食べる魚類学: 2009年6月アーカイブ

 最近マンボウの入荷が多い。
 それで、ついつい毎日のように買ってしまう。
 マンボウは“身と肝のセット”と“腸”に分かれているのだけど、買ってしまうのは腸、すなわち「マン腸」だ。

 普通の人にとって、食用として市場に並ぶマンボウって、珍しいのだろう?
 観光で築地などを歩いている、いわゆる一般人が、マンボウの(残骸の)前に来ると必ず足を止める。
「マンボウって食べられるのね!」、こんな言葉が必ず漏れ聞こえてくる。
 さて、マンボウと書かれた箱には、白っぽい不思議な物体が入っている。なんじゃこれは? マンボウにはとても見えやしない。

 マンボウは鉛色の背に、銀色の腹、楕円形で尾の部分がハサミで波状に裁ちきられているようだ。
 英語ではOcean sunfish、「大洋の太陽の魚」だ。
 世界中の温帯・熱帯の海洋を漂よっている。大洋に浮かぶ銀色の身体に太陽の光を受けて、まるで海にも太陽が浮かんでいるようだ、ということだろう。
 そんな海に浮かぶ太陽は、ときに定置網に入り込み、ときどき漁師に銛を打ち込まれる。
 大きな大きな魚なのであって、小さくても畳半畳、デカイのになると畳二畳、1.5トンくらいになる。

 港などでコンクリートの上に放り出されたマンボウの、大きく見開かれた目が、印象的で、ときに悲しい。
 こんな大きな体ではとても運べやしない、港で水揚げされると、さっそくマンボウは解体される。
 食べる部分は【手で割けるほど柔らかい身】、【脂たっぷりの肝】、【ぶにょぶにょしているが丈夫な腸】、そして地域によっては【皮というか白い寒天質の部分】。肝は黄色だが、その他総てが乳白色だ。
 漁港では身と肝で箱詰めされ、腸だけは別に箱詰めされる。
 市場にやってくると、中身だけでは、とても「これがマンボウだ」なんて思えない。
 関東の市場ではありふれた商材だけど、例えば仲卸(水産物の卸業者のひとつ)の店員に「マンボウ1キロくらいくれないか」と言う。
「はいよ」と、身と適当な大きさの肝を袋に詰めてくれる。
 その一連のやり方はテキパキ手なれたものだが、「マンボウの身って面白いっすね」なんて言うことも少なからずだ。
 市場人にとってもマンボウは、ふわふわとらえどころのない物体なのだろう。

 マンボウのもっとも基本的な料理法は「肝和え」。
 身を適当に手で割き、叩いた肝と和える。
 海辺で揚がったばかりを肝和えにしたものは、それはそれはうまいものだ。
 ただマンボウの水分の多い身は鮮度が落ちやすく、都会に運ばれた時点で、やや生臭い。
 都会の居酒屋で食べる「マンボウの肝和え」、それなりに人気があるようだが、これは珍しさが先にたってのものだろう。
 対するに最近ぐんぐん人気となっているのがマン腸料理だ。
 腸の中華炒め、焼き物、椀種など、どれをとっても非常にうまい。
 なかでももっとも人気なのが焼き物だろう。

 ようするに塩コショウ、ニンニクの風味などをつけて焼くだけ。
 焼きとりのタレで焼いてもいい。
 串を打って焼くと、初めて食べる人は、焼きとりのシロのようだけど、「違うな」なんて戸惑うに違いない。
 食感はシロに近く、それよりも柔らかい。そして魚と言うよりはイカのような旨味がある。

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 ボクは夏が来るたびにマン腸の塩焼きでビールを飲む。今日もマン腸、明日もマン腸で食べ飽きない。
 ほんまにマン腸はうまいね、なんてしみじみ思う。
 マン腸はビールにも日本酒にも合う。
 酒をセーブしている身には危険な存在でもあるな。

