある料理法だからだろう。
 唯一失敗したのがソースの選択。徳島県加賀屋のものは甘口であって、これが「かきおこ」には合わない。これは課題なのだけど、醤油、ソースなどを合わせて「かきおこ」用に誂える必要がある。
 さて、次回は「アサリおこ」を作ってみるつもりだ。

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日生のお好み焼きへは
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 今から40年ほど前のこと。父から「美崎屋で水炊きの魚こうてこんか」と言われてお使いに行った記憶がある。
〈注釈/本当は徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町)にある美崎鮮魚店。子供のとき味つけしない所謂「ちり鍋」のことを「水炊き」と言っていた。四国徳島県美馬郡で「こうてこんか」は「買ってきて」。〉
 我が故郷は山の中にあり、不思議なことに農業はほとんどなく商店街が中心の小さな町だった。町には魚屋が四軒ほどあったと記憶する。
 商店街は夕闇に包まれてきており、三味線もギターも蓄音機も売る楽器店を過ぎて、果物屋があり、和菓子も商いする人形屋があり、明治橋というだれも気づかないほどの小さな橋を渡り、食堂の隣に魚屋があった。その店々がビックリするほど煌々と明るい。美崎屋に入ると、なぜか白いタイルが目に飛び込んできて、眼の中までが真っ白になった。「鍋の魚」と言ったのだろうか、魚屋の人が「はげとぼらがあるけんど」と答えたのだ。本来はここで一度もどって「はげとぼらがあるんじゃって(あるけれど、どっちがいい)」と父に聞きに帰るべきだけど、そのまま意味もわからず「ぼら」と答えたのだった。
「ぼらもええけど、今日ははげがええけんな」
 そう言われて、素直に「はげ」にした。帰宅して父からは文句も言われず、その夕食の鍋で初めて「はげのおいしさ」に目覚めた。次に同じように鍋にする魚を買いに行くように言いつけられて、自分から「ぼらにする」と決めたのだった。そう言えばボクが料理に夢中になったのは小学3年生の頃であり、このように食料品店で買い物をするのが無類に“好き”だったのだ。ただし魚は嫌いだった。それがどうしたことか「はげとぼら」が好きになったのは、子供らしい気まぐれからだろう。
 そのとき「どうやら魚の鍋というのは“はげとぼら”を使うのが普通らしい」と思いこんでしまったのだ。
 今思うとこのときのボラは瀬戸内海からのものだろう。我が故郷から海に近い市場のある徳島市までと、瀬戸内海燧灘の香川県観音寺市まではほとんど距離が変わらない。

 さて上京してきてがっかりしたのは鍋材料に“はげとぼら”がないことだった。よくよく探せば“はげ”はある。徳島県で“はげ”というのはウマヅラハギかカワハギのこと。この旨さは関東でも比較的よく知られている。でも“ぼら”はどこにもない。ましてや“ぼら”を鍋に入れるなんて、関東人にとってはありえないことかも知れない。
 でも、なんど思い返しても子供の頃のボラは鍋に入れる魚だった。季節はたぶん晩秋のことだろう。四国とはいえ、昔は寒かったのである。今よりも何倍も冷たかった。だから鍋物が頻繁に食卓に登場した。

 そして我が家でも久方ぶりに「ボラのちり鍋」。平塚の定置網川長丸で上がった大振りのもので、その場で活け締めにしたもの。
 刺身にして、干物にして残りは鍋にした。中骨を湯通しして、良く洗い、昆布と一緒に鍋で温める。この骨から脂が浮き上がってくる。だしの表面に透明感のある脂が点々と浮いているのだが、ここに酒と塩で味つけ。

 後の材料はシメジ、三つ葉に豆腐など。とにかく大振りに切って湯通ししたボラの身を、ふうっふうう、ふううう、言いながらむさぼるように食う。あまりに大振りなので子供は持てあまし気味。まだ幼い姫などだしばっかりすすっている。なんど「最後の雑炊がなくなるぞ」といっても聞き分けないのは、それほどだしがうまいということだろう。
 驚いたことにボラの脂でだしがやや白濁してきている。そこから取りだした切り身がホロっとして甘味があり、うまいのだ。

 平塚では「そろそろボラも終わりだね」と言っていた。でも昨年のメモを見ると平塚では新年にもうまいボラが上がっているのだ。とすると我が家でも後、一、二回は「ぼらのちり鍋」が楽しめそうだ。

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 市場の仲卸二軒がホタテの稚貝を売っている。別に申し合わせたわけでもなかろうに、「ベビーホタテ」なんて呼んでいるのだ。「そうなんだ」ホタテの稚貝は今では「ベビーホタテ」と言った方が一般的らしいなんて思った。
 まあとにかく刺身にするには小さすぎるホタテも市場には入荷してくるわけで、その大きさも様々である。今回のものはなかでも極小サイズ。500円玉サイズがごっそり。
 みると小さな貝殻に、ベビーホタテよりも重そうなチシマフジツボが張り付き、もっとよくみると少ないながらアズマニシキ、もっともっとよく見るとキヌマトイガイもくっついている。
 これこそボクのもっとも大好きなフジツボつき稚貝なのである。ホタテガイは軟体類貝であって、フジツボは甲殻類。まったく動物としてかけ離れたものが、みそ汁にすると別々の旨味成分を出して相乗効果でうまいだしとなる。

 ボクがうれしそうに買い求めていると『総市』の社長が
「そういう考え方もあるんですね」
 不思議そうな顔をしている。
「次回からはフジツボつきの稚貝は“2倍うまいよ”、と売ってみてください」

 当然、買い求めた翌朝は稚貝のみそ汁にする。
 やはりフジツボつきは2倍うまいね。

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ゴマサバの柚しめ

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 そろそろゴマサバのうまい季節となってきて、いままで脇役で甘んじてきた役者が主役となる。これなど歌舞伎の中村仲蔵もかくのごとしではないだろうか。真冬のゴマサバは風格がある。
 さて別の表現をすると「化けた」という。それまで平凡で一段下にみられていたものが、ぐんと飛躍する。そんな飛躍の前兆を感じさせられたのが24日に買い求めた三重県産のゴマサバだ。

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 八王子綜合卸売協同組合『総市』、小振りで2本250円なり。これを仲卸のまな板で下ろして、一塩、紙にくるんで持ち帰る。
 三枚に卸しながら、身を指でなぞると少ないながら脂があって、指先がざらっとひっかかる。

 塩はそんなに強く振っているわけではない。おおよそ3時間も寝かせて、水洗い。水切り、ペーパータオルでよく水気を拭き取る。
 その間に海老名の海老さんにいただいた柚をたっぷり搾る。完熟して明るい黄がまばゆいばかり。果汁には香りよりも、酸っぱい中に旨味が加わってきている。
 柚の果汁に何も加えることなく、ゴマサバを入れる。柚は醸造酢と比べると酸度が低いように思える。だから食べるまで、漬け込む。食べるたびに柚酢の中から取り出すという次第だ。

 夕方まで約6時間漬け込んだものを、しめ鯖同様、血合い骨を抜き、薄皮を取り去り、へぎ造りに。これを皿に盛り、また食べる直前に柚をたっぷり振るのだ。

 柚は完熟してきており、香りは控えめとなり、むしろ果汁自体に旨味と微かだが甘味が加わってきている。この果汁のなかで軽くゴマサバの身を洗うようにして食べる。ワサビはほんの少しだけ。しょうゆはちょっと浸すだけでいい。
 この柚の香の爽やかななかにゴマサバの旨さも、そして脂からくる甘味も一緒くたになって口中を満たしてくれる。これは文字には書けない味わいで、キーを打ちながらもどかしい思いになる。
 とにかく、そこにあるのはゴマサバの味でも、柚の香りでもない。季節そのものだ。

 毎週のように柚を持ってきてくださる海老名の海老さんに感謝。

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 一色の堀さんから大きなスズハモが送られてきた。カライワシを見つけていた堀さんに、その個体をいただきたいとお願いしたら、「海老で鯛を釣る」の例えじゃないけど「カライワシに鱧が付いてきた」といううれしい顛末となった。

 このハモは鮮度的にも素晴らしいもの。まだ死後硬直の最中にあり、身が硬い。ハモの旬は産卵期と重なり、6、7、8月の夏。もうそろそろ冬の足音が聞こえてくる頃となって、味の方はいかがなものかと興味津々でもある。

 1キロを遙かに超えた立派なハモであり、我が家でいちばん大きな70センチのまな板を出す。これでも尾の方が出てしまう、そんな大鱧なのだ。ちなみに意外なことにハモは大きくても大味ということはない。
 これを腹から開いて骨切りをする。後はいかに料理するかであるが、子供達に人気があるのが、一に唐揚げ、二に塩焼きだ。今時、塩焼きに人気があるのは不思議に思えるかも知れないが、我が家ではウナギ目魚類の総てが塩焼きにして好評なのである。

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 そして底冷えのする夜なので「鱧ちり」。当然ながら卵巣は情けなくしぼみきり、赤。でも腸管が白く、肝や心臓もきれいだ。この内臓もうまいのできれいに掃除する。

 まず出来上がったのは唐揚げ、そして塩焼きは焼き台に乗っている。姫がときどき覗きに来るのは、皮目がきつね色に変わってきているのを観察しているらしい。
 そして「鱧ちり」用に骨切りした湯に落としては、氷水にとる。当然、内臓も忘れずに。

 唐揚げは、ハモ自体の旨味と言うよりも香ばしさが命。とにかく揚げたてを食卓に出す。ビール片手に唐揚げを楽しみながら、塩焼きの加減をみる。土鍋には昆布と湯通しし流水でよく洗った中骨。だしが出たら取りだして、酒塩。

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ハモの塩焼き

 ハモの塩焼きはなんといっても皮の旨さに尽きる。この皮は香ばしく焼いても旨味があり、時季はずれのハモだというのに脂がのって身が柔らかく、甘味がある。塩焼きがあまりに好評であったので、もう一枚追加して焼く。

 そして「鱧ちり」。これはじっくりと酒を片手に。だし汁にハモの身を入れると、フワリと脂の玉が浮いてくる。やはり、このハモは脂がのっているのだ。どうやら産卵後、冬を迎えるにあたってたっぷりと餌をくったようだ。ほどよく煮えたものを口に入れると、ホロリとほどける、甘味が広がる。

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 これはとても「贅沢な味」ではないだろうか? なんだか鍋をつつきながら豊かな気分に浸れる。

 そう言えば11月下旬のハモは初めてかも知れない。過去のデータを調べてみなければわからないが、この脂ののりに新鮮な驚きを感じる。

 うまいハモをお送りくださった掘淳さんに感謝。そしてこれから寒い時期となって一色漁港通いも大変であろうと思われる。くれぐれもお身体にご自愛を。

掘さんの「一色さかな村にようこそ」(愛知県幡豆郡一色町)
http://www.geocities.jp/gtsfp998/index.html
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コイ科コイ亜科を改訂
オオキンブナとしたものをキンブナに訂正
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新たにオオキンブナのページを作成
http://www.zukan-bouz.com/koimoku/koi/ookinbuna.html

掲載種 1963


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名古屋で焼きふぐ

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「名古屋で」と書いても愛知県名古屋へ行ったわけではなく「ショウサイフグで」ということはわかるだろうな。今年はショウサイフグが大漁であるのか、毎日のように入荷をしてきている。
 これをまず「ふぐちり」にして、唐揚げにして、一夜干しにしてもいいし、毎日のように食べていたら、そろそろ飽きがきた。そんなときに作るのが「焼きふぐ」だ。
 ショウサイフグを買い求めてきて、みがいて(毒を除去)、紙などにくるみ余分な水分をのぞく。これを骨付きのままそぎ切り。
 漬け込みの地はミリン、醤油、柚。この時期、柚の香りがないと寂しい。いただいた海老名の海老さんにはまことに感謝。

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 これで半日くらいは寝かせる。これを卓上コンロ(飛騨焜炉 どうして「飛騨」なんだろう)で焼くのだ。炭は家庭では白炭がいいのだけど、今回は備長炭しかない。この備長炭を家庭で使うのは無理である。いこす(炭をおこす)ときにバンと爆発、破片を飛ばしたりする。早く今年も白炭を買わねばならぬ。

 これをあとは卓上で焼くだけ。卓上に熱源をおくと部屋中が温かくなる。これはエアコンで気温を上げたときの温かさとはまったく異質の、こころまで温めてくれる、“熱”である。

