食べる魚類学: 2009年10月アーカイブ

karasu090.jpg

戦前戦後、北洋などで大量にとれていた魚にカラスガレイがある。
輸入物が主だが、今でもスーパーなどでは見かけない日はない。
回転寿司の「えんがわ」の主が本種なのである。
それほど日常的な魚なのに、知名度が低すぎる。
このあたり食べ物に興味があれば、原材料にももっと関心を持ってほしいなと思うのだけど、いかがだろう。
ただ単にカレイなんて魚はいないのだから。

気になる魚なので、加工品を見つけると、時々買ってみる。
今回の物は静岡県静岡市清水のサスイチのもの。
漬け魚なのだけど、味付けが本みりんと、塩。
そこにアミノ酸調味料が加わっている。
karasu091.jpg

色があまりに赤いので、一瞬躊躇したが、真横にいた知るべが、「うまそうな色だね」というのでピックアップ。
2枚入りで売値からして350円から450円だろう。

これが、なかなかいい味わいであった。
カラスガレイの特徴が脂の強すぎることだ。
でも考えてみると、これは+イメージになっている。
脂が強く、トロっとしているので柔らかい、そこに本みりんを使っていて、程よい甘さなのだ。

さて、改めて、この赤さだけれど、ここまで強くなくていいのではないだろうか?
紅麹色素というくらいだから、比較的安全なのかも知れないが、なんだか毒々しい。
この色で健康志向の消費者に受け入れられるだろうか?
疑問だな。

サスイチ
http://www.sasuichi.co.jp/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、カラスガレイへ

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
yanagimusi09.jpg

ヤナギムシガレイは底引き網などでとれる。
大きくなって、子持ちともなると、超高級魚となるが、小さい物はまことに安い。
簡単に煮魚にしてもいいし、軽く干して焼いてもいい。
そしてもっとも簡単なのが唐揚げだ。
薄っぺらい魚なので、無造作に唐揚げにする。

ボクは家庭でも、もっと揚げ物を作るべしと、考えている。
例えば、家庭でもっと天ぷらや唐揚げを作って食べたらいいのだ。
食物を揚げるというのは、まことに優れた料理法だと思う。
揚げると、一癖ありの食べ物だって、おいしく食べられる。
小魚なら骨までバリバリ食べられるわけで、カルシウム補給のはもってこいだろう。

福島県相馬市原釜では、深い場所の大型底曵、浅い場所の小型底曵がある。
ともに最盛期だろうと思う。
きっと市場に所狭しと魚が並んでいるはずだ。
その多くがカレイ類。
カレイは種類ごと、大きさごとに並べられる。
ババガレイ、ヒレグロ、ミギガレイ、イシガレイ、マガレイ、マコガレイ、ソウハチガレイ、そしてヤナギムシガレイ。

八王子で原釜産ヤナギムシガレイの小さなものを見ると、雄大な競り場の光景が思い出される。
そんな思いで荷(魚)を見ていると、タカノ(これからカタカナで書く)社長が、袋を手に「ちょっと(少し)持って帰ってよ」とくれたのだ。

小振りなので、持ち帰って鱗を簡単にとり、頭を落して、片栗粉をまぶしてあげる。
紙袋を器にして、食卓に出す。
ヤナギムシガレイは薄っぺらいので、サクサクと香ばしい。
しかも香ばしい中に旨味が感じられる。
ポテトチップス感覚で食べられる。

1 鱗を取り、ワタと頭を落す。
2 水分をよく拭き取り、片栗粉をまぶす。
3 やや弱火でゆっくり揚げる。
4 揚げたてに塩コショウする。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ヤナギムシガレイへ
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

akoudai09.jpg

最近、食堂の陰が薄い。
国道沿いなどに「なんとか食堂」というのがある。
これが困ったことに、食堂ではあるだろうけど、姿を変えた新しいチェーン店なのだ。
一見地元ならではの食堂に見えて、実はチェーン店という存在は嫌だな。

大正昭和に誕生した食堂という外食の場の歴史のことは、誰かが必ず残さなければならない。
エンテツさんなんかが、やっていることの重要性をもっと多くの方が知るべきだろう。
さて、今回のテーマが、食堂で使われる品書きの「たいかす」というもの。
漢字に直すと、「鯛粕」だろう。
「鯛の粕漬け」ととらえるのが正しいけれど、「鯛」はマダイではなく、アコウダイにあたる。

