食べる魚類学: 2008年12月アーカイブ

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 年末年始に何も買わないのが我が家流。
 薬師神かまぼこさん、沼津の山丁菊地利雄さん、宮崎のミツイ水産さんなど、頂きもの多々であることもあるが、やはりハレの食い物はそんなにうまいもんじゃない、というのがわかりすぎるくらいにわかっているからだ。
 それでも必ず作るものがあって、それが数の子。
 お節料理の中でももっとも簡単だし、我が家に関する限り子供も大好きである。
 塩漬けの数の子と、干し数の子があるが、塩漬けの方が一般的。
 干し数の子は高いし、非常に手に入れるのが難しい。

 我が家の場合、キロ当たり3000円前後のこわれた塩数の子を買ってくる。
 毎年500グラム見当で買い求め、二回にわけてつくる。

 作り方はいたって簡単。
 水の中につけて塩抜きをする。
 何回か水を替えて半日から一日。
 水の温度などによって塩抜き時間は変わってくるようだ。

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 食べてみて、ほとんど塩分を感じなくなったら、薄皮をていねいにていねいにむきとる。
 塩抜きが中途半端だと、苦みが強く残る。
 水分を充分にとり、ザルなどに上げておく。

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 漬け汁を用意する。
 昆布と鰹でとっただしに、味醂、酒、薄口醤油、塩を合わせて一煮立ち。
 酒と味醂はあらかじめ煮きっておく(アルコールを飛ばす)といい。
 漬け汁にいかに醸造香、アルコールを感じさせないかがコツだともいえそう。

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 ここに塩出しした数の子を漬け込む。
 ひと晩から一日漬け込むと完成する。

 数の子のうまさは、明らかに渋みと一体化したものだ。
 渋みが甘味を生み出し、またうまさというか濃くを感じさせる。
 卵粒のプツプツしてホコホコした感じもうまさのひとつだ。

 数の子をつくると、食卓にあってついつい箸が伸びる。
 だから500グラムではもの足りなかったな、なんて感じる。
 おいしいものはもの足りないくらいがちょうどいい、そう思うのだけどね。

薬師神かまぼこ
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ミツイ水産
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 年末の市場にはあまりめぼしい鮮魚がない。
 あえていえばマグロ類がおすすめなんだけど高い。
 庶民としては不況なんだから、かしこくうまいものを食べたい、と思う。
 それなら出来るだけ安いマグロ(メバチマグロ、キハダマグロ、ビンチョウマグロ)を買おう!
 またお金持ちは、どうせなら晴れの日なんだから100グラム2000円以上の本鮪(クロマグロ)を買ってもらいたい。
 値段も上なら、味も上々、そして人生は最高潮、絶好調なんて、うらやましい限りだ。
 そんな輝ける黄金の日々はボクには関係なし。
 人生色々ですな。

 我が家では安いマグロの切り落とし、しかも冷凍物を買っておく。
 食べたくなったら塩水にくぐらせて解凍。
 もし万が一ドリップが出てしまったらよく水分を切っておこう。
 解凍に失敗したら、水分をできりだけ取り、いきなり生醤油と煮きり味醂の中に漬け込んでしまう。
 所謂漬けというやつである。

 後に用意するのはマグロのぶつ、もしくは漬け、ヤマトイモ(粘りの強いもの)、正月なので格好つけてウズラの卵に練りワサビ。
 料理と言うほど、やることがないのだけど、ここで大問題にぶち当たるのだ。
 「やまかけ」というのは「山芋(ヤマイモもしくはヤマトイモ、ナガイモ)をかける」という意味合いだからマグロが先で上からとろろをかけてしまうのが正しいはず。
 でも見た目がきれいじゃない。
 しかも私の好みなのだけど、一切れ一切れのマグロにクルクルととろろを回しからめて、ワサビをのせ、生醤油につける。
 だからボクの「やまかけ」は実は「やま敷き」となる。

 ヤマトイモとマグロを合わせただけの、こんな料理がほんの数年前まで嫌いだった。
 ぜんぜんおいしくない、なんて見向きもしなかったのだ。
 我が家で断然「やまかけ」が好きなのは不思議なことに子供達であって、いつもボクは作るだけの人。
 それがあるときふと食べたくなって、「一切れおくれ」と分けてもらったら、意外にうまい。
 「こんなまずいもの食えるか」と思いこんでいた日々はなんだったのだろう?
 ことほどさように人の好みなどと言うもは一定しない、理屈ではないということが、五十路になってますますわかってきた。
 蛇足だけど、ウズラの卵、ボクには無用だ。

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 大阪鶴橋でカオリフェを食べた。
 「カオリ」はエイ、「フェ」は刺身のこと。
 要するにアカエイの刺身を鶴橋の迷路の、そのまた狭い路地にある『よあけ』で焼酎の水割りのアテとして注文したのだ。
 店にないものは店主自ら近所(鶴橋の商店街・市場)に走りって買いに行くというのが『よあけ』流で、エイを買うところから始めたのに、あっという間に出てきて、これぞまさしく素敵なタイミング! である。
 カオリフェについてきたのが辛子酢みそ。
 この辛子酢みそで食べるアカエイの刺身がうまかった。
 アカエイ自体がうまかったというよりも辛子酢みその味がよかったといった方が正確だ。
 さて、ボクはこの時点でクーラーバッグに商店街でカオリフェと辛子酢みそを買い求めていたのだ。
 帰宅して、またしてもカオリフェを食べたのだけど、辛子酢みそがたっぷり残ってしまった。
 さて、いい魚はないのだろうか? と見つけたのがテングダイ。