 焼き加減はお好みでいい。多少生でも刺身にしたっていいような鮮度だから大丈夫だし、焼きすぎて焦げてもまたうまい。フグの身は繊維質が強く、焼くとぎゅっと収縮してしまる。これを食べるに鶏肉に近い食感となる。そう言えば、漬け込んだ柚の香りも口中で立つ。

 まだ11月だというのに、冬型の気圧配置、寒気が日本列島を覆い、気温は新年明けの厳寒期に近いのだという。この厳しい寒さがありがたくなる「焼きふぐ」の味わいなのである。

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 ズワイガニを漢字で書くと「頭矮蟹」となる。これは頭が足に対してやけに小さいという意味合い。と言うことは、「頭矮蟹」とはオスガニのことであって、メスガニは「頭大蟹」となる。またメスガニは小さくて可愛いので松田「せいこ」ガニと呼ばれている、というのは嘘であってただの「せいこがに」。もしくは「香箱がに」。このメスガニの呼び名にも多々あり、その謂われも諸説あるのだけど、今じょじょに整理中なので、ここでは触れない。

 このメスガニの値段が今年1匹300円から400円ほど。小売店でも500円前後だと思う。国産のオスガニは大きさもあって5倍以上するのでとても手が出ない。ということで我が家はもっぱらメスガニ専門となる。

 買ってきたら、食べる直前に塩ゆでにする。やや塩辛いくらいの熱湯で10分ほど。小さいのであっという間に茹で上がり、アツツツといいながら甲羅を外して2つ割にする。

 後は食べるだけ。
 メスガニを食べると、もう冬到来なんだなー、と一年の短さを思って悲しくなる。
 この感傷的な思いも一瞬のことでしかない。とにかく片身の甲羅下の内子いっぱいのところをかぶりつく。メスガニの場合、とても身をせせるなんてせっかちのボクにはできない。なんだかワケもわからず、足はバリバリ、甲羅下の身はむしゃむしゃと咀嚼して、その旨味の濃厚であること、甘いことに感動する。

 カニで困るのは酒の肴にならぬことだ。いかにうまいものとはいえ、身をせせり、足をガリガリと噛み砕きながら、酒を一献とはいきかねる。ただただ無心にカニを食うしかない。

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 霞ヶ浦市民協会の萩原さんから「土浦の小松屋という佃煮屋でアメリカナマズのお弁当を売っている」という情報をいただいて、せっかくだから予約をいれる。
 今、霞ヶ浦でいちばんやっかいな外来魚がアメリカナマズであるけど、これを根絶するには食べるのがいちばんなのである。その実際に食用としている現物を手に入れて、これまた実際に食べてみたいと思ったわけだ。
 店の方から「売り切れなんですけど2つくらいならできます」という返事があり、これは人気があるんだなというのが想像できる。

 今回の旅の相棒、うなたろう君と土浦の街に入ったとき、そのあまりに味気ない無味乾燥な駅前に落胆した。その「駅前イトーヨカドーの前にあります」というので、このデカイだけで、つまらないビルをぐるりと回る。そういえばビルの反対側で迷った末に、小松屋の場所を聞いたガードマンのオヤジさんの頭から柳屋のポマードの香りがぷーんと匂った。それが唯一の人間的香り、人の幾年を感じられる有機的なものであった。それほどにこのイトーヨカドーのビルは大きい、そして高い。

 小松屋はこの大バカビルから道路を挟んだ前にあった。なんだか街並みにとってつけたような、店舗設計としては程度の悪い作りのもの(仮店舗かもしれない)。このへたくそさ加減が凄いと言えば凄い。なかを見て回り、佃煮などを味見。店の一角に調理場らしきものを見つける。

 この店の佃煮というのが味はいいのだけど、すでに袋詰めされたもので味気ない。少しぐらい量り売りの情緒を残してほしいな。結局、他にはなにも買わないで、うなたろう君と一つずつ買ったのが「ずどん」である。「どん」は丼風な弁当の意味ですぐにわかるだろうけど、「ず」は今時のひとにわかってもらえるのだろうか? ナマズの「ず」を市場などの符丁としていたのを使ったもので、たぶん霞ヶ浦の魚問屋でもさかんに使われていたのではないだろうか? このようなある意味粋な言葉を弁当の名に使っているのが憎いね!

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 これを帰宅後、電子レンジで少し温めて食べてみる。驚いたのはアメリカナマズの天ぷらにかかっていたのが甘酢醤油のつゆだったこと。当然、当たり前だがアメリカナマズの天ぷらはクセがなくほっくりしていてうまい。その上、もっとうまいのがレンコンである。これが餅っとしていて少し酸っぱい味わいととても合う。その上、ご飯がまたうまい。

 アメリカナマズは霞ヶ浦の張り網で上がったものよりもクセが感じられず、臭いも皆無である。どうやらこれは養殖もので一定期間清水でおかれたものではないだろうか? その昔、アメリカナマズは養殖されるために霞ヶ浦に持ち込まれたのだ。今でも細々と養殖は続いているらしいとは聞いているが、これも近々確かめなくてはならない。

 さて、思わぬ拾いものというか、無機質な鉛色のやるせない場所で、やっと温もりのあるものに出合った気がする「ずどん」であった。ここで私的なリクエストがあって、アメリカナマズのカツ弁当というのをどなたか作っていただけないだろうか? 「ずどん」はとてもうまい。でもまだまだオヤジ年齢で仕事上も現役のボクの場合、やや料理としての雅さが鼻につく。ちょっと完成度が高すぎるのだ。これでは心に「ずどん」とこない。むしろ単純極まりない「カツ弁当」なんて一発でノックアウトされそうなんだけどな。

小松屋 土浦市大和町5の3 029・821・0373
霞ヶ浦市民協会
http://www.kasumigaura.com/
第3回全国タナゴサミットータナゴを通して地域の希少生物との共存を考える
http://www.kasumigaura.com/calendar/webcal.cgi?form=2&year=2007&mon=12
うなたろうの部屋
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 寒くなって干物日和の日が続いていて、市場に行くたびに大型のマアナゴを探している。
 これを鍋やら干物にするのだけど、家族は干物を待っている。それほどにマアナゴの干物は老若男女かかわりなく好まれるものなのだ。

 愛知県知多半島、三河湾ではマアナゴのことを「目白」という。この「目白」を開いて浜に干してある光景は、まさに見ているだけで“うまそうな”もの。これを買い求めた20年ほど前からマアナゴの干物作りに凝り始めた。
 そしてひとつの法則を見つけたのである。それは大きいほど脂がのってうまいこと。またやや強めに干すと小骨が気にならないこと。

 だから干物作りの時期を迎えると大きなマアナゴを探す。それが千葉県竹岡からの入会にあって、値段の交渉をする。相手はなかなか手強い、八王子綜合卸売協同組合『マル幸』のクマゴロウだ。本当にクマゴロウの見る目は確かで、なかなかたやすく値引きをしてくれない。それでもキロあたり「800円でいいや」というマアナゴとしては信じられない値段で買い求めてくる。クマゴロウありがとう。

 これに振り塩、振り酒をしてビニール袋で一日、天日に干すこと一日で干物が出来上がる。

 あとは香ばしく焼き上げるのだ。
 毎年、何匹も干物にして、そのつど感動しているのだけど、やはり今期の初物もうまいね。
 干物の外側は皮目も身の方も非常に香ばしくパリパリしている。それを口に入れると口中に一気にマアナゴの旨味と脂がほとばしり出てくるのだ。この旨さ、甘味、脂自体の芳醇さ、この感動は食べたものにしか味わえぬだろう。

 寿司ネタなどには大きすぎる500グラムのマアナゴの半身、頭部に近い部分、半身があっけないほど皿の上の時間が短かった。この余韻以前の欲求不満をどうしてくれるんだい、このやろう! となぜか夢見心地になるほどの美味を感じて怒りがこみ上げてくる。

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 愛知県というのはまことに食文化の多彩な土地柄である。でもこの愛知という県を一括りにすることは不可能なのだ。ここで詳しく説明することは避けるが戦国時代を鑑みても徳川家康の三河地方(愛知県東部)と、織田信長の尾張地方(愛知県西部)はまったく別の国だったのだ。
 その16世紀前期に生まれ、後期に非業の死を遂げる織田信長や豊臣秀吉がなぜ様々な産業・行政・政治的に画期的革命を起こせたのか? その答えは簡単な県別の地図で愛知尾張地方をみるだけでわかってくる。
 例えばあれほど名を馳せた武田信玄をして閉鎖的土地柄である所以日本的な中世を脱却できずに滅び、方やまだ小大名の時期から近世の萌芽を見せた尾張人。この近世の扉を開いた原動力が河川を中心とした商業取引だっただろう。
 江戸時代、明治時、大正、昭和までも流通を支えてきたのは水運である。水運の発達した地域に商業が栄え、その合理性を追求する考え方を育てたのが木曾三川であるのだ。当然水豊かな地(水郷地帯)だから生み出す産物も膨大だろう。

 織田信長、豊臣秀吉、蜂須賀小六、加藤清正など尾張の武士は、常に河川での流通の場所にいた。
 そこで彼らが食べていたのが、当然の如く多彩な淡水からの食物であるのは間違いない。コイ、フナ、ウナギ、ナマズ、サツキマスに多彩な雑魚、エビ。なかでも上等な、またハレの食材と言えばコイとフナだろう。

 尾張地方でフナを使った代表的な料理が「ふなみそ(鮒味噌)」なのだ。今でこそ尾張地方ではスーパーにも並ぶ惣菜のひとつだが、さぞや古くはご馳走であったろう。
 材料はギンブナ(まぶな)だろうか? まずは鍋に大豆と水、内臓を取り除き素焼きしたフナをいれてことこと煮込む。そこに砂糖、尾張独特の大豆麹大豆味噌、いわゆる豆味噌で味つけする。それこそ骨まで軟らかく、大豆、味噌と溶け込むかのように煮込んだフナであるからこそ、日持ちもするし、また深みのある味わいは魅力的だ。
 これは蛇足だが、当地ではたまり醤油でフナを煮るという料理もある。ただし味噌と比べると「たまりしょうゆ」自体が新しい。

 ここに淡水魚とともに登場してくるのが、愛知県独特の大豆麹大豆味噌。この歴史は意外に新しく、例えば戦国時代に水分が少なく携帯に便利だからということで発明された。また逆に大豆麹大豆味噌の歴史は非常に古いという説もある。
 この味噌にもいろいろ作る地方での名前があり、三州味噌は三河地方、八丁味噌は岡崎周辺、名古屋味噌、尾張味噌は濃尾平野の南部にあたる尾張地方。作り方のおおまかなところは同じでも、きっと各地で少しずつ違っているのだろう。でもここでははぶく。すなわち尾張水郷地帯の淡水魚を尾張の味噌で炊くという食文化が結集しているのが「ふなみそ」なのだ。

 今回のものは尾張生まれの、うなたろう君がくれたもの。パッケージからすると津島市の川魚店「魚光」のもの。発泡のトレイからだすと真っ黒で不気味な物体にしか見えない。でもよく見ると大粒の大豆があり、真っ黒な味噌の煮汁とあいまって魚の形をしている。この中心にあるのがフナ一匹なのだ。
 皿に盛り直して軽く電子レンジであたためる。そしてフナの身と味噌、大豆をかき取るように食べる。
 フナの身と骨、味噌の地は渾然とひとつになっている。ここにあるのは豆味噌の持つ香り、渋みとフナからでた旨味。中に存在する骨もサラザラと舌の上で適度に崩れていく。
 見た目に反して塩分はとても低く感じられ、たくさん食べても口中が塩辛くならない。フナにはまだ川魚の香りが残っていて、これがまたボクには好ましいものだ。
 また頭部を崩すと食道、胃袋のようなものが出てくることがあって、この食感がボクの楽しみのひとつ。
 このような全体の味わいに軟らかさというか、まことに心優しい存在となっているのがふっくらと旨味を吸い、味噌味となっている大豆である。うなたろう君によると大豆を使わない「ふなみそ」もあるという。でもボクは画竜点睛を欠くという気がする。

 この「ふなみそ」はご飯のおかずにも酒の肴にもなるが、面白いのはお茶にも合う。すなわち動物質のものなのにお茶の子(お茶菓子)に好適である。
 そう言えば、ボクの勝手な思い込みかも知れないが寒くなってくると「ふなみそ」が食べたくなる。古くからあるものなのだから俳句の冬の季語となっていないだろうか? これは調べてみなくては。

