食べる魚類学: 2009年7月アーカイブ

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そろそろサケの筋子(卵巣)の入荷がありそうだ、と思ったらマス子がやってきた。
マスにもいろいろあるが、筋子として入荷してくるのはカラフトマスなのだ。
カラフトマスの産地はいろいろあるけれど、代表的なのが根室海峡。
ここから親子揃っての到来である。

カラフトマスの親は、サケと同じくらいの値段でキロあたり600円から800円。
筋子はサケの三分の一くらいしかしない。
安い。

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値段はキロあたり1000円ほど。
サケだとここ数年キロあたり3000円前後なのでお得なのだ。
このところ我が家は貧窮生活なので助かるなー!

親の方はオス、そろそろ産卵回遊で沿岸に近づいてきたのだろう。
せっせと塩マスを作る。
筋子はサケと同様にしょうゆ漬け。
今回は姫に丸投げして作らせる。

しょうゆ漬けは思った以上に手がかかる。
とにかく熱い湯のなかでボクがほぐし始め。
あとは姫にたくし、何度も何度も洗って、みりんと生しょうゆのタレに一日漬け込むわけだ。

イクラ大好きであるばかりでなく、魚の卵はなんでも大大大好きという姫なので、ご飯も大盛り、マス子も大盛りだ。
ご飯とマス子の比率は1対1。
酒の肴としては、少々不向きなので、ボクは楽しくはない。

マス子の味わいは、魚卵通の姫にいわせると、そんなにサケの子と変わらないらしい。
ボクはやっぱりサケの方が好きだけど、確かにそんなに大きな違いは、ないよなー。

マス子のしょうゆ漬けの作り方
1 筋子は500グラム以上用意する。多い方が作りやすい。
2 煮切りみりんを用意する。みりんを鍋に入れて煮立たせて、アルコールをとばす。生しょうゆにみりんを加えて、味加減をする。かなりしょうゆの比率が高い。味付けは好みで。
3 大きなボウルを用意して、手が付けられないくらいのお湯をはる。ここに筋子を入れ、ほぐす。

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4 だいたいほぐれてきたら、お湯を捨て、水を替えながら卵膜、脂肪分、壊れた卵殻(卵のから)を洗い流す。
コツ/よくよく水洗いして、マス子の臭みや汚れを洗い流す。よく洗うべし。
5 ペーパータオルなどにとって水分を切る。なんどもペーパータオルを取り替え、冷蔵庫で冷やす。

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6 タレと合わせて一昼夜くらい寝かせる。

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コツ/味が濃いと、マス子てんこもりご飯にはできない。味加減は大切なのだ。

八王子の市場に関しては
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イサキを三枚に下ろして、皮を引く。
驚いたことに、イサキとは思えない、白い上身が突然のごとく目の前に現れた。
活け締めしたものなので、どこかしら透明感が感じられる、がそれ以上に白い。
見た目であっても白いイサキの刺身なんて、めったにあるものではない。
このイサキの産地は鳥取県境港『小林冷蔵』からだった。
ということは鳥取県であがったもの? ではないと思う。

何度も境港に足を運んでいると、なんとなくこの「境港産」の真の産地が見えてくる。
たぶん絶対ではないけど島根半島だろう。
地図を見るとすぐにわかってもらえることがあって、境港は文字で見るがごとく、鳥取県と島根県の国境にある。
数百メートルの狭い境水道を渡ると、そこは松江市、島根半島なのだ。
島根半島の東部の港にあがった魚はほとんどが境港に行くのだ。
しかも境港の市場自体、JF島根が半分以上を占めているのだから、「境港産=鳥取県産」ではないのだよ、と声を大にしていいたいところだ。

さて、島根半島でとれるイサキやマアジ、マダイは絶品である。
境水道から西にかけて大量のシラス(カタクチイワシの稚魚)が湧き、エサが豊富であるためだろう。
このあたりで揚がる魚の脂ののりはすごい。
島根半島ブランドを確率できたら、素晴らしいだろう。
よそ者がついつい、そんなことを考えずにはいられないほど見事な魚たちだ。