【焼きマン腸の作り方】
1 マン腸は厚み1〜2センチほどの白い長方形の物体である。大きさはマチマチ。これを軽く水洗い、水分を布巾などで拭き取り、適当に繊維に対して切れ目を入れておく。
2 塩コショウ、日本酒、ニンニクすり下ろしをまぶして手で揉む。

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3 これを最低でも小一時間おく。下味をつけておくと2,3日楽しめる。
4 ガス台の上に餅焼きの網を3〜5枚重ねて、強火で金ぐしに刺したマン腸を焼く。とにかく短時間に強火で焼くのがいい
 個人的には身が縮むがよく焼いた方が好き。焼き加減は好みでいろいろ試してみるといい。

2009年6月25日
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 土曜日の早朝のことだ。
 何気なく『マル幸』の前を通りかかると、冷蔵ケースの端っこになかなかいい感じのアカムツを発見した。
「いいアカムツだな」
「いいだろ」
「3800円(1キロあたり)かー。やっぱりいい値段だねー」
「いい値段だろ。でもまけないよ」
「どこ産」
「“さがら”ってあったけどな。どこでしょ?」
「静岡県の相良なのかな。それは珍しいや。仕方ない買おうか」
 ボクと渡り合っているのが『マル幸』のクマゴロウ。
 まあ、駆け引きの相手としてはそんなに手強くない。
 小振り、280グラムしかなく、それでも1本1000円はする。
 これを少々オマケして“いただく”。
「ありがとうね。またまけろよ」
「いやなこった」
 このアカムツが値段はともかく、この日の寂しい入荷状況の中では唯一よかったのだ。

 アカムツは近年ではもっとも値段の高い魚のひとつだ。
 福島県、新潟県以南のやや深海に生息している。
 そんなに珍しい魚ではない。
 底曳網か、釣りでとるのだけど、産地では姿を見ない日はない、というくらいに揚がる。
 ただ、問題なのは、とにかく非常にうまい魚だということ。
 当然、うまい魚だから食べたい人は多い、その需要を満たすほどにはとれない。
 この需要と供給のバランスの崩れが高値となって現れているわけだ。
 冷静に考えてみるとアカムツのうまさと、秋、旬のサンマのうまさを比べると、そんなに大きな開きがあるわけではない。
 あえて言えば五分と五分。
 ところが方や貴重品、方やワンサカとれるとなると、価格は月とスッポンなのだ。
 なかなか手に入らないものは、よけいにうまく感じるのだろうか? 人間というものは。
 そうだ、忘れていたアカムツが高いのは姿がよいからでもあるな。
 鮮度がいいと身体全体が、まさにルビーの輝き、目がこれまたルビーのようだ。
 あっといかんいかん、またまた書き忘れたが、この魚、近年はアカムツというよりは「ノドクロ(喉黒)」といった方が通りがいい。
 ここで「なんだノドクロかー」と思われた方はなかなか魚に精通している。
 まあ、玄人はだし、とまではいかないが、玄人モドキくらいには思える。
 「喉黒」のいわれは、喉から腹腔まで真っ黒な剥がれやすい色素が張り付いている。
 まるで「墨を飲んだような魚だな」という人もあり、至言。
 美しい姿に真っ黒な腹の内、食べたらうまい、というのもなにやら妖艶ではないか。

 アカムツの旬は寒い時期だろう。
 ちょっと時季はずれながら、脂がのっている。
 意外に味が落ちないのも、この魚の特徴だろう。
 これを焼き切りにする。
 皮目下に旨味があるので、これがいちばん好きな食べ方。
 やはり、脂ののりはイマイチながら、やっぱりアカムツはうまいな。
 皮下に脂と旨味がある。
 これで辛口の酒があって、土曜日の夕べはなかなか充実していた。
 まんぞくまんぞく。
 脇で梅がアカムツの端っきれを食べている。食べ終わって、なおかつアカムツのあったところを何度もなめている。やっぱり梅ちゃんは魚の良し悪しがわかる、天才アイドル猫なのだ。

