この頃テレビなどを見ていて笑えるのは、グルメ番組などでの間違い、もしくは料理店、観光旅館の嘘。
例を挙げると、昔ドラマで活躍していた女優が登場。泊まるのは宮城県の高級そうな旅館。「うちは地物しか使いません」なんて女将が説明していて、皿に載っているのがカナダからのスポッテッドプラウン。これを宮城県産の「ぼたんえび」なんて言っていけしゃーしゃーと威張っている。まあ旅館の女将なんて魚貝類に詳しいとは必ずしも言えないだろうから、無知から来る事例だろうな。
そしてある日の夕方、この時間帯はグルメ情報がものすごく多い。アナウンサーが暖簾をくぐったのが都内のいかにもうまそうな、割烹料理店。誠実そうな板前さんが、「うちは近海ものしか使いません」といって出しているのがカリフォルニア産のマイワシ。
そしてそしてボクが新宿を歩いていて見つけたのが、高級なデパ地下のお総菜売り場。サバのみそ煮をよく見ると、これが大西洋で上がるサバであり、その店は「“冷凍物、輸入物”は使いませんと」は書いていないが、一切れ500円もするのに「これはないだろう」と憤慨する。
ことほどさように世間では嘘がはびこっている。何しろ、総ての加工品には材料表示は義務づけていない。しかも義務づけしていても材料に占める量が少ないと、産地も原材料もいい加減でいいと法律で決まっているんだから、政府は加工食品の世界で「偽装や嘘をやっていいよ」と言っているのに等しい。
さて、そのごまかし素材の代表格である、北大西洋産のサバであるが、ボクはうまい魚であると思う。偽物として使われるのは惜しい。むしろ堂々と「ノルウェー産」と表示して「だから脂がのっているんだよ」と“売り”にして欲しいくらいだ。
八王子総合卸売センター『フレッシュフーズ福泉』で買い求めたのがノルウェー産のサバ2本。これを自然解凍して筒切りにする。この切り口が真っ白であるのは、身全体に脂がある証拠。
これを湯引きして、田舎味噌、白みそで煮あげていく。
サバのみそ煮のコツは湯引きしたサバをヒタヒタの砂糖、酒を加えた煮汁でゆっくり長時間火を通す。身が柔らかくなったら、合わせみそを加えて、ここからもとろ火で、味噌がクリーム状になるまで煮るのだ。
この北大西洋の脂がのったサバのみそ煮が、すばらしい惣菜となり、2日、3日と食卓に置かれる。3日目には最後の一切れが電子レンジで温められて、食べきりとなるのが理想だ。
昨今、食堂などで出るサバのみそ煮は、みなこの北大西洋のサバである。きっとほとんど総ての人が、ご飯とともに「うまいうまい」と食べているだろう。ボクもその一人。だたしボクが特別なのは、そのみそ煮のサバの産地がわかることくらいだ。
蛇足となりそうだがあえて書くと、そろそろ魚貝類(愚かにも水を含めて食料)を輸入してまで食べる時代は終わるのではないか、と思っている。原油高、中国・ソ連・インドなどの経済的な発展が進む、アフリカでの飢餓を考えると、とても海外から水産物を輸入などしていられないだろう。また国内での養殖というのも無理かもしれない。なぜならばその餌は国産だけではまかなえないからだ。
こうなってくると原材料の表示は非常に大切になってくる。自然保護のために養殖魚は食べたくない、と思っても、例えばコンビニのおむすびにギンザケが使われていても、「チリ産養殖」の文字がどこにもない。また「焼きサバずし」というのがあって、ここにあるのも「原材料/さば」といういい加減なもの。サバの文様は明らかにノルウェー産であるといっているのに。
ボクが考えるに政府は出来るだけ早く、食品表示のもっと厳しい義務づけを進めるべきだ。現状では自然保護・健康などに注意している人にまったく必要な情報を伝えていない。また国民の安全な食生活を送る権利を確保していない。がんばって欲しいな、厚生労働省もしくは農林水産省の人たちよ。
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、タイセイヨウサバへ
http://www.zukan-bouz.com/saba/saba/nlsaba.html
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