さて、食べてみなければはじまらない。
その一片をとり、醤油に浸すと、ぱーっと脂の玉が浮かんでくる。
明らかに醤油をはじいて、口に入れた刺身が甘いのだ。
脂からくるまったりした甘さだけど、ちゃんとイサキらしい微かな酸味を出している。
コイツは今年最高のイサキだ。
間違いなく、ここ数年でも最高のものだろう。

口の中で美味に暴れるイサキに、遠く島根半島を思い。
また行きたいものだ、なんて強く考えてしまうのだ。

市場に来ませんか? 市場には素晴らしい食材がある
八王子の市場に関しては
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魚貝類料理は単純な方がいい、というのが最近感じていることだ。
すり身にしたり、手のこんだソースを用意したり、どうにも無駄に思えてならない。
特に白身で身の味わいに力強さがあるハタ類の料理に複雑な方程式はいらない、足し算でやろう。

白身で上品すぎるくらい上品な味わい。
そこの油を足し、ニンニクの香りを足す。
ようするに小振りのシロブチハタ半身を、オリーブオイルで焼いただけ。
できるだけ香ばしく、じっくり時間をかけて焼き上げる。

出来上がったら、手づかみで、片手にビールでむさぼるように食う。
このまま食べてもいいし、市販のタルタルソースで食べてもいい。
香ばしいなか、シロブチハタの旨味のある白身の味が、口中幸せ感で満たしてくれるはずだ。
ハタ類などを食らうたびに、旨い魚は足し算くらいの料理でいいと、改めて思う。

シロブチハタのオリーブオイル焼きの作り方
1 三枚に下ろした半身に塩こしょう。
2 しばらくおき、出てきた水分を丁寧にふきとる。
3 フライパンにたっぷりのニンニク、オリーブオイルを入れて、火をつける。
4 ニンニクの香りが立ち上がってきたら、魚を皮を下にしていれる。
5 後はじっくり、香ばしく焼き上げる。

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今年は市場にたっぷりサンマの入荷をみる。
関東の市場で見ると、サンマに、姿形がよく値の張るものと、首の周りが傷ついて値段の手頃なものの二種類があることがわかってくる。
方や棒受け網という光に近づいてきたサンマを、すくい取る漁法でとったもの。
これを棒受けサンマとでもしておこう。
方や目のやや大きな網を海に流して、気づかずに突き刺さってきたサンマをからめとるような漁法、刺し網でとったもの。
こちらが刺し網サンマなんだろうな。
棒受けサンマは魚体が傷つかないので見た目がきれいだ。
刺し網は首周りが見るも無惨。
この姿形から刺し網サンマは棒受けの三分の一で買える。

同じ日にやってきた厚岸の刺し網サンマと、釧路の棒受けサンマを『市場寿司 たか』で下ろしてみる。
これが脂ののりも鮮度のほうもほとんど変わらない。
「ウチなんて薄利だから迷わず刺し網もんだな」
本日の『市場寿司 たか』でだすサンマも刺し網ものなのである。

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さて、帰宅して塩焼きにしたら、脂ののり、味、香り、そしてその神髄ともいえそうなワタともにずば抜けたうまさなのである。

棒受けものの腹にはウロコがいっぱい詰まっている。
これでは肝心要のワタが味わえない。
対するに刺し網のワタにはウロコ一つ入っていない。
ワタの複雑な苦みをともなった味わいのなんと喜ばしいことか。
この苦みのあるサンマのワタで冷や酒3杯はいけそうだ。
すなわちサンマの身はおかずだが、ワタは佳肴なのである。
おかずでもあり佳肴でもある、ここに刺し網サンマの真の価値があるのだ。

これで澤乃井大辛口。
手元不如意なので、コストパフォーマンスで買い求めた良酒だ。
サンマに冷や酒がうまい夏の宵なのだ。

さて、刺し網サンマと棒受けサンマ。
刺し網サンマが出回るのも7月中なんじゃないだろうか、大型棒受け網船に代わるまで、どっちを買うべきか、わかるかなー?