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 天ぷらネタ(種)を教えないまま食べてもらって、「あれ?」という顔つきになる。「まん天」を作ると、この怪訝そうな食べ手の反応が楽しい。

 さて材料は真っ白な塊。これを手でほぐし、ペーパータオルなどに少し置いて余分な水分を除く。

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マンボウの身には包丁は無用。総て手で割く

 この水分の抜き方は好みで変えて欲しい。水分を抜けば抜くほどからりと揚がるし、揚げた後、時間が経ってもべちゃっとしない。でもその分、怪しさがなくなる。
 これに塩コショウして、天ぷら粉をまぶし、衣をつけて、やや高温で短時間に揚げる。今回は天ぷらだけどフリッターにしてもいい。

 さて、これを食卓に置くと、外見からは材料がわからず。そして食べると、うまいんだけど、「なんだろうな」と考え込むはずだ。
「イカだ」「タコだ」「新製品の蒲鉾だ」なんて騒いでくれると、作り手としては思うつぼ。

 まあじらしても仕方がないので材料を発表すると、最近入荷が増えているマンボウの身なのである。
 マンボウは真っ白な身と腸と肝がセットになって入荷してくる。身はあきらかに手で割いて、肝と和えて食べるというのが漁師流、本来のやり方。でも港で食べるならいいかも知れないが陸送の途中で鮮度はかなり落ちている。残念ながら水分の多いマンボウの宿命ですな。
 それとここでちょっと、うち明け話をすると、マンボウの身はいつも少しだけ売れ残る。これは肝と一対でしか買わないという人が多いためだ。だから仲買で残り物を買うと「あんた偉いね」なんて勝手に値引きしてくれたりする。これがしめたものなのだ。

 市場でマンボウを見つけると、まずは腸が欲しい。これを焼き鳥風に焼くのを「まん腸焼き」と呼び、次に欲しいのが身であって、これを天ぷらにして「まん天」と呼ぶ。

 この「まん天」の味わいはイカにしては軟らかい、旨味も強い。とするとエビかなというと違う。とにかく軟らかくて、食感が不思議なもので、甘味がある。高温で揚げて、衣も香ばしいのでついつい箸が延びる。

 残念ながら家族がいると天ぷらでゆるり、一杯ともいきかねる。まあほんの一本だけ分けてもらって、子供達が喜ぶのを見る。まあこの五月蠅い食卓も酒の肴かもしれないなー。

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 川岸屋の土間に入り、席に着くと初江さんが常備菜などを持ってきてくれる。

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 とれたばかりのハクレン、アオウオの洗い、そして川岸屋特製の雑魚(タモロコ、モツゴなど)の佃煮。そのの回りには霞ヶ浦が日本一の生産量を誇るレンコンの煮つけ、酢の物。
 このレンコンの酢の物がうまい。徹夜して遠路来た身には酢が身体にしんしんと染みこみ、疲れを癒してくれる。煮つけも見た目の黒さから想像できない上品な味わいだ。

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 このレンコンを合いの手に食べるハクレン、アオウオがうまい。なんどもハクレンの白とアオウオの薄く黄を帯びた洗いを食べてみる。すると似通って感じられた両種の味わいに、思った以上の違いが感じられてくる。明らかにハクレンの旨さは腹身であるせいかも知れないが脂からくる甘味であり、身自体の旨味はやや少ない。それからするとアオウオの旨味は強く、そこに控えめながら脂からの甘味も感じられるのだ。中国四大家魚のなかでもアオウオが王とされるのはこの旨さ故だろう。

 ここに貴重な白いご飯がくるとともに、アメリカナマズのみそ汁。意外だったのはアメリカナマズからいいだしが出ていて、うまいみそ汁に仕上がっていることだ。もちろんアメリカナマズは皮付きであるけど臭みはまったく感じられない。やや濃いめのみそ汁と、洗い、佃煮で、ご飯はあっという間に胃袋に消えてしまう。

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 雑魚から、ごろ(ハゼ類)、エビ(テナガエビ)の佃煮に代わる。佃煮も種が代わると、味が微妙に変わるし、当然食感が変わる。
 うなたろう君の方を見ると明らかに愛知県尾張地方の佃煮との「味の比較」をしているのではないかと想像する。このような食文化と淡水生物の生態、はたまた人為的な護岸などの関わりを、この若い友人がどう捉えていくのか、これからとても楽しみである。また萩原さんはスリムであるのに思ったよりも健啖である。この方、意外や健啖磊落とお見受けした。

 この食事中にも諸岡さんから霞ヶ浦の魚や漁の変遷などをお聞きする。また霞ヶ浦周辺でその昔、作られていたという「ふくれみかん」となって、諸岡さんが持ってきたのが芳醇な柚。
 そしてシラウオの話となって、そのゆで上げて干したものを初江さんが味見させてくれる。たぶんもう残り少ない前期のものだろうが、やはりうまい。

 さて、あんなにあった洗いがほとんどなくなってしまった。この洗いのうまいのは調理した初江さんの素早さと、冷たい地下水の作り出したものだろう。

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 そろそろ食事も終わろうとするときに、ハクレンのオイル焼きが登場する。これは初江さんオリジナル料理だろう。油で香ばしく焼いたハクレンの背は、熱を通すと泥臭くなるのをネギなどを加えて上手に消し去っている。またちょいと生姜をのせて、柚をかけて食べてもいいのである。

 しかし三人共々よく食べて、諸岡さんのお話しをたっぷりお聞きした。話は尽きないのであるが、いつの間にかお昼近くとなって川岸屋を後にする。

 川岸屋から小野川を渡り、土浦の町を目差す。

霞ヶ浦市民協会
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第3回全国タナゴサミットータナゴを通して地域の希少生物との共存を考える
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うなたろうの部屋
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 朝、目が覚めた途端に「しまったー」と後悔する。暑がりのボクは夏用のパジャマを着ており、非常に寒い。明らかに熱がある。でもまだまだ風邪の症状は出ていないし、発熱以外にどこにも問題はないようだ。とにかく画像を整理しながら、熱いお茶を飲む。

 6時半には八王子魚市場を目差す。クルマのヒーターがなかなかきいてこない。渡る浅川の光景もどこかしら冬を思わせるのは寒さからだろう。

 八王子魚市場、やはり土曜日なので場内は寂しい限りだ。特種の坂本君が国内産の真っ白な白子を持っていて、「いくら?」と聞くと「6800円」だという。走りとしては安い。しかしうまそうだ。三重県から大量のゴマサバが来ているのをみて、『源七』にまわる。あんちゃんが冷凍のこはだ(コノシロの若魚)を解凍している。

 八王子総合卸売センター『市場寿司 たか』に着くとすでにお年のせいか早起きの海老名の海老さんとsnowy325さん達が到着している。初対面の挨拶をして店内に入る。海老さんと、snowy325さんご一家にはお任せ握り、烏帽子岩バージョンを食べて頂くとして、ボクはなぜかカッパ巻きが食べたくなる。これは明らかに熱のため。「カッパないよ」というたかさんの答えに河村青果で買ってくる(変な客かな?)。

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『市場寿司 たか』の店内は和気あいあい

 今回は平塚定置網の「川長 三晃漁場」のスズキ、ボラ、いなだ(ブリの若魚)、スルメイカが特ネタ。
 遅れてネオテニー(ヒモマキバイ)さんとjasminさんがやってくる。そして遅れること30分ほど店内でくつろいでいるとnaohnaohさん達もおいでになる。ここでネオテニーさんがおもむろに長崎県対馬、恵東丸さんからのボラの卵巣の塩漬けの頒布会を始める。その細心であること夜中に働くこびとさんのごとし。すばらしい無駄のない頒布会であった。このときボクは初めてネオテニーさんの偉大さを知る。

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 naohnaohさん達は店内で握りを食べ、その他のメンバーは市場巡りをする。一度、『土谷食品』に集まり、『フレッシュフード福泉』から八王子綜合卸売協同組合にわたる。今日も『ユニオンフーズ』の可愛い肉屋さんががんばっている。
『マル幸』には大きなばち(メバチマグロ)、そして「せいこがに(ズワイガニのメス)」。ここで「せいこがに」を買い求める。そして『河村青果』、『恒川』。
『やまさん』に『清水保商店』。『十一屋ジャパン』には千枚漬け。当然買わなければいけませんね。
『コリアンフーズかや』に入り込み。成田山にビビンバの作り方を教わり、ナムルを買う。

 八王子総合卸売センターに戻ると『高野水産』が帰ってきている。さすがに土曜日の荷はすさまじく、見るべきものは多い。やや遅れて今度は真菌さんも登場。ここでせっせとお魚を買い込む。jasminさんたちはサンピエール(マトウダイ)、ショウサイフグ。大急ぎでショウサイフグの毒の除去をお願いして、お隣の『総市』でサンマ、スルメイカ。スルメイカがまるまるとしてうまそう。

 一度、『市場寿司 たか』に戻り、こんどは「きんのり丸さんの盤洲海苔」をわける。やはりネオテニーさんは頒布会の天才的主催者である。お見事。
 その後、八王子総合卸売センター内肉屋横町で買い物。ボクは『カワベ』でビビンバ用の牛コマ。皆さんは『大商ミート』でトントロや豚の三枚肉塊を買う。

 その後、八王子魚市場にもどり、ムッシュのところで宮城県気仙沼の生メカジキ。これが頭部に近い部分なのに一切れ280円なり。普段は一般客を相手にしていないので土曜日だけの特売である。
 残念ながら11時前なので『源七』は店仕舞いの最中。

 これにて本日の八王子土曜会は終了となった。みなさん楽しんで頂けたかな。

 私、ぼうずコンニャクは夕方から本格的に発熱。明日の沼津行きどころか夕食を作るやダウン。

東京湾きんのり丸
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注/きんのり丸さん、在庫切れが多いぞ!
市場でお買い物掲示板
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八王子の市場に関しては
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市場寿司 たか
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 この「どんちっち鰈入カレー」だけど少々困ったことに販売元とか製造元が裏面から読みとれない。ボクは一般人だからこれが気に掛かる『香住屋』なんだろうか? 大きく書かれた「島根さんれい」なんだろうか? はたまた「島根商品開発委員会」なんだろうか?
 こう言うの商品を買った人への情報の伝え方がヘタクソだな。いろんな組織が組み合わさるとややこしくてかなわん。またあまりにパッケージに凝りすぎて商品名がわかりづらい。このようなパッケージはプロの目から見るとなおのことヘタクソと感じるのだ。
 たぶん買い求めた人がもう一度買うとき「カレイの入ったカレー、なんて名前だったんだろう」と迷うはず。ネットでも調べづらい。
 またこの定価は400円でいいのだろうか? 日本橋の「しまね館」では530円だったように憶えている。値段をネットで調べ直そうと思ったら「島根観光物産館」のコンテンツの作り方があまりにもヘタクソでぜんぜん探せない。これは気が短いボクだからだろうね。もっと時間をかけて調べればいいんだろうか?
 もしもボクが商品名を作るとしたら「“浜田どんちっち“『カレイカレー』」とか単純にやる。またどこかに「浜田市名物」という言葉を入れる。
 すなわち単純に商品名は「カレイカレー」だ。長年デザインに感心がある身にとっては見た目の単純さが不可欠だと思うようになってきているのだけど、間違いだろうか?
 あと主夫としては1人前400円であったとしても普段食べるには高い。例えば日本橋室町から神田駅にかけては安い飯屋が目白押しで立ち食いそばで食べるカレーは、ボクの記憶が正しければ素カレーで400円からカツがのって500円也だ。これをレトルトでしかもお昼に食べるとしたら高価にすぎるだろう? たぶん島根の地元の方にも愛好されないはず。なぜなら大手のレトルトカレーが最近では非常にうまいからだ。もしも値段を考えるとしたらパッケージにある程度の高級感と、遊びを共有させるべきだ。
 じゃあ400円でも530円でも「どんちっち鰈入カレー」が高いかというとそんなことはない。でもこのパッケージがあまりに遊びが過ぎて「お安く思える」ということだ。後々書くけど、このカレー、なかなか面白いし、味がいい。

