食べる魚類学: 2009年1月アーカイブ

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 福島県相馬市原釜、この時期になると産卵に集まった「水どんこ(クサウオ)」が刺し網でいっぱいあがる。
 オットサンが近間(前海)でとったものを、港でオッカサンが待ちかまえて、いきなり頭を落として皮をむく。
 会津浜街道、すなわち太平洋側は美人の一大産地である。
 当然、原釜の女達も美人揃い、魅力的な方が多いのだけど、接岸したクサウオをおもむろに引きちぎるように剥く光景を見ていると、どこか芯の強さや、旺盛な生活力まで感じて、よりいっそう魅力を感じる。

 さて、この水どんこを剥いたものを「むきどんこ」というのだけど、関東にもしばしば出荷してくる。
 値段は内蔵も頭もなく、真子だけが抱き合わせとなって、キロ当たり500円(卸値)から600円という安さだ。
 労力(働き)からすると、まことに浜の女達には申し訳ない気がする。

 普通はこの剥いたクサウオを煮つけにする。
 身は繊維を欠き、ボロボロになりやすいが、白身で上品なので煮つけると味つけ次第ではなかなかいけるのだ。
 なにしろ真子がおいしいので、それだけでも価値は高い。
 また味噌と煎りつけて細かくでんぶ状にしてご飯にかけてもうまい。
 原釜、久ノ浜などでは生のままぽん酢で食べるのだけ、これもなかなか面白い味だ。

 さて、いろいろ産地での食べ方はあるものの、よりうまい食べ方はないのだろうか?
 どれも地味で、主役にはなれそうにない料理ばかりだ。
 それで昆布締めにしてみた。
 たくさん買い込んで、出来たものを、すしとして握ってもらったら、まったくうまくもなんともない。
 当たり前だけどクサウオは昆布締めにしてうまくないのだ。
 さて、この昆布締めをいかにすべきか?
 捨てるわけにもいかないし。
 それで今回は締めた昆布に乗せたまま、強火で焼いてみた。

 これがうまいのだ。
 塩味控えめなのでぽん酢で食べたのだけど、水分の多い身が適度にしまり、昆布の香りが立つ。
 端的にうまい。
 クサウオの個性も、身自体のうまさも、そんなに感じないし、あえてクサウオでなければならない理由もないのだけど、やはり絶品ではある。
 ようするにクサウオの昆布締め焼きは、クセのない魚を焼き、魚の味よりもぽん酢とか昆布の風味を楽しめる。

 結論からすると、クサウオは浜の女達に教わった食べ方で食べるべきだと、改めて思い至る。
 そう言えば未利用魚を活用しようなんて、水産庁などでも宣伝しているが、このような試行錯誤、挑戦をやらなきゃ道はひらけない。
 ボクなどすでに未利用魚に挑戦して30年にもなるが、日々まずいもの、とても食べられないものを食べて、しかもまた食べようとしているのだ。
 昨今のグルメ雑誌などを見ていると「うまそうなもの」ばかりが載っている。
 これがまことにつまらないし、くだらない。
 だいたいグルメ雑誌の写真はありとあらゆる印刷技術を駆使してうまそうに作り変えているのだ。
 あえてつけ加えると「そんなにうまいものだけ食ってどうするの」とも聞きたいね。
 そろそろボクも「まずいものを食うからうまいものがわかる会」を作り会長になろうかな?

2009年1月29日
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寒黒の焼き切り

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 下関の黄幌型さんから、今度は「寒黒」が届く。
 「黒」とはなんぞや、というと関東でいうメジナのことだ。
 メジナは磯などにいるもので、夏などはともすると磯臭く、脂ものっていないので、それほどうまいとは思えない。
 それが寒さとともに味が良くなってくるのだ。

 釣り師たちが待ち望むのも、この寒の時期の「黒釣り」。
 大型が揃うこと、また味もいいので、これをあえて「寒黒」と呼んでいる。

 黄幌型さんが釣りに通っているのが大分県佐伯市。
 この釣り場の模様は「西の浦釣センター」の画像を追って欲しいのだけど、見て感じたのは関東では夢のような釣果であることだ。
 そして、今回いただいたメジナからして、この海域の魚の味わいもまたよしなのがわかる。