サンマの塩焼きの作り方
1 軽く水洗いして、残っているウロコなどを取り去る。水気をよくよく拭き取る。
2 肛門の後ろから背に向かって斜めに包丁を入れて2等分する。決して切れ目などは入れない。これは不要と思われたい。

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3 振り塩をして半時間以上おく。ここまでの行程を終えると、保存がきく。
4 中火の遠火で焼く。脂が落ちて燃え上がったら素早くサンマを火から離しながら焼く。

 一般家庭ではあまりきれいに焼き上がらないけど、見た目とは裏腹に、最高の塩焼きとなる。

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最近釣りに行けなくて悲しい。
本当に丸一日を釣りに費やしてみたい。
大艢(とも 船の一番後ろ)に釣り座を構え、グワンググワラングワランとスローに落としたエンジン音を聞きながら、汗びっしょりとなってイサキを釣る。
最近では外房がとても遠くなってしまった。
今年のイサキ釣りのシーズンもあとわずかだ。

さて本題、イサキは夏の魚だなんて、そんなに単純であるはずはなく、むしろ「夏になったら食べたい魚」なんだと思うな。
夏が旬のイサキなんだから、単純明快だと思われるかも知れない。
でもボクはあくまでもリアリズムを追求している。
だから真冬の外房辺りのイサキと、夏のイサキを比べると、旬がわからなくなる。
うまいだけで考えると、冬が旬となりかねない。

まあまあ、話を複雑にしてもはじまらない。
手頃な塩焼きサイズのイサキを買い求めてくる。
魚屋(仲卸)のまな板でウロコと、ワタとを取り去り、切れ目を入れて紙に包んで持って買える。
遅い外出なので、お昼ご飯のおかずがこれなのだ、ちょっと贅沢だねー、我ながら。
持ち帰って振り塩をして、メールの返信、その他諸々。
1時間ほどおいて、強火の遠火で焼き上げる。

ボクの好みは表は焼きすぎるほどに焼き、裏側はしっとりと水分を残して焼く。
ちなみに本当に好きなのは、香ばしく焼いたもの。
しっとりした焼き方よりも香ばしさを好む。
このあたり変に通ぶらず、自分の好みに忠実にいこう。

塩焼きで食べる、このご飯がうまいんだなー。
特にイサキの皮目の風味と、絹を思わせるような繊維質な身。
この身がほどけるほどに、口の中で旨味を放出するのだ。
これがご飯の糖質と一緒になったらたまらんなー。
一尾で茶碗三杯は軽くいける。
せっかく見えてきた、80キロ台だけれど、イサキ一尾で遠のいてしまうのだ。

イサキの塩焼きの作り方
1 水洗いをする。水洗いとはウロコをとり、内蔵を抜き。汚れなどを洗い流すことをいう。
2 体に切れ目を入れて振り塩。
3 半時間以上寝かせる。これが塩焼きのコツなのだ。
4 化粧塩(鰭に塩を厚くつける)して鰭がこげて落ちないようにする。また化粧
塩も飾りではない。塩分の少ないときなど鰭についた塩で補う。
5 強火の遠火で焼く。我が家では市販の魚焼き器にレンガをおき、金串を打って焼く。

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ニジマスの塩焼きを家庭で作っていいものだろうか?
いいに決まっている。
でも抵抗がある人が多いのでは?
ボクなどもその一人で、ニジマスにはアウトドアのイメージがつきまとう。
だいたい多摩地区でも八王子辺りには何カ所かのマス釣り場があり、このマスがニジマスなのだよな。

マス釣り場に行くとする。
河原に集合すると、養魚場(マス釣り場)のお兄さんが、「今日は多めに放しときます」なんていいながらバケツに入ったニジマスを釣り場にざばーっとやる。
こいつをイクラエサで釣ると、それこそイクラでも釣れそうだから恐い。
でも放流した分をあらかた釣ってしまうと、ぱたっと釣れなくなるから、釣れない話だね。

ちょうどそこに先ほどのお兄さんがやってきて、バーベキューの用意。
ニジマスの塩焼き、豚肉、牛肉、ウインナーに野菜、なんでもとりあえず焼き、焼きするのである。
このシチュエーションで食べるニジマスが、なかなかうまい。
帰宅するとき、コンビニに立ち寄って、「ますのすし」だけは買わないでほしいものだ。
それこそ昼も夜もニジマスを食うことになる。
世の中、こんなことでいいんだろうか?