【アカムツの焼き切りの作り方】
1 水洗いし(鱗とはらわたを出し)三枚におろす。肝は捨てないで取り分けておく。腹骨、血合い骨を抜く。
2 べた塩をする。ようするにたっぷり塩を振りかけるといい。
3 三枚に下ろした身から水分が浮き上がってきたら、水洗い。水分をよく拭き取る。
4 金ぐしを刺して、強火であぶり、冷水に落とす。肝は湯引きして冷水に。
5 刺身状に切る。肝と柑橘類を添えて出来上がり。
 単に柑橘類をかけて食べるのがいちばんうまい。
 塩気が足りなかったら、柑橘醤油で。

2009年6月20日
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 3キロのイトウはマリネーにして、刺身、フライ、ムニエル、塩焼きなどいろいろ試行錯誤。
 それでも余ったので、中華『さくら』のまささんに丸投げ。
「どんな料理でもいいから、後はよろしくね」
 この“後はよろしくね”がボクにはいいんだよな。
 翌日、『さくら』に入るや、「あれ、どうなった」というと、まささんが、
「いろいろ考えたさ、ちょっと待ってなよ」
 なんていいながら、フライパンに下味をつけたイトウの切り身を並べ、最後に皮をかりっと焼き上げる。
 一方の火口で少量の肉と野菜を炒め、ホワイトソースをつくる。
 ようするにホワイトソースにイトウを乗せただけなんだけど、きっと、ここにはまささんの創意と工夫があるはずだ。

 まずは皮から攻めてみる。
 皮は二層になっており第一層はぱりっとして香ばしく、第二層は脂を感じる、ゼラチン質ともいえそうな部分で、濃厚な旨味がある。
 この香ばしさ、二層になった複雑なうまさに夢中になる。
 ホワイトソースとからめると、これがまたいい。
「だめだめ、なにしてるの。皮ばっかり食べちゃダメだろ。皮を小さく切って、身と配分して食べなきゃ。困るな素人は」
 もう遅い。
 身と、残ったホワイトソースで、ご飯を一膳。
 なんという絶妙なバランスだろう。
 ご飯ととともに食べても、これまた素晴らしい。

「オカアサン、お茶と、漬物もよろしく」
「まささん、あとスープ、スープ、スープが来てないよ」

●注/八王子総合卸売センター中華『さくら』では毎日日替わりで、うまい定食を出してます。我がままを言わないお客大歓迎だそうです。ボクを見習え!
5月26日
八王子の市場に関しては
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 三重県尾鷲の旅は面白かった。
 岩田昭人さんに会えただけでもうれしかったのに、いろいろ教えていただいて、これがまた新鮮でもあった。
 帰路につく時間がせまったとき、岩田さんがなにやら真っ白で不思議な物体をお土産に持たせてくれる。
「これマンボウの皮」
 岩田さんの顔に、わずかばかり、いたずら小僧のような笑みが浮かんでいた。
 帰宅してから、もう一度岩田さんに食べ方など問い合わせてみる。
「真っ白い固まりでしょう。薄く切ってから湯引きしてください。それを酢みそで食べるだけなんです。これといって味はないんですけど、夏らしいっていうんかな、まあ食べてみんとわからんでしょうね」

 真四角な固まりを取り出すと、滑りがあるわけでもないのに、ツルっと滑っていく。
「おいおい待て待て」という具合に追いかけて、つかまえて薄くスライスする。
 これをほんの数十秒湯引き。
 辛子酢みそに乗せて食卓に出す。

 辛子酢みそにからませようとすると箸から逃げる。
 だましだまし口に放り込むと、酢みその味がして、噛むとじわりと何かが出てくる。
 甘いといえば甘いし、魚の旨味らしいものだといえば言える。
 まったく生臭みのないもので、食べた後味が爽やかである。