 さて、いただいた「黒」はすでにワタを取り去った状態で、締め、血抜きも終えている。
 鮮度はこれ以上ないものといえよう。
 要するに関東で手に入るメジナとはものが違うということだ。

 卸し始めると腹腔、皮下に脂が見られる。
 この脂に甘みが感じられるのだ。
 皮を捨ててはもったいない。
 普通に刺身にするとともに、皮目をあぶる。
 これを切り、皿に盛り合わせると、これが焼き切りとなる。

 ワサビ醤油でもいいし、韓国酢みそ(コチュジャン、味噌、酢、胡麻油)でもいい。
 ようするに自分好みで食べて欲しいのだけど、改めてメジナのうまさを再確認できた。
「メジナってこんなにうまかったんだ」

 寒くなって海などが荒れると、メジナはまとまってとれてしまう。
 しめてさえいれば先ず間違いなく味がいい魚なので、寒には「黒(メジナ)」を食べて欲しいものだ。

 最後に黄幌型さんありがとうございました。

2009年1月25日
西の浦釣センター
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 東京ならではという魚がある。
 例えば広大な東京湾があって、これを江戸前という。
 例えば南に長く点在する伊豆諸島。
 もっと南にある小笠原。
 この東京の魚でタイ科は何種類だろう。
 クロダイ、キチヌ、ヘダイの要するに黒いタイ。
 マダイ、チダイ、キダイ、そしてアカレンコ。
 たぶん東京都民で魚に詳しい方は多々あれど、東京都で揚がるタイ科の魚を並べていってアカレンコまでたどりつける人は幾人くらいだろう。
 かなり少ないんじゃないだろうか?

 小笠原からの船は一週間に一度前後くらいだろう。
 様々な熱帯の魚をもたらしてくれるが、そのなかでもっとも平凡なものがアカレンコとも言えるだろう。
 この遠く小笠原から来たキダイの仲間を、塩焼きにして食う。
 要するにレンコダイ(キダイ類)の定番中の定番料理だ。
 マダイと比べるとやや水っぽいが、振り塩をすることで、ほどよく締まる。
 これを強火の遠火で香ばしく焼くのだ。

 これがまずいわけがない。
 チダイ、キダイ、マダイ、とタイ科の赤い魚は焼くと絶品となる。
 手でむしくりとってむさぼり食うのだけど、手の熱いこと熱いこと。
 それ以上に絹のように滑らかなアカレンコの白い繊維が、口の中でほぐれて甘み旨味を広げていく。
 まことに塩焼きという単純な原始的な料理はうまい。
 そのうまさは塩という無機質物質で引き出したアカレンコだけのもので、単味を純粋に堪能できる。

 アカレンコの香ばしい、旨味を沼津の白隠正宗山廃純米で流し去り。
 また流し去る。
 やたらに冷え込む夜更けなのであった。

2009年1月10日
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 “塩焼き魚”というのがあって、例えばイサキ、タカベ、カマス類、マアジ、コイチ、シログチ(イシモチ)、ニベなんかだろう。
 原則的に丸のまま焼くものを“塩焼き魚”というのがわかってくる。
 例えばサワラ、メダイなども塩焼きになる。
 マダイだって、ブリだって、カサゴだって、塩焼きにしておかしくはない。
 だけど、これらの魚は“塩焼き魚”とは呼ばない。
 このあたりの事情はあまり理論的に説明できそうにない。
 さて、気がついてもらいたいのがコイチ、シログチ、ニベとニベ科に“塩焼き魚”が多いことだ。
 ニベ科の魚には皮に独特の風味があって、これが焼くことで浮き立ってくる。
 これがとても好ましいもので、皮下の旨味とともに、その白身の適度に繊維質であることと相まって絶品の塩焼きとなるのだ。

