食べる魚類学: 2009年2月アーカイブ

 島根県大田市(おお「だ」し)で行われている小底(小型底曳網)の魚が素晴らしい。
 日戻り船だから鮮度抜群なのは当たり前なのだけど、その上、この海域の魚の味が抜群にいいのだ。
 さて、この和江漁港でたっぷりとれるものにニギスがある。
 この干物に旨さたるや最上級のものだ。
 ビールを片手にニギスの丸干しなんて「もうたまりません」。
 でも小型のニギスをどうするか? が目下の課題なのだ。
 その大小混じりのニギスはすり身にするのがいちばんだと思って、和江にたずねてみたら「ウチで作っていますよ」という。
 島根というところ、なんでもすり身にしてしまうらしく、あの「のどくろ(アカムツ)」だって小さいものなど即すり身にしてしまって魚屋の店頭に並ぶ。
 とするとニギスのすり身がないわけがない。

 さて島根県石見地方で作られるすり身がいかにうまいかという話なのだけど、とくにニギスのすり身が優れているのは小骨などが軟らかくそのままミンチにできること。
 小骨などが入っていると言うことはカルシウム分がたっぷり入っているわけで、その上、必須アミノ酸、鉄分などもたっぷりだ。
 これで味がよければ言うことなし。
 ということで和江の『海の特産品加工センター』にすり身をゆずっていただいた。

 これを団子状にする。
 今回はただのすり身だが、本来和江で売られているものは予め味つけしている。
 これも抜群に味がいいと書き忘れないように書いておこう。
 我が家では酒少々、塩、全卵を合わせて団子にする。
 団子はやわらかくプルンプルンになった。

 まずはおでんに入れてみる。
 熱を通すと、またふわっと膨らみながら、汁には旨味を出しながら、けっして団子自体の旨味も失わないようだ。

oden090202.jpg
●クリックすると拡大

 このプルンがとてもうまい。
 甘みを加えているわけでもないのに、甘いのは脂があるのだろう。

 島根県大田(おおだ)ならではの「へか焼き」という鍋にしてもみた。
 「へか焼き」は地魚を野菜、コンニャク、豆腐、海藻などと醤油味の汁で作る鍋物。
 大田の「へか焼き」では基本的に単に醤油味なのだけど、我が家ではそこに酒を加えてみた。
 今回の魚はマガレイ。
 大田の小底であがる魚ではカナガシラ、「れんこ(キダイ)」、「めいぼ(ウマズラハギ)」、そしてなくてはならないのがカレイ類。
 とくに「えてがれい(ソウハチガレイ)」が入ると抜群に味が良くなる。

hekayaki090202.jpg
●クリックすると拡大
「へか」とは農具の「すき」のこと。一般的な「魚すき」のことだと思えばいい。ただ中に入る材料や味つけにその地ならではの特色がある

 このニギス団子入りの「へか焼き」がビックリするほどにうまい。
 適当に汁ごとすくいながら、食べるのだけど、最後まで野菜を足し足し食べるのがコツである。

 毎日のように食べて、ぜんぜん飽きの来ないニギス団子って素晴らしいな。
 ボクは昔からイワシのつみれ団子が好きなのだけど、ニギスはそれに負けず劣らずだ。
 現代人のカルシウム不足が叫ばれている、「ニギスの団子食べなさいよ」と皆に勧める今日この頃なのだ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ニギスへ
http://www.zukan-bouz.com/fish/nigisu/nigisu.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

megoti.jpg
●クリックすると拡大

「これ産地わからないの」
「ええと、後で調べとくよ」
 仲卸に聞いたのだが、これっきりでお仕舞い。
 買い求めたネズミゴチの産地は結局わからなかった。
 値段はキロ当たり800円だから安い!