 これはもっぱら酒の肴だと思ったら、姫が生醤油につけつけ、レモンなどをしぼって食べている。
「おいしい?」
「おいしくない、けど食べちゃうな」
 それなら食べなくてもいいでしょうに。
 マンボウの皮は不思議な味だ。
 ふと岩田さんの、いたずら小僧のような笑みを思い出すのだ。

岩田昭人さんの「一日一魚」
http://www.pref.mie.jp/OKENMIN/HP/ichigyo/
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 撮影用に一キロ弱のヒラマサを買う。
 大分県産であり、鮮度がよくイエローのラインがきれいだ。
 すばらしい画像がとれたけど、このサイズではうまくない。
 今回はちょっと一工夫してマリネーにする。

 最初にヒラマサは三枚に卸して皮を引き、振り塩をしておく。
 半日ほど寝かせる。
 白ワインと白ワインビネガーを合わせて煮立たせる。
 冷まして、塩コショウ、タイムで香り漬ける。
 塩を洗い落として、約一日マリネーして出来上がりだ。

 まだ若いヒラマサは、こんな料理の方がいい。
 もっともっと鮮度がよければ刺身にしてもいいのだが、関東に送られてきたものでは、なかなか眼鏡にかなったものは見つからない。
 マリネーに日本酒でもないだろう。
 今回は泡盛。
 ボクにはワインは似合いません。

6月7日 
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 まるで民謡を思わせる名の「トゴットメバル」。
 なぜ、民謡なのか、というとボクが勝手に“かけ声”というか“合いの手”、例えば「とごっと、とごっと、よーいのせ」が浮かんでくるだけだ。
 そして、見た目が可愛らしいのだが、ウスメバルと比べて、脇役に思えて仕方がない。

 ただ味の方はなかなかあなどれない。
 大きくなってもせいぜい20センチオーバーだが、きめ細やかな身質で、料理を選ばず美味である。
 コイツを築地場内で見つけた。
 近海ものの、大きな単位を扱っている店で、5キロ箱に8尾だけ残っている。
 キロ当たり1000円はウスメバルの半額以下だろう。
 仕事に向かう途中なので全部は無理だ。
 おずおずと、「半分買えますか?」とたずねると、「できたら全部買いなよ」というのを「仕事があるので、なんとか半分を」。
 無理をおして4尾買い求めてきた。
 当然、産地なんか聞けるわけがない。
 たぶん駿河湾産だろう、そんなことを思いながら帰ってくる。

 さて作りますものは、定番中の定番である煮つけ。
 水洗いする。
 湯引きして、鱗などの汚れをとる。
 みりん、酒、醤油、砂糖少々を煮立たせて、放り込み。
 強火のままさらっと煮つける。

 きめ細やか、しかも適度に繊維質の身がほろほろと甘みがあってうまいね。
 しかも煮汁に旨味が出ていて、これに身をほぐしほぐし食べると最高だ。
 ご飯にも酒の肴にも、どっちでもいいのだが、平日なので、煮汁で飯をかき込む。
 当然一膳だけ。
  
2009年6月9日
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 築地場内で買ってしまうもの、にマグロのパックがある。
 500円、650円、800円、1000円、1500円に2000円。
 そのときどきで、これと思ったものを買う。
 買う基準は、一般人向けにわざわざ詰め込んだものではなく、本当に切り売りする内に出てしまった端材的なものを狙うということ。
 小さくても50キロからのマグロをさばくのだから、どうしても切り落とし、端切れになったものがでる。
 これを安く売ってしまおうではないか、というのが本当のお買い得品なのだ。

 今回のものも、いかにも端材的なもので、値段もそれなりに1パック650円。
 400グラム近く入ってこの値段は嬉しい限りだ。
 これを適当に切り、辛子酢みそを作り、ネギを合わせて、無骨な丼に盛る。

 これが滅法やたらにうまい。
 ピリっと辛子のきいた麦味噌で作った酢みそ、長ネギの辛さと香り。
 これをまぜこぜにからませて食べる。
 一切れ一切れの味の濃いこと。
 酒で洗い流すときの心地よさよ。