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 と言うことで「どんちっち鰈入カレー」を食べてみる。まずはパッケージから「干かれい日本一」という浜田市のことを知るのもうれしいな。でも「カレイの干物」という感覚はあるけど「干かれい」となると今時の語感からするとどうだろう。
 とにかく期待をして熱湯にカレイのパック、レトルトを放り込む。そして説明書きがこぼれ出てきたのでそれを読む。ここに“焦げ目”を嫌がる今時のバカな人々がいるというのを知って愕然とする。“焦げ目”にはうまそうに感じて欲しいな。
 さて4分たったらご飯の上にまず「笹かれい(ヤナギムシガレイ)」をのせて、その上からルーをかけろと書いてある。この通りやって、すぐに「しまったー」、と感じた。出来上がりがただのカレーにしか見えないのだ。このカレイの干物をカレーにつけ加えるという面白い発想が半減する。これはやはりルーの上に干物だろう。

 出来上がりを、お昼ご飯として食べてみる。これがなかなかいい味だと思う。もっと辛い方が好きではあるが、辛さは万人向きであるし、またカレー自体が良くできている。そして問題の「笹かれい」の味わいも楽しめるのだ。

 さて、この「どんちっち鰈入カレー」は値段からしてもパッケージからしてもお土産ねらいだろうな? とすると充分に面白い。また味がいいので、また食べてみたいと思う向きも少なくないと感じられる。

しまねブランド推進課
http://www.pref.shimane.lg.jp/brand/
島根関連の私の師匠のひとり
ヤマトシジミさんの『おいしいってなんだろね?ブログ』
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 ヤリイカが毎日のように入荷してくるようになった。ただ大小様々、鮮度もいろいろ。このような時期をヤリイカの“走り”とも言うべきではないか。

 八王子総合卸売センター『高野水産』に産地不明ながら鮮度がよく、しかも外套長(所謂刺身にする胴の部分)15センチほどのヤリイカが入荷してきていた。値段は、と見るとキロ当たり1000円しかしない。こんな小春日和の穏やかな日は、ついつい、ふらふらと、仕事で上京(八王子、日野に住む人は都心に出ることをこう言うのだ)しなければならない、のに何杯か買い求める。その場で下ろして塩をしてビニールに入れて持ち帰る。

 帰宅後、このビニールに酒を一振り。ビニールの空気を抜き、画像の撮影、整理、よしなしごとの準備のあいだ。たぶん1時間くらいだろうか、寝かせる。これを唐墨とともに日陰に干す。

 帰宅はやや遅くなったが、ベランダに出るとやや強い干し加減だがうまそうな干物が出来上がっている。唐墨は指で硬さのムラを矯正。えん蒸のためにビニール袋に仕舞い込む。

 風呂から上がって、宮崎の「八重桜」麦を水割りにして、飲みながら干物を焼く。
 ヤリイカの身は干しても、軟らかく、そして旨味はほどほどながら甘味が強い。

 子供達は既に夢の中へ。お父さんは酒は静かに飲むべかりけれ。

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 最近大きなメバチマグロを毎日のように仕入れてきているのが『マル幸』のクマゴロウ。このメバチマグロの身がうまいのは当然として、中落ちのかきだし、腹際の身なども濃厚な旨味があってすこぶるつきにうまい。
 クマゴロウが独特の柳刃下ろし(なんと柳刃一本でデカイマグロを下ろす)を見ていたらひっぺがした背鰭を「やるよ」とくれる。この背鰭下の身がかき出すのは大変だけど、きめ細かな赤身でいい味なのだ。

 これをかきだし、叩いて、甘い東京沢庵と和える。なんで東京沢庵かというと家人が好きで買い置いているからだ。まずは大量に刻んだ沢庵を赤身と混ぜ合わせながら醤油で味つけ。皿に盛り、そこにまた沢庵を天盛りにする。
 ここに生姜の絞り汁を振ってもいいのだけど、以外に沢庵は臭い消しになる。生姜はむしろ邪魔者かも知れない。日本料理の世界に“出合いのもの”という表現があって、相性のいいもの同士をいうのだけど。このマグロと沢庵などまさに出合いのものだ。

 これが我が家の定番料理となった「まぐたく」である。
 教えてくれたのが『市場寿司 たか』の渡辺隆之さんで「すし屋(住宅街に店を持っていた)をやってたときに“つまみ”に出してたんだよ」と語る。
 と言うことで酒とも出合いのものだ。

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クロサギ科を改訂
ダイミョウサギのページを作成
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アオウオのページを作成
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掲載種 1962


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 宮城県の畠山重篤さんの名は水産のことに興味があれば、だれでも一度は聞いたことがあるはずだ。マガキという水産生物(当然マガキ以外にも)と山(森)との関わりをとき、植林運動を行うなど漁業者が主導する自然保護運動の魁となった人である。

 長年植林事業を継続し、きっと豊かな栄養分、また美しい水質を保っているだろう唐桑のマガキの味わいはいかがであろう。ただただ好奇心から1個85円(卸値)を3個だけ買ってきてみる。

 買ってきて貝殻の殻頂を見ると穴が開いていない。とすると垂下式の養殖ではない。どのような養殖方法をとっているのだろう。ひょっとして地撒きしたものかも知れない。
 まあ考えるより食べてみる。大急ぎで剥き、とるものもとりあえず口に放り込む。その小粒な外見からすると想像できないほどの身の膨らみだ。そして食感があって旨味が強い。
 売り場の担当者が「厚岸と比べると買い手の評価はわかれるようです」というが“身の大きさ”を鑑みると唐桑湾の勝ちかもしれない。

 さて本日も八王子魚市場には畠山さんの『水山養殖場」のマガキがあった。この入荷はいつまで続くのだろう。

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 漁の終わりに強い雨が降り、船着き場に上がるやいなや、小振りに、そして止む。見てみたかったアオウオであるが本日の張り網では30センチほどが2本あがったのみ。そこで諸岡さん(川岸屋)さんが生け簀から60センチほどのをすくい上げてくれる。
 うなたろう君ともどもハクレンと味比べがしたくなって、水揚げされた魚と共に土手を上る。

 川岸屋には地下水をくみ上げて、ウナギなどを生かしておく水場があり、ここで奥さんが待ち受けてくれている。本当はモツゴやワカサギなどを選別しなければならないところを、真っ先にハクレン、アオウオを三枚おろしにかかる。

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 1メートル近いハクレンをまな板によっこらしょと乗せた諸岡初江さんの、それからの包丁さばきが凄かった。ウロコもとらずワタも出さずにとにかく左右の身を切り離す。よく手入れされた包丁がグニュグニュした身を無駄な動きなく素早く切り離していく。
 切り離した身は血がついて凄惨な光景に見えるかも知れないが、ボクなど思わずうまそうに感じてしまう。これはうなたろう君も同様だろう。

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 この血液を大量の地下水で洗い流しながら、最後にまな板上に残った身の美しいこと。これで一息つくのかと思ったら直ぐに薄くそぎ切りにしていく。これをザルに揚げて地下水でなんども洗うと、ハクレンの腹身の洗いが出来上がった。

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 次はアオウオであるが手順は同じである。ハクレンの身が血合いの赤を除いて真っ白なのに対して、アオウオはやや黄を帯びている。これも同様に洗いにしてもらった。

 この出来たての洗いをとにかく口に放り込んでみる。予想していた淡水魚の泥臭さがまったくない。「あれれ?」という気持ちになるほど淡白である。そして噛みしめるとジワリと脂が染み出して甘い。

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「今日はご飯2合しか炊いてないべ。でもせっかく来てくれたっぺから、少ないけど朝ご飯どうぞ」
 諸岡夫婦は普段は2合の米を炊いて余るほど、それがうなたろう君、萩原さん、ボクと腹を空かしているのを見て提供してくれることになった。
 さて晩秋の川岸屋の朝ご飯はいかなるものだろう。


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「いやあー、うまいねー。アメリカナマズのフィッシュアンドチップス」その旨さに思わずこんな言葉が口をついて出る。
 フィッシュアンドチップスは確かイギリスの料理だったはず。たぶんたぶん北大西洋だから材料はタラだろう。それがアメリカ大陸に渡り、いつの間にやらミシシッピー川などでたくさん、それこそゴチャマンととれるナマズで作られるようになった。

 このアメリカのナマズというのが「Channel catfish」。水路などに多い猫に似た魚が霞ヶ浦、利根川に輸入、そして養殖されるようになったのは1980年代。これが霞ヶ浦に逃げ出して、それこそ爆発的に増えている。
 本来霞ヶ浦の漁業というのは寒い時期にはワカサギ、夏から秋はウナギ、その他の季節はモツゴなど雑魚とエビが対象であった。すなわちとれるもんは全部売れたわけだ。
 それがどうだろう、21世紀の霞ヶ浦たるや世界中から到来した売れない魚で溢れている。特に困っているのがアメリカナマズなのである。コイツ、うじゃうじゃ増えて肉食性なので困りものだが、鋭い棘で武装までしている。網に入るといちいちペンチで棘を切り取るのだけど、そんなもんじゃ追いつかない。

 困った困ったと頭を抱えているばかりじゃ解決しそうにない。なにかコイツを売る方法はないのかね。今のところほとんどがフィッシュミールになって肥料になるものがほとんど。
「困りましたね」
 霞ヶ浦の漁師さんに声をかけると、
「こりゃとても味がいいんだ。最近じゃナマズのフライを出す食堂もあるっぺー」
 そうか、やっと人々にアメリカナマズがいかにうまい魚であるか膾炙してきているようだ。
 それでも今現在、霞ヶ浦、利根川であがったアメリカナマズのほとんどはフィッシュミール原料となっている。これは私、ぼうずコンニャクが勝手に『もっと食べようアメリカナマズの会』でも作って多くの人に、このうまさを宣伝するしかない。

 さて目の前にあるのは2キロほどのアメリカナマズの半身である。骨のある部分を切り捨てて適当に切る。これにコーンスターチをからめてジャガイモのchipsと一緒に揚げる。chipsは薄切りという意味もあるが木っ端という意味もあり、ボクは好みからジャガイモは適当に切りとばしている。

 これを揚げる油の温度は始め弱く、徐々に高くしていく。出来うる限りカラリと揚げるのがいい。揚げたら紙などに取り、また紙を代えて塩コショウする。
 揚げたてを食べるのがいい。当然、片手に持つのはビール。

 さてアメリカナマズは他のどんな白身よりもフライや唐揚げにしたとき上だと重う。ベトナムから輸入しているバサなどもナマズであり、アメリカ人ならずともこの白身の旨さにはうなるはずだ。
 この最上の揚げ物材料がどうしてほとんど廃棄処分となるのだろうね。まったく日本というのは不思議な国だなーー。
●本内容にはフィクションが含まれる

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 暖冬で干物の季節がどんどん遅くなって、また短くなってきてもいる。とうとう今年の干物時期は11月に突入してからという異常事態となる。

 やはりこの明らかに人為的な温暖化は不気味である。ボクはちょっと極端かもしれないけど石油をいかに使わないか、また過度な肉食志向を矯正する、ゴルフ場開発、ゴルフ場自体などの激しい自然破壊を国内で厳しく取り締まる、ついでに雑木林や自然林を公共事業として増やしていく、そんなことを目差す政党を応援したいな。今のところ民主党も含めて自然破壊者だらけの政治家でこの国の未来が危うい。
*石油は世界中で戦争を起こしてもいる。

 さて、閑話休題。
 やっと季節到来したわけだからせっせと干物作りに励む。今回は最近入荷が増えているウマヅラハギ。この魚、一時はとれすぎて伊豆などに干物街道ができてしまったほどだから、干物はうまいに決まっている。

 ウマヅラハギは、まずは頭を落として皮を剥ぐところから始める。内臓をきれいに取り去って、3枚に下ろす。ここに振り塩、ビニール袋に入れて、酒を少々入れる。これをひと晩寝かす。
 立て塩という手もあるがこれはよほど量がある場合にのみ使う。またボクとしては立て塩よりも半立て塩の方が家庭向きだと思っている。この方法論は徐々に書いていく。

 これを晴れ上がった11月の日に干し上げる。干し加減は好みであって、勝手気ままでいい。でも最低限、表面はからっと干し上げておくべきだ。

 ウマヅラハギは酒を使った方が味わい的によいようだ。酒のコハク酸などとウマヅラハギの淡白すぎる身質とがよく合う。それに焼いたときに焦げ目がきれいである。
 このホロホロと甘味のある身の味わいはいかに表現すべきか、難しい。ただ2枚、3枚焼いても不思議なくらい皿の上での滞在期間の短い干物である。

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 干物というと酒の肴と思いがちだが、我が家では子供が真っ先に食べてしまう。どうやら干物の香ばしさが、子供にも魅力的であるようだ。