アコウダイはカサゴ目フサカサゴ科メバル属の魚だけれど、体長50センチくらいになり、赤い。
それで「赤魚」。
水深4~5百メートル以深にいて、釣り上げると目と鰾(うきぶくろ)が飛び出してしまう。
ここから「目抜け(目抜け)」という名も生まれた。
「赤魚」というのとアコウダイの「鯛」で、商品名が「赤魚」、品書きに「鯛」なのだ。

さて、アコウダイはもともと庶民的なものだった。
それが徐々にとれなくなって、非常に高価なものとなった。
いつのまにか高級魚となったのだ。
とても加工品にする値段ではない。

そんなとき北の海で大量にとれたのがアラスカメヌケという魚。
アラスカメヌケもアコウダイと同じメバル属、そして「赤い」。
これがアコウダイの代わりとなってくる。
東北、北海道などでもとれるが、主にロシア、アメリカ海域で水揚げされる。
今ではほとんどが輸入もの。
「赤魚の粕漬け」の原材料魚がアラスカメヌケであることを知られないまま、食べられている。

ここで現在の「たいかす(鯛粕)」、「赤魚の粕漬け」がアラスカメヌケだというのがわかっていただけただろうか。
このアラスカメヌケもあまりとれなくなって、大西洋のメヌケも加わるのだけど、ここでは話を置く。

さて、今回のものは宮城県石巻市『ダイショウ水産』のもの。
ほどよく甘くて、ご飯に合うし、味がいい。
どうも粕漬けは、甘い方がうまい。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、アラスカメヌケへ
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

アオハタのポワレ

0

aohata09.jpg

アオハタの入荷が目立ってきた。
小型のハタとしてはキジハタが突出していたが、最近ではアオハタの方が多いのではないだろうか?
高級魚ではあるが、ハタの中では安い。
それで人気が高くなっているのだろう。

小振りの1キロサイズのものを1尾手に入れた。
今回は八王子綜合卸売組合『マルコウ』で1キロ弱をなんと1000円なり。
これはクマゴロウにありがとう。

刺身にはできないものの、ハタは使い道がいろいろある。
今回は単にポワレ。
三枚に下ろして、血合い骨を抜き、塩コショウ。
島根のヤマトシジミさんおすすめのエルブ ド プロバンスで香りつけ。

これをピュアオリーブオイルで香ばしく焼き上げ、エクストラバージンオイルをかけまわす。
ボクは生のオリーブオイルの香りが好きなのだ。
ハタはポワレにして本当に美味である。

当然、ワインでしょう。
だが、なぜか酒は山形の『十四代 本丸』。
へたなワインよりもポワレに合う。

作り方
1 水洗いする。アオハタの鱗はワイヤーブラシで取るのがいちばん便利。
2 三枚に下ろして塩コショウ。香りづけにタイムやローズマリーを使う。今回はエルブ ド プロバンス。
3 弱火でじっくり焼く。
4 焼き上がったら、エクストラバージンオイルをかけ回す。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ポワレへ
http://www.zukan-bouz.com/hata/mahata/aohata.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

kasago09.jpg

夏から、秋が旬ではないだろうか、カサゴは。
このあたりが難しい。
晩秋には出産してしまうわけで、寒くなるとやせている、と思うと、そうでもない。
あまり、季節変化のないカサゴだが、そろそろ名残の季節といえそうなので、カサゴの煮つけを作る。
カサゴといったら煮つけとなるくらいに定番的なものだろう。

カサゴは掌ほどのもの。
これを水洗いして、さささっと煮上げていく。
クセのない魚なので、少々薄味に仕立てる。

ほろほろとして甘みのある白身で、きめの細やかな身は適度に繊維質である。
これをほじくりほじくり、最後には骨湯を楽しむ。
酒の肴と、酒の後の汁が、一時に味わえる。

作り方
1 鱗をていねいにとる。カサゴなどの鱗取りは、ワイヤーブラシを使うのがいちばん便利。小さな鱗まできれいにとれる。
2 振り塩をして、少し置き、熱湯をかける。冷水に取り、残っている鱗と汚れを洗い流す。よく水分を切る。
3 鍋(テフロンフライパンの深いものが超便利)に酒、みりん、少量の砂糖(子供がいるので)、しょうゆ、水を張り、カサゴ、生姜のせん切りを入れて火をつける。
4 最初は強火で、わいてきたらアクをとる。後は中火でアルミホイルの落としぶたをして煮上げていく。
あまり煮詰めすぎないように、するのがコツ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、カサゴへ
http://www.zukan-bouz.com/kasago/kasago/kasago.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/index.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

katuo09918.jpg

八王子綜合卸売センター『総市』では、サブちゃんがせっせとカツオを下ろしている。
その傍らに、中落ちと、皮が一山100円也で売られている。
ボクは、こいつが狙い目。
一山買い求めてきて、中落ちは煮つけ、皮を唐揚げにする。