 そして今年の“塩焼き初め”がニベなのだ。
 ニベは外海の砂地にいる魚で、内湾性のシログチと対象をなす。
 関東で言えば東京湾内に多いのがシログチ、九十九里・銚子などから入荷してくるのがニベである。
 今回のものは茨城県産で、たぶん鹿島灘であがったものだろう。
 塩焼きに手頃なサイズ、手頃な値段なので、買い求めて、その場で水洗い。
 振り塩をして持ち帰る。
 あとはじんわりと焼くだけなのだから、簡単至極だ。
 我が家では市販の魚焼き網にレンガを乗せて台にし、串打ちして遠火で焼く。
 レンガは二分の一のサイズで、これはスーパーなどでも手に入る。

 そう言えば、最近はシログチばかり食べていたなー、なんて焼きたてを手で行儀悪く食べる。
 シログチよりもニベの方が水分が少なく、身質はいい。
 ただし甘みはシログチの方が上。
 ようするにともに塩焼きにしてうまい魚なのである。

 我が家では子供達にも「塩焼きは手づかみで食べるべし」と言ってあるので「あつつ」なんていいながら騒がしく、賑やかに、あっという間に皿の上の魚が消え去っていく。
 これはボクの勝手な思いこみかも知れないが、「塩焼きは行儀良く食べるとまずい」。

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 新年明けた途端に魚の値段がどっと下がってきた。
 それじゃ、魚が大売れかというと、そんなことはない。
 売れないから安いわけで、それに輪を掛けてなお売れない。
 不況のせいで外食の機会が減っているのだという。
 それじゃ料理を作る家庭が増えているのではないか?
 魚も売れるだろう。
 こう考えるのは短絡的だ。
 生活を維持するには共働きせざるおえない。
 子供達も老人も仕事にかり出され、また学校に、塾にと忙しい。
 家族の時間はズレにズレ家庭内孤食が普通になっている。
 当然家庭では、より簡単で、より安いものに目が向きがちなのだろう。
 それでも最低限いいものを食べたいと思ったときに、どうがんばっても鮮魚にまで到達できない。
 この穴埋めをしていたのが水産物の世界では魚屋の力なのだけど、街に魚屋は消えつつあり、それがスーパーに取って代わり、このような大型小売店では、ますます「安く、うまく」としのぎを削る。
 島根イオンの直取引、一見よさそうな取り組みなのだけど、大型小売店の方から出てくるのはあくまで流通コストの削減であって、「あまり見かけない珍しい魚でも安ければ売れる」という実験をやっているように思えてならない。
 漁業者は、普段よりも高い魚価をもらい。
 小売店は「これくらいの支払いなら普通のやり方よりも儲かる」ほどの支払いで、とうぜん安く商品を手に入れる。
 ようするに地方に新幹線を通すという発想に近い。
 目的地と出発点だけが潤い、地域が地盤沈下しそうでもある。
 ボクが思うのだけど、本当にこれからの大型小売店(スーパー)などに必要なのは、やはり最低限の水産物の知識だと思う。
 イオンに限って言えば、まだまだあまりにも知識が足りなさすぎる。
 これは大方のスーパー全般にいえることで、今、求められていることは水産動物の分類・利用法のプロだろう。
 加うるに水産加工業者が実際の都会の家庭状況を鑑みた商品を開発していく方向性だ。
 そうすると、こんな新幹線的なやり方をしないでも、「うまい魚を、それなりの値段で売ること」が出来るようになってくるし、消費者のニーズの幅も広がる。

 さて1月中旬に見つけた本題のカンパチだけど、鮮度はそこそこだけどキロ当たり600円で、1本800グラムほど。
 いかに不況だとはいえ1本の立派な天然カンパチが500円と少しで買えてしまうのはおかしい。
 卸値であるとしても安すぎる。
 あまりの安さに漁業者の皆さんには「すまん、すまん」と1本だけ買ってくる。

 これをカルパッチョにして、フライにして、アラを煮つける。
 フライはブリ科の魚は独特の風味があるので香辛料を利かせる。
 アラは大根と煮るのだけど、こんな古風な料理が意外や子供にも大受けする。