 酒は島根県益田市『扶桑鶴 純米酒 高津川』。
 この酒を送ってくれたヤマトシジミさんに、酒の方もだだものではない、とご報告したい。

2009年5月30日
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 朝から本降りの雨、これは梅雨間近を思わせるもので、市場には青梅が盛りと入荷している。
 コチが目につく季節となっている。
 八王子総合卸売センター、『高野水産』に二種類のコチ。
 値段の違いは産地の違い、かたや内房産、かたや大分県産らしい。
 今回は千葉県内房だろうというのを1本買い込んでくる。
 体に張りがあって、腹側を探ると真子、もしくは白子を持っている。
 人気があって、真子を探る余裕がない。
 ままよ、と小振りのものをやっと選んできた。

 我が家ではコチは独特の下ろし方をする。
 頭部を大きく切り取るのだ。
 下ろすとすぐに塩をまぶす。
 今回コチは白子を抱いていた。
 白子にも振り塩をして筒状になった胴の部分に戻す。
 半日置いてからじっくり焼き上げる。

 焼きたてを手でほぐして、食卓に出すのだけど、やっぱり頬の身はうまい。
 シコっと食感がよく、旨味が強いのはどうしてだろう。

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 いつも真子ばっかり探して雌を買っているが、白子もうまいのだな、なんて改めて思う。
 もともと量的には少ないのだから数分で食卓から消えてしまう。

 そんなに塩焼きがうまいなら、一本丸々焼けばいい。
 不思議なことに、コチ一本丸焼きにはめったにしないことになっている。
 さて、青葉コチ、梅雨コチ、日照りコチ、コチは梅雨が明けてもまだうまいはず。
 こんどはコチ飯でも作ろうか?

2009年6月6日
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 ここ数年、ボクの周辺で唐墨作りが盛んである。
 五島列島からボラの卵巣の塩漬けを取り寄せて、後は塩抜き、乾燥までやっている。
 これがみな良くできている。非常にうまくて市販品に負けないものとなっているのだ。
 そんな唐墨クラブ所属のjasminさん作唐墨をいただいたので、ただ食べるだけじゃもったいないとスパゲティを作る。
 ようするに唐墨スパゲティだ。

 実をいうと「作る」と書いたが、そんな「作るほどでもない簡単な料理」が唐墨スパゲッティなのだ。
 さて、いちよう作り方を披露すると。
 唐墨をボウルの中で潰す。
 ここにオリーブオイルとニンニクを加える。
 ほぐれづらかったら、スパゲッティのゆで汁を少し加えるといい。
 ここにアルデンテにゆであがったスパゲッティを放り込めばいいのだ。

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 香辛料はコショウもしくはカイエンヌペッパーがいい。
 シブレット、パセリなどは加えても加えなくてもいい。
 唐墨だけでいいのだ。
 この単純極まりないスパゲッティが非常にうまい。
 唐墨の濃厚な旨さと、渋みが存分に楽しめる

「唐墨はお父さんのつまみにするのがもったいない」
 こんなことを申す人間が一人や二人じゃないことも明記しておきたい。

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 モンガラカワハギ科は熱帯の魚だ。
 本州でとれるものはわずかでしかない。
 でも一種類だけ、ときどき大量に回遊してきて、とれてしまって困ってしまうモンガラカワハギ科の魚がいる。
 これがこれまたときどき大量に入荷してくる。
 そんなとき市場人の反応は。
「なんじゃこれ」
「カワハギか? フグかな? なんだろう」
 わいわい集まってくるのだけど、結局「カワハギにしておこう」ということになる。
 この正体がアミモンガラなのだ。
 不思議なことに千葉県銚子に多く揚がるようで、もっと面白いのは総て皮を剥いで送ってくる。