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 イシガレイは刺身にして最上級の魚である。ただし活け、もしくは活け締めにしたものは。野締め(漁獲時に死んだもの)はどうにも食感が悪く皮目の臭みが移り、あんまり上等とは言いかねる。
 でも野締めのよいところは値段が非常に安いと言うこと。キロ当たり1000円以下というのは魅力的だろう。
 肉厚の500グラム以上のを見つけて、その上、鮮度がよかったら間違いなく買い求める。
 持ち帰ったら、すぐに体表の石(実はウロコ)を包丁ですき取り、5枚に下ろす。この時期真子を持っているので煮つけてもいいのだけど、家族の要望でムニエルを作る。

 このイシガレイのムニエルはなんど作っても絶品である。白身で繊維質の身は適度に硬く、噛みしめると旨味を感じさせて適度の早さでほぐれる。そこにバターの風味が来ると言うことなしの幸福な気持ちになれる。

 産卵期を迎えてイシガレイの入荷も多くなってくるに違いない。これを楽しまぬ手はないと主夫は思う。

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 外に出るとかなり強い雨が降っている。高速に乗り、東に向かうほどに小雨になる。
 午前4時過ぎ、浅草でうなたろう君をひろい、迷った末に隅田川縁から首都高にあがる。この川縁の高速入り口が非常にわかりづらい。
 常磐道に入り、あとは桜土浦まではほんの1時間ほどしかかからない。この間、あたらしい生活を踏み出したうなたろう君といろいろ話し込む。

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淡水真珠養殖はイケチョウガイ(ヒレイケチョウガイ)が水中のプランクトンを濃しとって吸収してくれるので水質改善にも大きな役割を演じている。我々は淡水真珠養殖を応援すべきだ

 小野川を渡り、古渡に着き、まずは小野川を少し上る。
 今にも降り出しそうな曇り空。対岸から鳥の鳴き声、枯葉になったハスが冬近しを思わせる。
 岸から米口さんの淡水真珠の養殖場を見てもらう。米口さんのボートに残っていた貝殻を見て、母貝がヒレイケチョウガイであることが、うなたろう君にもわかってもらえたようだ。

 そこから川岸屋へ。まだ諸岡さんは目覚めていないらしい。川縁を歩きながらいろんなことを話す。ほんのつかの間の立ち話にも、うなたろう君の淡水魚、淡水生物では傑出した知識を持っていることを思い知る。ほどなく霞ヶ浦市民協会の萩原さんがやってきた。このときボクと萩原さんは初対面なのであるがなんども電話で話しているためかそんな気がしない。
 そして川岸屋の玄関を開けると、諸岡さんが居間から出てきてくれる。ここで救命胴衣などをお借りして張り網に向かう準備をする。

 時刻は7時前、救命胴衣を借りて、ボートに乗り込む。船を操るのは萩原さんで、隣で諸岡さんが笑って見ている。
 ボートは小野川から霞ヶ浦を目差す。岸辺にはたくさんのカモがいる。他にも水鳥が見られるのだけど種類がまったくわからない。ボートで走ること10分ほど。最初の張り網を上げる。

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「ウナギいるかな」
 萩原さんが呟く。
「いないね。ウナギはいちばん上にいるからね」

 最初に上がったのは大量のアメリカナマズ。ウナギはいないのかと思っていたら1匹だけ混ざっていた。これをうなたろう君が見事に掴み上げる。

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アメリカナマズはとてもうまい。霞ヶ浦周辺でも味わえるのでお試し願いたい

 この日、ウナギは大小とりまぜて5、6本は上がったように思える。ウナギは最終盤にあたるようで、そろそろ姿が見られなくなると言う。
 アメリカナマズの他に大量にテナガエビがとれる。そこにボラがいて、意外に口細(モツゴ)やタナゴ類がいない。

 黒い桶には思った以上のテナガエビが蠢いている。そのなかの2、3匹を萩原さんがつまみ上げておもむろにむしゃむしゃ食べる。

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「諸岡さんに教わったんだけど、エビは生で食べると塩気があってうまいんだよ」
 当然ボクも3つ、4つつまんで食べてみる。塩気というほどではないが確かに塩の存在が感じられ、生で食べるエビ自体もまずくはない。

「霞ヶ浦よりも川の方が種類は多いよ」
 諸岡さんが徐々に小野川に向かいながら張り網をあげていく。確かに小野川河口に来た途端にオオタナゴ、タイリクバラタナゴ、モツゴ、ニゴイ、カマツカ、ペヘレイなどが混ざる。またキンブナ、コイ、ヘラブナなどは売り物となるもので生け簀に投げ入れる。他にはワカサギが混ざってくるが量は少ない。諸岡さんが中からカマツカをつかんで逃がしてやる。
「コイツは年々少なくなるっぺ」
 小野川河口近くで大きなハクレンがとれる。
「ハクレンがとれっとほかのもんが入らないっと」
 ハクレンの腹身がうまいとなんども聞かされていたので、うなたろう君ともども「食べてみたい」とお願いすると、萩原さんがハクレンの大きな頭を棍棒でなんども殴る。ハクレンはグッグググググッグと小刻みに震えながら、その呼吸を止めた。
 おだやかそうに見える萩原さんだが、霞ヶ浦の漁師の荒技をいろいろ身につけているようだ。

 完全に小野川に入ったときに上がったのがアオウオ。これは30センチほどの小さな個体。「青魚」の“青”がネイビーブルー(藍赤)であることを知る。こんな色合いの魚は我が国固有種には存在しない。

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 またモツゴ、ワカサギなどの中からアカヒレタビラ、カネヒラを萩原さんとうなたろう君が見つけだす。これはボクにとってはまったく未知の魚である。
 ヌマチチブ、ウキゴリなどのハゼ類、タモロコ、スゴモロコ、モツゴ、フナ類は佃煮材料になる。
 だんだん目が慣れて小魚の中の種がわかるようになってきた。アメリカナマズ、オオタナゴ、タイリクバラタナゴ、ブルーギル、ブラックバス、ペヘレイという海外からの移入種。ワタカ、スゴモロコは琵琶湖から移入、タモロコは移入が疑われる。

 漁の最中に水上バイクが猛スピードで通り過ぎる。こちらはボートを止めて不安定な状況にいるのだ。最低限の知能を持っていればそこをスピードを出したまま通り過ぎたら危険なことぐらいわかりそうなもの。ボクはアウトドアスポーツと言われるものでエンジンを使ったものが大嫌いで下等だと思っている。当然スポーツとしての存在自体を認めないし、当然、水上バイクを趣味としている人間も認めない。

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「今は魚が少ない時期だんべ」
 諸岡さんには電話でなんども繰り返し聞かされていた。でも目の前に上がる魚の量はかなりの量にのぼり、淡水魚には詳しくないボクには萩原さんとうなたろう君の会話を理解するのがやっとという状況だ。

 張り網も残すところ少しというところで強い雨が落ちてきた。雨具が完全ではないうなたろう君は救命胴衣を頭にかぶり濡れるのを防ぐ。
 最後の張り網は大急ぎで上げるが、網に泥が付いているなど収穫は多くはない。

 雨から逃げるように船着き場へ。そこから川岸屋に逃げ込む。皮肉なことに陸に上がるや、雨は小降りに、そしてやむ。

霞ヶ浦市民協会
http://www.kasumigaura.com/
第3回全国タナゴサミットータナゴを通して地域の希少生物との共存を考える
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うなたろうの部屋
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マアナゴのちり鍋

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 マアナゴは高値安定の魚であり、主に煮アナゴを作る。この作り方は後々語るといて、今回は冷え込んできたので鍋。
 市場で大きいマアナゴを探す。これが築地でも八王子でもなかなか難しい。八王子魚市場にはもちろんなくて、八王子総合卸売センター『高野水産』にも見あたらぬ。数日経てやっと八王子綜合卸売協同組合『マル幸』で1本500グラムほどのものを見つける。これをその場で割いてもらう。忙しくなければ自宅でも割けるのだが、大きなまな板を出し、また洗うのが煩わしい。

 この前半部分は干物に仕込む。そして後半を骨切りする。この骨切りはよく切れる柳刃でハモのように皮目をほんの少し傷つけるほどに。これを一度湯引き。

 だしは酒塩、昆布だしという定番のもの。この日は姫と二人っきりで小鍋仕立てとなる。
 姫はネギトロご飯に夢中であまり鍋を食べないで、最後に鍋の汁をうまそうに飲んでいる。
 実を言うと鍋物の残った汁が淡々として、それでいながら味が濃くてうまいのである。この真逆の味わいをどう表現したらいいのだろう。我が家の鍋で汁を使わなかった、捨てると言うことは絶対にない。

 この汁が酒の肴に無類であることをご存じだろうか? ボクは淡麗辛口の酒から、島根の『王禄 本醸造』の熱燗に替えて、また一合やることにしている。

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 メバチマグロのかき落としや尾の部分を『源七』の若だんなにいただく。
 ここからスプーンで身をかき出して、ネギトロに。後に残った筋を玉ねぎと甘辛く煮つける。

 マグロ類の筋ほど煮て旨いものはない。これだけで鍋を仕立ててもうまい。
 でも朝ご飯のおかずだからまずは定番の煮つけと決まったわけだ。
 作り方はいたって簡単。醤油、酒、砂糖に水を加えて味を加減。火をつけて一煮立ちさせたら、ここにマグロの筋や粗、玉ねぎを放り込む。このとき骨を絶対に総て取り去ることだ。間違って混ぜ込むと、マグロの骨は硬いので大変なことになる。

 火加減は終始強火で。煮汁をからめからめてマグロ、玉ねぎに吸収させる。この煮汁には玉ねぎの甘味とマグロの脂、旨味が混沌と混ざり合っているので、うまーい煮つけが出来上がる。
 これを片口に小山の如く盛り、煎りごまを振り出来上がりだ。

 これでご飯を食うと、きっと三杯飯となるに違いない。なにしろこの甘辛い、やや甘目がちな味わいはご飯の甘味と相乗効果でより甘い。その甘さがいやな甘さじゃないんだよな。なんというのだろう「嫌みのない甘味」、そして適度な醤油辛さ。
 夕べに作ったら当然酒もすすむ。こんな惣菜めいた料理が家庭を明るくするに違いない。

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 ホウボウが大好きでネタケースに毎日入れているのが『市場寿司 たか』の渡辺隆之さん。
 実はホウボウを寿司ネタにする店は少なく、ボクはこれが不思議でならない。たかさんならずともホウボウほど味のいい魚も少ないはずである。

 このホウボウは寒くなるに従いうまくなり、春に産卵すると途端に味が落ちる。だからボクは肌寒さを感じるとホウボウを買う。それを『市場寿司 たか』で味わってみるのだ。

 今回のホウボウは千葉県竹岡産。『マル幸』のクマゴロウがもってきた入会(いろんな魚がまぜこぜに入っている)に混ざっていた鮮度のいいもの。

 たかさんネタ用のホウボウが仕込み終わったところにもう一匹で嫌な顔をするが、「ええい我慢せんかい」と一喝して刺身にしてもらった。
 当然、泣き袋(浮き袋)も湯通しして脇に。
 これが10月よりも脂がのり、甘味が増している。ましてや浮き袋の筋肉のとろっとした脂はもっと甘い。

「これが夜だったらよかったのにね」
 たかさんが悲しそうに呟く。
 時計は10時を回ったばかり、
「さー、あと半本(2升)仕込まなくちゃ」
 ボクも仕事に向かうべく、市場を後にするのだった。

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霞ヶ浦に行って来た

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 愛知のうなたろう君と霞ヶ浦に行って来た。現地では霞ヶ浦市民協会の萩原さんが待ち受けていてくれて、川岸屋・諸岡清志さんの張り網漁を見た。
 霞ヶ浦ならではの生き物に出会い、また川岸屋のおいしい朝ご飯を食べ、また諸岡さん夫婦のお話もたっぷり聞くことができた。
 帰途立ち寄った土浦でも美味しいものを食べ、いろんな食べ物を買い込んできた。
 実り多い旅であった。
 これを徐々に整理、また旅日記を書いていく。

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明日は霞ヶ浦です

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 11日日曜日は愛知のうなたろう君、霞ヶ浦市民協会理事の萩原富司先生と霞ヶ浦桜川村に行きます。
 ここでたっぷり霞ヶ浦の生き物に触れてきたいと思います。

霞ヶ浦市民協会
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 朝方目覚めたのは6時前。大急ぎで木更津のきんのり丸さんから送られてきた新のりをあぶる。「秋の一番摘み」10枚に、「青混のり」10枚。2年ぶりくらいののり焼きで自身がない。
 姫を起こして外に出るとひどい雨だ。
 八王子総合卸売センター『市場寿司 たか』には7時過ぎに到着。店内は雨のせいかお客がいない。jasminさんと海老名の海老さんが到着していて、ネオテニーさんはまだ来ていない。ここで「とろたく」「ワサビ巻き」で新のりを味わう。

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 巻物を口に入れると、のり自体の味わいがはっきりわかる。甘味があり、口の中に旨味が余韻として残る。ボクはこの巻物2本で勢いがつき新のりを敷き詰めた「豪海ぶつぶつ丼」。これもうまかったー。
 jasminさん達は旬のホウボウなどを加えて、「のり巻き2本+おまかせ握り」。おいしかったかな? 相変わらず姫はイクラと卵焼き。食べ終わったころにネオテニーさんが到着。

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 その後に続けとどっとお客がなだれ込んできた。

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 一足先に「土谷食品」で待っていたjasminさんたちと合流して八王子綜合卸売協同組合に回る。

 こちらはそろそろ混雑が始まっている。

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 土曜日には『ユニオンフーズ』に可愛らしい小学生の売り子さんが立つ。この子がいるだけでコロッケの売れ行きがいいのではないかな?