 そしてカルパッチョという料理は名前こそいかめしい(元々は画家の名前)が、作り方に決まりごともほとんどなく、ようするに薄く切って調味料をかけ回すだけで「そのような料理」が出来上がる。
 我が家ではまず皿にニンニクをこすりこみ、そこに塩コショウ、薄く切ったカンパチの身を並べていく。
 上にタイム、塩コショウして、エキストラバージンオリーブオイルとレモン果汁をかけるだけ。
 塩味は控えめにしてある。
 なぜならば太郎はこの上にマヨネーズかけてしまうし、姫は愛用の市販ぽん酢をかける。
 そのまま食べる方が正統派だろうけど、考えてみると食卓上にワインはなく、ボクは燗酒を、配偶者は甘い甘い発泡酒を飲んでいる。
 ことほど左様にこの国の家庭料理は複雑怪奇愚昧曖昧魑魅魍魎百鬼夜行の代物と言えそうだ。

 この複雑怪奇愚昧曖昧魑魅魍魎百鬼夜行の家庭の食卓に、いかに水産物の利用をすすめていくか?
 それを考えないと日本の水産業はなりたたぬ。
 
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 居酒屋のオヤジがニシンをいれた袋をもってうろうろしている。
「どうしたの」
「返したいんだよ」
 いいニシンがあったので4、5本選んで袋に入れた。
 ところが大羽イワシ(マイワシ)をすでに買っていたのを思い出して、いざ返そうと思ったら、荷(発泡の箱)がなくなっていたらしい。
「いいよウチがもらってあげるよ」
 引き受けたら、本当に見事なニシンだ。
 仲卸の社長に「どこの?」と聞くと、
「北海道らしいよ」
 北海道らしいよ、では産地不明となんらかわらない。

 とにかく、仲卸で三枚におろす。
 振り塩までやり、袋に入れて持ち帰る。
 帰宅まであれこれやって一時間ほどだろう。
 水洗いして、水分を拭き取り、ワインビネガー、白ワイン少々、砂糖少々、タイム、コショウに漬け込む。

 さて、数日、一枚二枚と酒の肴にして、残ったのを一人っきりの昼ご飯に食べる。
 我が家にあったロールパン、レタス、ベランダの保温プランターからラディッシュ、そしてニシンのマリネー、トマトケチャップにタバスコ、レモン。
 タバスコとトマトケチャップを合わせてレモンを数滴。
 ロールパンに材料を挟んで、ピリカラのソースを小さじ一杯ほどたらす。

 ニシンのマリネーの甘すっぱい、また塩気のある味わいに野菜。
 ニシンは微かに生臭いのだけど、パンの奥の方に垂らして置いたピリカラで甘み(トマトケチャップの)のあるソースが抑えてくれている。
 全体にさっぱりした味わいで、ついつい食べ過ぎてしまうのが難点のお父さんのお昼ご飯なのだ。

 最近、お昼はパンとなってきているのは、不思議な現象である。
 朝昼晩とご飯ご飯ご飯がよかったのになー。

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 今朝、八王子綜合卸売協同組合『清水保商店』のタモツちゃんが、
「あのさ、これは“のどくろ”じゃないんだろ」
 いつもよりちょっぴり真面目な顔をして聞いてくる。
 島根県浜田市の『ハマショウ』の製品。
 よく見るとユメカサゴに思える。
 原材料名は「かさご」。
 山陰沖であること、側線回りに微かに筋状の黒みがあるので、ユメカサゴに違いない。

 「“のどくろ”じゃないんだろ」と聞かれると返答に窮する。
 “のどくろ”でもいいからだ。
 ボクは食に関することをなんでも調べているおかしな男であるが、釣り師でもある。
 相模湾で釣り師、そしてユメカサゴを釣り上げると「“のどくろ”がきたぞ」となる。
 相模湾の“のどくろ”はユメカサゴなのだ。
 それが証拠にユメカサゴの口の中も腹の中も黒い。
 最近持てはやされている“のどくろ”、アカムツと同じだ。