そうだ、マスと言えばこの国の人半数以上がニジマスのことだと思うに違いない。
1877年にアメリカから持ってきて各地に移植されている。
ちなみにこの年、西南戦争が勃発、やっと明治も10年目のときである。
ニジマスがもたらされるまで、実をいうとマスとは、サクラマスとかカラフトマスとか、ベニマス(現在ではベニザケ)など標準和名のサケ以外の魚のことだった。
それが、「川にいるのがマスで、海に下るのがサケだとか」言語的な混乱が起こったわけだ。
また、多くの人がニジマスが海に下ることもあるという事実を知らないというのもマスをめぐる混乱の原因だね。
海に下るタイプがスチールヘッドで、陸風型がニジマス(レインボートラウト)と呼び変わるけど同じ魚なのだよ。

今ではニジマスといったら塩焼きでしょ、というくらいに万人におなじみとなっている。
そのためだろう、内水で養殖しても1メートルくらいになるのに、ニジマスの基本的出荷サイズは20センチほどなのだ。

さて、その小振りのニジマスを3本ほど買い込んでくる。
夕方となって、振り塩をして、小一時間ほどおき、鰭に化粧塩して焼き始める。
我が家では強火の遠火で、じわっと焼く。
焼いたら、お好みのスタイルで食べる。

マヨネーズもよし、柑橘類もよし、そのままむしゃぶりつくもよし。
国内で食べるニジマスもまんざら捨てたもんじゃない。
やっぱり片手にはビールでしょうな。

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 夏の塩焼きといったらタカベしか、ないでしょ。
 イサキじゃないのと言った方、間違いじゃないけど、ちょっと違う。
 イサキは市場でも年中見られて、冬にだって、それなりにうまい。
 心底夏らしいと思える魚とは言えそうにない。
 そこへいくと、タカベのなんと夏らしいこと。
 7月ともなるとギンギンギラギラ、脂がギンギンなのだ。
 体色だって、夏らしく派手、キラキラしている。
 このキラキラした、すーっとオレンジ色の筋の通ったところに、ピシャーと振り塩して、炎があがらないようにこんがり焼く。

 この野性味を感じる、ちょっとクセのある塩焼きの味わいが、もうたまらん。
 そういえば多摩地区では、あまりにうまいとき、「たまらん、たまらん、たまらんざか(坂)」と言うのだ。
 たまらん坂は国分寺から国立に抜ける長い長い坂道なんだけど、買い物で通るたびに、「どうして、たまらんのだろう」と思ったものだ。

 うまいので、最後は手でむしり取って、食うようになる。
 夏と言ったら、やはりタカベの塩焼きだろうね。
 お値段からして、毎日とはいきませんが。

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 土曜日の八王子総合卸売りセンター『高野水産』に見事なマサバが入荷。
 キロ800円は安いし、どんどんプロたちの手が伸びて、なくなりそうなのでつられて1尾買う。
 パーチもふたもなくなってしまって、産地不明だ。

 持ち帰ったマサバはしめ鯖にするか、みそ煮にするかで少々思案。
 姫の「生はやめようよ」というのでみそ煮となる。
 ここでどうして「塩焼きというのが出てこないんだ」と思った人はちょっと偉い。
 塩焼きは脂がのっている方がうまい。この時期だと、脂はそこそこあるものの、塩焼きで真っ向勝負は難しい。だから塩焼きという線を捨てたわけだ。
 ちなみに水分を使う料理は、脂の少なさを補ってくれる、というのも覚えておいてほしいものだ。

 さて、みそ煮のためにマサバは筒切りに、さっと熱湯をくぐらせて、冷水にとり、水分をよくよくとっておく。
 後は白みそ、赤みそ(三河みそ、桜みそなど)とことことと煮込んでいく。
 汁がクリーム状になったら出来上がりなのだ。

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 みそ煮は肴でよし、おかずでよし。
 だが、やっぱりご飯と一緒がいちばんだから、おかずでよしよしって感じだな。
 7月中旬のマサバは抱卵していることから、たぶん東北あたりから来たものだろう。
 思ったよりも脂がのっており、身がしっとりしている。
 このサバの身にクリーム状のみそをからめながら食べるのだけど、至福の味とはこのようなものなんだろう。
 サバのみそ煮に関しては、この至福だと思う味わいが秋に向かって毎回更新して、より強くうまいなと思えるようになる。