 このネズミゴチの価値というか食用魚としての位置が難しい。
 一般家庭ではまず買い求めないものだろう。
 買い手は100パーセント飲食店の方達。
 とくに天ぷら屋にはなくてはならない。
 ボク個人の意見だが天ぷら屋にキス(シロギス)がないのはゆるせる。
 でも「めごち(ネズミゴチ)」がないのはゆるせません。
 値段は鮮度が良くても多寡が知れている。
 ようするに天ぷら屋では手間を食べていることになる。

 さて、久しぶりの「めごちの天ぷら」だが、我が家のこども達が大好き。
 たくさん揚げたのにボクは2本しか食べられなかった。
 いつも不思議に思うのだけどネズミゴチには独特の風味がある。
 香りと言ってもいいだろう。
 ざくっとした白身に微かに鼻に抜ける香り。
 どうやらこの独特の風味の良さがこども達にもわかるらしい。

2009年2月16日
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ネズミゴチへ
http://www.zukan-bouz.com/suzuki/nezuppo/nezupo.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

kamaiwawaaisa0801.jpg
●クリックすると拡大

 ときどきもの凄く大きくて立派なイワシの丸干しを見つける。
 よくよく見るとアメリカ産であることが多い。
 煮つけなどのパック、総菜類でも「産地アメリカ」は普通となっている。
 ある日テレビを見ていたら魚にこだわっていますという割烹料理店のイワシの煮たものが、実はアメリカ産だったなんてお笑い草もあるのだ。
 どこかこっそりアメリカ産マイワシというものがカリフォルニアイワシなんであるな。

 市場で丸のままみる機会が多くなるのが、この2月、3月、4月あたりだろう。
 国産のマイワシの味が落ちるし、産卵でとれなくなる。
 そしてやっぱり2月6日に発見する。
 ちゃんと産地表示したれっきとしたSardinops sagax、カリフォルニアイワシ。
 千葉県銚子市の『イリヤマサ加瀬商店』が冷凍輸入したものを解凍したものだが、値段はけっして激安ではない。
 ほどほどにキロ当たり500円なり。

 ボクは久しぶりに買い求めて、フライにする。
 これが朝ご飯の一品に。
 遅く起きてきた、太郎にはサンドイッチにして無理矢理食わせる。

 改めてカリフォルニアイワシうまいな! と思う。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、カリフォルニアイワシへ
http://www.zukan-bouz.com/nisin/kmaiwasi.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

kasagonituke090101.jpg
●クリックすると拡大

 我が家の煮つけには3種類ある。
 一、汁を少なく煮あげるもの。
 これは主に濃い口醤油を使い、砂糖、酒、味醂などこってりしたもの。
 汁はやや多目、あっさり味のもの。
 二、鮮度のいい魚を、煮たった汁のなかで火を通す。
 煮汁は酒(ときに味醂)と醤油のみでやや多目。
 深めの鍋で、身に煮汁をかけながら、アクをすくいながら短時間で作る。

 三、つゆたっぷりで長時間かけて煮るもの。
 煮物というよりも汁、もしくはスープだ。
 これは別に和風にしなくてもいい。
 白ワイン、塩、水、ブーケガルニ、ニンニクなどで作ると、これもまたなんとも美味である。

 今回のカサゴ2種は、沼津前浜のもの。
 活けで見つけて、佐政水産の青木修一さんに競り落としてもらった。
 一尾100グラム前後の小振りなものだ。

 刺身にしてもいいけど、ちょっともったいない。
 むしろ汁にして、カサゴのうま味を余さず堪能すべしと思う。

 カサゴは適当にぶつ切りにし、湯通し、冷水に落として、鱗や汚れをとる。
 よく水分を拭き取る。
 調味料を合わせる。
 酒、塩、薄口醤油、水を合わせて、沸騰させる。
 そこにカサゴのぶつ切りを加えて、ことこと煮ていくのだ。
 アクをていねいに取りながら20分前後も煮ていく。
 煮汁のなかでカサゴをほぐしながら、汁ごと食べる料理なので味つけは控えめに。

 大振りの取り鉢などに、汁ごとカサゴをすくい取り、骨を外しながら食べていく。
 ネギ、唐辛子などの香辛料は好みのまま。

 汁でありながら、酒のアテにもなる。
 これこそ家庭で作りたいという料理である。
  
2009年1月18日
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、サツマカサゴへ
http://www.zukan-bouz.com/kasago/fusakasago/satumakasago.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、イズカサゴへ
http://www.zukan-bouz.com/kasago/fusakasago/izukasago.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

月別 アーカイブ

このアーカイブについて

このページには、2009年2月以降に書かれたブログ記事のうち食べる魚類学カテゴリに属しているものが含まれています。

前のアーカイブは食べる魚類学: 2009年1月です。

次のアーカイブは食べる魚類学: 2009年3月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。