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クマゴロウ、イシガレイを切る

『マル幸』の竹岡(千葉県)の入相からjasminさんにイシガレイをすすめる。野締めのイシガレイは刺身とはいかないがムニエル、フライにして美味。老眼のクマゴロウにワタと石、頭を落としてもらう。
 ここで何を思ったかネオテニーさんがおっちょこちょいに超高値のマサバを買ってしまう。そりゃいいマサバかも知れないが、いきなり初手からそんなものに手を出したらあかんだろう。他にはズワイガニのメス。

『三恵包装』で姫がお菓子。『十一屋ジャパン』で季節の漬物。皆さんしきりに真子入りのボラを探すが見つからない。今年のボラの卵巣は非常に高値で品薄であるようだ。

 八王子総合卸売センター『高野水産』が8時過ぎには帰ってきた。あいかわらず圧倒的な量、そして安さでお客が店頭に膨れあがる。ここでjasminさんがホウボウ、ネオテニーさんは何を買ったやら。三人とも早々と支払の列に加わる。

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けだし『高野水産』は凄まじい。この安値、量、どこにも負けないだろうな!

『カワベ』に回るととてもうまそうな牛コマがある。コマちゃんはすすめてくれるが、明日は霞ヶ浦への旅。『大商ミート』で肩ロースも買い込んだことだし今回は止めようとしたら姫が勝手に「お肉買う」といってきかない。それで牛ロース薄切り300グラム、オマケしてもらって900円。コマちゃんいつもすまないねー。

 9時半過ぎになって4人をさそって八王子魚市場にまわる。jasminさんはここで北海道増毛「遠藤水産」の生ニシン。
 そのまま『源七』を冷やかしていたら、姫が勝手にこんどはマグロのカマを買い込む。ボクは『源七』ではお金を遣わない主義なので「ただでくれよ」とお願いするがダメ。結局姫がお小遣いで買う。

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若だんなの作る「あんきも蒸し」は作るとあっという間になくなる。隠れた八王子名物なのだ

 若だんなは遅い時間にも関わらず、ちょうどこれから「あんきも」を蒸しにかかるところ。これをネオテニーさんが一本予約。10時前には皆さんとお別れする。

 午前中は野菜などの買い物。お昼はいい加減に出来るだけダラダラと仮眠をとる。なにしろ明日早朝から茨城霞ヶ浦を目差すのだ。

 夕食はきんのり丸さんの新のりでおむすび。

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 マグロかまから掻き落としたものをニンニク生姜でたたき、塊の部分は刺身にする。このカマの脂の強いところがうまい。他には牛ロースの塩コショウ焼き、セロリなどのステック、具だくさんのみそ汁。

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これが500円なりで姫が買い込んだマグロかまの一部。うまかったかって、当然。なにしろ上物のメバチマグロですかなね。

 午後9時過ぎとなって、そろそろ明日の支度にかからなければ!

木更津 きんのり丸さんの新のりに関しては
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市場寿司 たか
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八王子の市場に関しては
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 カイワリという魚をご存じだろうか? 小さくて丸くて、なんとも愛くるしい。そんなことを書いても“食べる”という話になると意味がないと思われるかも知れない。でも味も飛びきりいい。カイワリは姿よし、味わいよしの優れた魚なのである。……もちろん人間の身勝手な評価だけど。

 今回のカイワリは体長15センチ弱。小さな個体だがこれでも立派な成魚。だいたい釣りの対象魚でもあるけど体長30センチなんてのが上がると魚拓ものとされる。普通釣りでも市場でも見かけて20センチ強、小さいと14、15センチが普通だ。

 この15センチほどの形を下ろして、片身を指で一筋になぞると滑りを感じるほどにしっとりしている。この感触は確実に脂である。これを慌ただしく刺身に造ってみる。
 そぎ作りにして脂が雲のように見えている。切り口に斜めに走る繊細な筋にも白さがあって、これも脂だろう。

 この味わいの甘さのほとんどは脂から来るもので、そこに旨味が余韻を醸し出す。
 今回は真昼の食事時でもない試食のための刺身作りであるのが恨めしい。ほんの4、5切れ食べて家族の夕食に残す。と言っても家族も味見程度だけどね。

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 岡山県備前市日生でお好み焼きを食べたとき、寒くなると名物の「かきおこ」があるんです。という話を聞いた。お好み焼きに剥きガキが入って、「カキ入りお好み焼き」の略が「かきおこ」。どんな味なんだろうとかねがね思っていたのだが、その日生産の剥きガキを八王子綜合卸売協同組合『やまぎし』で見つけた。
 水切りタイプで小粒とくるだけでいかにもうまそうな。これを2パック400円で購入する。

 一個は生で、もう一個は「かきおこ」を作ってみるつもりだった。それで当日は一パックをそのまま軽く洗い、生のまま海老名の海老さんにいただいた柚と粗塩で食卓にだす。出した途端に家人がやたらに食べて、気がついたらきれいに消えている。こっちはほんのイシガレイのムニエルを焼いている間のことで空になったガラス鉢を見てため息がでる。でもそんなにうまいものならボクだって食べたい。

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 仕方なく「かきおこ」用の一パックにたっぷりの柚を振りかけて、粗塩で食う。これは確かに夢中になる味わいである。小粒であるからだろうか、非常にカキの旨味が濃い。しかも、食感がすこぶるよろしい。しかも小さなパックの割に生身はたっぷり詰まって入っているのだ。

 日生では盛んに「カキの時期にもう一度来てみてくださいね(大阪弁の抑揚で)」と言われた。このワケが判明したことになる。
 考えてみると、マガキの生産量のダントツ一位は広島、次いで宮城県、これに次ぐのが岡山県である。岡山はカキどころだったのだ。
 日生のカキを食らいながら「冬の岡山にも行かなくちゃだめだな」としみじみ思うのだった。

岡山漁連
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サンマ飽食

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 市場を歩いていたら『総市』のミノルちゃんのところにサンマが3本残っている。しかもこのサンマ、とても見事で美しい。11月になって不思議なことにサンマの売れ行きが悪い。

 この3本のサンマを持って、『市場寿司 たか』に立ち寄ると、ここでもたかさんが大量にサンマを仕込んでいる。
「高野(高野水産)に安いのがあったからたっぷり仕入れてきた」
 そのサンマのなんともギラギラと脂がのっていることか。あまりに旨そうなので「投げ込み丼サンマスペシャル作ってよ」とお願いする。

 そのサンマが大量に入った投げ込み丼のうまかったこと。ボクは生きていて良かったなと鈍色の空に思ったものだ。
 そして帰宅。よしなしごとが夕方遅くまでかかり、やっと夕食を作る。子供達にはカレー粉で作った“ちょい辛カレー”。大人はサンマと酢ガキ。

 大きなサンマを2本刺身にしたら大皿いっぱいになった。でも無くなるのはあっという間だ。
 しかし11月のサンマはまだまだ全盛期の旨さをほとんど残している。すこぶるつきにうまい。
 考えてみるとサンマの刺身を食べていて酒を飲むのを忘れていたくらいだ。さてあとどれくらいサンマ漁が続くものだろう。心配なので毎日サンマを食うことにする。

八王子の市場に関しては
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市場寿司 たか
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 だんだん肌寒を通り越して、街に枯葉舞、そろそろ冬到来を思わせる候となってきた。
 そんなとき八王子綜合卸売協同組合『やまぎし』で見つけたのが「三番叟」、すなわちイシダイの若魚である。体長17センチしかないが、「三番叟」も季節を感じさせる魚なので買ってみる。一緒に入っていたカイワリともども100グラムあたり80円で200円ちょうどの支払。

 これを帰り着いて刺身につくる。やはり思った以上に脂がのっている。
 イシダイというのは不思議な魚で小さくても味がいい。とくに寒い時期の小型魚は親よりうまいんじゃないかと思うほどだ。
 そしてその小振りのイシダイに脂ののりを感じると冬だなと感じる。

 残念ながら真昼の刺身、これで酒ともなるまい。ただただ刺身として食べて美味だと感じただけ。けだし忙しい日々は嫌だねー。

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 ショウサイフグのことを関東、また関西でも「名古屋」という。これは「尾張名古屋は城で持つ」を「終わり」にかけた洒落であって、名古屋を一段下に見ているものではない。名古屋大好きな人間としては明言しておく。
 寒くなると盛んにショウサイフグが入荷してくるので、「名古屋好き」としては毎日でも買いたい気分である。その料理法に「焼く」というのがある。醤油味醂などで下味をつけて炭火で焼く、もしくは味つけをしないで強火にて炙る。ボクは味つけしないでそぎ切りにしたものを、強火で炙り、焼きたてにポン酢をかけ回すというのが大好きなのである。

 なぜなんだろうね、これは子供も大好きなので紅葉おろしを抜きにして作る。だからお父さんは別皿にとり一味唐辛子を適宜にふる。この場合、七色唐辛子はいけません。

 つけ合わせには名残の茗荷と胡瓜、白ネギの晒したもの。海老名の海老さんにもらったユズがいい香りだ。

 今回合わせた酒は山形の「東北泉」。ちょっと冷やし加減にして2杯だけ。

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 ケムシカジカはカサゴ目であり白身であるにかかわらずいたみが早い。これはオニカサゴやカサゴとは大違いだ。だから締めているのに身がゆるく悪いってことが多々ある。
 今回もやはりそうであり、刺身にも洗いにもならない。こんなときには湯洗いにする。

 だいたい70度ほどだろうか、ちょっと手を入れてみて「熱い」とは思うが火傷はしないというお湯を用意。別のボウルに氷水を作りおく。
 三枚に卸した身をそぎ切りにして、ザルなどに入れて湯の中で数回揺らす。と間髪入れずに氷水にとる。ここで身が「チチチリチリ」と縮む。

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冷水に取った途端、身が縮む。

 この水をよく切ると湯あらいの出来上がりだ。そして肝心要、本当はこちらが主役の肝も茹でて脇に添える。
 醤油に茹でた肝を潰して、その破片を湯洗いで巻き上げるように食らう。これはまことに佳肴としか言いようがない。これに合わせるのは『王禄』の本醸造かな。

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2007年11月7日の日記

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「もうメチャクチャでありますがな」という流行言葉を知る人はだんだんいなくなっているのではないだろうか? 子供の頃、花菱アチャコはまだ現役であり、この人の口からこれが出ると、ボクの世代よりうんと前の人ながら笑えたものだ。でも笑えないのが我が日常。本当にメチャクチャ慌ただしい。忙しいというとまるで家業に励む米つき屋のように生真面目に聞こえるが、我が人生は「慌ただしい」の一語だ。

 本日も実に慌ただしい朝を6時過ぎに迎える。ところがなんだか起きあがる気になれないのだ。次に目が覚めたのが7時。大急ぎでパソコンをつけて子供達にベーコンエッグを焼き、サンマを焼き、ケムシカジカの卵巣の醤油漬け、八王子総合卸売センター「神定」の白菜漬けを出し、みそ汁は家人が作る。
 あたたかいご飯にケムシカジカの卵巣の醤油漬け、白菜漬けになんと白菜のみそ汁でほんの5分ほどの朝ご飯を済ませる。