サバのみそ煮の作り方
1 マサバの細かい鱗を取り、頭を切り落とす。ここから内蔵を出す。

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サバには細かい鱗があるので丁寧に取る。最近札幌中央卸売市場でかったステンレスブラシが非常に便利なので使っている。

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サバは胸鰭の前あたりから切る。

2 きれいに洗って、背びれを取り、筒状に切る。

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背鰭は取っておく方が食べやすい

3 熱湯をくぐらせ、冷水にとり、汚れや残った鱗などを取り去る。よく水気を切っておく。

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この状態で熱湯にくぐらせる

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冷水にとり、鱗や汚れを取ったもの

4 鍋にショウガ、サバ、白みそ、赤みそ、酒たっぷり、砂糖を合わせて火にかける。(決してみりんは使わない。みりんは煮崩れしそうな材料のときに使い、柔らかく仕上げたいときには酒を使う)
5 ホイルの落としぶたをして、後はコトコト時間をかけて煮るだけ。汁が少しとろっとなったら出来上がり。煮詰めすぎないのかコツなのだ。

マサバ
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 毎日のようにコノシロを食べている。
 体長30センチくらいの立派なコノシロが1尾、百円以下で買える。
 近所の魚屋オヤジなんて「もうただでくれてやる」なんてうれしいことを言ってくれる。あんたは偉い!
 どうやら産卵期に群れを作ったコノシロが五万と定置網なんかに入ってきて、「売れないけど、海洋投棄するのももったいない」てなことで出荷されてくるようだ。
 このコノシロの氾濫を喜んでいるのはボクだけじゃないよな。

 産卵期のコノシロだから卵を抱えているのも多く、これが知る人ぞ知る珍味。
 卵巣だけ集めて、煮付けにして食いたいものだが、本体だって捨てたもんじゃない。
 問題は骨の多さだろう。

 コノシロは煮ても焼いてもうまい。
 この場合にも、細かく骨切りしてから煮たり焼いたりする。
 でもこの猛暑のなか、もっとさっぱりしたものが食いたいなー、ということで刺身と酢の物で晩酌の友とする。
 酢の物にしたのはコノシロ以前のナカズミクラス(20センチほど)。
 これを背ごしにして、塩をして甘酢につけ込む。
 刺身はそれこそ30センチ以上ありそうなコノシロクラスのコノシロ。
 魚屋(仲卸)で三枚に下ろして持ち帰り、食べる直前に1ミリ以下に切り、氷水でシャラシャラと洗う。
 これを韓国風酢みそで食べるのだ。

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 背ごしの酢の物は微かに骨が当たるのだけど、意外にこれが心地よい。
 ナカズミくらいになると旨味があって、そこそこ脂がのっている。
 酢の物といっても食ってまことにうまいのだ。

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 刺身は洗いにして、さっぱりした味わいになっている。
 単にショウガ醤油でもいいのだけど、あえて韓国風酢みそを作ってみた。
 暑いと辛みが欲しくなるのは、どうしてなんだろう。

 本日はウイスキーの水割りをやる。
 海老名の海老さんの真似をして、水割りを作ってペットボトルに詰め込んで、冷凍庫に放り込んだもの。
 このような野卑な、晩酌もいいもんだ。

ナカズミの酢の物の作り方
1 ナカズミを水洗い、鱗をとり、腹側を大きく切り取る。

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2 このまま1ミリ以下に刻んでいく。
3 塩を振り、30分ほど置く、これを水洗いして、水分をよく拭き取っておく。

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4 甘酢は酢(我が家では山吹)と砂糖を合わせる。ここに半日ほど漬け込んで出来上がり。

コノシロの刺身、韓国風酢みそ添えの作り方
1 水洗いして三枚に下ろす。これを一ミリ以下に刻む。

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2 氷水でしゃらしゃらと洗い、水分をよく拭き取り、ミョウガ、青じそをからめる。

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3 韓国風酢みそは、コチュジャン、酢、ごま油を合わせるだけ。好みでおろしニンニクを加えてもいい。飾りに白ごま。
 