この皮だけの唐揚げがまことに、まことにうまい。
たぶん、魚の唐揚げの王様じゃないだろうか?
鉄分のせいだろうか、そんなにきれいに仕上がらないけど、香ばしくて、噛み締めると旨味が浮かんできて、そしてまた香ばしい。
「ビール盗み」の料理なのである。

作り方
1 カツオの皮は軽く塩水で洗う。
2 水分をよくよく拭き取り、片栗粉をまぶしてゆっくり揚げていく。
3 最後に火を強めて、かりっと揚げる。
4 揚げたてに塩コショウ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、カツオへ
http://www.zukan-bouz.com/saba/saba/katuo.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

shousaifugu09.jpg

市場にフグが増えてきた。
現在のところ、ショウサイフグが圧倒的に多い。
本格的な秋を迎えたんだな、と思う一瞬である。
だからフグを買う。
市場のフグ調理師に毒の除去をしてもらう。
帰宅して、塩水で汚れや復の皮を取り去り、ペーパータオルにくるみ寝かせる。

霜降りにして、故郷からなき父が送ってくれたスダチと生しょうゆで漬けにする。
これに一味唐辛子を振り、酒の肴とする。
面白いもので、このような単純な酒の肴を子供が好いてくれる。
唐辛子のない部分をごっそりと箸でつまんでうまそうに食らう。

フグと柑橘類のなんと相性のいいことだろう。
ショウサイフグはやや水っぽいのを冷蔵庫で寝かせて取り、霜降りにしてまた旨味と適度な甘みが浮かんできている。
清酒「土佐鶴」がうまい。

作り方
1 ショウサイフグは頭を取り、内蔵ごと皮を剥く。ここまではフグ調理師にやってもらう。
2 塩水で洗い、汚れ、内蔵を取り去る。ふきん、ペーパータオルにくるんで寝かせる。
3 三枚に下ろして、霜降り(熱湯に落して表面が白くなったら、冷水に落す)に。
4 よく水分を切って、玉ねぎのスライスとスダチと生しょうゆの地に漬け込む。
5 彩りにニンジンの千切り、わけぎの小口切りを加えて皿にもりつける。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ショウサイフグへ
http://www.zukan-bouz.com/fygu/fugu/torafugu/shousaifugu.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

ツボダイの正体

0

tubodai09.jpg

スーパーなどで何気なく目にしているもので、わからない食材がある。
たぶん、ツボダイというのもそのひとつだろう。
こいつを初めて見たときにも、ボクはかなり混乱した。
1988年のこと。
青森県青森市の駅前市場に味噌漬けになって山のように盛られて売られていた。
ツボダイというのはカワビシャ科という、どちらかというと珍しいたぐいの仲間であり、こんなにとれるのだろうか?

このツボダイの正体がクサカリツボダイという、1960年代後半から漁の始まった新顔の魚であることを知るのは、この東北旅行のすぐ後のことだ。
ありきたりの魚類図鑑ではわからないことがあるのだ、と思至ったときでもあった。
板皮類とか肺魚、ノトテニアだとか、魚類学の基本からも外れる、日常的な、例えば食材を分類するという分野があるのだとも気がついた。

さて、今回のクサカリツボダイの干物は千葉県銚子市にある『丸安』のもの。
パッケージデザインのよさで、買ったもの。
ちゃんと中部太平洋でとれたものという表示があって、わかりやすい。
これならクサカリツボダイの存在感が浮かび上がってくる。

もちろん普通に流通してきたもので、名品とかそんなものではない。
値段は小売りにすると、かなり高いものとなるだろう。
最近の傾向通りに脊椎骨をちょうど半分に割ってあり、食べやすいのもよい。
塩加減もまことにほどよく、1人1尾食べても(食べ過ぎだけど)塩辛くは感じない。
干物はご飯との相性もよく、夕食に焼き上げると酒の肴にもいい。

朝ご飯に干物という取り合わせは、ボクのもっとも好むところだ。
うまいクサカリツボダイの干物と、名残のナスのみそ汁で、ご飯一膳。

丸安 千葉県銚子市川口町
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、クサカリツボダイへ
http://www.zukan-bouz.com/suzuki3/kawabisha/kusakaritubodai.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

月別 アーカイブ

このアーカイブについて

このページには、2009年10月以降に書かれたブログ記事のうち食べる魚類学カテゴリに属しているものが含まれています。

前のアーカイブは食べる魚類学: 2009年9月です。

次のアーカイブは食べる魚類学: 2009年11月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。