 アカムツほどではないが、神奈川、静岡あたりでは高級魚だ。
 小振りとはいえ、地物のユメカサゴの干物を製品化するなんて山陰浜田は豊かだね。

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 タモツちゃんが「ふん」といって1パック寄こす。
「あんたは偉い。ありがとう」
 さっさと消えようとすると、
「●●円ちょうだい」
 結局売りつけられた。
 値段は仲卸の秘密なので言えないが、定価にしたら3匹入り1パックで450円から500円くらいだろう。
 まあオマケしてくれたんだろうな。

 本日の帰宅が9時前、風呂上がりにハマショウの干物でビールをいっぱい。
 2枚焼いたら、うますぎて3枚とも食べてしまいそうだ。
 1枚追加して、さてコップ酒といきますか。

 干物がなくなったのにコップ酒2杯目だ。
 ユメカサゴの干物がうますぎて、その味の余韻で酒を重ねている。
 この脂ののっていること、無類と言っていいだろう。
 その透明な脂に甘みがある。
 しかもこの香ばしい風味は箸を止めることを許さない。

 浜田港には大型底引き網が入港してくる。
 水揚げされる魚は見た目は悪いけど驚愕するほど脂がのっている。
 たぶんこのユメカサゴも底曳網のもので、だからこれほど脂があるのだろう。
 おそるべし浜田のユメカサゴ。
 
ハマショウ 島根県浜田市原井町3050-58
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 「マゾイ」にはキツネメバルとタヌキメバルの2種あって、この区別が難しい。
 どっちかが種として消え去るのだろうけど、今回のものはキツネメバル。
 年末の混乱から産地がわからない。
 安かったので大急ぎで2本確保して、「煮つけにするか、塩焼きにするか?」迷う。
 酒のアテとしては煮つけたいところだが、今回はさっぱりと塩焼きといきますか。

 塩焼きは簡単だ。
 水洗いして、ワタをだし、水分をよく拭き取って、振り塩。
 ワタを出した腹にも塩を振るのがコツだ。
 ここまでが午前中の仕込み。
 ビニール袋に放り込んでおき、夕食時こんがりと焼き上げる。
 慌てないで、ジワジワと時間をかけて焼く。

 焼き上がりは表面がカリカリになっていて、中は思ったよりもしっとりしている。
 このようなものは手で食べるに限るわけで、ほかほかいい匂いのする湯気を鼻にまとわりつかせながら、一気に食べてしまう。
 これがなんとも幸せなひとときだ。

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ヒラの酢の物

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 岡山のデパートはすごい。
 スーパーだってすごい。
 なにがって地魚の種類と、鮮度のよさがすごいのだ。
 地魚とは、瀬戸内海の小魚と、児島湾(湖)の淡水魚、そして瀬戸内海に入ってくる回遊魚。
 これらがスーパーやデパートで見られる。
 岡山でしか珍重しない(?)魚ではアイゴ、ヒラ、テンジクダイ、「ママカリ(サッパ)」なども市内各所でふんだんに見られる。

 岡山に立ち寄るたびに、こんな地の魚を買い込んでくるのが楽しみとなっている。
 今回のものは天満屋という市内でもっとも古いデパート。
 ここにあった酢漬け用のヒラだ。

 ヒラは大きくなる。
 60センチ、70センチなどという両の手に持てあますほどのものが、岡山中央市場では見られる。
 これがキラキラ微かに黄金色を帯びて輝いていて、見るからにうまそう。
 それではと料理するに、あまりに多すぎる小骨のためにとても食べられたもんじゃない。
 「ヒラはまずい」なんて、料理法を知らないがためにとんだ思い違いをしていたようだ。
 その思い込みの愚かさに気がついたのは、一昨年の初夏のこと。
 初めての岡山中央市場、そこにあったのが大量のヒラ。
 山のようになっているヒラが、仲卸店舗に行くと、三枚に卸されて、ほんの一ミリ以下の幅で切り落とされている。
 買い求めて、生醤油につけて食べたときの驚きは例えようがない。
 岡山県水のゴージャスごうちさんに聞くと、
「岡山だけでしょう、ヒラを料理できるのんは、他の県のひとは知らんでしょうね」
 それがよくよく調べてみると、岡山県内でも食べる地域と食べない地域がある。
 香川県でも食べているらしいとわかって、食用にしている地域は、思ったよりも点々として多いのかもわからない。
 例えば早春に瀬戸内海に入ってくるヒラ、最初に水揚げされるのが和歌山県、淡路島など。
 これほど大型になり、大量にとれるのだから、食べないわけがない。
 ただ岡山県人はヒラのうまさをよくよく知っている。