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テングダイも鱗はひくのではなく、包丁ですき引くのだ。

 テングダイの刺身は非常に美味。、なんだけどちょっともの足りない。
 クセのない白身にありがちなことだけど、個性に欠けるのだ。

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 ちゃんと刺身を用意して、テングダイのすき引きしたウロコを落とした皮をそのままに焼き切りにする。
 ここに白ネギを散らして辛子酢みそをかけてみたのだ。

 これがまさしく病みつきになる味。
 テングダイはやはり皮目を生かした方がうまい。
 皮下に脂があって甘い、そこにちゃんと旨味が感じられて、微かに焼いた香りがくる。
 そして唐辛子みその酸っぱさと辛さ。
 絶妙だね。
 この鶴橋の魚屋でもとめたものは唐辛子と、たぶん少量のコチュジャン、味噌、酢を合わせているのだろう。
 ニンニク、胡麻油は入っていない。
 考えてみるとカオリフェや白身魚にはニンニクや胡麻油は香りが強すぎる。

 酒はマッコルリといきたいところだが、立川の居酒屋『太鼓』さんにいただいた「赤霧島」。
 芋焼酎独特の臭みがほとんどなく、クイクイ飲める。
 うますぎる焼酎に、うまい肴で幸せだなー!

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アマダイの若狭焼き

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 ボクが船釣りを始めたのがちょうど27年前のこと。
 相模湾の比較的近場でマダイ五目で出船していた。
 マダイが主役ではああるが、いろんな魚が釣れるわけで、水深の深い場所で必ず混ざってくるのがアマダイであった。
 その当時、釣り宿の年寄り船頭(明治生まれ)にとって、不思議で困ることというのがあって、それがアマダイなのである。
「おらお、子供の頃あお、こんなもんクズだったお。食ってもうまかねえし、みそ汁にもなんねーお」
 その当時から、アマダイ釣りで稼ぐ漁師がいたそうで、それが小田原、茅ヶ崎などのジイサン達には不思議で仕方がなかったのだ。

 ぐっと現在に話をもどす。
 今では相模湾で延縄などをやっている漁師はほとんどいない。
 例えば横須賀市佐島大楠漁港でも一人もしくは二人といったところ。
 その延縄であげたアマダイが幾らするかというと、浜値で1本一万円以上なのだ。
 同時にあがったマダイの2倍近い値段。

 これは漁師の手取りなのであって、ここから築地などに行くと、いったいどのような値段となるのか、想像できない。
 さて、築地を歩きながら探すアマダイはキロあたり5000円前後が妥当だと思っている。
 小振りで500グラムくらいなら3000円出しておつりが来る。
 持ち帰ったら半分だけウロコをすき引きし、半分はそのまま。
 そう言えば、アマダイの鱗を包丁でバリバリなんてやっているのをテレビで見たことがある。
 あんなことをやってしまったら柔らかすぎるアマダイの身がすり身になってしまう。
 アマダイは持ち方からして、卸かたからして細心の注意を要する。
 二枚に下ろしてすき引いた半身は昆布締めにし、半身には振り塩をしてビニール袋に密閉して1日寝かせる。
 これを翌日焼くのである。
 残った半身はウロコがついたままである。
 こちらに日本酒を塗りながら焼き上げる。
 ウロコ側はこんがりと、身の方はしっとりするのがいい。
 このとき慎重であらねばならぬのが串打ち。
 今回もちょっと失敗して、4本打つ金ぐしの1本が浅すぎた。
 アマダイの季節は秋から冬にかけてで、産卵期をすぎると味ががくんと落ちる。
 この時期に何本のアマダイを食べられるのか、できれば2桁食べたいものだと思うのだが、無理だろう。
 だからいつまで経っても串打ちがうまくならない。

 さて失敗とはいえ、若狭焼きは本当にうまい、
 鱗側の皮を剥がしてカリカリと食べてから、練り絹のような柔らかい繊維質の身を食べる。
 このアマダイ独特の風味をどう表現していいのか未だにわからない。
 皮で蓋をしていただけに、取り去り、身を剥がすと一度期にアマダイの香りが立つ。
 そしてアマダイが「甘鯛」じゃなかろうか、と考えた人の気持ちがわかる、その甘さ。
 この半身をそれこそ骨の際まで食べて食べて、しゃぶってしまうので、後に残るのは骨だけとなる。
 アマダイの若狭焼きだけは猫もお裾分けに預からないのでつまらなさそうだ。

 最後にクイズをだす。
 アマダイでどこがいちばんうまいのか?
 部分(場所)で答えていただきたい。
 食べてみるとすぐにわかるはずだ。

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 学校給食のない日のお昼はボクが用意している。
 いちばん良くつくるのがカツサンド、ハムカツサンドで太郎の大好物。
 それにときどき変化球。
 なかみのカツ(フライ)をエビにしたり、ホタテにしたり、ニシンの酢漬けにする。

 そして今回は安かったために買いすぎてしまった三重県産のゴマサバ。
 たくさん買い込んで開いて干物にしたのだけど、それでも2本ほどあまる。
 三枚に卸して血合い肉骨を抜く。
 塩コショウ、タイムを振る。
 これを通常通りにフライにする。
 別に書く必要はないと思うけど、小麦粉をまぶして、溶き卵をからめ、細かいパン粉をつけて揚げるだけ。

 ロールパンに切れ目を入れて、レタス、ラディッシュ、ゴマサバのフライを挟み込んで出来上がり。
 これに市販のタルタルソースとケチャップを添える。
 我が子ながらケチャップ、マヨネーズ好きで、タルタルソースが嫌いらしい。
 使い終わったケッチャップの減り具合に驚き、マヨネーズまでかなりの減り具合なのにまた驚く。
 太郎が食べると、食卓が汚れて困る。

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