 頭も皮もなく、歩留まり100パーセント近いのに非常に安い。
 安い理由は鮮度落ちが早い、知名度がない、網もの(網でとったもの)だ、などいろいろあるんだろう。
 ボクの場合、これを見つけたら、とにかく買っておく。
 例えば一夜干しにしてうまい。唐揚げもいい。ムニエル、鍋物も工夫すると非常にうまいのだ。

 今回のものも銚子産ではないか? 表示がない。
 これを三枚に卸して塩コショウしておく。
 小麦粉をつけてムニエルに、保温しておき、同じフライパンにバターと玉ねぎを加え、炒め、白ワインで焦げ付いたものをかきとりデグラッセする。牛乳を加える。
 そこにムールガイ(ムラサキイガイ)を入れて、数分煮る。
 このコトリアードを器に盛り、アミモンガラのムニエルをのせる。

 ムニエルをコトリアードとからめながら食べていくもので、ご飯よりもフランスパンなどを用意したい。
 お父さんも白ワインといきたいところだが、一人鮎のうるかで純米吟醸なんかをやる。

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 アカエイという魚を知っているだろうか?
 南日本の干潟や、浅い砂地、泥場などに生息している。
 うちわのように平たくて、その上、尾がうちわの柄のように見える。
 全身の骨格が軟骨で出来ている。
 この柄の中央に鋭い棘があり、さされると激痛に長くさいなまれることになる。
 アカエイに襲われて刺されるというよりも、干潟などを歩いていて棘を踏んでしまうというものなので、深い傷となり重症を負うことになる。
 アカエイは今でこそ、食卓から遠い存在になっているが、古くから重要な食用魚だった。
 東京湾には今でもアカエイが健在で、夏になるとまとまってとれる。
 でも、最近ではなかなか売れない魚となっている。
 これが鋭い毒の棘を持っていることと関係あるのか、否か、食べなくなった理由を調べてみたいとも思う。

 さて、そんなアカエイが切り身になって、山口県山口市川端市場に並んでいる。
 調べてみたいと言うことでは、エイを皮付きのまま料理するか、皮を剥くか? というのが最近気になっている。
 金沢ではガンギエイ(エイの仲間でガンギエイ科の魚)を皮付きのまま煮ていた。
 そして川端市場のアカエイは、これまた皮付きなのだ。

「この辺りでは、アカエイ皮付きで食べるんですね」
「そうじゃな、今まで気にせんでいたけん」
 皮を剥くなんて思いもしないようだ。

 これを帰宅して、煮つける。
 煮つけて食べたら、やはり少々皮が気になった。
 でも気にすることもないか? それ以上に、これはうまい。
 コリコリとした軟骨の歯触り、上品な白身の味わい。
 まことにアカエイの煮つけは「うまいなーー」。

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 翌日は煮こごりとなっていて、この煮こごった、煮汁をご飯にのせのせ食べる。
 これがいいおかずになるのだ。
(「煮こごり」とは、魚の筋肉の結合組織、コラーゲンが煮ることによって、溶け出し、冷えると凝固して固まる。この固まったもの。料理として形に流し込み作ることもあるが、煮つけが残って、煮こごることもある)

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 5月29日の築地場内、魚がなくて寂しかった。
 仲卸の『大音』さんに寄って、
「魚ないですね」
 なんて挨拶代わり。
「魚より人がいねーよ」
 オヤジさんがぼんやり椅子に腰掛けている。

 そんなとき、お客が来て
「ハーモニカあります」
「あります、あります
 若だんなが、白いかたまりをお客に見せている。
「いいっすね」
 お客は若くて、和食ではなく洋食系の料理人に見える。

「オヤジさん、ハーモニカってなに?」
「ハーモニカは、ハーモニカだよ。見せてやれ」
 若だんなが見せてくれたのが、不思議な物体だ。
「カジキの鰭の下のところなんです」
 よく見るとメカジキの背鰭担鰭骨だ。

 お土産に一個いただいて帰った。
 オヤジさんが「焼くか煮るかするとうまいよ」というので、まずは焼いてみる。
 塩をまぶして、オリーブオイル、白ワイン、タイム、コショウで半日寝かせる。