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 福島県相馬市原釜『八巻水産(ヤ印)』から小型のサメガレイがたっぷり入荷してきている。
 サメガレイは大きくなる魚で70センチ、ときに90センチくらいになる。
 表側(右側)の黒く鮫肌のごつごつした手触り、裏側は薄汚れた羽二重のようで、しかも粘液をたっぷりまとっている。外見から鮮度がうかがい知れないのもあって、関東では鮮魚でくると人気がない。
「気持ち悪りーなーー」
 市場では、だれも手を出さないのだ。
 このサメガレイの値段がキロあたりたったの500円なり。
 1尾400グラム弱だから、2尾買っても400円で税込みおつりがくる。
 サメガレイは買い求めたら、よーくよーくぬめりを落として持ち帰る。
 その外見の悪さとは裏腹に5枚に下ろした中身のきれいなこと。
 この下ろした身と、外見のギャップが大きいのがサメガレイの最大の見せ場だ。
 付け加えるなら、魚の知識がこういった場合に生かされる。
 知っている、という強みはこんなときに発揮されるのだよ。

 なにもつけずに食べてみると、シコっとした食感で旨味に欠けることは欠けるが、悪くない。
 この冊取りしたのを適当に切り、ミョウガと青じそ、ショウガの千切りを合わせる。
 からし酢みそを添えて、出来上がったものが「沼田(ぬた)」なのである。

 子だくさんの我が家にあって、意外や意外な人気料理があって、それがぬたなのである。
 ボクが一杯やるために作っているのに、卓上での存在時間が短過ぎるのだ。
 それで最近ではからしをうんと利かせるのだけど、それでも「父ちゃん辛いけどうまいね」なんて箸を出す。
 白みそで作った和え衣にシコっとしたサメガレイ、香辛野菜のさわやかな香り。
 まことに夏の酒肴としては天下一品。
 今度はもっとからしを増やして作ろうか。

サメガレイのぬたの作り方
1 サメガレイのぬめりをよくよく取り去り、水洗い、5枚に下ろす。
2 適当に切り、ミョウガ、ショウガ、青じその千切りとからめておく。
3 からし酢みそを作る。白みそ(西京味噌)、酢(我が家では山吹)、砂糖を適当に混ぜるだけ。甘みにみりんを使ったり、だしで泥酢風に作る向きもあるが、味わいが重くなるだけ、無駄なので一般家庭ではさわやかにやろう。
4 サメガレイとからし酢みそを盛りつけて、食べる直前に和える。
 
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 北海道札幌中央市場で目についたもの、スケ(マスノスケ。キングサーモンのこと)、時鮭(サケ)、八角(トクビレ)、バラメヌケに真ゾイ(タヌキメバル)、数え上げら切りがない。でもひときわ、ボクの琴線に触れたものがあって、それが「チップ」なのである。
 ボクがスケ(マスノスケ)の大きさに感動していると、『丸水(荷受け。札幌中央水産)』の方が
「チップ見ました。そろそろ終わりなんですけど、入荷してきているはずです」
 親切にも声をかけてくれた。
 慌てて、彼の指差す方に走って行くと、銀色に輝くヒメマスがたくさん並んでいる。思わずうっとりするほど美しい。
 夢中になってシャッターを押していると、
「どう、きれいでしょ。今じゃ高級品だね。めったに食べられないよーー」
 こちらは『曲〆(荷受け。高橋水産)』の競り人。
 これがキロあたり3千円から4千円。300グラムほどのもので千円以上にもなる。
 どうしても欲しくなって『丸水』の方に仲卸を紹介していただき、1本手に入れる。
 これを宅急便で送ると、すごいことに翌日夕方には我が家に届く。
 北海道から空路帰り着いて、取る物も取り敢えず、ヒメマスの刺身を食べてみる。
 仲買の方たちは「ヒメマスだけは今日中じゃないとだめだよ」と言ってわりには鮮度もよく、とろっとした中に旨味の凝縮されている。刺身の色合いが紅というのも美しい。

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 そして翌日には塩焼きに、これがまさに美味の極地。これほど端正な真正面きったうまさって、なかなかないんじゃいだろうか。
 ついつい酒を飲むのも忘れて、ヒメマスの味わいにただただ酔うのであった。

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