 昨日書いておいたブログをアップ。8時過ぎには市場を目差す。

 八王子魚市場にきれいなチダイがある。これを2匹だけ買う。惣菜部を除き、魚屋の「みよし」さんと立ち話。近海部のダイチャンにサンマの売れ行きの話。
「どうして何でしょうね。うまいと思うんすが売れないんですよ。これで高い方ですからね。安いと千円ちょっとで一箱ってのもある」

『源七』では若だんなが「あんきも(鮟鱇の肝を蒸したもの)」を作っている。ちょうどアンキモ(キアンコウの肝臓)から毛細血管と汚れをとっているところ。

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 あんちゃんが開いているのが「なかずみ(コノシロの中型)」。そこに辛辣な性格の善さん(西八王子の『魚善』)がいて「こはだ」と「このしろ」どちらがうまいか? という立ち話。あんちゃんは圧倒的に寒い時期の「なかずみ」。

 八王子総合卸売センター『高野水産』に脂ののったヤマトカマスがほとんど捨て値で売られている。思わず買いたくなるが我慢。

 八王子綜合卸売協同組合『マル幸』には千葉県内房産の見事なホウボウがなんとキロあたり800円とある。思わず一本、224円で購入。クマゴロウの奥さんにも世話になるな。
『清水保商店』にはうまそうな柿。これがあまりに旨そうなので二個ポケットに入れてくる。『清水保商店』は惣菜塩干の店であって果物屋ではない。
『十一屋ジャパン』には山形の「青菜(せいさい)漬け』があった。これが試食するといい味だ。思わず130グラム買い込む。漬物は最小限買い込むのがいいのだ。

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『やまぎし』でボラの卵巣、入相を見て、八王子総合卸売センターに戻る。

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 八王子総合卸売センター『総市』のミノルちゃんのところに珍しく「真ぞい(岩手県では「すい」。タヌキメバル)があって一匹買い込む。

 そのまま『市場寿司 たか』へここでホウボウの刺身を撮影。これが感動的にうまい。これから春までホウボウの旨い時期は続くのだ。たかさんといろんな魚を季節ごとに食べてみる。これが大切なのだ。たかさんとバカな話をしていると、
「昨日埼玉からカップルで来たお客がいて。『なにか追加したいんですけど』と言われて、〈とろたく〉握ってやったの。そうしたらその娘さんの方がうまいうまいって追加してきてさ。やっぱり〈とろたく〉はいいよな」

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 というので「いいよな」と返すと、ボクにも〈とろたく〉を1本握ってくれる。ついでに昨日の残りのマイワシだ。
 この〈とろたく〉のうまさをいかに表現すべきか? 文字には表せません。一見ミスマッチに思える。ミナミマグロの脂の部分と、やや甘酸っぱいたくわんがどうしてこんなにうまいんだろ。ついでに握ったとおぼしきマイワシも「凄いんですから」という感動をもたらす。

 帰宅は9時半過ぎ。大急ぎでタヌキメバルとチダイの撮影。
 少しパソコンに向かい、きんのり丸さんから送っていただいた新のりを天ぷらにし、また「海苔の佃煮」にする。昨日は生のまま食ってみたが、やはり新のりは天ぷらがいい。もちろんお昼は「海苔の佃煮」でご飯。

 昼過ぎに外出。お茶の水に出る。電車で熟睡したいのだが読み直さなければならない本がたまっている。
 お茶の水には7時過ぎまで。帰りは東京駅まで出て始発電車で熟睡して豊田につく。
 帰宅は8時半過ぎ。これから大量の画像整理、よしなしごと、メモなどをとる。いったい何時になったら布団にもぐり込めるのだろう?

きんのり丸さんの新のりに関しては
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八王子魚市場の市場に関しては
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市場寿司 たか
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 ケムシカジカの定番的な料理が唐揚げである。市場では唐揚げ用に開いた状態のも見受ける。こんなもの作り方を記すまでもないだろう。

 我が家では出来る限り魚貝類を子供達に食べさせたい。そしてその点でもっとも優れた魚貝料理は煮つけ、ブイヤベースなどだと思っている。すなわち骨ごち煮るというもの。こうするとほとんど無駄が出ない。
 でも若い世代や子供がもっとも苦手とするのもこの手の骨ごと煮る料理なのだ。
 また最近の面白い現象は刺身が売れているということ。これが一見、魚離れのなかで救いのように思っている人たちがいるが大きな間違いだ。刺身は非常に無駄が多く。家庭ゴミが総て消却されてしまうという現実からも「刺身は自然に優しくない」のだということも知っておくべきだ。ちなみに千葉県小見川ではほんの昭和30年代くらいまで刺身の無駄の多さに「殿さんの食い物」と呼ばれていた。

 とすると唐揚げは「煮る」「たく」という料理法に匹敵するほど無駄がない。それこそ内臓を除けば前部ひっくるめて「可食部分」と化する。しかも子供達にも大受け! の優れた料理だ。

 作り方は不必要だと思ったが念のために記しておく。
 まずは魚を適当にばらす。ケムシカジカは皮がザラザラしている、ちょっとゼラチン質でもあるので分けておく。上げる時間の違う骨のある部分と身の部分を完全に分けておくのもコツだ。
 ここにコーンスターチもしくは片栗粉、もしくは小麦粉をまぶしておく。これは好みの問題。
 そのまま時間を置く。粉をつけて少し置くと身の方からじんわりと水分が出てきて表面がしっとりとしてくる。こうすると油が悪くならない。表面が湿っているとからっと揚がらないと思っている人がいるが大間違いだ。からっと揚がらない原因は温度管理にある。

 じっくり時間をかけて1度あげ、いちど引き上げて唐揚げの表面の油が落ち着いてから2度揚げする。
 こうすると味のあるケムシカジカの面の骨まで食い尽くせる。

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 味のあるヤツだな、と思うのか? この不細工が、と思うのか? 大きく分かれる魚がいて、その最たるものがケムシカジカなんである。例えば殿山泰二とキムタク(名前を忘れた。漢字が浮かばない。ボクにとっては無価値な存在なので改めて調べない)とどっちが好きか? と聞かれると、ボクは殿山タイちゃんに手を上げるからケムシカジカが好きなのよ、なんだな。と訳のわからん枕を飛ばしてしまう。
「父ちゃん、これはゴジラだ」という我が太郎の意見もあるから、図鑑本体を見ないで予めケムシカジカの面相を想像願えると「面白いぜ」。

 さてやや北方系のカサゴ目のケムシカジカを北海道では「とうべつかじか」、東北では「おこぜ」とか「さったろう」とか無数の呼び名があるらしい。それほど存在感があるという証拠だ。でも、はっきりいって港では雑魚に近い扱いをされている。
 福島県原釜の美人のオバチャンが「こんなもの銭にならないだー」と言ってボクに投げて寄こしたこともある。「じゃあ、これまずいんですか?」と聞くと「うめーに決まってるだべ」という答えが返ってくる。足元に転がったのが見事なケムシカジカであって、ありがたく押し頂いてきたこともあったなー。

 さて福島などではケムシカジカをみそ汁に入れて、漁師さんの賄いなんかにする。港のおっかさんも「今日も肝の入ったみそ汁だー。うめーぞ」と「毎朝食べてっから、おら、美人だべ」とも言ってくれる。ちなみに本当に福島県原釜は美人揃いなのだ、これは嘘ではない。

 そのケムシカジカの産卵期は晩秋から冬にかけて。この時期たっぷり卵を抱えたメスが関東の市場に並ぶ。「待ってました」とばかりに買い込んで、醤油漬けを作る。

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 まずは卵巣の膜に切れ込みを入れて半分に割く、これをやや「アチチチチ」っというお湯に放り込んでほぐし、バラバラになった卵をよく洗う。

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卵はお湯の中でほぐす

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 これを生醤油、もしくは少々味醂を入れた地に漬け込むのだ。

 ご飯のおかずならやや甘め、酒の肴なら生醤油だけでもいい。これが卵粒の食感がよくて、潰すと旨味と甘味がある。カサゴ目の卵巣ではうまい方、上々の部類だな。

 ボクのお好みの食べ方は、この時期に出回る赤いサラダ大根をスライスして、醤油漬けの卵をのっけて食べる。意外に酒の進まないものなのは食うのに一手間というか、スライスした大根から卵粒がこぼれないように「オットット」と気を遣うせいかも知れない。

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 八王子魚市場マグロ部が最近面白いのだ。本来一般客を相手にしなかった魚市場であるがヒゲのムッシュが移動してきてからなんだか気さくに対応してくれるようになった。
 しかも料理好きのムッシュはマグロの冊作りにもこまめに応じてくれる。
 このところ入荷があるのが「ばち(メバチマグロ)」であり、冷凍物ながら上物である。これが中トロ部分で一冊1500円くらいでおかれている。

 このような上物は忙しい時期に限ってあるもので、分刻みの朝の時間、後ろ髪をひかれる思いで八王子魚市場を後にしている。

八王子魚市場
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 このところ東北からアオリイカがまとまって入荷している。1匹300グラムほどの小振りのもの。これを八王子総合卸売センター『総市』でもみつけて、ほとんど捨て値の700円(キロあたり)だ。
 さて、アオリイカに3種類あることはかなり前から判明していて、今回まとまって入荷してきているのは、いちばん北方域、例えば北海道南部とか三陸であがる「あかいか型」と言われるものだ。
 見てすぐにアオリイカだと思えるのは「しろいか型」であって、このややくすんだ赤みのあるものは一見、それらしく思えない。今回のものも荷の作りから明らかに福島県など三陸産なのであり、色合いのためと、「アオリは夏のもの」という思い込みから値段が劇的に安いようなのだ。

 これを6ぱいほど買って『総市 水産部 部長』のミノルちゃんがオマケしてくれて代金750円なり。その場で慌ただしく開く。このときいかにイカをきれいに掃除するかが最大の課題。

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 持ち帰ったらゲソはいきなり湯引きしておでんに放り込む。そして肝心の胴体は塩と酒で味つけ。ビニール袋でひと晩寝かす。これを晴れ上がった風の通るベランダに干す。半日ほども干して、やや乾き加減にして出来上がり。

 後は焼くだけだから我が家の太郎に申しつける。酒をなぜ入れたかは焼いてみるとわかる。塩だけよりも焼き色と風味がいいのだ。

 これを肴にいっぱいと言いたいところだが、酒飲みのボクよりも子供達が焼き上がりを待っている。それもマヨネーズを持って。
 さすがにアオリイカは肉厚だし、身に旨味がたっぷりある。これほどうまい干物はあるまいよ、なんて考えていると目の前の皿が空っぽになる。

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 太郎が「今度は父ちゃん焼いてよ」と命令するので、2はい、3ばいと焼き役に回っていたらすっかりアオリの干物は無くなってしまっていた。残念だな。
 仕方なくおでんの鍋を覗くと、こちらもすっかり空っぽである。家人曰く、「げそからいい出汁が出ていて、おいしかった」そうである。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、アオリイカへ
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八王子市場案内
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 マガキがどんどん旨くなってきている。この時期、これが楽しみでならない。
 市場通いで毎日のように買っては楽しみ、そこから冬到来を思ったりする。

 生がいちばん好きなのだけど、ときどき殻付きのまま蒸してしまう。これは仲卸などでは電子レンジで数十秒チンという調理法もあって、これもいいのだけど自宅では小さめのふたつきの鍋で身が熱でふわっと膨らむ程度に蒸し上げる。このマガキの身がプクっと膨らむのは水蒸気のお陰らしい。

 この高熱で圧縮されたマガキの旨味が、そろそろ年末に近づきつつある時期の疲れを取り去ってくれる。すなわち癒しの味わいというヤツだな。

 今回のものは岩手県産のものを八王子綜合卸売協同組合『やまぎし』でばら売りしていたもの。1個90円也で3個だけ買って酒の肴に蒸し上げる。八王子綜合卸売協同組合『やまぎし』の隣が『コリアンフーズかや』、店主の成田山にもらった韓国風酢みそをはじめて使ってみたら、これもなかなかうまいのだ。

 酒はマッコリルがいいかな? それとも芋焼酎のお湯割り。どちらにしても日本酒よりも合うように思える。

八王子の市場に関しては
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 ホッケが産卵期を迎えている。産卵期に味の極端に落ちるものと、産卵する直前まで味がいいものとがある。それではアイナメ科のホッケはどうなのかというと産卵期で大きな卵巣を抱えていても味はいいのだ。

 ある日、八王子総合卸売センター『ケン水産』でちゃんと締めの傷跡のついたホッケを見つけ、その1本を買い求めてきた。残念ながら産地は不明。
 これが大きな卵巣を抱えている。この卵巣はカサゴ目のなかではうまくない部類である。
 三枚に卸して、少しだけ刺身で食べる。ホッケを生で食べるのはアニサキスの仲間でテラノーバというのが寄生しているので危険である。刺身はまことに美味なので、残念だ。安全に食べたいという人はふた晩ほど冷凍して食べて頂きたい。

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 そして今回の本命「ホッケのちゃんちゃん焼き」を作る。「ちゃんちゃん焼き」は北海道の郷土料理。主にサケを使って作る。材料はサケ、玉ねぎ、ニンジン、キャベツなどに味噌とバターたっぷり。
 たぶんその歴史はそんなに古いものではない。味噌とたっぷりのバターを使うところから昭和、しかも戦後、漁師さんたちの賄い料理に始まるのではないかと想像している。

 サケではなくホッケで作るというのは実は雑誌に載っていたもので、我が家での「ホッケちゃんちゃん焼き」の歴史は15年(我が家の子供の年齢)ほどかな?