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 これを遠火の弱火で2時間かけてこんがり焼き上げる。
 表面がかりっと香ばしく、中はジューシーで身がとろっととろけるようだ。

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 うまいか? というと、そんな生やさしいものではない。
 それこそ「ビックリしたなもー」てなうまさに驚愕、驚天動地、思わずひっくり返る。

 大音のオカアサン、オヤジさん、若だんな、ありがとうございました。

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 北海道室蘭市にある宮森水産の伊藤さんから、メールが届いた。
「明日川崎丸魚北部市場に,ウサギザメ送ります。深海魚で、非常に珍しいです」
 メールを見た途端に閃いたのがギンザメ。
 北海道でとれるギンザメとはいかなる種なのか?
 しかも北海道室蘭→川崎北部丸魚→八王子綜合卸売協同組合という経路が開発されることになる。
 市場に着いた途端、『マル幸』へ走る。
 クマゴロウがのんきそうに魚を下ろしているので、「あれ、来てる、来てるかな」と「ほらほら早く出せ」という意味合いもあって、大声でどなる。
「あるよ」
 うれしいことに間違いなく遠路室蘭から荷は届いていたのだ。
 日本の流通業の凄さを思い知らされる。
 いつものように店の片隅にそいつはあった。
 やはりギンザメだ、けどギンザメではない。
 体に白い斑紋がある。

 おむすびハゲ君に『市場寿司 たか』まで運んでもらい。
 背の筋肉をとって、まずは握りにしてみる。
 ぜんぜんうまくない。

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最初に、たかさんに格闘してもらう。「背中の棘に気をつけてね」

 持ち帰って撮影、検索するとココノホシギンザメだった。
 初めて見るもので、うれしさがこみ上げてくる。
 宮森水産さん、伊東さんに改めて感謝感激、ありがとう。

 撮影後、三枚おろしにすると大きな肝が出てきた。
 これがゆでて食べてみたら、やたらにうまい。
 これほどうまい肝はないだろう。
 丸いものがあって、こちらは卵巣、精巣と見つかって、雄と雌であったことがわかる。
 この卵巣もうまいのである。
 コリコリして噛むとコクのある旨味がジワリと出てくる。
 身はクセがなく、揚げる、煮て、うまい。

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煮つけたら最高に美味だった。これほどうまい肝もないだろう

 帰宅後2時間で撮影、料理を終える。
 午後、伊東さんに電話すると、室蘭港に揚がったもので、「タラ刺し網でとれたものでしょう」とのこと。
 改めてお礼をして、本日もココノホシギンザメとの格闘は続くのだ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ココノホシギンザメへ
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山口の金太郎

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 ヒメジほど地方での呼び名が多い魚もないだろう。
 名前が多いのは、産地などで非常に愛されているためである。
 島根県からの帰りに立ち寄ったのが山口市。
 山口市に素晴らしい市場があって、今でもホタルが見られる一の坂川の辺にあるので川端市場という。
 5月下旬、この市場に溢れていたのがヒメジだ。
 干したものもあって、「金太郎」という。
 これは島根県西部と同じだ。

 ヒメジの干物がいかにうまいものかは一度食べたらわかる。思い知らされる。
 今回のは丸々と太った、ゴロンとした感じの金太郎。
「そうか、これなら金太郎だ」
 赤い色から金太郎なんだ、と思っていたのだけど、これなら見た目も金太郎ではないか?

 焼くと、脂がじゅうじゅうしみだしてくる。
 この脂で揚げられたようになった皮目が香ばしい。
 またヒメジのはらわたのほろ苦さがいい。

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 これを肴に、海老名の海老さんにいただいた、海老名の銘酒「いづみ橋 純名吟醸」をやる。
 意外に男酒である「いづみ橋」4合瓶があっという間になくなる。
 海老さん、今度は一升瓶がいいな。

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