 さて話が長くなりすぎている。
 酢漬け用のヒラは、すでに1ミリ幅にスライスされている。
 これに塩をまぶし、小一時間おく。
 水洗いしてよぶんな塩気を流し去ったら、生酢に数分。

 デパートで「酢漬け用」とあるくらいだから、ヒラの酢漬けは日常的に食べられているんだろう。
 ヒラを食べる地域は少なく、日本中から岡山に入荷してきて、最近ではほとんど年中あるようだ。
 年中こんなうまいものを食べている岡山県人がうらやましくなるほどに酢漬けはうまい。

 ヒラという魚、刺身でも酢漬けでも噛めば噛むほど味がしみだしてくる。
 この旨味の強さはニシン目の魚に共通するものだけど、脂がなくてもうまいと感じるヒラのうまさは突出していそうだ。
 酢漬けのよいとことは後口がさっぱりきれいなことだ。
 それこそ丼いっぱいあっても食べてしまいそうにうまい。
 ヒラの酢漬けを食べていると酒なんてどうでもいい、そんな気持ちになってくる。
 
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 関東の市場でみるかぎり、東京湾奥の食文化などすっかり消え去ったかのごとく思える。
 市場に並ぶものの価値、序列は近場重視から、種の知名度重視(キチジ、クエなど)に変わりつつある。
 それでもときどき江戸前を感じるものがあって、例えばシャコのつめ(ハサミ)の身とか、ハゼの真子などだ。
 今回見つけたのが羽田産(東京都)マハゼの真子なのだが、激安の1トレイ600円。
 実質100グラムあるかないかだろうから、キロ当たり600千円としても、思わず目を剥く安さだ。
 ボクが思うプライムゾーンは1200円前後。
 たぶん、ハゼを天だね(天ぷら用)に加工する副産物にしても、本江戸前なんだから、これくらいは「当たり前だ!」なんて思う。
 しかるに末端近くの仲卸で、最安値だとしても安すぎて申し訳ない。
 「とっている人(漁師さん)、加工する人にもごめんなさい」といって買い求めてくる。

 マハゼの卵はあっさり煮つけて食べるのがいい。
 他には唐墨的に作るとか、塩をして寝かせて焼くなんてあるけど、本来の食べ方ではない。

 小振りのフッ素加工のフライパン(調理道具にこだわる必要はない)に酒、味醂、醤油を合わせて、水を加えて2倍にする。
 沸き立たせて少し煮詰めて、水洗いしたハゼの真子を放り込む。
 後は一気に煮ていく。
 煮汁は常に真子を包み込むようにする。
 真子はところどころはじけてしまうが気にしないでいい。
 煮汁は最小限のはず、けっして煮汁のなかに卵粒が紛れることはない。
 言わずもがなだが、生姜などは無用だ。
 鮮度が悪いときだけ使って欲しい。
 生姜を使うときは煮上がりにしぼって欲しいな。

 煮上がりにはほとんど煮汁が残っていない。
 そのまま皿に盛り上げて出来上がりだ。

 マハゼの卵巣がなぜに江戸の昔から人に好まれてきたか。
 たくさんとれて身近な魚だったからだろうけど、それ以上に淡白な味わいに甘味があるからだろう。
 例えば今回は味醂や酒を使ったが、それ以上にマハゼには甘味がある。
 ほっこりした食感には濃厚な旨味も感じられる。

 卵巣を一箸つまみながら酒を飲むのだけど、まことに美味極まりない。
 なんてゆったりしていたら、かたわらでご飯にハゼの卵という我が子がいる。
 吉田健一のエッセイに「うまい魚は酒の肴ではなく、ご飯に合うのだ」というのがあったと思う。
 まさにその通りだ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、マハゼ
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