 まずはテフロンフライパンに油をたっぷり入れて、熱してきたら三枚に卸して腹骨、血合い骨を取り去ったホッケを皮側から入れる。ここで皮を香ばしく焼き上げる。適度に焼き上がったら、油を捨てて、ここにバター、野菜、茹でたジャガイモを入れて少し焼き、最後に甘味噌(我が家では白味噌と酒と砂糖)を水(牛乳でもいい。子供はこちらが好き)でややゆるく溶いたものを流し入れる。

 甘味噌とバターが混ざり合って沸々とわき返り、回りの味噌が焦げてきたら食べ頃。この時間ほんの10分とかからない。この甘味噌、バターに野菜、ほぐしたホッケの身をない交ぜにして食べる。これがいかにも簡単に出来て、しかもご飯にも酒の肴にもなる。
 酒の肴とするときにはゆっくりと食べたい。そんなときジャガイモが入っていると子供達の目はそちらに向かう。酒飲みのお父さんの工夫なんですなジャガイモという存在は。ちなみに「ちゃんちゃん焼き」にはいったジャガイモは非常にうまい。

 夕食などで食べるときには、飛騨コンロなどを用意して焦がしながら食べるのもいい。今回のものは子供達はカレーだったので大人向けのもの。当然酒に合わない牛乳、目障りなジャガイモは入っていない。
 これは日本酒ではなく酎ハイボールがいい。

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 さて市場で意外に目立つのもに「白貝」というのがある。まっしろの漆喰のような貝殻の二枚貝である。主に北海道からの入荷が多く、「北帰貝(ウバガイ)漁」に混ざってとれる。
 これを一種類だと思っている人が多い。

 よく見てみると形から2つに分かれることはすぐにわかってもらえるだろう。ところがよくよく見ると3種類なのである。まずはむしろ三角形というか方形に近いのがサラガイ。楕円形でサラガイよりも大きいのがアラスジサラガイとベニザラガイである。
 この楕円形2種の見分け方が難しい。北海道白糠郡白老町の「宮森水産」から八王子綜合卸売協同組合『マル幸』に入荷してきていたのはベニザラガイ。表面に同心円的にある筋(成長肋)が均質であり、貝殻を開けると裏側がマゼンタ一色に近い。対するにアラスジサラガイは表面の筋が均質ではなく太い細いがあり、開けると赤藍色である。

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 とにかく「白貝」では楕円形が大きくなり、方形に近いものは小振りだ。そのため「宮森水産」でも「サラガイ=小」、「アラスジサラガイ・ベニザラガイ=大」と分けているようだ。

 ボクとしては「大きいことはいいことだ」と思っているので楕円を歓迎している。
 これは白貝全般に言えることだが、酒蒸しにしても刺身にしてもクセのない素直な貝の甘味を楽しめる、優等生じみたところがある。だから寿司職人からすると「青柳と比べると落ちるね」となる。微かな渋みとアクのあるバカガイと比べると味わいというか寿司飯にのせて曲がないということだ。
 でもでも優等生の味わいは、それはそれなりに素直に楽しむべきだろう。値段の安さからしても我が家の食卓への登場回数の多い貝となっている。
 刺身、酒蒸し(ワイン蒸し)、そしてもっともよく作るのがムニエルである。

 このムニエルは簡単至極な料理だ。
 まずは貝殻の片方を外す。砂を噛んでいたら身を完全に外して砂を洗い落とす。大丈夫だったら取り去らない方の貝殻に着いた貝柱を3分の2ほど切り離して、塩コショウ。

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今回は砂を噛んでいなかったので、着いている貝柱を三分の一ほど切り離しておく。こうすると食べやすい

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 小麦粉にとんとんとたたきつけて、あとは強火で(グラッセ)ソテーし。表面に焦げ目がついたら、貝を取りだして白ワインとバターでデグラッセ。
 これをムニエルのソースにする。クールブイヨンや野菜のコンカッセがあるといいのだけれど、まあ家庭料理なので簡単に。ガルニチュールもほとんどなしと言うことですな。

 私、ワインは素直にシャブリが好き。当然、こんな料理には冷え冷えのシャブリが欲しいな!

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サラガイ
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ベニザラガイ
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アラスジサラガイ
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 中国で有名な上海ガニは標準和名をシナモクズガニ。これをまるで遠い存在のように輸入し、高額な値段を支払って中華料理店で食べている。まあなんとも愚かなことよ! と四国の山育ちの身には思えてならなない。秋になると「そろそろ上海ガニを食わないとダメだね」なんてあせっている仕事仲間が哀れに思える。実際に中華料理店で紹興酒で蒸し上がった上海ガニが値段ほどの価値があるのだろうか?
 
 ないと思うんだな。なぜならこの国の河川にも、しかもたぶん中国よりもきれいな河川にもシナモクズガニとほとんど変わらないカニが生きている。そして秋になると肝心金目の内子を持って川を下り始めるのだから。これを川漁師さんたちが「ど」という道具で生け捕りにする。

 我が故郷徳島県では吉野川、静岡県では狩野川など、日本各地でモクズガニが取り始めたという声が聞こえ始めるのも秋深しを思わせる。なかでも高知県はうまいモクズガニがとれるので有名である。
「つがにがとれ出しましたよ」
 10月になったばかりのときに浦戸湾の漁師・永野廣さんから電話があった。これは「モクズガニがとれ始めた」のではなく「内子が入ったメスがとれるようになりました」という連絡である。

「つがに」「づがに」「川蟹(かわがに)」「髭蟹(ひげがに)」「もくぞうがに」「もくがに」なんて各地での呼び名は数知れず。それほど人々に愛されているということだ。そのモクズガニが年々減少してきている。それは国土交通省や地方自治体の行っている無駄な河川改修による。面白いのはあれほど自然の川の姿で全国的な観光地となった四万十川ですらどうどうと景観破壊(河川改修)が続けられているのだからこの国のあり方がいかに愚かしいかわかる。

 それでもさすがに高知県は素晴らしい河川に恵まれている。
「今(うまいの)は物部川ですかね。それから仁淀川、鏡川となりますね」
 そのなかでももっとも「味がいいでしょう」という物部川の「つがに」が永野廣さんから送られてきた。

「つがに」が送られてきたら、まず流水で洗う。生きて元気に歩き回るのでくれぐれも逃がさないように。これを蒸すならハサミの真下、脇の下に金ぐしを刺して締める。茹でるなら水からカニと塩を入れて火をつける。このとき盛んにカニが逃げようとするので蓋が必要である。

 後は茹でるだけだ。このとき完全に火を通すこと。我が家では15分ほども茹でたはずだ。なぜならモクズガニは扁形動物のウェステルマン肺吸虫の宿主であるからだ。これは肺に入ると結核のような、また脳にはいると脳腫瘍のような症状を引き起こす。このウェステルマン肺吸虫の危険は上海ガニ(シナモクズガニ)にも存在するということを忘れてはならない。

 さて我が家では子供の頃のやり方である、水から入れて塩ゆでにする。熱湯に放り込むと足がとれてしまう。

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 茹で上がったら熱い内に身を半割にしてミソ、内子ごとかぶりつく。このミソ・内子だけではなく身の方も非常に美味であることはすぐにわかるはずだ。山間部である我が故郷では大振りのオスをよく食べたものだ。この身の旨さは、カニの風味を楽しむもので、そこに甘味がふわりと浮き上がってくる。このカニの風味こそ、タラバガニにもケガニにもズワイガニにもないモクズガニ独特のものだ。

 浦戸湾の女川漁師・永野昌枝さんと、廣さん夫婦に改めて感謝!

土佐の廣丸へ
http://www.zukan-bouz.com/zkan/hiromaru/index.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑に取り上げたうまいもんは「市場魚貝類図鑑・商店街」へ
http://www.zukan-bouz.com/zkan/zkan/shoutengai.html

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、モクズガニへ
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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ミナミヒメジのページを作成
http://www.zukan-bouz.com/suzuki2/himeji/minamihimeji.html

アジ科を大幅に改訂中
マブタシマアジのページを作成
http://www.zukan-bouz.com/aji/hiraaji/mabutasimaaji.html
ウマヅラアジのページを作成
http://www.zukan-bouz.com/aji/hiraaji/umaduraaji.html
テンジクアジのページを作成
http://www.zukan-bouz.com/aji/hiraaji/tenjikuaji.html

アジ科の改訂には鹿児島県の若潮さんに協力を仰いでいます。感謝いたします。
若潮さんの「お魚三昧生活」へ
http://geocities.yahoo.co.jp/gl/komendago

掲載種 1960


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 さて「えがに」について。これは高知県でのトゲノコギリガザミとアミメノコギリガザミの呼び名である。「えがに」は「江蟹」の意味であると思う。すなわち入江に入ってきて、ときに川をのぼるカニということだ。
 トゲノコギリガザミとアミメノコギリガザミはガザミ科であり、熱帯から温帯に広く棲息する。ボクが見た限りでは太平洋側では東京湾が北限。たぶん漁の対象となる北限は浜名湖だろう。
 この仲間は関東では「わたりがに」と呼ばれる。でも「わたりがに」を代表するのはガザミやタイワンガザミ、ときにジャノメガザミなどで大きくなっても300グラム、甲長10センチ前後にしかならない。これと比べると「えがに」は怪物としかいいようがない。その重さ2キロ以上、甲長20センチ近いものもとれるとか。これを見ただけで、その凶暴なハサミとともに恐怖感を抱かざる終えないだろう。
 この「えがに」は分類学的にはガザミ科ノコギリガザミ属になる。高知市浦戸湾ではもう一種、アカテノコギリガザミがとれる。我が国であがるノコギリガザミ属は3種なので、高知市では全種があがり、味わえると言うことになる。

 その外観が怪物級なら味わいも度肝を抜いている。粘質感のある絹のような繊維質の身は甘く、カニの旨さが濃い。それ以上に濃いのが晩秋から冬にかけての内子だろう。この内子を鑑みると「えがに」の旬はこれからだ。
 この微かに渋みを感じさせる濃厚な旨味のえんじ色した物体は、口に入れると爆発するのだ。旨味が口中を満たしきってしまう。だから、食べるときには内子とカニの身だけにしたい。他の合いの手になる食い物が煩わしい存在になる。だからひょっとしたら酒すらも存在価値はないのかも知れない。

 この「えがに」を今期も味わえて幸せだなと感じる。また浦戸湾でうら若き女性にして、この怪物級のカニをとる永野昌枝さんに感謝する。また送ってくださった永野廣さんにも感謝感謝! 土佐の廣丸(永野夫婦の店)では通販も行っているので味わってみて欲しい。ときにノコギリガザミ三種合い混ぜというのこ可能だ。

 さて「えがに」が届いたら、まずは締める(殺す)か冷凍で失神状態にする。締めるときには、まだ私には会得できていないのだが、ハサミの真下(脇の下)に金ぐしを差し込むと死ぬ。他には冷凍庫で30分ほどおくと仮死状態、もしくは死ぬ。
 これを蒸し器で20分から30分蒸すのだ。

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ハサミの下から金ぐしをなんどか差し込むと締めることが出来る。ただしなかなかコツがいる

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